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読書日記、ときどき食日記

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ブラック・フライデー 、秘密資産 / マイクル・シアーズ  

全米オープンテニスがはじまった!
が、まさかのナダル欠場…

本当に引退とか言い出したらどうしよう…
残された楽しみはもうジョコビッチが負けることだけです



さて、今日は二冊続けていってみよう。

『ブラック・フライデー』と『秘密資産』はともにウォール街を舞台にした続きものの金融サスペンスである。
『ブラック・フライデー』はシェイマス賞受賞作で、他にも各ミステリ賞の新人賞にノミネートされた。
日本では話題になっていないのだが、もったいないなぁと思う。
今やテレビドラマの原作は池井戸潤ばかりだが、ああいう小説がブームなら、こういうのももっと人気がでてもいいのじゃないかと思うなぁ。
ただ、主人公は正義のヒーローではないが…



ブラック・フライデー (ハヤカワ文庫NV)

マイクル・シアーズ (著), 北野 寿美枝 (翻訳)
早川書房 (2014/1/24)





『ブラック・フライデー』の物語は、主人公ジェイスン・スタフォードが出所するところから始まる。
ジェイスンはMBAクラスの卒業生のなかで最も早くマネージング・ディレクターになった花形トレーダーだった。だが瑣細な事務処理ミスに端を発した不正会計処理のため、連邦刑務所で二年服役を余儀なくされたのだ。
この手の犯罪は罰金を払って終わりということが多いが、彼は見せしめにされてしまったのだ。財産の保全のために偽装離婚した妻は彼の元に戻ってくることはなかった。
Wall Streetジェイスンに残されたのは、出所前に父親に託した現金が少しばかりとコンドミニアムだけ。金は必要だが、彼が「金を扱う業務」に就くことは裁判所命令で禁止されている。
そんな折、彼の元に中規模の投資証券会社ウェルド証券のCFOストックマンからある調査の依頼が舞い込む。先にヨットの事故で死亡した若手トレーダーの取引に不審なところがないか調べてほしいというのだ。
死亡したそのトレーダー、サンダースの取引に、証券取引委員会(SEC)が強い関心を示しているという。ウェルド証券は現在大掛かりな合併を控えており、ストックマン自身の保身のためにも、問題があるのならば把握しておきたいというものだった。
高額な報酬にジェイスンは二つ返事で引き受けることにする。
元妻アンジーから息子を取り戻し生活を立て直すには、まず金が必要だからだ。自閉症を患うキッド(息子)は医者、ヘルパー、特別支援学校etc,etc...何かと手がかかる。
早速サンダースの調査にとりかかるジェイスンだったが、その過程である小規模ファンドの存在が浮上し…




著者は20年間ウォール街で働いていたという経歴の持ち主で、まさに「餅は餅屋」を地でいっている。門外漢の人気ミステリ作家のリーガルものより、グリシャムやトゥローのリーガルスリラーのほうがより面白いのと同じ。

自閉症児キッドが存在も大きく、ジェイスンの物語に温かみを添えている。
著者の親戚に自閉症とアスペルガー症候群の子供がいるとのことで、キッドの日常もきめ細かく描かれているのだがこれ大変なことといったら!曜日ごとに着る洋服の色は決まっているし、他にもたくさんの決まり事がある。すぐそばにいてもあたかも異世界にいるかのようで、意思の疎通もままならない。本書の中で元妻アンジーはお世辞にもいい母親とは言えないが、ちょっと気持もわからなくもないかなぁと思ってしまう。自閉症のメカニズムを理解していなければ、いや理解していてもキッドのような子供のいい親になることは難しいだろうと思ってしまう。

だが、ウォール街のエリートの座から前科持ちへと転落したジェイスンにとっては、そんな風変わりなキッドはかけがえのない存在だ。ある意味、キッドのためだけにジェイスンは存在している。ジェイスンがいなければ、キッドは教育も支援も受けることなく、錠のかかった部屋に動物のように閉じ込められる生活に逆戻りなのだから。それがジェイスンの原動力になっているのに心動かされる人も多いだろう。

この『ブラック・フライデー』が高評価だったせいか、続編も出ている。それが『秘密資産』である。私もつい連続して読んでしまった。こちらは『ブラック・フライデー』の事件の解決から8ヶ月後の設定だ。





秘密資産 (ハヤカワ文庫NV)

マイクル・シアーズ (著), 北野 寿美枝 (翻訳)
早川書房 (2014/7/24)





今回、ジェイスンは目下、最も悪名高い銀行家の一族フォン・ベッカー家から依頼を受ける。
一族の長だったウィリアム・フォン・ベッカーは、北米最大の規模を誇る投資ファンドを運営していた。が、ファンドはある日突如として崩壊してしまう。
フタをあけてみると、ウィリアム・フォン・ベッカーがやっていたのは典型的なポンジ詐欺だったのだ。集めた資金で高利の配当をまかなっていたに過ぎなかったのだ。
フォン・ベッカーは逮捕されるが、拘置所内で自殺してしまう。だが、家族はどこかに父親の隠し資産があるのではないかと思っており、ジェイスンにその資産探しを頼むのだ。

果たして、隠し資産は存在するのか?ジェイスンはそれを見つけることができるのか?
こちらはより大掛かりでスリリングな展開になっている。

第三作も予定されているそうだが、こちらも楽しみ。
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category: ミステリ/エンタメ(海外)

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tag: 早川書房  文庫  金融  ウォール街 
2014/08/26 Tue. 17:52 [edit]   TB: 0 | CM: 0

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密室の王 / カーラ・ノートン 

思わず、Kindleぽちった誘拐監禁ものを扱ったクライム・スリラー。やや重め。

従来の誘拐監禁ものは、その少女が犯人どんな酷い目にあわされ、その地獄からどう抜け出したのかがじっくりと描かれたもの、もしくはそういった性犯罪者と刑事の対決ものというのが定番だったが、本書はそういったものとは一線を画し、誘拐監禁被害者の"その後"にも焦点を当てている。


imprisonment.jpg主人公リーヴは誘拐監禁被害の一人だ。12歳で誘拐され、4年近くも男に監禁されていた。生きて救出されたのは犯人がヘマをしたからで、言い方は悪いがただラッキーだった。

名前も変え仕事にも就いているものの、22歳になった今もまだ精神科医の元に通っている。リーヴの主治医、ドクター・ラーナーは全米でも数少ない長期監禁による後遺症の権威だ。彼女の心の傷は深く8年を経た今でもその影響は大きい。
ある時、カリフォルニア州ジェファーソンシティの売り家の地下室から少女が発見される。その少女ティリーは1年以上前に誘拐され以来行方がわからなくなっていた。その地下室で男に監禁されていたのだ。

ドクター・ラーナーは検察側の鑑定人としてティリーのもとに赴くが、ティリーの両親のたっての願いで同様の誘拐監禁被害のサバイバーであるリーヴがティリーのケアにあたることに。リーヴ自身もかつて、同様のサバイバーにケアをしてもらったことがある。その役割の重要性は分かりすぎるほど分かっていた。
ティリー誘拐監禁の容疑で清掃員ヴァンダーホルトが逮捕されたのだが、実はジェファーソン郡では他にも少女があと二人行方不明になっていた。ティリーと同じような体型、同じような少女。全員が夕暮れ時に誘拐され、目撃者はいない。だが、他の二人の捜査は遅々として進まなかった。そしてティリーは、救出されたというのに何者かに怯えていた。

Brachypelma smithi一方、"公爵”と自称する男はまぬけなヴァンダーホルトの失態に毒づき、彼をどうするか考えていた。しかし、うすのろ男よりも"公爵”の心を占めていたのは、ティリーが何か自分に関することをしゃべりはしないかということだった…



後半はご想像通りリーヴと"公爵”の対決となる。割と最初から黒幕の正体は明かされており、ミステリというよりはスリラー色のほうが濃い。この" 公爵”が不気味なのだ。"公爵”と自称しているようにどこかスノッブな感じもなくはないが、こういうキャラはどこの会社にも一人はいるのではないか。この手の手合いがごく身近に潜んでいる可能性が高いという事実が、より緊張感をもたらす。

誘拐監禁被害者は、また同時に性犯罪被害者でもある。
リーヴはメディアに「短気なリジー」という渾名をつけられるくらい向こうっ気が強くタフな女性だ。こんな強い女性でも、加えて全米一の専門医の助力をもってしても、"後遺症”を克服するのは容易なことではない。

本書は著者カーラ・ノートンの初の小説だが、彼女はキャメロン・フッカー事件を元にしたノンフィクション『完璧な犠牲者』 の執筆者としても知られているという。
70年代後半に起こったこの事件は、当時20歳だったコリーン・スタンがヒッチハイクで乗り込んだ車の持ち主の男キャメロン・フッカーに、実に7年に渡って性奴隷として監禁虐待されていたというものだ。何年か前に某テレビ番組で取り上げられたのでご存知の方も多いかもしれない。ある意味、誘拐監禁というのはノートンにとってのライフワークみたいなものなのかもしれないなとも思う。

Carla Nortonだからこそリーヴが抱えている苦しみは通り一遍でないリアリティを持っており、読み手はそれに衝撃を受ける。
"普通”になることはリーヴにとって、彼女たち被害者にとってどんなに困難なことか。他人と親密な関係を築くことがどんなに困難なことか。恋愛となるとハードルはもっと上がる。全身は犯人によってつけられた消えない傷だらけだからだ。仮に誰かを好きになったとして、その一切をどう説明すればいいのか?そこを乗り越え、やがて性的親密さへと発展した時、"裸と閉じられたドア"というのは大きな問題として立ちふさがる。

それでもリーヴは、自分と同じような被害を受けた女の子を助けることにより少しずつ回復していく。希望に満ちた終わり方は、もっとリーヴの成長を見ていきたいと思わせる。

日本でも監禁というと新潟の少女監禁事件を思い出す。9年2ヶ月もの歳月にわたり少女が監禁されていたという事件である。しかも犯人の家には彼の母親も同居していた。
彼女が救出されたのは2000年のことだったから、あれからもう14年。リーヴは自分の人生を再び歩みはじめたが、あの被害女性はその後明るさを取り戻すことができたのだろうかと考えてしまった。



密室の王 (角川文庫)
カーラ・ノートン (著), 羽田 詩津子 (翻訳)
KADOKAWA/角川書店 (2014/5/24)



Kindle版はこちら→密室の王


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category: クライム・警察・探偵・リーガル

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tag: 角川  Kindle  スリラー  監禁 
2014/08/25 Mon. 15:01 [edit]   TB: 0 | CM: 0

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ハリー・クバート事件 / ジョエル・ディケール 

Joël Dicker1スイス人作家による欧州ベストセラー小説だという。
なんでもダン・ブラウンの『インフェルノ』をNo.1から引きずり下ろした作品なのだそうだ。正直期待していなかったのだが、これ大好き!!!

本書のジョエル・ディケールといい、『ゴーストマン 時限紙幣』ロジャー・ホッブスといい、今年は若手がすごい。9月10月にはまたどっさり新刊が出るのだろうが、今年はこの二作品の一騎打ちではないだろうか。

ぽっちゃりなホッブスと違ってこっちはイケメン
これだけでもう…(笑)

面白い本いい本というのは、個人個人によって異なる。私にとってその指標となるのは、「登場人物たちにもう会えないかと思うと少し寂しさを感じ、もっと読んでいたかったと思うような本」である。これは作中、作家の師であるハリーの言葉なのであるが、本書はまさにそういう本なのだ。



seagull.jpgさて、本書の主人公はマーカス・ゴールドマン。
彼はデビュー作が大ヒットしたことで一躍人気作家の仲間入りをした。だが、その後深刻なライターズ・ブロックに陥る。書けないのだ。
栄光は儚い。だがそれだけでなく栄光はツケをも伴う。一年半そんな状態が続くと、エージェントは愛想をつかしはじめ、出版社からは待ったなしの最後通牒がきてしまう。契約は5作品だったので、書けないともう破産しかなかった。絶対絶命のピンチに、マーカスは恩師ハリーに助けを求める。ハリー・クバートは『悪の起源』という名作で知られる現代アメリカを代表する大作家にして、マーカスの師だ。
マーカスはニューヨークを離れ、ニューイングランドはオーロラのハリーの家に身を寄せることにするが、書けないのは相変わらずだった。

追いつめられたマーカスは、ハリーがなぜ若くして『悪の起源』を書けたのかという疑問に取り憑かれてしまう。ついには手掛かりを求め書斎を探しまわる始末だった。
そしてハリーが34歳のとき、15歳の少女と付き合っていたという証拠を見つけてしまう。あの誰もが涙した傑作『悪の起源』は15歳の少女ノラのためにかかれたものだったのだ。しかしなぜ、ハリーはあんなに美しい小説に『悪の起源』などというタイトルをつけたのだろうか?

時をおかずして、ハリーの家の庭からノラの白骨遺体が見つかる。ノラは1975年に行方不明になっていたのだ。自宅から遺体が見つかったことや、当時彼がノラと交際していたことなどからハリーは逮捕されてしまう。「自分は断じてノラを殺していない」ハリーの言葉を信じるマーカスは、オーロラに留まりハリーの無実を証明しようと奮闘するのだが…

マーカスはハリーの窮地を救うことができるのか?ノラを殺害したのは誰なのか?



Remington.jpg師弟の物語、本と人生にかかる物語、本書は様々な読み方ができる。
ミステリとしても一級品だとは思うが、それ以外がまたいいのだ。
訳者や欧州の識者が指摘するような文章の稚拙さやもたつきは、私は感じなかった。著者はなんと一切の推敲をしなかったらしいのだが、その分、訳者が苦労だれたのだろう。
ただ、タイトルは個人的には原題(ハリー・クバート事件の真相)のままのほうが良かったと思うが。

もしあなたが学生時代、ちょっとだけ「できるやつ」だったならば、マーカスに深く共感するはずだ。いや、ある時点までは、誰だってが何かしらのジャンルで、「できるやつ」だったのではないだろうか。マーカスのいう通り、優秀であるということは相対的な問題なのだから。彼はそれを戦略的に利用したのだ。「できるやつ」であるために、自分よりレベルの低いところで勝負してきた。
昔「できるやつ」だったあなた…。思い当たることしきりではないだろうか。あなたや私が昔「できるやつ」と呼ばれていたのは、単に周囲が自分よりレベルが低かったからだ。マーカスとの違いは、それが戦略的だったか否かということだけ。
だが、あなたも私も、経験則から、そんな手はいつまでも通用しないということを知っている。そして「負ける」ことに慣れていく。次第に「普通」でもまぁいいかと思うようになったはず…。

だからこそ、負けから何かを学びとったマーカスをまぶしく、同時に誇らしく感じるはずだ。親近感ある等身大の主人公が何かを乗り越えるというのは、読み手にとっても気分がいいものではないか。
といっても、マーカスも、おそらくそのモデルであるディケールも「本当にできるやつ」なのだけど。
ただ、それでも自分もそうできそうな気にしてくれる。
その頃にはもうこの小説を「ずっと読んでいたい」と思ことだろう。

後半は二転三転する。ノラの少女像はその時々で変わるし、ノラ殺しの犯人が誰なのかもまた然り。

絶対に「あとがき」から先に読むなどという愚をおかしてはいけない。ラストには読み手が想像もしない意外な結末が待っているのだから。
一応のヒントはあれど、最初からこれを見切った人がいるならば、それは相当すごいと思う。まさに「本当にできるやつ」なのだろう。



ハリー・クバート事件 上
ハリー・クバート事件 下

Kindle版はこちら→
ハリー・クバート事件(上下合本版)

ジョエル・ディケール (著), 橘 明美 (翻訳)
東京創元社 (2014/7/30)


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category: ミステリ/エンタメ(海外)

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tag: 海外ミステリ  東京創元社   
2014/08/21 Thu. 19:16 [edit]   TB: 0 | CM: 0

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アンダルシアの友 / アレクサンデル・セーデルベリ 

どうしようかなぁ読もうかなと思ってた本だが、これがよかった。
実はこれの前にフィンランドで初の"ガラスの鍵賞"を受賞したという作家の小説を読んだのが、私は断然こちらのほうが好み。特に暑いときはこの手のもののほうがいい。

スウェーデンものには珍しいド派手なジェットコースター・クライム・スリラーで、三部作の第一弾ということなのだが、是非続編も読みたいと思う。


Andalucía主人公は看護師のソフィー。15歳の息子とともに亡き夫の遺産で比較的裕福な生活を送っている。
彼女は入院患者のエクトル・グスマンと親しくなる。出版社を経営しているというエクトルは、40代半ばのスペイン人だが、どこか北欧人らしさが漂う見目のよい男だ。交通事故による大怪我を負いながらも、立ち居振る舞いは優美で堂々としている。そんなエクトルは入院してきた時からソフィーのお気に入りであり、彼もまたソフィーに好意を持ったようだった。エクトルが退院した今では、食事誘われる仲に発展していた。

そんな彼らの関係に目をつけた者がいた。スウェーデン国家警察の女警部グニラだ。エクトルはただの経営者ではなかったのだ。彼の父親は"善玉”グスマンと呼ばれるビジネス界の大物だった。彼は慈善団体への巨額の寄付で知られる人物だが、彼の"ビジネス”には、大掛かりなマネーロンダリングやコカインの取引も含まれているのだ。
グニラは強引なやり口でエクトルの弱みを握ろうとする。彼女には独立した捜査が認められており、その方法が違法だろうがおかまいなしなのだ。
都合よく使えるパトロール警官のラーシュをチームに引き入れ、ソフィーを盗聴させるのだが、元々人格的に問題のあったラーシュは美しいソフィーに惹かれ暴走を始める。

一方、武器証人のイェンスは、厄介なロシア人三人組との取引のため、貨物船で"商品”を輸送していたが、洋上で銃撃戦に巻き込まれてしまう。イェンスが輸送に利用した貨物船は、グスマンのコカイン輸送船で、襲撃してきたのは彼のコカインのパイプラインを乗っ取ろうとするドイツ人方の敵だったのだ。
このどさくさでイェンスはドイツ人に"商品”を奪われてしまう。"商品”を取り戻すため、わずかな手がかりをもとにイェンスは行動を開始するのだが…

物語はソフィーを中心に、彼女からエクトルの弱みを握ろうと目論む国家警察のグニラの部下のラーシュ、武器証人イェンスの視点から描かれ、物語はクライマックスへと突入する。



alexandersoederberg.jpgこれまでの陰気なスウェーデンミステリとは一線を画すほどの派手さ。
北欧ミステリは一部を除けば、これまで「陰気で猟奇頼み」の一言で片付いたものだが、エンタメ度が上がったなぁとつくづく思う。
美しく清楚なヒロインに銃撃戦、カーチェイス…これはもろハリウッド好み、と思っていたら、案の定映画化権は売約済みなのだそうだ。

著者のセーデルベリは、小説家デビュー前はドラマの脚本家だったという。この北欧らしからぬエンタメ性はその影響もあるのかもしれない。
ただ、この作家はそれだけではない。もしかして趣味はマンウォッチングなのではないだろうかとそんな気がしてしまう。登場人物の造形と心理描写の巧いのだ。私のお気に入りはラーシュで、彼が崩壊していくさまは圧巻だ。しかも皮肉にも、崩壊をはじめてからのほうが、より人間的で好ましい人物になっていくのだ。

逆に、通常の作家ならばもっとも書き込むだろう主人公ソフィーの心理は、少々控えめかもしれない。そのため少々掴みどころがなく感じる人もいるかもしれないが、本当の彼女は続編で明らかにされるのだろう。


アンダルシアの友 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

アレクサンデル・セーデルベリ (著), ヘレンハルメ 美穂 (翻訳)
早川書房 (2014/1/10)





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category: クライム・警察・探偵・リーガル

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tag: 海外ミステリ  早川書房  映画化 
2014/08/18 Mon. 20:22 [edit]   TB: 0 | CM: 2

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【お知らせ】東江一紀さん追悼読書会をやります! 

私もお世話になっている横浜翻訳ミステリー読書会からのお知らせです。

去る6月21日、翻訳家の東江一紀氏が他界されました。
ドン・ウィンズロウの小説の洒脱でキレのある翻訳でお馴染みの大好きな翻訳家でした。
『野蛮なやつら』のビートの効いた文体は氏ならではだったと思います。他方、楡井 浩一名義ではジャレル・ダイアモンドの『文明崩壊 : 滅亡と存続の命運を分けるもの』 などノンフィクションも多数手掛ける幅の広い翻訳家でもありました。
遅ればせながら、謹んでご冥福をお祈り申し上げます。


横浜翻訳ミステリー読書会では”東江一紀さん追悼読書会”を開催します。
課題本はもちろんウィンズロウ!
読書会といえばどこかの会議室で静かに真面目にというのを想像されるかもしれませんが、今回は堅苦しいことはヌキ!食事とお酒を楽しみながらワイワイと語らうカジュアルなスタイルです。初めての方も、う〜んと語りたい方もお気軽にどうぞ!


ストリート・キッズ (創元推理文庫)

ドン ウィンズロウ (著), 東江 一紀 (翻訳)
文庫: 512ページ
東京創元社 (1993/11)




◆日時:2014年 9月13日(土曜日)18:00〜(3h程度)
◆課題本:ストリート・キッズ (創元推理文庫)

※課題本は各自でご用意ください。
◆場所:横浜駅近辺の飲食店


8月17日現在の時点で残り2席です → 満席になりました!

募集終了とさせていただきます。
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category: 読書会

tag: 読書会 
2014/08/17 Sun. 14:29 [edit]   TB: 0 | CM: 0

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