Reading For Pleasure

読書日記、ときどき食日記

12« 2013 / 01 »02
1.2.3.4.5.6.7.8.9.10.11.12.13.14.15.16.17.18.19.20.21.22.23.24.25.26.27.28.29.30.31.

都市と都市 / チャイナ・ミエヴィル 

本書は、ヒューゴー賞、世界幻想文学大賞、ローカス賞、クラーク賞、英国SF協会賞受賞という錚々たるSF賞の受賞し、「このミス2013」のトップ10にも入った作品である。SFとしても、ミステリーとしても評価が高い本なのだ。
今日、ミステリーの「広義性」もその自由度も拡がり、小説のジャンル分けは困難になってきている。人によっても捉え方は異なるだろうし、昔のように容易ではなくなっている。ましてや、ジャンルを横断するNew Weirdの旗手たるミエヴィルの作品ならば、云わんやをや。
(といいつつ、SFにカテゴライズしているのは…
だって、これをミステリーにしてしまったら、SF枠が寂しくなってしまうんだもの…)

the city the city さて本題。
物語は一見ありふれた警察小説のように始まる。ベルジェ郊外の住宅団地で、若い女性の遺体が発見される。現場に駆けつけたのは、本書の主人公ベルジェ警察過激犯罪課のティアドール・ボルル警部補だ。
遺体を発見した少年たちは、サスペンションを軋らせ立ち去るバンを目撃していた。どうやら被害者は別の場所で殺され、ここに遺棄されたらしい。ボルルは早速、この地区に詳しいコルヴィ巡査部長とともに捜査を開始するのだが…

物語のメインストーリーは、この女性殺害の犯人探しだ。
しかし、このベルジュの町の設定が通常の小説とは大きく異なる。ミエヴィルがいうところのWeirdな、あり得ない世界なのである。

実は、ボルルのいるベルジェと、ウル・コーマという二つの国家は、地理的にほぼ重なりあい、互いの領土がモザイク状に組み合わさっている。
二つの国には物理的な障壁がないため、ある通りを隔てるとそこは隣国であったするのだ。だが、この二国はその事実を認めてはいない。そのため、ベルジェの人々は、ウル・コーマの建物や人々が、見えていても見えないし(unsee)、ウル・コーマの騒音も聞こえていても聞こえない(unhear)のだ。逆もまた然り。
magrittethe blanc check見えているはずのものが見えず、見えないはずのものが実は見えているというのは、R.マグリットのだまし絵のようだが、両国の人々は、幼い頃からそういった訓練を施されていた。他国のものはそれが何であっても、そこにはないものとして扱うのがルールなのだった。
この禁を破ると、たちま「ブリーチ」が現れどこかに連れ去られてしまう。ブリーチとは、二国間どちらにも属さない謎の組織のことだ。彼らはその種の行為を常に監視しており、両国の国民はブリーチに対して従順であるよう恐怖が刷り込まれているのだ。
ボルルはポスターを貼り被害者の女性の情報を集めようとするが、有益な情報は得られない。そんな時、一本の電話がかかってくる。不明瞭なベルジェ語のその電話はウル・コーマからかけられており、「女性はウル・コーマに住んでいた」と告げるのだった。
ウル・コーマの住人である彼女をベルジェに遺棄したのならば、犯人は「ブリーチ行為」を犯したことになる。もしそうなら、ボルル自身も危険だ。ボルルは、この事件をブリーチに委ねようとするのだが、バンは、コピュラ・ホール(両国公認の国境検問所)を通過し、正式な手続きを経て両国を行き来していたことが判明するのだった。犯人は法を犯してはいても、何らブリーチ行為は犯していなかったのだ。
ボルルは捜査協力のためウル・コーマに派遣されるのだが…


アンシー、アンヒア、ブリーチ、…多くの作中用語や、息の詰まる灰色世界はオーウェル『一九八四年』を彷彿とさせる。が、本書はディストピアではない。本書にあるのは、どちらかというとシュールレアリスムであり、そこにあるのは滑稽さだと思う。
解説者は、実のところこの小説の主人公は都市なのだ、と言っているが、これはその通りかもしれない。これは都市と都市の物語なのだ。ボルルの人物描写が淡白なのも、小説自体の体温が低いのも、このためなのだろうか。

ゴツいルックスのミエヴィルなのだが、小説においても見た目通りの豪腕ぶりだ。
china_mieville.jpg彼のこの非現実的な物語は、人間の無意識、偶然性を重要視した普段気が付かない現実を突きつける。

実は、意図的アンシー(見えているはずのものをみない)、アンヒア(聞こえているはずの声をシャットダウンする)ということは、我々も日常生活でよくやっているのではないか。
地下街の入り口のホームレスや、コンビニにたむろする若者たちを、見えていても見ないふりをしていることは割とあるのだ。

マグリットの絵、『白紙委任状』は、馬上の女性は樹木を隠し樹木は馬上の女性を隠している。だが、我々人間のの思考は、見えるものと見えないもの、両方を認めているのだという。
マグリットはこれを絵で表現したが、ミエヴィルは小説で表現しているのだろう。そして、さらに一歩進んで、誰もが知っているにも関わらず、誰も顧みようとしないものにも踏み込もうとしている。

それにしても、強面のスキンヘッドに左上腕にはスカルとオクトパスのタトゥーとか。
ミエヴィルさん…
一体、何を目指しているので?



都市と都市 (ハヤカワ文庫SF)都市と都市 (ハヤカワ文庫SF)
(2011/12/20)
チャイナ・ミエヴィル

商品詳細を見る


ちなみに、本書は次回横浜読書会の課題図書なのです。
関連記事

category: SF ファンタジー

thread: 最近読んだ本 - janre: 本・雑誌

tag: 早川書房  SF  このミス 
2013/01/31 Thu. 09:40 [edit]   TB: 0 | CM: 2

go page top

ディミター / ウィリアム・ピーター・ブラッティ 

本書は、あの『エクソシスト』の著者ウィリアム・ピーター・ブラッティによる長編小説だ。ブラッティは本書について「自分のキャリアにおいて最も個人的に意義をもつ小説」と、こう語っている。

全体は三部構成になっているのだが、まず、この一部にガツンとやられる。
舞台は1973年のアルバニアだ。アルバニアと聞いて、「ああ、あそこね。」とピンとくる日本人はどれくらいいるのだろう。
dE41h3EiRPDqxMR1359097567_1359097692.jpg長靴の形をしたイタリアの踵のあたりとアドリア海を挟んだ場所に位置するこの小国は、戦前、東欧諸の例に漏れることなく、マルクス・レーニン主義に染まり、1967年には共産党政府が「無神国家(無神論国家)」を宣言国民全てがいかなる宗教をも信仰しておらず、国内にはいかなる宗教団体も、活動も存在しない、と宣言した。
この時代の宗教弾圧は、鎖国やスターリン主義などの影響もあって他に類をみないほど厳しいものたっだそうだ。
その様子は、本書でもこんなふに物語られている。
両手首を切断され、両足の骨を折られたカソリックの神父に、その母親がようやく面会を許された時、両肘をつき這って母親のもとに寄ってくる。それが彼にできる唯一の移動方法だったからだ。それを目にした神父の母親は、「慈悲の心が少しでもあるなら、お願いだから、もう殺してやってくれ」と拷問者たちに頼むのだー

そんなアルバニアで、正体不明のある男が国家保安部に捕らえられる。死んだ男の身分証明書を持っていたぞの男、"虜囚"は、ヴロフたち拷問者による連日の拷問にも声すらあげない。"虜囚”の正体を知っている者はおらず、不思議なことに彼の印象は人によって皆異なる。分かったのは、どうやら外国の工作員らしいということだけだった。
そして、"虜囚”は驚くべき能力で脱走に成功し、多くの謎を残したまま姿をくらますのだった。
church-of-st-mary-of-vllaherna-albania.jpg
続いて、舞台はその翌年の聖地エルサレムに移される。
神経科医メイヨーは、目覚め間際に不思議な夢をみる。子供時代のキリストが首から聴診器を下げ、病棟を回診しているものだ。「マルコの福音書」にあるようにキリストは目の見えない患者に奇跡を起こしていたのだった。
だが、現実の病棟でも奇跡は起きていた。少年の癌と遺伝性の神経障害が治癒し、看護婦は、寝たきりのはずの老婆が夜歩き回っていたのだ…
一方、メイヨーの幼馴染みのメラル警部補は、ストリートで車が炎上した事件を追っていた。事故に居合わせた盲目の者は、人が二人いた気配がしたという。車はレンタカーで、借りていたのはテメスクという人物だった。レンタカー会社がコピーしていた免許証の写真は、曖昧でぼやけていた。
そんな時、このテメスクと思しき遺体がキリストの墓で発見されるのだが、CIAこの遺体に異常な興味を示して…


タイトルのディミターというのは、ある伝説のスパイの名前なのである。
脱走した虜囚と、エルサレムの病院で起こる不可解な現象の数々、メラル警部補が追っていた車の炎上事件密は、繋がりをもち、複雑に絡み合いながら展開していく。
けれども、第三部で明らかにされる真相の受け止め方も、本書自体の評価も大きく分かれることだろう。全ての謎の線が交わる消失点には、非現実的なものが嵌っているからだ。

悲劇的な歴史に彩られたアルバニアの雰囲気にはあっていると思うが、私は冒頭からスパイ小説を期待してしまったため、肩透かしをくらった感じだった…

ただ、それもそのはずで、著者はあの「エクソシスト」のウィリアム・ピーター・ブラッティなのだ。
「エクソシスト」で悪魔に向けられていた興味は、本書ではその興味はキリストに向かられており、両者はある種、対をなしているものなのかも。


ディミター (創元推理文庫)ディミター (創元推理文庫)
(2012/09/21)
ウィリアム・ピーター・ブラッティ

商品詳細を見る

エクソシスト (創元推理文庫)エクソシスト (創元推理文庫)
(1999/07)
ウィリアム・ピーター ブラッティ

商品詳細を見る

↓ これも、面白かったよ。
バチカン・エクソシスト (文春文庫)バチカン・エクソシスト (文春文庫)
(2010/04/09)
トレイシー ウイルキンソン

商品詳細を見る

関連記事

category: ノワール・ホラー・サスペンス

thread: 最近読んだ本 - janre: 本・雑誌

tag: 海外ミステリ  カソリック  スパイ   
2013/01/26 Sat. 16:28 [edit]   TB: 0 | CM: 0

go page top

シップブレイカー / パオロ・バチガルピ 

『ねじまき少女 』で一躍SF界を席巻してしまったバチガルピ。本書はそんな彼の長編二作目の作品であり、ローカス賞YA賞を受賞している。
『ねじまき少女』の石油が枯渇した近未来の世界観はそのままに、今度は社会の最底辺に生まれた少年を描いた作品だ。
paolo-bacigalupi-ship-breaker-image.jpg

舞台は、気候変動により海面は上昇、多くの都市が水底に沈み、世界は貧困によって荒廃してしまった近未来。
主人公のネイラー少年は、そんな社会の最底辺に位置するとされる船舶解体業者(シップブレイカー)の軽作業クルーだ。
シップブレイカーたちは、今は無用の長物となってしまった大型タンカーから、ケーブル、銅線など再利用可能なものをはぎ取り、それを売って生計を立てている。今はまだ身体が小さいので、働くことができるが、軽作業クルーの仕事は安泰ではない。ダクトに入れなくなれば、重労働の重作業クルーとして働くか、のたれ死ぬのみだからだ。それがネイラーの生きる世界なのだ。
おまけに、父親のリチャード・ロペスは、昼間からドラッグをやってネイラーを殴るような男だ。クルーのリーダーのピマやピマの母親のサドナのほうが、よっぽど家族らしいとネイラーは思っている。

そんなある時、ネイラーの住むビーチを大型ハリケーンが襲う。それは二日に渡って荒れ狂い、多くの仲間の命とありとあらゆるものを奪っていった。生き延びたネイラーたちは、嵐が去った後のビーチでクリッパー船(快速帆船)が座礁しているのを発見する。金目のものを回収しようともぐり込んだ船内で、ネイラーは、美しい黒髪の少女を発見する。彼女は、高価な金のアクセサリーをふんだんにつけ、鼻にはダイヤモンドのピアスまでしている。ネイラーの友達、ピマはさっさと彼女を殺してお宝を奪ってしまおうというが、ネイラーはためらってしまう。
少女ニタは、自分の父親は自分を助けてくれたお礼をたっぷりするはずで、生かしておけば、私は黄金よりも価値がある、とネイラーに言うのだが…


ジュブナイルなので前作よりも会話が多用され、何やらアニメを観ているような気分で読めるのだが、そこはバチガルピでテーマは結構重め。

ニタとネイラー、持てる者と持たざる者、人間の運命は、生まれ落ちたときにすでに決まっている。ネイラーには、最初から明るい未来はないのだ。
クルーたちは結束のために”血の誓い”を契っている。それを裏切り、自分のほんの少しの利益を優先させたばかりに、クルーから追い出されてしまった少女のエピソードが挿入されているのだが、彼女はもうブタをさばくように自分を切り売りして生きていくしか道はない。売春にはじまり、血、卵子、腎臓、目…しまいには売るものがなくなってしまう。
しかし、ネイラーたちだってたいして変わらない。だから、利口な彼はそこから抜け出そうとチャンスに飛びつく。
幸運と利口さ。人生にはその両方が必要だ。両方揃っていなければ、自分の環境を変えることはできないのだ。

シップブレイカー (ハヤカワ文庫SF)シップブレイカー (ハヤカワ文庫SF)
(2012/08/23)
パオロ・バチガルピ

商品詳細を見る

ちょうど、この本を読み終わった翌日、アルジェリアで人質になっていた日本企業の社員方々の訃報が伝わってきた。ご遺族関係者の方々の気持ちを思うとやりきれない。謹んでテロの被害にあわれた方々のご冥福をお祈り申し上げる。

テロに加担する者たちのいい分は、自分たちは"持たざる者"だということなのだろう。ヒズボラのような過激な組織が貧困地域で人気があるのは、飢えて苦しむ彼らに食料を与えるからであるという。その原資が犯罪行為によるものであろうが、彼らには関係ない。かくして、テロ組織は、世界の貧しい地域、今回のマリやサヘル地区などで拡大を続ける。
彼らには、ネイラーが持っていた利口さも運もなかったのだろう。

本書にはいかにも近未来を象徴するかのように、"ねじまき"同様、遺伝子操作によって作られた"半人"が登場する。犬の遺伝子を組み込まれ、力を人間の何倍もに増強された彼らは、”主人がいないと生きていけない”存在として作られた奴隷だ。その生き方に抵抗しようとする半人、トゥールの描かれ方もまた印象に残った。






関連記事

category: SF ファンタジー

thread: 最近読んだ本 - janre: 本・雑誌

tag: 早川書房  SF  YA   
2013/01/23 Wed. 10:56 [edit]   TB: 0 | CM: 1

go page top

CIA ザ・カンパニー/ ロバート・リテル 

robertlitell.jpgこれもまたボリュームのある本で、実に上下巻あわせると1000ページを超えている。

本書は、1950年代に入局した若者たちを通して、JFK時代のキューバ危機からソ連の8月革命まで、史実を交えつつ、圧倒的スケールで冷戦を描いているスパイ小説なのである。
「あとがき」で訳者は、気合いと消化力が必要だと言っているのだが、なるほど濃く、深いのだ。
しかし、エンタメ性も抜群。超個性的で魅力ある登場人物もさることながら、キューバ危機などの"知っている”史実が出たときの興奮は、ページをめくらせる手を早める。


1950年、イェール大を卒業をしたジャックとレオ、エビーの三人は、スパイとしての一歩を踏み出そうとしていた。彼らはファームと呼ばれる訓練所でスパイとしての心得を学び、それぞれ配属先の支局へと散らばっていく。
一方、イェール大で、ジャックとレオのルームメイトだったロシア人留学生イヴゲニーもまた、KGBのスパイとしての道を歩みはじめていた。
ジャックの配属先は、ベルリン支局だった。そこはソーラサー(魔法使い)と呼ばれる男、トリッティが仕切っていた。トリッティは、安物のウィスキーを好み、常に酒の臭いをぷんぷんささせているものの、スパイとしては超一流だった。ジャックはそのソーサラーのアプレンティス(魔法使いの弟子)となったのだ。
ハンガリー暴動、アフガニスタンのソ連侵攻、ピッグス湾事件、ベルリンの壁の崩壊… ジャック、レオ、エビーの3人は、歴史的事件を生き伸び、それぞれ出世の階段を上がっていく。
そのころ、CIAでは、KGBのスパイが内部にいるのではないかと囁かれていた。重要な工作の情報が敵側にとこごとく流れていたのだ。実は裏切りものは身内に近いところにいた。工作部門の幹部のアングルトンの親友で、同盟国である英国MI6の幹部フィルビーがそのスパイだったのだった。親友に裏切られたアングルトンは、猜疑心の塊となり、猛烈なスパイ狩りをはじめる。このスパイ狩りで、ロシア・ソ連部門では退職者が続出しガタガタになっていったのだった。
だが、KGBはどこまでも用意周到だった。フィルビーに代わって、サーシャという新たな二重スパイを用意していたのだ。
ある時、ソ連大使館員の男が、サーシャに関する情報と引き換えに亡命を求めてくるのだが、その情報からアングルトンは、ある人物が二重スパイだと確信するのだが…


物語のクライマックスは、ソ連に逃げたサーシャが、そこで8月クーデターの阻止に奔走するシーンだろう。彼はソ連に渡り、労働者の天国であるはずのソ連の民の生活を目の当たりにし失望するのだ。そんなサーシャの最後の希望がゴルチョフだったのだ。
このくだりはピューリツァー賞を受賞した
『レーニンの墓—ソ連帝国最期の日々』に詳しいが、リテルは、見事に史実とフィクションの境目を消していると思う。

本書に登場するジャック・ケネディはJFKらしく、レーガンもいかにもレーガンらしい。
私の一番のお気に入りは、やはりソーサラーことトリッティだ。飲んだくれで、薄汚く、「シャンパンなんぞは、泡ばかりで屁がでるから嫌い」で、喉が焼けるような安酒を好む。だが、群衆の中に溶け込んでしまったかのように、個性を消すことができる。この凄腕スパイのトリッティのおっさん、実は、実在のモデルがあるのだという。
主役の三人は元より、猜疑心が高じ次第に精神を病んでいくアングルトン、少女たちをベッドに侍らせるKGB幹部のスターリクなど、灰汁の強い登場人物たちが、物語を彩りエンタメ性を高めている。

Alice.pngところで、スパイ小説といえば、ジョン・ル・カレだが、本書でも、ソーサラーことトリッティに、引退後の手慰みとしてル・カレを読ませてこう言わしめている。「冷戦について知りたきゃ、新聞を読むよりル・カレの小説を読んだ方がいい。」
だが、もっと真正面から知りたければ、米国サイドから書かれた本書のほうがいいかもしれない。冷戦の危機に瀕してから、ソ連崩壊によって終結をむかえるまでの間、常に中心にいたのは米国であるのだ。

本書では至るところで、『不思議の国のアリス』が引用されているのだが、『アリス』の内包するテーマは風刺とパロディ、それと"ナンセンス"である。ル・カレとリテルの視点は近いのだ。
リテルは、スパイの世界を、「兎の穴」に喩える。確かにスパイは、その「兎の穴」に「不思議の国」をつくり、その中にさらに「不思議の国」を作ってお互いを惑わせ合っているのかもしれない。


CIAザ・カンパニー〈上〉 (文芸シリーズ)CIAザ・カンパニー〈上〉 (文芸シリーズ)
(2009/01/15)
ロバート リテル

商品詳細を見る

CIAザ・カンパニー〈下〉 (柏艪舎文芸シリーズ)
CIAザ・カンパニー〈下〉 (柏艪舎文芸シリーズ)
(2009/01/15)
ロバート リテル

商品詳細を見る


なんと!ドラマにもなってた。
D10050691_24L.jpg CIA ザ・カンパニー
ツタヤディスカス









関連記事

category: スパイ・冒険・ハードボイルド

thread: 最近読んだ本 - janre: 本・雑誌

tag: 海外ミステリ  スパイ    冷戦 
2013/01/18 Fri. 20:11 [edit]   TB: 0 | CM: 2

go page top

『喪失』 読書会@ルノアール 

スタバ、ドトール、タリーズなどのシアトル系カフェ全盛の昨今。ルノアールなんてよく生き残ってるな(←失礼)と思っていたら、実は上場企業だった。
さて、そのルノアールだが、格別コーヒーが美味しいわけではない(←重ねて失礼)
でも、ゆったりしたソファタイプの椅子に、おしぼりにお冷。シアトル系カフェにはない”くつろぎ”感があり、本と読むのにももってこいだ。時代は"喫茶室”なのかもしれない。

そんなルノアールは貸会議室も提供している。
今回の読書会ではこの会議室を利用したのだが、これが意外な穴場だった!
駅近で公共施設並のリーズナブルさ。別途利用者人数分の飲み物を注文しなければならないが、どうせ飲み物は必要なのだ。


130112_15397E01.jpg進行は、1月の催しとして、まず皆で読書地図を作成し、それから「喪失」の読書会という流れだ。

読書地図というのは、本のタイトルを、何らかのキーワードでつないでいくといったものだ。

例えば、「喪失」というタイトルがあるとすれば、
MWAつながりで、「ラスト・チャイルド」
そこからジョン・ハートつながりで「アイアン・ハウス」とつないでいくのである。

昨年、翻訳ミステリーシンジケート主催のイベントで行われて、楽しかったそうなので、今回チャレンジしてみようということになったらしい。

しかし、重大な問題が明らかになった…
漢字が書けないのだ!!!


続いて『喪失』の読書会である。

 writers life1
『喪失』の感想は、

・ストーリーテーリング力はあると思うが、キャフェリーに魅力がない
・面白くないわけじゃないんだけど、印象に残らない
・運河のシーンとか一部分かりにくいところがあった
・無駄に長い
・タイトルの喪失の意味がわからない


といったものだった。
あまりポジティブなものがないなぁ???



全体として★二つ半から三つくらいが妥当といった厳しい評価だった。
ただ、もしかして子供のいる方は、もっと違う意見があったのかもしれない。
私もタイトルを『喪失』と訳した意図はよくわからなかった。一体、何をなくしちゃったというのか?



ちなみに、私が気になっていたトークテーマに対する皆の意見は下記のとおりだった。

①エドガー賞受賞にふさわしい作品だと思ったか?その妥当性は?
ー前々年、前年は『ラスト・チャイルド』「解錠師」だったので、地味な印象
ー「容疑者X」が受賞してもよかったのではないか
ーイギリス人の番だったのかも?


②モー・ヘイダーという作家の印象は?
ー美人!ポケミスの著者近影はなぜあんな写真を使っているのか疑問

③異常性愛癖や人間のダークな部分について 
話題が及ばず…

④キャフェリーとフリーの今後
ーそもそも次回作の日本語刊行はないと思う

と、まぁ、かなり辛口な読書会となったのだった…きびC

次回はチャイナ・ミエヴィルの『都市と都市 』

詳しくはこちらで→ http://d.hatena.ne.jp/honyakumystery/20130113/1358032148

関連記事

category: 読書会

thread: 本に関すること - janre: 本・雑誌

tag: 海外ミステリ  読書会   
2013/01/14 Mon. 18:32 [edit]   TB: 0 | CM: 0

go page top