Reading For Pleasure

読書日記、ときどき食日記

04« 2014 / 05 »06
1.2.3.4.5.6.7.8.9.10.11.12.13.14.15.16.17.18.19.20.21.22.23.24.25.26.27.28.29.30.31.

闇の記憶 / ウィリアム・K・クルーガー 

全仏オープンが始まった!
2日目にして早くも雨サス。ジョコの試合も二回くらい中断。
その間ボールボーイと相合い傘したり、ジュースでカンパイしたり。ジョコ余裕すぎ…

ところで、ナダルはNo.1シードで昨年の優勝者なのに、なぜセンターコートを追い出されてるの?




それはさておき、ついに
ウィリアム・K・クルーガーがエドガー賞に輝いた。
あのトマス・H・クックやイアン・ランキンといった大御所を抑えての価値ある受賞だ。

受賞作の『ORDINARY GRACE』はこの秋に早川書房から刊行予定なのだそうだ。

なぜかエドガー賞受賞作は、決まって早川から出ることになっているらしいけど
これは講談社から出して欲しかったなぁ
講談社文庫とポケミスとでは1,000円くらい違ってくるのだ…
これが大きいんだわ(笑)


william kent kruegerとりあえずクルーガーを読んだことがなかったので、Amaで探してポチったのが本書『闇の記憶 』である。
この本はコーク・オコナーを主人公にした人気のハードボイルドシリーズで、実は第5作目。人気だけでなく評価も高く、アンソニー賞も受賞している。
どうせなら1作目のアンソニー賞とバリー賞をダブル受賞したという『凍りつく心臓』を、と思ったのだが、既に絶版で入手できなかった。(図書館か古本なら大丈夫かも)



さて、本書の主人公は先住民族のオジブワの血をひくコーコラン(コーク)・オコナーである。
彼はシカゴ市警を経て、生まれ故郷のミネソタ州の田舎町オーロラで保安官をしている。一旦は保安官の職を辞し、のんびりとハンバーガー店の店主をしていたのだが、委員会に頼まれて三ヶ月前に復帰したばかりだった。

ある時、オコナーは家庭内暴力の通報を受け、保安官助手のマーシャとともにインディアン保留地に向かう。ところが、その家について車から降りようとした時、マーシャが何者かに狙撃されてしまう。通報したきたティボドー夫妻は昔から諍いが耐えなかった。しかし、いつもは小柄な夫のイーライのほうが保護を求めて通報してくるのに、この日に限っては妻からの通報だった。
ほどなく帰宅した夫婦はそんな通報はしていないという。何者かがティボドー婦人に成り済ましオコナーに罠を仕掛けたのだ。女性にしては大柄なマーシャは、彼と間違えられて撃たれた可能性が高かった。しかし、一体誰が何のために…?

息をつく暇もなく、凄惨な殺人事件が起こる。被害者は、エディ・ジャコビ。オコナーの妻ジョーの仕事相手だった。何カ所も刺された挙げ句に去勢されており、太腿と陰部は血のバケツをひっくり返したような有様だった。エディ・ジャコビはインディアン保留地のカジノと契約を結ぼうとしており、弁護士のジョーは保留地側の代理人をつとめていたのだ。エディには女性に暴力をふるう癖があったが、それが原因で誰かの恨みを買ったのだろうか?

ジャコビ家はシカゴでも有数の資産家だった。そして、エディの異母兄のベンはジョーと過去に付き合いがあったらしい。
ろくでなしの次男エディを溺愛していた父、ルイス・ジャコビは、捜査を監視させるため女性セキュリティコンサルタントのダイナをオーロラの町に送り込む。
そんな矢先、オコナー家の車に爆弾が仕掛けられているのが見つかる。もはやオコナーだけの問題ではなくなっていた。家族の安全のため、オコナーはシカゴにいるジョーの妹夫妻のもとへ妻子を避難させるのだが…



falls.jpgクルーガーの作品はどれも質が高くハズレがないと言われているが、本書も期待を裏切ることはない。
ミスディレクションが張り巡らされた緻密なプロットに、ミネソタの雄大な自然そのものをあらわすようなオコナーというキャラクターは何とも魅力的だ。
彼は、オジブワの血をひいている白人であるため、白人とオブジワ族双方から敵視されるという複雑な立ち位置にいる。そして、男としてー父親、夫、保安官としてとにかくベストを尽くす、というポリシーを持っているのだ。

そんなオコナーとジョーをめぐり対照的に描かれているのがベン・ジャコビである。「愛からは遠ざかることができるが、家族はそうはいかない」といったベンはこの物語で最も不幸な人物で、強く印象に残る。

実はこの小説はこれ一作で完結しない。この物語はこの後『希望の記憶』 に繋がっていき、そこでまた新たな事件が起こるらしい。対をなしているかのようなこれらの二冊は上下巻的位置づけでもあり、同時に別ののエピソードでもあるわけだ。

本書のラストで我らがコーク・オコナーは絶対絶命の窮地に立たされるのだが、どうなるのかは次回へと持ち越される。この種のミステリには禁じ手といっていいやり方には賛否あるだろう。
けれども物語が余韻を残し後をひくため、次回作に対する期待もより高まるのだ。



闇の記憶 (講談社文庫)

ウィリアム・K.クルーガー (著), 野口 百合子 (翻訳)
講談社 (2011/6/15)





関連記事

category: スパイ・冒険・ハードボイルド

thread: 最近読んだ本 - janre: 本・雑誌

tag: エドガー賞  クルーガー  ハードボイルド 
2014/05/27 Tue. 16:22 [edit]   TB: 0 | CM: 0

go page top

ジュリアン・ウェルズの葬られた秘密 / トマス・H・クック 

『キャサリン・カーの終わりなき旅』 のとき、もうこんな感じばっかりならトマス・H・クックは読まなくてもいいかと思ったのだが、評判がいいので読んでみた。

そうしたら、これが良かったのだ!
クックらしい暗部に焦点を当てた暗い話なのだが、細部にわたるまで行き届いていて読ませる。文学好きにはたまらないミステリだと思う。



boat on lakeさて、物語はジュリアン・ウェルズという一人の作家が自殺を遂げるシーンで始まる。彼はボートを岸から何をしているのか見えない位置まで漕ぎ、そこで手首を切ったのだ。まだ50代だった。

ジュリアンは、実際に起こった陰惨な事件ばかりを、綿密な取材のもとに被害者に焦点を当てて描く作家だった。スペインのクエンカで起きた無実の人間への拷問、当時ナチス占領下であったフランスのオラドゥールで起きた大虐殺、ジル・ド・レ男爵と彼の手先だった"ラムフレイ(恐怖という意味)という名の老婆、若さを保つために処女の血を浴びたエリジェベート・バートリ伯爵夫人、そして最後にロシアの連続殺人鬼アンドレイ・チカチーロ。彼には鞭打たれるひりついた痛み、棍棒の重い衝撃、ナイフの切っ先を読者に実感させる才能があった。

彼の幼馴染みで親友だった文芸評論家のフィリップは、突然の親友の自殺にショックを受ける。
Argentinathe 2ジュリアンの妹のロレッタによると、彼は執筆に取りかかる前に必ずこれから行く国の地図を調べ本を読んでいたのだ。そして最後に見ていたのはアルゼンチンの地図だった。
アルゼンチンは30年前、フィリップとともに旅した土地だったのだ。
一旦は、ジュリアンの死を受け入れたフィリップだったが、ジュリアンの死について父親と交わした会話によって、彼の死の真相を突き止めようと決心する。
ジュリアンは、フィリップの父親の大のお気に入りだったが、父は「ジュリアンが知っていたのは暗闇だけだった」といったのだ。若い時のジュリアンは、全速力で駆け抜ける輝かんばかりの明るい青年だったはずだ。
フィリップの父がそうありたいと望んだ真の偉業を成し遂げる能力を持った人間、それが彼だったのだ。そんな彼の自殺の理由がわからないままでは、自分が壊れてしまいそうだった。

そんな時、ジュリアンの処女作「クエンカの拷問」の献辞が目にとまる。「わたしの犯罪の唯一の目撃者、フィリップへ」
今までこの"罪"という言葉は冗談めかした皮肉だろうと思っていたが、そうではなかったのかもしれない。ジュリアンは自分に何か隠していたのではないか。自分が気づいていない犯罪が行われ、ジュリアンはその罪から逃れようと暗闇でもがき、ついに力尽きたのではないだろうか。
そして30年前に共に旅したアルゼンチンで、マリソルという若い女性ガイドが突然行方不明になったことを思い出すのだった…

舞台はニューヨークからパリ、オラドゥール、ロンドン、ブタペスト、ロシアのロストフ、アルゼンチンと移っていく。これらは全てジュリアンが執筆のために訪れ滞在した国々だ。フィリップはジュリアンの秘密を探るため、彼の足跡を辿る旅に出る。



章立てもジュリアンの著作のタイトルがつけられているという凝った造りだ。取り上げられている悲惨な事件も読み応えがあるし、ジュリアン自殺の真相にもひと捻りある。
だが、本当に驚かされるのは終賞の仕掛けで、ああ、そういうことだったのか!と感嘆するにちがいない。
そう思って読み返すと、各賞のタイトルがなぜジュリアンの著書名であるのかも理解できるし、伏線すら見つけることもであきる。
それでいてこの文学性はどうだろう。フィリップがジュリアンの秘密を探る旅は、さながら人間の闇の深淵にまで潜っていくかのようだった。
この物語のキーとなっているヘンリー・デイヴィッド・ソローの「子供は戯れに蛙を殺すけれども、蛙は真剣に死ぬ」という言葉が響いた。

Saturnodevorandoasuhijo.jpgいつだったかの読書会で、例えばケッチャムのように何の救いもない陰惨な小説ばかり書く小説家について話題が及んだことがある。
ある人が、あの種ものは単にサディズムを煽るだけではないのかと言ったのだが、その時はそれに反論できる説得力のある言葉を見つけることができなかった。その答えは本書にあった。

ゴヤの「我が子を食らうサトゥルヌス」のような絵も、ただ、ただ陰惨なだけに見えるケッチャムにもちゃんと意味はある。世の中は光の当たる部分だけで出来ているのではないし、誰しもがジュリアンと同様「サトゥルヌスの罠」に落ちてしまうこともある。だからこそその闇の存在を忘れてしまわぬためにも、その種の絵や本は存在価値を持っているのだと思う。

ところで、スペインの画家ゴヤの「我が子を食らうサトゥルヌス」は、西洋絵画史上最も戦慄を感じさせる絵とも言われている。
サトゥルヌスは、空神ウラノスと大地の女神ガイアの間に生まれた6番目(末弟)の巨人族で、ローマ神話における農耕神のほか、土星の惑星神や時の翁(時の擬人像)としても知られている。この絵は、サトゥルヌスが我が子のひとりによって王座から追放されるとの予言を受け、次々と生まれてくる息子たちを喰らう逸話を元にしたものだという。丸呑みではなく頭からバリバリとかじる描写はあまりに生々しい。

このゴヤの絵については、さらに興味深いエピソードがある。黒い絵シリーズは晩年ゴヤが暮らした家(聾者の家と名付けられていた)の壁に書かれていたため、壁面から画布への移植作業が必要だった(プラド美術館所蔵)のだが、その際に撮影されたX線写真から、制作当時はサトゥルヌスの男性器が勃起した状態で描かれていたことが判明したのだというのだ。
今はご覧のように黒く塗りつぶされているのだが、移植作業の際に性器部分が剥落したとする説と、あまりにもおぞましく猥褻である為に修復家が手を加えたとする説があり、後者のほうが有力視されているそうである。



ジュリアン・ウェルズの葬られた秘密 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

トマス・H. クック (著), 駒月 雅子 (翻訳)
早川書房 (2014/2/7)


Kindle版はこちらから→ジュリアン・ウェルズの葬られた秘密




ローラ・フェイとの最後の会話 (ハヤカワ・ミステリ文庫 ク 17-1)

トマス H.クック (著), 村松 潔 (翻訳)
早川書房 (2013/8/5)






緋色の記憶 (文春文庫)

トマス・H. クック (著), 鴻巣 友季子 (翻訳)
文藝春秋 (1998/03)






関連記事

category: 歴史・大河・ドラマ

thread: 最近読んだ本 - janre: 本・雑誌

tag: 海外ミステリ  早川書房    クック  ゴヤ 
2014/05/23 Fri. 22:59 [edit]   TB: 0 | CM: 0

go page top

人類が滅亡する6つのシナリオ〜もはや空想ではない終焉の科学/ フレッド・グデル 

ナダル、ローマ準優勝おめでとう!!!
しかし、トップ選手がそのトップ地位を維持することのなんと難しいことか。
プロテニスのツアーというのは、特に苛酷なスケジュールでオフシーズンというものはないに等しい。常に肉体的にも精神的にもギリギリの状態だ。まだ目指す上がはっきりしている下位選手ならまだしも、トップ選手のプレッシャーは並大抵のものではないだろう。
フィギュアの真央ちゃんは来季休業するらしいが、ナダルも少しお休みしてもいいのじゃないだろうか。

本書に出てくるキーワードに”ティッピングポイント"という言葉がある。これはゆっくりと予測可能な変化をしていた物事が突如急激な変化をし始める時点をさす。
すでに積載限界の荷物を背負ったラクダは、ワラ一本載せただけで背骨が折れてしまうこともあるのだというが、この背骨が折れる瞬間こそがティッピングポイントだ。
そういえばフェデラーもどこかの時点からか、それまでのように勝てなくなってしまった…



future2.jpgさて、本書に挙げられている”滅亡のシナリオ”は未来予測ではない。
この本に書かれていることは、最悪の場合何が起こるか、ということで、SFも真っ青胃の恐ろしいシナリオである。予測ではないということは救いであるものの、かなり実現可能性も高いものであるのも確かだ。

この本に挙げられている人類絶滅の要因は、スーパーウィルス繰り返される大量絶滅気候変動生態系の均衡の危機バイオテロコンピューターの暴走である。

2009年に流行したインフルエンザウィルスは、幸いなことに致死性の高いものではなかったが、ほんの少し遺伝子の配列が異なっていれば全世界的に破滅をもたらすものだったという。
また、生物学者の多くは現在進行形で地球上の生物は大量絶滅に向かっていると信じている。過去起きた大量絶滅を考慮するなら、もはやそれを止める手だてはないかもしれない。

そして、炭素排出量の増大により今地球では進行形で温暖化が進んでいる。気候は今後、急激に悪い方向へと変化してしまう可能性があるのだという。気候変動におけるティッピングポイントは、もういつであってもおかしくはない。既に世界各地で旱魃は起きており、先のオーストラリアの旱魃は穀物の価格の高騰を招いた。オーストラリアでは既に降雨予想ができなくなっており、旱魃に襲われやすくなっているとも言われている。飢餓は争いも生む。これが世界規模で起これば人類をはじめとする生物は絶滅の危機にさらされる。

気候変動のために農作物の収穫高が激減する事態となっても、我々にはテクノロジーがある。DNA操作によって少ない水分でも生育する穀物を生み出すことができるし、それによって飢餓を予防することだってできるだろう。
だが、そのテクノロジーは諸刃の剣でもあるのだ。生物学は日進月歩で進化しており、病原体のゲノム解析も進んでいてネットで公開されてもいる。
作中では、平凡な高校生たちがMITのiGEMというイベントに参加し、生物の細胞を改造することに成功したという話が紹介されている。この改造自体は、何の悪意も他意もないもので学生たちにとって意義あるものだった。が、彼らの成功の裏には、ほんの2,30年前までは誰もなし得なかったことが、わずかなコストで可能になったということに対する脅威が存在している。近い将来、専門的な知識や資金がなくとも、誰にでも生物兵器が造れるようになっているかもしれないのだ。

最後のシナリオは人工知能の暴走だ。
映画「ターミネーター」に描かれてた機械が自我を持ち、人間から世界の支配権を奪うということは、当分あり得そうにないと著者はいうが、もしもソフトウェアに何かがあれば、我々のデジタル依存度からすれば、甚大な被害が生じる恐れがあるのは確かである。
恐ろしくもあり同時に不謹慎ながらもワクワクしてしまったのは、スタックスネットというマルウェアの逸話だった。
マルウェアというのは、他人のコンピューターに侵入して持ち主の意図とは無関係の動作をするプログラムだ。ウィルスやワームが歩兵ならば、このスタックスネットと名付けられたマルウェアはエリート中のエリート、特殊部隊の隊員のようなものだという。
作成者によって予め、技術的な知識を付与されトレーニングさえ施されており、いついかなる状況に陥ってもその知識を用いて自力で生き残り任務を成し遂げる。実際、スタックスネットが遂行した任務は、CIAの腕利きスパイでも不可能なことだった。イランの核施設の遠心分離機を故障に見せかけ破壊したのだ。

china1.jpgこれらから何を学ぶか。私は著者よりも悲観的かも…。

人類絶滅の二番目のシナリオの「繰り返す大量絶滅」を除けば、それらは全て"人間に起因"するものである。自業自得といえば、その通りだ。小さな池の水中の環境が破壊されてしまったとき、元の澄んだ水の状態に戻す鍵は池のなかの魚が握っているという。池が濁ると魚は数を増す。増えた魚たちは水をかき回し、沈殿物が浮き上がり植物は水は濁る。魚たちが水を浄化する動物性プランクトンを食べ尽くすことにより、さらに水は濁り、水中に光が届かないことで植物は死に絶える。死のサイクルだ。だが、一旦池から魚を排すれば、数ヶ月後には水は再び澄み植物も茂るようになるのだという。
この話のなんと示唆に富むことか。私たち人類は池の魚と同じなのである。
たが、人類を一旦地球から別のどこかへ移住させることは不可能だ。

人口は地球という池のキャパシティなどおかまいなしに増加を続けている。今世紀末には100億人を突破するともいわれており、ダン・ブラウンの『インフェルノ』にようなことが起こっても全く不思議ではない。

そして、そもそも人類の文明は繁殖を良しとして発展してきた。産まれてくる子供を制限するのは、そもそも人の本能や良心に反するものであるし、逆に寿命をのばすのは良い事として世間一般に認識されている。経済も人口が増え消費が増え続けることを前提に成り立っている。
しかし、どこかの時点で爆発する人口をどうにかしなければ、最悪の6つのシナリオの多くは現実のものになってしまうだろう。この矛盾はどう扱われるべきなのだろうか?
地球滅亡は太陽に飲み込まれる76年後だという話だった気がするが、人類の滅亡はそれよりもはるかに近そうである。




人類が絶滅する6のシナリオ: もはや空想ではない終焉の科学

フレッド・グテル (著), 夏目 大 (翻訳)
単行本: 320ページ
出版社: 河出書房新社 (2013/9/18)







マンアフターマン―未来の人類学

ドゥーガル ディクソン (著), 城田 安幸 (翻訳)
出版社: 太田出版 (1993/12)






関連記事

category: ポピュラーサイエンス

thread: 最近読んだ本 - janre: 本・雑誌

tag: 未来  科学    人口  絶滅  SF 
2014/05/19 Mon. 20:38 [edit]   TB: 0 | CM: 0

go page top

悪い奴ほど合理的 腐敗・暴力・貧困の経済学 / レイモンド・フィスマン+エドワード・ミゲル 

テニスはクレーシーズン真っ只中。
ローマはなんとフェデラーが初戦敗退。産後でお疲れ?
ってフェデが出産したわけじゃないけど…

ナダルもなんとか勝ってはいるけど、どうしたこと?フォアもバックも駄目駄目じゃん。
今年の全仏はかなりヤバそう…



gangster.jpgそんなナダラーの動揺はさておいて、少し前に『ヤバい経済学』 という本がベストセラーになった。
これがタイトルから想像する以上に大真面目な経済学の本だったのだが、この『悪い奴ほど合理的』もそれと同様。面白おかしい類いの本ではない。大真面目だが、経済学などには無縁の我々の興味を惹きつつ、視野を広げ、物の見方を変えさせてくれる本である。

「合理的」という言葉には、私は割と良いイメージを持っていたのだが、本書においてはそうとも限らない。換言すれば「自己利益に奉仕する」ということであり、レストランでチップを払わないとか、もっといくと納税を誤摩化す、などの所行もそれに挙げられる。

ちょっと話は逸れるが、以前、友人が「どうすれば合理的な恋愛ができるか」ということに頭を悩ませていた。私としては恋愛や愛情の類いは利他的なのもので、合理性とは相反するものだと当然思っていたので、とても驚いたものだった。
それに、恋は「落ちる」ともいうのだから、合理的に「する」ことが可能なら、古今東西文学のテーマになっているわけがないし…
しかし、本当にそうなのだろうか。恋愛における感情と相手のリアクションというものは数値化できないのだろうか?そのパレート効率性は求めることができないのだろうか?それはそれで面白い研究になりそうではある。

本筋に戻そう。
私たちが脱税をしたり1万円のために人殺しをしたりしないのは、法的な処罰があるからだけでなく「それが正しくないから」だ。要するに私たちは常に「良心の制約」を受けており、それがゆえに完全に合理的(利己的)であるとは言えない。
だが、例えばかのアル・カポネや経済ヤクザのような反社会的な輩は、良心の咎めによる足枷がない。普通の人が良心の咎を感じるようなシーンであっても、利己的な行動がとれる。そういう輩を「経済ギャング」であると定義でき、意訳すれば「悪い奴ほど合理的」だということになるわけだ。

もっとも過ぎたるは及ばざるがごとし。インドネシアでスハルトが長く独裁を敷くことができたのも、ひとえにその「合理性」の塩梅がよかったからで、某隣国の船会社の会長にように欲をかきすぎれば、自分の首を絞めかねない。

money3著者のフィスマンとミゲルの研究は、アフリカの貧しい国の人々が、先進国の援助や債務免除にもかからわず、未だ貧困状態なままなのはなぜなのかということにスタートしている。

どうすれば貧困国を救うことができるかについては、大きく相反する二つのものが紹介される。
ひとつは、『貧困の終焉: 2025年までに世界を変える』の著者J.サックスが提唱する「富裕国がもっと援助すれば、2025年までには貧困を終焉させることができるだろう」という"もっとじゃんじゃん援助すべき派"
いまひとつは、いくら援助したところで、受け手側の国々がよい統治をし、腐敗や汚職に目を光らせる制度が機能しないがぎり意味がない。」"援助の前に受領国は秩序を整えるべき派"である。

これらは、まさに「鶏が先か卵が先か」の論理だ。それぞれ論理的で筋は通っているものの、その両方に問題はあるという。そして、その有効性が実証できない限りは、どちらも単なる論理に過ぎない。

もっと現実的な回答を得るためには、腐敗、暴力、貧困の複雑な因果関係を理解しなくてはならない。途上国の貧困問題を語るに、「経済ギャング」の存在を避けて通るわけにはいかないからだ。
貧困という難題を解決するためには、これまで数値化されずデータの蓄積もなかったこれらの事実に踏み込むことが求められる。
先進国による巨額の援助金は、どこでどれくらい消失したがために、ケニアの道路は未だ寸断されたままなのか。灌漑設備は未着工のままなのか。経済ギャングの腐敗と暴力が、貧困に与えるマイナス面の影響を理解しなければ、それに対処する方法も見つからないままだ。これが本書の趣旨である。
人間についてのあらゆる問題は、結局のところは、人間の、良心の問題に立ち返る。それをまた、経済学の手法を用いて解き明かすのだ。

「好むと好まざるをにかかわらず、人間は腐敗、暴力、貧困その他の大罪に対して先天的な関心を抱いているようである」とは、著者の一人ミゲルの言葉である。この言葉が示すように、腐敗、暴力、貧困これらの具体例はかなり興味をそそられる。
例えば、スハルト大統領の息子であることは、一体どれだけの価値があるのか。スハルトの息子は大金持ちだが、それには、大統領の息子であるということはどれだけ寄与してるのか?この答えは、大方の予想通りだ。

またマンハッタンに勤める各国の国連外交官は、外交官特権を有しているために違法駐車をしても平然としている者もいるが、その常習者と彼の国の経済状態との関連性は?などなど…。

外交官特権があるため、彼らは違法駐車の罰金を支払わなくても罰せられることはない。どうせ罰せられないのだから、好き放題やってやれというのは、明らかに「経済ギャング」的行動である。
ただし、マンハッタンの違法駐車の罰金は、最貧国の国民の年収の二倍に相当するというのだ。ならば、最貧国の外交官が、それを未払いなのは、仕方のないことなのではないかというわけだ。
しかし、この未払い違法駐車を平然と行う外交官たちの中でも群を抜いていたのは、なんと最富裕国クェートの駐米大使Xだったという!(笑)
この大使X氏、どんな顔をしているのか見てみたいものだ。


悪い奴ほど合理的―腐敗・暴力・貧困の経済学

レイモンド・フィスマン (著), エドワード・ミゲル (著),
溝口 哲郎 (その他), 田村 勝省 (翻訳)
単行本(ソフトカバー): 294ページ
出版社: エヌティティ出版 (2014/2/24)




関連記事

category: ノンフィクション・新書

thread: 最近読んだ本 - janre: 本・雑誌

2014/05/16 Fri. 13:38 [edit]   TB: 0 | CM: 0

go page top

タックスヘイヴン TAX HAVEN / 橘玲 

ナダルは、クレーシーズンに入ったというのに、モンテカルロ、バルセロナと敗退続き…
でも、やっとエンジンがかかってきた!
まだ本調子とは言えないけど、ナダル、マドリード優勝おめー!

そして日本の錦織も、トップ10入りがついに現実のものになるらしい。
。レジェンドコーチの中で最も結果を出しているのは錦織くんについてるマイケル・チャンじゃないだろうか。




それはさておき、久々の国内ものだったのだが、これが良かった!
途中で本を置くことができず一晩で読んでしまった。

橘さんの小説を読むのは『永遠の旅行者』以来だろうか。
デビュー作の『マネーロンダリング 』では、こういう世界があるんだ!一瞬で魅了されたのを覚えている。
本書は『マネロン』や『永遠の旅行者』とも繋がっており、私のように冒頭の"堀山”の登場に懐かしさを感じる方もいるだろう。

ところで、年収5億ともいわれたスイス在住の投資ファンドマネージャー夫妻が行方不明になり、その後埼玉県で遺体で発見された事件を覚えておいでだろうか?
奥さんがセレブ生活を綴ったブログをやっていたことでも注目を集めた。その後、犯人は逮捕され事件は一応の解決をみた形になってはいるが、全く腑に落ちない不可解な結末だった。
亡くなったファンドマネージャーは、ヤバい筋のお金を扱い甚大な損失を出してしまったため、見せしめに殺害されたなど、様々な憶測が流れたが真実は薮の中だ。
本書は、飽くまでフィクションであると断ってはあるものの、この事件が下敷きになっているのは間違いない。そして、これほど読ませる小説に仕上げることのできるのは橘玲をおいて他にはないと思う。



    Singapore2

さて今回の舞台は金融都市シンガポール。
「1000億円を運用する」といわれた日本人ファンドマネージャー北川が、高層ホテルから転落死するところから物語は始まる。
北川の妻、紫帆は、同級生だった翻訳者の牧島慧(さとる)に、シンガポールに同行してくれないかと相談する。
かつて彼女に恋心を抱いていた牧島は、通訳としてシンガポールに同行することにするが、そんな二人の前にスイスSGバンクシンガポール法人の幹部の英国人エドワードが現れる。
彼によれば、紫帆の夫の北川は銀行に10億の負債があるというのだ。だが、今この場で用意された契約書にサインし、取引一切を口外しないなら、その債券を放棄してもよいと申し出てきたのだった。そのオファーは、契約書を持ち帰って吟味することは許されないという不可解なものだった。
もはや牧島の手におえる範疇を超えていた。そんな時、彼は長年疎遠になっていた古波蔵祐(こばくら たすく)の存在を思い出す…

古波蔵は、外資系プライベートバンクに勤務していたが、今はフリーで胡散臭い仕事を請け負っている。
きっかけは、2008年にスイスの大手プライベートバンクUBSの幹部が米国の司法当局に脱税幇助の容疑で拘束されたことだ。スイスのプライベートバンクの秘匿性はつとに有名だ。スイス銀行法47条(銀行秘密法)では、「職務上知りえた秘密を漏らした者」に対し、懲役刑を含む刑事罰を科すと定めており、この条文には例外規定がないためスイスの金融機関はどのような場合でも第三者に顧客情報を開示することはないと考えられていた。が、UBSは米国司法当局の圧力の前に守秘性よりも自らの生き残りを優先させた。

その影響とリーマンショックの煽りで、古波蔵は宮仕えに見切りをつけたのだった。そんな古波蔵に接触してきたのが、在日の大物フィクサーの元で情報屋をしている柳だった。以来、付き合いは続き、海外のまともな金融機関が相手にしないような現金商売の連中の便宜をはかっている。

スイスSG銀行の幹部が紫帆と牧島の前に姿を現してから数日後、スイスSG銀行の顧客の金が行方不明になったということが明らかになる。それは大居酒屋チェーン「民平」のオーナー村井の金だった。名門プライベートバンクの顧客の金がなくなるなど前代未聞の不祥事だった。紫帆の夫の北見の急死と前後し、スイスSG銀行の日本人プライベートバンカー山之辺も行方をくらましていたが、二人がそれに関係していたのは明らかだった。北川と山之辺は、別の顧客の口座に穴をあけそれを誤摩化すために「民平」の村井の金に手をつけたのではないか。そしてそれは氷山の一角に過ぎないのではないか…。
背後には、日本最大のヤクザの直系団体や大物政治家の姿が見え隠れしていた。
そして三人は国際金融の謀略に巻き込まれていき…



    money2.jpg
件の殺害されたスイス在住のファンドマネージャーのファンドにも、「資産運用というよりも何らかの意図を持ったものに見えた」という声が聞かれた。
が、本書のそれはもっと圧倒的に規模が大きいものに置き換えられている。そのからくりが、上記のあらすじから想定されることよりも遥かに大掛かりなことに驚くことだろう。

金のためなら人間は人殺しも厭わないが、もしそのファンドマネージャーが運用していた膨大な資金を奪った人間や組織がいたとするなら、彼らはどんな手段を使ってでも不都合な秘密を隠し通そうとするに違いない。
傍からみているだけの者にはこういう小説は書けない。実際にこの世界に身をおいているからこその小説だと思う。
ドラマ「CSI」に「鑑識の手続き」的面白さがあるのと同様、国際金融、殊にマネーロンダリングのからくりを知るという面白さもある。
しかし同時に、ミステリとしての醍醐味も存分にあるのだ。読み直してみれば、実は全てに繋がる手がかりのヒントはちゃんと提示されていたりもする。

古波蔵や紫帆、情報屋の柳といった登場人物の造形も秀でているためかエンタメ性も高い。
「生き残るためにはルールを習得し、コマの配置をすべて把握して、先回りしてゲームを支配しなければならない」そんな哲学を持っている古波蔵はかっこいい。
酒はスコッチしか好まず、BMWのカブリオレに乗り、ロロ・ピアーナなんかを身につけているなど、ディテールもうまく、古波蔵の姿が目に浮かぶ。
『マネロン』の秋生にも似てるが、彼よりも少し尖ったところもいい。また是非、次の小説ででも再会したいものだと思う。

日本、シンガポール、タイとその舞台もスケールが大きい。橘玲のサイトにはそのPhto Tourもあるので、そちらも併せてみればより楽しめると思う。



タックスヘイヴン TAX HAVEN

橘玲(著)
単行本: 427ページ
出版社: 幻冬舎 (2014/4/10)

Kindle版はこちらからタックスヘイヴン Tax Haven



マネーロンダリング (幻冬舎文庫)

橘玲(著)
文庫: 556ページ
出版社: 幻冬舎 (2003/04)

Kindle版はこちらからマネーロンダリング (幻冬舎文庫)






Kindle版
永遠の旅行者(上)
永遠の旅行者(下)


中古本は下記からどうぞ
永遠の旅行者(上)
永遠の旅行者(下)



関連記事

category: ミステリ/エンタメ(国内)

thread: 最近読んだ本 - janre: 本・雑誌

tag: 国内  金融ミステリ  橘玲  スイス在住資産家失踪 
2014/05/12 Mon. 10:41 [edit]   TB: 0 | CM: 0

go page top

RSSリンクの表示

リンク