Reading For Pleasure

読書日記、ときどき食日記

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GWは、スペンサー de ダイエットを・・・ 

GWは後半にフレンチランチやら食事会やらが入っているだけ。GWが終わってからようやく旅行に行く。これからほぼ一週間近く連日飲んで食べる日が続くというわけだ。
デブ活もここに極まれり…
これはよろしくない事態なので、帳尻合わせのために真面目にジムに通っていた。
ほんの数日だけ(笑)

ジムでは専らエアロバイク派。平日は師匠と前場の株談義をし時間を潰しているが、その師匠もお留守なので、ロバート・B・パーカーの探偵スペンサー・シリーズが相棒というわけだ。
どの本も薄めの文庫一冊というボリュームなのでちょうどよい。
ただし、せっせと漕いでも消費カロリーは"豆腐一丁"とかそんなものなので、やらないよりは多少マシ程度のものだけども(苦笑)

   

スペンサー・シリーズは死ぬほど出ているので今更全部を読むつもりもないし、そこまでの余裕も体力もない(笑)そのうえ実をいうと、私はスペンサーという探偵にはあまり惹かれないのだ。
このシリーズが面白くないとは言わないし、菊池光さんの訳も大好きなのだが…

菊池訳といえば、賛否あるだろうが私はあの独特のカタカナ使いが好き。
"ピックルズ"って何か思えばピクルスのことだったりとか(笑)
それに、My name is Spenserを「私の名はスペンサーだ」でもなければ「私はスペンサーだ」でもなく、「スペンサーという者だ」としたセンスは流石。

というわけで、せっせとバイクを漕ぎつつ読んだのは、5月の読書会の課題本にもなっている「ゴッドウルフの行方」「約束の地」「初秋 」「晩秋」の4冊である。
読んだことがあったのはMWAを受賞した「約束の地」のみで、「ゴッドウルフの行方」をはじめ、傑作の誉れ高い「初秋 」「晩秋」も初読だ。

結論からいえば、「ゴッドウルフの行方」約束の地」<<<<「初秋 」「晩秋」の順に面白かった。
マニアには評価が高いという「ゴッドウルフの行方」は、私には何か味付けが足らない感がある。

ほんの数冊しか読んでない者が何をいうかと怒られそうだが、探偵スペンサー・シリーズの妙味は、会話の洒脱さにあると思う。
スペンサー・シリーズがハードボイルドか否かの議論は専門家に任せるが、この手の小説の例にもれずスペンサー・シリーズも一人称での語りだ。
しかし、大部分を占め物語を牽引するのは会話なのである。会話を成立させるには、それ相応の相手が必要だが「ゴッドウルフの行方」にはそれが欠けている。
つまりは、まだ恋人のスーザンが登場していない。これが大きい。

dscn0350.jpg 

また、スペンサーは私の好みからいうと少々健全にすぎる(笑)
絵に描いたようなアメリカン・マッチョで、そのくせ知的で、おしゃれで健啖家。料理上手なうえに、浮気はしない。しばしば女に誘惑されるが決して揺らぐことはない。健全な精神は健全な肉体に宿るを地でいって常に安定している。
サム・スペード、フィリップ・マーロウにはじまり、ローレンス・ブロックのマット・スカダーに比べても影の部分がない。
美しい恋人がおり、頼れるべき強い相棒がいて、私立探偵のくせに警官との仲が良好ときている。これはマーロウなどは見習いたいにちがいない。

どこが気にいらないのだ?と自分でも思うが、あの高須クリニックの院長がこんなことを言っていた。「人は、欠損に恋するものなのだ」と。

思うに、スペンサー・シリーズのファンの大半は男性なのではないだろうかと思うのだが、どうだろうか。ちょうど女性がハーレクインの美人の主人公を愛するのと似ている気がしなくもない。

「晩秋」を読むに、スペンサーが本来備えているべき影の部分は相棒?のホーク(黒人の元ボクサーでスペンサーとは旧知)が担っているのかなぁとも思う。
その意味でも、スペンサー・シリーズのレギュラーメンバー中、最も興味があるのはホークだったりする。シャンパン好きだしビール一辺倒のスペンサーよりお酒の好みも合いそう。

German Short-haired Pointer 

「初秋 」よりも「晩秋」が好きなのは、登場人物同士が時を経て、より”しっくり”きていること、よりウェットであることと、それに何よりパールという犬の存在ゆえである。
ええ、何者をも犬には勝てません。。。

というわけで、休日の我が家のランチは自称"スパゲティの大家"である彼にちなみパスタが続き、エロバイクでの消費を吹き飛ばしてしまう…とほほ

category: スパイ・冒険・ハードボイルド

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tag: 早川書房  文庫 
2017/05/04 Thu. 15:19 [edit]   TB: 0 | CM: 0

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謀略の都 1919年三部作1 / ロバート・ゴダード 

「地中の記憶 」は2週間もかかったというのに(笑)、本書「謀略の都1919年三部作 1」は1日で読み終えられる。年々集中力はなくなってきているが、興味には如実に比例する。それくらいのゴダード・ファン。

Montmartre.jpg 

ただ、惜しむらくは、講談社さんが電子版を出してくれないこと…
全く、何回アマゾンの「Kindle化リクエスト」のボタンを押したことか。
しかし一向にそれらしき気配はない。もうじき完結編も発売されるというのに。

ともあれ、電子版がない本なぞ、余程のことがない限り買うものかと堅く心に誓っているが、ゴダードはその余程のことだ。ゴダード作品には、基本ハズレがない。ややウェットなところも、それが美しい日本語で翻訳されているところも好きで、新刊がでればパブロフの犬のよろしく条件反射で買ってしまう。
しかも、本作はスパイ小説であり、トリロジー(三部作)仕立てだというではないか。これが"余程のこと"でなくしてなんだというのだ。
短い本ばかりが持て囃される昨今であるが、誰がなんと言おうと、わたしは堂々たる長編小説が好きなのだ。これは単品料理よりも、コース料理にありがたみを感じるのと似ている(ラーメンや焼き鳥とかも好きだけどね…笑)

というわけで、久々に紙の本を手にしたのだが、前述のとおりあっという間に読んでしまい、即座に第二部の「灰色の密命」をポチり、5月半ばに出るという第三部の「宿命の地」を予約注文までしてしまった!

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さて、本書の舞台は1919年のパリ。
パリは今もアブない旅行先となったが、1919年もそうだった。
第一次世界大戦が終わり、米、英、仏、伊、日の連合国の代表団がドイツに対し講和条約締結に向けた協議を行っていたが、この締結がなされるまでは、まだ戦時下だったのだ。

主人公は元英国陸軍航空隊のパイロット、ジェイムズ・マクステッド(マックス)。これが絵に書いたようなかっこいい主人公なのだ(笑)彼は、父親の地所を利用して軍時代の部下サムとともに航空学校を作ろうとしていた。
そんな折、マックスの父サー・ヘンリーがパリで急死する。
サー・ヘンリーは日本やロシアへの外交経験を持つ外交官で、英国代表団としてパリに派遣されていた。しかし、彼は宿舎から離れたモンマルトルのアパートの屋根の上から転落するという不審な死を遂げた。そのアパートには、美しい未亡人マダム・ドンブルーが住んでおり、彼女と男女の関係にあったサー・ヘンリーは足繁く通っていたらしい。
地元警察は事故として処理し、英国代表団やマックスの兄も体裁を考え、事を荒立てず、穏便に済ませようとする。しかし、マックスはそんな彼らの意向に逆らい、一人パリに残り真相を突き止めようと決心する。
そして、サー・ヘンリーが大金を集めるために外交上知り得た秘密を売ろうとしていたことを突き止めるのだが…

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帯には「第一次世界大戦の混沌を生きる スパイ小説」とあるが、はっきりってスパイ感はまだ薄い。
第一部ではまだマックスはスパイではないのだ。

翻訳者の方もおっしゃっていたが、物語自体の雰囲気は「ダウントン・アビー」に似ている。
「ダウントン・アビー」は第一次世界大戦前後の時代に翻弄される英国貴族を描いたテレビドラマであるが、時代設定もドンピシャ!
家柄はグランサム伯爵家ほどではないが、マックスの母、レディ・ウィニフレッド・マクステッドは、グランサム伯爵家の長女メアリーそのもの。マックス自身もサムとは今だ上官と部下の関係だ。当然、家柄の良いマックスが中尉で、5歳年長のサムが軍曹なのだが、それは二人の体格差でも歴然としている。英国人は体格とその話し言葉で属している階級がわかる。
もっとも、ジョン・ル・カレの詐欺師の父親は、あえて自分の田舎訛りを上流階級風のアクセントになおしたというが…
また、飛行機乗りがスパイとして活躍するというのは、フォーサイスの自伝「アウトサイダー 陰謀の中の人生」を思い出させる。言われてみれば、マックスの性格は"アウトサイダー"のフォーサイスそのものだ。

ただ、それだけではないのがゴダードなのである。
ゴダードといえば、過去の秘密。
第一部では、マックスはその扉の前に立ったばかりだが、今後、実際に起こった歴史的事件とサー・ヘンリーの本当の秘密は交錯していくはずだ。歴史の裏に蠢く多彩な登場人物も魅力のひとつ。マックスが生まれた土地「日本」も必ず登場するだろう。ゴダードは日本をどう描くのだろう?
そして、そこには、サー・ヘンリーだけではなくマックスの母の秘密や、思いもかけない形での「愛と裏切り」が待っているにちがいない。
マックスの冒険が今から楽しみだ。


 

    


    

   

category: スパイ・冒険・ハードボイルド

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tag: 海外ミステリ  文庫  英国 
2017/04/28 Fri. 11:54 [edit]   TB: 0 | CM: 0

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アラスカ戦線 / ハンス=オットー・マイスナー 

予定が合わず、しばらく遠ざかっていたけれど今月は出られそうな読書会。
その課題本が本書なのである。

なんでも、新版がでたらしいのだが、私が読んだのは古い文庫のほう。購入した覚えも読んだ記憶も全くないので夫の本だと思う。訳者も同じ松谷健二氏だしこれで済ませることにした。

舞台は第二次世界大戦時のアラスカ。第二次世界大戦を舞台にしたものは、最近では「ユナイテッド・スイテイツ・オブ・ジャパン」を読んだが、雲泥の差!

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ストーリーは、日本軍の日高少尉とアメリカ人の野獣監視員アランの、男の対決がメイン。
1942年、日本軍はアメリカ本土攻撃の足がかりとして、アラスカのアリューシャン列島のはずれのアッツ島を占拠する。本土攻撃にはアッツ島から爆撃機を飛ばす必要があるが、アラスカの天候の悪さがそれを邪魔する。
そこで、日本軍はオリンピック十種競技の銀メダリストの日高大尉に特殊任務を命じる。彼自身が選んだ精鋭の部下とともに、敵地アラスカの北側からアッツ島へ気象状況するのだ。
通信が始まって3日目、敵国の動きを察知した米軍のハミルトン将軍は、名うての野獣監視員アランに敵の追跡を託す。
かくして、苛酷な大自然の中での戦いが始まるのだが・・・


著者のマイスナーは大の親日家であろうことも容易に想像できる。だいたい外国人による日本人像は、日本人の我々からすれば、見当違いなものが多いのだが、日本人や日本の文化について非常に造詣が深いのがわかる。
それでいて、一方にだけ肩入れするわけでもない。日高とアラン、日本側とアメリカ側どちらをも平等に公平に描かれてもいるのだ。だからこそ両者の対決は盛り上がる。敵ながら互いに敵の資質を認め、ある種の尊敬と親近感さえ感じるというのは、「ジャッカルの日」のジャッカルとルベル警視さながら。
戦時の残酷さや過酷さも描いてはいるものの、スポーツマン的であり「最大のライバルは最良の友」といった感がある。こういうの、男性は好きなんだろうなぁ。
自爆テロやら暗殺やらいろいろある昨今、ラストはちょっと綺麗すぎる感もあるのだが、フィクションなのだしこれで良し。冒険小説にとっては読後感というのも重要なポイントだ。

herd moose 

northern lights 
日本人好みなのは確かだが、一方で、この本は普通のアメリカ人にはどのように迎えられたのだろうかとも思ってしまった。
マイスナー自身は上流階級の親日家のドイツ人。日の丸のもと日本軍が無謀な戦争を起こしたことにも触れてはいるが、アメリカだって先住民から土地を奪って建国し、彼らの大多数を殲滅させたことにもチクっと触れてもいたりするのだ・・・。
ま、事実なんだけども。

また極寒の地、アラスカでのサバイバル術の描写も目を見張るものがある。案の定、マイスナーはアラスカで先住民とともに半年にわたって狩猟を続けたことがあるのだという。何事も百聞は一見にしかず、なのだろうなぁ・・・
ヘラジカや熊を仕留め、その皮を剥いで靴や服を作ったり、現地にあるものだけでテントを張ったりという先住民の技術はかなり読み応えがあった。
狩猟はともかく、アラスカのオーロラは見てみたいなぁ。

category: スパイ・冒険・ハードボイルド

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2017/02/17 Fri. 16:35 [edit]   TB: 0 | CM: 0

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アウトロー / リー・チャイルド 

週末にハードボイルドミニ読書会を控えているので、慌てて読んだ。
おー、これで安心して鍋をつつけるというものだわ!(^-^)/(^-^)/

もっと早く読み終わっているはずだったのだが、偶然にもトム・クルーズ主演の映画「アウトロー」を観ていて、あらすじを知っていたため、なかなか読む気にならなかったのだ。
まあ、文章の行間や余韻を読む類いの本でもなし、知っているものをまた改めて読むのがわたしは面倒くさいというタイプなので…

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映画は、瑣末な部分を除けば、ほぼほぼ原作に忠実だといっていい。

 主人公はジャック・リーチャーという元軍人で、米軍の憲兵隊捜査官だった男だ。ただ、名誉除隊した後の彼の痕跡は一切ない。住所も家族も友人もクレジットカードすらも持っていない。

ある時、インディアナのダウンタウンで、オフィスビルから出てきた人々が次々と狙撃され殺害される。犯人は6発打ち込み、5人が銃弾に倒れた。誰がどう見ても無差別殺人だと思われた。
果たして容疑者はすぐに逮捕された。現場に落ちていた薬莢から指紋が採取されたのだ。犯人は元軍人で狙撃兵だったジェームズ・バーで間違いないと思われた。
だが、バーは「人違いだ」と無実を主張し、ただ一言「ジャック・リーチャー」を読んでくれといって黙してしまう。
捜査当局は、ジャック・リーチャーなる男を調べるが、元米軍憲兵隊の捜査員であったことの確認とれたものの、職を辞してからの行方は杳としてわからない。
一方のジャックは、流浪の旅の途中でジェームズ・バーが自分を呼んでいることを知り、インディアナに向かう。
バーが有罪となる証拠は一点の曇りもなく揃っていたが、バーのことをよく知るジャックは、狙撃ポイントに選んだ場所に疑問を持つのだった…

トム・クルーズ演じる主人公のジャック・リーチャーが、あまりに出来過ぎており、とにかく、トッムをカッコよくみせるための映画という感じが否めなかったかな。
ただ、改めて小説を読んでみると、かなり伏線が張られ、ひねりもきかせてある。ちょっと、「リーチャー、スゴすぎなのでは?!」と突っ込みたくなるところもあるが、まぁよくできていると思う。
誰とは言わないが、誰かさんのようにプロットに妙な歪みもない。
だからこそ、全米ベストセラーになったのだろうし、原作をそのまま生かして映画化もされたのだろう。

少し気になったのは、この手のヒーローものにはありがちなのだが、現実世界では、いくら正義の味方でも、悪人を殺していいわけはないということかなぁ?
法の執行官としてインディアナにやってきたのに、「それ、正当防衛の域を超えてるやん…」というくらい派手にやって、罪に問われないってありなのかな?
確かに相手は悪党には違いないけど。

映画化の問題点は、なんといってもリーチャーとトム・クルーズとのイメージの差だろうか。
いろいろな人が口を揃えて言っているように、トムはリーチャーをやるには圧倒的にガタイ(特に身長!)が足りない。なぜならリーチャーは身長195cm、体重100キロ超えの大男なのだ。
ただ、他の部分ではわたしはそれほど違和感は感じなかったかも。いかにもアメリカ人的なヒーローという括りではぴったりだと思う。
わたしはこれ一作品しか読んでないので、リーチャーに関する情報量が少ないからなのかもしれないけど(笑)第一作目の「キリング・フロアー」を読めば、なぜジャックが身を隠すように放浪の旅をしているのかという理由とかも、わかるのかしらん?

余談だが、映画通やアカデミー会員には軽視されがちだが、わたしはトム・クルーズは結構いい役者じゃないかとも思っている。トムに限らず、アクション俳優はもっと評価されてしかるべきだと思うなぁ。顔芸だけの俳優さんよりずっといいと思うけど…

11月に公開になった新作「ジャック・リーチャー」の原作「ネバー・ゴー・バック」も読もうか迷ったが、 ちょっと慌ただしくて週末まで時間がないし、何より、講談社が電子化してくれてない!
電子化されていたら、絶対ポチってたのに・・・
Wowowの放送を待とうっと。


  


  


反撃がやたらと高騰してる!
講談社も電子化しようよ〜〜〜・・・
  

category: スパイ・冒険・ハードボイルド

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tag: 海外ミステリ  映画化 
2016/12/07 Wed. 21:22 [edit]   TB: 0 | CM: 0

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英国のスパイ/ ダニエル・シルヴァ 

三笠宮様が葬去された。昭和天皇の弟君で御年100歳。幅広い分野での功績を残された方だが、スポーツやレクリエーションの発展にも寄与されたそうだ。私が小学生のときにフォークダンスがあったのは、三笠宮さまの影響なのかな?(今はしないのだそうだ)
謹んで哀悼の意を表します…

もう完全に時代は変わってしまったんだなぁと思う。
「ザ・昭和」な人間にとっては、寂しいかぎり。

さて、本書「英国のスパイ」は、あのダイアナ妃を彷彿とさせる元皇太子妃の死で幕をあけるのだ。
モロッコに行く直前に読んだのだが、宮様の薨去でこれを思い出し、また想像以上に良かったので遅ればせながらこうして感想を書いているというわけ


Westminster_Bridge,_River_Thames,_London,_England 

本書は、「亡者のゲーム」に続く、イスラエルのスパイ、ガブリエル・アロン・シリーズの最新作。
「亡者のゲーム」はアマゾンの評価をみるとイマイチなのだが、個人的には大好きな作品で、これも楽しみにしていた。
ただ、本書はガブリエル・アロン・シリーズの15作目に当たる作品なので、ある程度は前の作品の知識がないと堪能できないのかもしれない。(ただし、日本では刊行されていないものも多くあるし、刊行されていても高価な単行本なので、図書館でどうぞ
昨年、シルヴァの版権を持つハーパー・コリンズ社が日本進出し、シルヴァ作品がきちんと、しかも文庫で(!)読めるようになったのは、ガブリエルのファンにとっては嬉しいかぎり。


  

カブリエル・アロンはイスラエルの諜報機関のスパイであると同時に、世界有数の美術修復家でもある。イタリアに住むユダヤ人美術修復家というのは、敏腕スパイとしてのこれ以上ない隠れ蓑でもあるのだ。
美術世界と、国際政治という二つの要素を同時期に楽しめるのも、本シリーズの特徴だろう。
本書「英国のスパイ」は、全米初登場1位を獲得したというが、さもありなんのエンタメ性である。
何しろ、物語は英国の元皇太子妃の乗ったヨットがカリブ海で爆発炎上するシーンで幕をあけるのだ。
これは誰がどう読んでも、ダイアナ妃のあの事故を思い出させる。
ただ、作中ではダイアナ妃ご本人として登場しているのではなく、あくまで架空の人物だ。しかも、ヨットの爆破炎上は、エジンバラ公の事件をモデルにしたそうである。

なにはともあれ、作中でも皆に愛されたプリンセスの死に、世界中に衝撃と悲しみが広がる。爆発は事故ではなかった。プリンセスは何者かによって意図的に殺害されたのだ。
爆破の犯人として浮上したのは、アイルランド人の悪名高き爆弾魔、エイモン・クイン。
ガブリエルは英国のMI6の長官シーモアから、クイン暗殺を懇願される。実はクインはガブリエルの宿敵ともいえる存在だった。
顔を変え、逃げ続けるクインとそれを追うガブリエルと元SASで英国人の殺し屋クリストファー・ケラー。ガブリエルの盟友もまた、クインに深い恨みを持っていた。
しかし、クインは新たな標的に狙いを定め…


ira.jpg 

ネガティブなアマゾンレビューの人に反論をさせてもらえば、、、
私はガブリエル・シリーズは、決してマーク・グリーニーやトム・クランシーに劣るとは思わない。

私だって、なんだかんだ言いつつも実は「グレイマン」は全シリーズ読んでいる。接近戦こそが少ないが、そのスリルは圧倒していると思う。なんだかんだいってもグレイマンはフリーランス、ガブリエルは国家が後ろについているのだから。

それに、「グレイマン」みたいに、毎回毎回お人好しが原因で大怪我をし続けていたなら、繊細さが命の美術の修復などできないではないか(笑)
グレイマンをご存知ない方のために付け加えておくと、だいたいこんな感じだ。→地獄のグレイマン
「グレイマン」が悪いとは言わないし、最新作は出来もよかったが、そもそものジャンルが異なる。本書はル・カレなどともまた種類は異なるものの、いうなれば「プロのスパイ」の物語だ。
その「プロのスパイ」の人生を、作中ガブリエルは、「旅行と死ぬほど退屈な時間の連続で、その合間に恐怖の時間が訪れる」と評している。


イスラエルという国が抱えるやっかいで根深い問題に、毎回焦点が当てられるのも魅力のひとつ。
それはイスラエルだけの問題にとどまらない。中東地域やロシアと西側諸国といった大きなものに波及し、複雑な様相を呈している。
私がこのシリーズが好きなのは、シルヴァが元ジャーナリストであり、それがゆえに、小説もまた膨大な資料や生の声にあたって分析を行い、精密に物語を構築しているところだ。何事にも手抜きがない。
もちろん、著者が断っているように、「あくまでエンターテインメント」であることは理解しているが、登場人物こそ架空であるが、おそらく背景は事実とそう変わらないところも多いのではないか。

今回は、遠いがゆえに私などには特に知識が薄いアイルランドと英国の争いがメインになっている。
そういう意味では、ガブリエルよりも、かつてIRAに潜伏経験があり大切なものを失ったケラーの再生の物語というほうがぴったりくる。まさしく本書は「英国のスパイ」の物語なのである。



category: スパイ・冒険・ハードボイルド

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tag: 海外ミステリ  文庫  英国  スパイ 
2016/10/29 Sat. 11:41 [edit]   TB: 0 | CM: 0

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