Reading For Pleasure

読書日記、ときどき食日記

03« 2015 / 04 »05
1.2.3.4.5.6.7.8.9.10.11.12.13.14.15.16.17.18.19.20.21.22.23.24.25.26.27.28.29.30.

獣たちの墓 / ローレンス・ブロック 

今年のGWは大型!昨日からお休みに突入している人もいらっしゃるかも。
GWといえば、横浜読書会の特別企画ミステリクッキングがあるので、”ピリ辛レモンの詰め物”を予行練習で作ってみた!
    IMG_1443.jpg
のだけど… のだけど…、

イギリスのレシピを信じた私が馬鹿だった。
くっさ〜〜〜〜〜〜〜!!!

なんだろう?カルディで買った安い缶詰が悪いのか…。私は青魚はそんなに好きでもないけど駄目でもないんだけどな。サバとかむしろ好きだし。
これね、『シャーロック・ホームズとお食事を―ベイカー街クックブック』に掲載されている"ベーカー街風ランチ"の前菜なのだけど、もしも本当にシャーロックがグルメならば、これはさすがにNGでしょ?
臭み消しがレモンオンリーなのでイワシに負けてるのよ。コレ。
そこで、ガーリックと玉ねぎのみじん切りを投入して、ようやくなんとかかんとか食べられるレベル。
まさに、臭さをもって臭さを制す!
しかし、これはNGメニューだったよなぁ… = = 
今夜はギョウザを作ろうと思ってたけどやめよう。

Liam Neesonさて、臭い話はさておいて、本書は先の”翻訳ミステリー大賞コンベンション”でいただいた本である。
ブロックと臭い話とはなんの関連もありません。念のため。
結構古い本で、ハードカバーとして上梓されたのはなんと93年。この5月の末からこれの映画『誘拐の掟』が公開されるというので、4月に新装改訂された。映画まで随分時間がかかったけども、リーアム・ニーソンはスカダーのイメージにぴったり!(naoさん、G・クルーニーだと軽すぎない?)

物語は裕福な麻薬ディーラー、キーナン(映画ではケニー)の妻が誘拐されるところから始まる。
身代金は当初100万ドルだったが、キーナンは犯人と交渉し40万ドルに値切ることに成功する。金さえ支払えば、妻は無事に帰ってくるはずだった。だが、キーナンの元に返されたのは、バラバラにされた妻の遺体だった。
なんとしても犯人を突き止めたいキーナンだが、麻薬ディーラーという仕事柄、警察に頼るわけにはいかない。
ある意味犯人は賢かったのだ。そこで兄ピーターの伝手で、私立探偵のスカダーに仕事の依頼をする。ピーターとスカダーはAA(アルコール自主治療会)を通じ面識があったのだ。
スカダーの丹念な調査の結果、犯人が手にかけた女性はキーナンの妻が最初ではないことが判明する。過去、同じような手口で何人もの女性が殺害されていた。性的倒錯者としか思えない惨たらしい殺し方だ。ただ、身代金をとったのはキーナンが最初のケースだった。犯人は趣味と実益の二兎を得たことで味をしめまたやるに違いない、とスカダーは考える。
果たして、犯人が新たに誘拐したのは、キーナンの同業者の娘だった…。

   IMG_1421.jpg
原作と映画は少々ストーリーは異なるようではあるが、たぶんここまでは同じ。
「殺したら殺す」というキャッチからして、この後のスカダーの対応の仕方が異なるのではないかと思う。映画では、積極的に正義の鉄槌にかかわるのかな?
だが、先のコンベンションの「ネオ・ハードボイルド作家・探偵の月旦」で、杉江、永嶋両氏が言っていたように、ネオ・ハードボイルドに描かれているのは、「探偵自身の人生」であり「探偵の自信の喪失」がテーマでもあるという。
スカダーが本書でみせるのは、ある種の諦観であり、最優先すべきなのは少女の命のみである。金もくれてやってかまわないと思っているし、犯人への怒りもないわけではないが、正義よりはまず命なのだ。
こういう風に書くと、スカダーは腰抜けなのかと思う人もいるかもしれないが、しかし全くそうではない。誘拐された子の親にとっては、それがなによりの対応だからだ。
諦観しつつも、日々アルコールを飲まずに乗り切っているのと同様、日々暴力化する社会のなかで自分にできることを精一杯やっているという姿は共感を呼ぶ。
また、このスカダーという人を知るうえでは、彼の恋人で高級娼婦のエレインの存在が非常に大きい。映画ではメインキャストではないようだが。本作では彼女は娼婦をやめようとしており、他方、スカダーもエレインに"L"で始まる言葉を言いたいのだが言えずにいる。このためらいを孕んだ二人の間の空気感がなんともいいのだ。
またまた「ネオ・ハードボイルド作家・探偵の月旦」の受け売りなのであるが、「マイク・ハマーイズムは、80年代以前のチャンドラーに代表される探偵のアイテム化を否定し、犯罪と暴力の小説として読ませることにあるという。
ならば、「暴力をもって暴力を制す」という本書の解決の仕方は、まさに”犯罪と暴力の小説”と言えるのかも。



獣たちの墓 (二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション)

ローレンス・ブロック (著), 田口 俊樹 (翻訳)
二見書房 (2015/4/21)








倒錯の舞踏 (二見文庫―ザ・ミステリ・コレクション)

ローレンス・ブロック (著), 田口 俊樹 (翻訳)
二見書房 (1999/05)









墓場への切符―マット・スカダー・シリーズ (二見文庫―ザ・ミステリ・コレクション)


ローレンス・ブロック (著), 田口 俊樹 (翻訳)
二見書房 (1995/10)









関連記事

category: スパイ・冒険・ハードボイルド

thread: 最近読んだ本 - janre: 本・雑誌

tag: 海外ミステリ  ハード・ボイルド  ネオ・ハードボイルド 
2015/04/30 Thu. 15:04 [edit]   TB: 0 | CM: 2

go page top

2015翻訳ミステリ大賞コンベンションに行ってきた! 

翻訳ミステリシンジケート主催のコンベンションに行ってきた!

今年の会場は京急蒲田駅そばのコンベンション施設。
横浜からは急行で2駅とぐっと近くなり、"畳にザブトン"の去年までに比べると、ほら式典感が!!!
   IMG_1294.jpg


まずは、"「七福神」でふりかえる翻訳ミステリーの1年"からスタート。
司会はおなじみ杉江松恋さん。
   IMG_1287.jpg
   IMG_1422.jpg
今日もインパクト抜群のファッションでご登場。実はこの上着がず〜っと気になっており、お背中撮らせていただいた。なんでもね、新宿二丁目で職質されたこともあるのだそうで…#$%%&’
   
   IMG_1292.jpg
ファッションチェックはさておき、杉江さんをはじめ、北上次郎さん、吉野仁さん、川出正樹さんと共に昨年度のイチオシ作品を振り返る。それぞれの2014のベスト作品は以下のとおり。
北上さん 表のベスト『ハリー・クバート事件 』、裏ベスト『暗殺者の復讐 』
吉野さん 『その女アレックス』
川出さん 『探偵ブロディの事件ファイル』 
杉江さん 『世界が終わってしまったあとの世界で』

お〜〜〜〜!私の昨年のベストオブベストも北上さん同様『ハリ・クバ』!「このミス」でももっと上位でもいいと思ってた。北上さん曰く、『ハリ・クバ』の欠点はただひとつ。作中に挿入されている"世界で何千万部と売れた小説"というのが、ショボすぎたのだそう。
ウラのベストはもう説明不要(笑)北上さんはマーク・グリーニーから離れられない運命なの。仕方ないの。

杉江さんのイチオシは、ル・カレの息子ニック・ハーカウェイの『世界が終わってしまったあとの世界で』。実に素晴らしい青春恋愛SF小説なのだが、アマゾンレビューが☆2つという低評価のせいか全く評判にならなかったのだとか。曰く、全部あいつのせい(笑)
アマレビューの影響力は意外に侮れないのだが、読書会をやるとよくわかるように本の面白さって人によって全然感じ方が違う。難しいのだ。それが証拠に、私も杉江さんと同じくウィリアム・K・クルーガーの『ありふれた祈り』 は、もんのすご〜〜〜く良いと思ったけど、横浜読書会ではボロカスだったのよ…(苦笑)
ニック・ハーカウェイの新刊も6月にでるというし、これもGWにでも読んでみようかな。

しかし昨年はなんといってもその女アレックス』 の大躍進で、フレンチミステリが盛り返した年でもあった。(今年も『悪意の波紋』がとてもいい)
ところで、日本で馬鹿受けした『その女、アレックス』、ドイツではどういう風思われてるの?!ドイツ人翻訳家のマライ・メントラインさんがドイツのアマゾンレビューを元に分析してくれた。
ドイツ語版のタイトルは『私があなたが死ぬのをみたい』という意味で、割といい出版社から出ており、ルメートル自体も割と読まれている作家なのだそうだ。
ただ、本書のレビューは平均☆三つ、コメントは「淡々としていて研究所を読んでいるみたいで味気ない」「感情移入できない」「描写が説明っぽい」など、かなり冷ややか。
これは、神視点というのにドイツ人が慣れていないというのと、ドイツ人は頭が堅い人が多くウィットが汲み取れなかったのではないかということらしい。
翻訳の善し悪しもあるだろうけど、お国柄によっても反応は様々だということだ。
 


そして、本日のメインイベント、
翻訳ミステリー大賞リアルタイム開票&授賞式!
最終候補作は、『ゴーストマン 時限紙幣』ロジャー・ホッブス/田口俊樹/文藝春秋社、『その女アレックス』 ピエール・ルメートル/橘明美/文春文庫、『秘密 』ケイト・モートン/青木純子/東京創元社、『もう年はとれない』 ダニエル・フリードマン/野口百合子/創元推理文庫、『容疑者 』ロバート・クレイス/高橋恭美子/創元推理文庫 の5作品。

今年は接戦で、最後の1票までわからなかったのだけど、大賞は…
じゃ〜ん、ケイト・モートンの『秘密』!
   IMG_1331.jpg
翻訳の青木純子さんは、『忘れられた花園』でも受賞経験アリ。なんとV2達成!
おめでとうございます!
わずか2票差で及ばなかったのは『もう年はとれない』
残念、惜しかった。でも、全国のバック・シャッツ ファンの皆さん、続編は8月刊行らしいですよ!


そして、そして、なんと読者賞も『秘密 』が獲得!
ダブル受賞、おめでとうございます〜〜〜〜!!!

   IMG_1369.jpg

2015042500.png← ※クリックで拡大します。
毎年票が割れまくる読者賞の10位以下はこんな感じに。
しかし、ケイト・モートン強いな。実は私、『秘密』だけ読んでないんだけど…読むべきなの?翻訳ミステリ大賞もそうだったけど、女性票をしっかり集めたんだろうなぁ。

私が票を投じたのは、『ハリ・クバ』『火星の人』 窓際のスパイの三冊。
ええ、ものの見事にトップ3を外しております。
あら〜、『窓際のスパイ』にいたっては35位か〜。
超オモシロいスパイ小説なのに。
続編もCWAなのに…。






続いては、出版社対抗ビブリオバトル!
出場したのは、文藝春秋、集英社、小学館、東京創元の編集者の方々。
あのシャイニングの続編、S.キングの『ドクター・スリープ』、
ドイツの新鋭作家の歴史ミステリ『ゲルマニア』、 
北欧のサイコサスペンスの女王が描く『バタフライ・エフェクト』
マカヴィティ賞最優秀長篇賞受賞の女性探偵小説『探偵は壊れた街で』 と魅力的な作品がズラリ。
※早川の方は仕事の都合で欠席となり、代わりに杉江さんが紹介してくださった。なのでバトルには含まれず。
  2015042502.png2015042501.png
2015042505.png2015042504.png2015042503.png

白熱のビブリオバトルを制したのは…

集英社の『ゲルマニア』!
おめでとうございます!賞状の贈呈は田口俊樹さんから。
   IMG_1410.jpg

みんな、ナチもの好きだなぁ。
私が気になったのは、『探偵は壊れた街で』とニック・ハーカウェイの『エンジェルメイカー』かな。
キングは私はどうせ自動的に購入するので。
『エンジェルメイカー』は、なんでも"レンガ並みの厚さ"のポケミスなんだそうだけど、えーと、それって、おいくら万円になるので???(恐)




休憩を挟んで、翻訳ミステリーにかかる小部屋企画へ。

この日の企画は、「フランス・ミステリの小部屋」「ネオ・ハードボイルド作家・探偵の月旦」「マライがいく!世界ミステリ見聞録」の三つ。

私は、「ネオ・ハードボイルド部屋」へ行ったのだが、これが超超ディープなレクチャーで(笑)
ネオ・ハードボイルドとは、ハメット、チャンドラー、マクドナルドの御三家ではない系譜のハード・ボイルド、つまりマイク・ハマーを生み出したミッキー・スピレインの系譜のことなんだそう。
これについては非常に長くなるので、今日のところは割愛させていただこうかな。すでにかなり長いし。

   IMG_1441.jpg
そのネオ・ハードボイルドの系譜に連なるローレンス・ブロックの『獣たちの墓』 を原作にした映画『誘拐の掟』は5月30日公開だそうです。
珍しくジャンケンに勝って、田口俊樹さんからのプレゼント本をゲット!
ありがとうございました〜!




秘密 上
秘密 下
ケイト・モートン (著), 青木 純子 (翻訳)
東京創元社 (2013/12/21)

Kindle版はこちら→
秘密 上
秘密 下








ハリー・クバート事件 上
ハリー・クバート事件 下
ジョエル・ディケール (著), 橘 明美 (翻訳)
東京創元社 (2014/7/30)

Kindle版はこちら→ 
ハリー・クバート事件(上下合本版)
ハリー・クバート事件 上
ハリー・クバート事件 下







その女アレックス (文春文庫)


ピエール ルメートル (著), 橘 明美 (翻訳)
文藝春秋 (2014/9/2)


Kindle版はこちら → その女アレックス (文春文庫)







世界が終わってしまったあとの世界で(上) (ハヤカワ文庫NV)
世界が終わってしまったあとの世界で(下) (ハヤカワ文庫NV)
ニック・ハーカウェイ (著), 黒原 敏行 (翻訳)
早川書房 (2014/4/24)

Kindle版はこちら→ 
世界が終わってしまったあとの世界で(上)
世界が終わってしまったあとの世界で(下)







窓際のスパイ (ハヤカワ文庫NV)

ミック・ヘロン (著), 田村 義進 (翻訳)
早川書房 (2014/10/10)

Kindle版はこちら→ 窓際のスパイ











 
関連記事

category: 旅行&行ってきた他

thread: 本に関すること - janre: 本・雑誌

tag: 海外ミステリ   
2015/04/27 Mon. 17:42 [edit]   TB: 0 | CM: 2

go page top

悪意の波紋 / エルヴェ コメール  

遅ればせながら噂の"大塚家具大感謝祭"に行ってきた。母が"久美子セット"が欲しい(自分の分だけ!)というので一緒に見にいったのだが、そんなのもうあるわけもない。
しかし、久美子効果は抜群だ。数年前行ったときは、ひっそり静まり返っていたショールームにも活気がある。それもこれも、会長の私物扱いが過ぎたのと、株主総会でママンがシャシャリ出てとどめを刺したせいか。
冷やかしで入れるくらいのお店のほうが、絶対いいと思う。個人的にはインテリア雑貨も、イケアやニトリとは違うイイモノ路線で展開してくれたら嬉しいな。

ripple.jpgさて、大塚家具ではないが、些細なことがきっかけで、その後の運命が大きく変わってしまうこともある。本書はそういう「因果」というか「バタフライ効果」について考えさせられるお話。
そして、うわぁ〜!のどんでん返しのおまけ付き。
横浜読書会のダイスケさんにお借りした本なのだが、さすがのチョイス!
昨年の『その女アレックス 』に続き、フレンチ来てるよなぁ!
コレ、私の今年のベスト10に入ると思うわ。


物語は二人の男の群像劇のような形で始まる。
引退した元ギャングのジャックは40年前、高校時代の仲間5人でマイアミのギャング、コルターノから、まんまと100万ドル奪うことに成功した。妄想癖のある凶暴なロマのパコ、毛皮職人の息子で派手好みなオスカル、家業を継いだところで苦労するしかないアルベール、車を盗むことにかけては誰にも負けないジャックの弟ジャン。時は1971年、シナトラの引退コンサートの日のことだ。
大金を手にフランスに帰国した彼らだが、金を奪った相手がコルターノと知り、以降復讐に怯えることになってしまう。何がきっかけになるかわからない。彼らは互いに距離をおいて暮らすことになった。強奪劇で運命は変わったのだ。
時は流れ、郊外の家で静かに暮らしていたジャックだったが、ある日の朝、彼の玄関に不吉なものが届く。それは赤鉛筆で丸がつけられている5人の古い写真だった。
他方、イヴァン青年は、失恋で傷心状態。しかし、元カノのガエルはTVのリアリティ番組のチャレンジャーに。視聴者の人気投票で毎週生放送中に出場者が脱落していくというヤツだ。腰をふって歩く彼女を見るのさえ辛いのに、彼女は番組内で生き残るため、馬鹿な元カレからのラブレターを面白おかしく吹聴する。その馬鹿な元カレとは、当然イヴァンのことだ。ガエルはラブレターの束は実家にあるから、そのうち送ってもらって皆で楽しもうと言い出す始末。イヴァンは卒倒しそうになる。ラブレターを取り返そうと、ブルターニュの彼女の実家に向かうのだが…

hervé-commère二人の物語はそれぞれ一人称で交互に語られていく。
当初、その二つの物語には全く関連がなく、群像劇かのように見えるのだが、豈図らんや。
二つの物語はまさに”偶然によって"交差することになる。
そして、それを機にイヴァンの運命は大きく翻弄されていく。しかし、その"偶然”には黒幕がいたのだ…!

一件落着したと思われることの真相が明らかになることで、さらなる驚きがもたらされる様は圧巻。"偶然”というものを扱ったこれまでにないミステリである。解説者も指摘するように"偶然”とは神の領域だ。それを材料にミステリを組み立てるなど、もうこの作者ただ者じゃない。

「バタフライ効果」という言葉があるが、これは、気象学者のエドワード・ローレンツが1972年にアメリカ科学振興協会で行った講演のタイトル「予測可能性:ブラジルで1匹の蝶がはばたくとテキサスで竜巻が起こるか?」に由来しているという。その意味するところは力学系の状態にわずかな変化を与えると、そのわずかな変化が無かった場合とはその後の系の状態が大きく異なってしまうという現象である。

この言葉が示す通り、全ての"偶然”には原因という黒幕が存在する。イヴァンの不幸な出来事にも黒幕がおり、その謎を解くことが本書の見せ場にもなっているのだが、一方で、黒幕の一方的な”悪意”だけでイヴァンの"結果"はもたらされたわけでもないのがミソ。黒幕は必ずしも「犯人」ではないのだ。実はそれほどの影響力はなかったりもする。そこがこの本の不思議なところで、ちょっと意外なのだが仏教的なのだ。
釈迦は、直接的要因(因)と間接的要因(縁)の両方がそろった(因縁和合)ときに結果はもたらされると説き、現実はすべての事象が相依相関して成立していると言っているが、それを思い出させる。


naoさん、これ面白いですよ!



悪意の波紋 (集英社文庫)

エルヴェ コメール (著), 山口 羊子 (翻訳)
集英社 (2015/3/20)







関連記事

category: ミステリ/エンタメ(海外)

thread: 最近読んだ本 - janre: 本・雑誌

tag: 海外ミステリ  フレンチミステリ   
2015/04/23 Thu. 19:01 [edit]   TB: 0 | CM: 2

go page top

億男 / 川村元気 

昨夜ですね、オットが内階段でコケて、どうやら捻挫したらしいのです。
それもこれも、6年もスポーツクラブの幽霊会員をしているため、体重管理がなっとらんからですわ。
仕方なく付き添いで整形外科に行ってきたのだが、月曜のしかも整形外科となれば、そりゃジジババで混み混みさ。まぁ待たされるだろうということで、DLしたのがこの『億男』なのである。なんでもこの間決まった本屋大賞のノミネート作品だとか。(大賞受賞は上橋 菜穂子『鹿の王』

本書は、宝くじで3億当たった男が、どうしよう、どうしようオロオロ、という本で、お金ってつまるところ何なんだ〜ということを描いたエンタメ小説。
ちなみに、2時間待ちの3分診療だったオットの足は、やはり単なる捻挫とのこと。湿布だけもらってそのままカイシャにいきました。

お金に関する本で最近読んだのは『21世紀の貨幣論』だが、あれがフルコースならば、本書はファストフード。Kindleなのでボリュームが掴みにくいが、はやい人でだいたい2〜3時間で読める。個人的には、もし時間があるのなら、やはりフルコースのほうがいいと思うな。

なんでも雑誌BRUTUSに連載されていたらしいのだが、ブルータスってまだあったんだ(←失礼!)
ブルータスなので、マガジンハウスなので、テイストはいかにもそういう感じです。


主人公は一男という男である。
昼間は図書館で司書として働き、夜は夜とてパン工場でパンを丸めている。百貨店に勤める妻と9歳になる娘がいるが、家族とは別居。今はパン工場の寮に独り住まいをしている。
そもそもの別居の原因は、一男の弟が3,000万の借金を残して失踪してしまったからだった。両親には経済的な余裕がなかったため、一男が肩代わりをすることになったのだ。妻も妻の両親も援助するといってくれたが、自分で返そうと心に決めていた。しかし、次第に妻とは口論が絶えなくなり、ついには娘をつれて家を出て行ってしまった。つまり、一男の今の状態の原因は"お金”にあった。
fukuzawayukichi.jpgところが、偶然商店街の福引きで貰った宝くじが当選していたのだ。しかも3億円という大金だ。
「うまくお金を使うことは、それを稼ぐのと同じくらい難しい」というビル・ゲイツの言葉を証明するかのように、ネットには高額当選者の悲劇が溢れていた。
銀行もその3億が一男にもたらすであろう不幸についてさんざん警告する。たくさんの人がお金によって不幸になっているという現実がそこにはあった。
一男はそれにとまどい、かつての親友にして今は億万長者の九十九に連絡をする。15年ぶりのことだった。あることがきっかけで、一男と九十九は疎遠になっていたのだが、一男にとって親友と呼べるのは九十九しかいなかった。九十九は今、億万長者だ。お金と幸せの答えを教えてくれるのは、九十九をおいて他にはいない。
しかし、九十九は一男の3億を持ったまま失踪してしまうのだった…。

えっとですね、私の感想は、一男はオロオロしてないでまず借金返そうよ?ということである。日々利息つくでしょ…。
そもそも弟の負債を兄が負う義務はない。勘違いしている人は多いんだろうけど、例えば兄ば亡くなった場合の相続は、当然のことながら兄の妻子、その妻子がいなければ親、親も鬼籍に入っていれば、ようやく弟に順番がまわってくる。法的には兄弟姉妹ってそういう扱い。
それに、なんの担保も財産もない人間に大金を貸してくれるほど世の中は甘くない。なので、駄目な弟の借金というのもリアリティ乏しくないだろうか。こういう設定は、よくドラマとかでもでてくるけど、そもそも担保でもなければ銀行や消費者金融はそんな大金は貸さない。ビジネスでだって、信用のない個人との取引なら、100万単位だって現金取引を要求されるのじゃないのかな。

主人公を金銭的な窮地に立たせるためなのだろうが、安直設定はちょっとラノベちっく。
一男自身も優柔不断だし、家庭を壊してまでして借金を肩代わりしたりする愚直な性格なのだが、これまた一男の妻も類をみないほどお金に欲のない人なのである。このあたりがどうもやはりリアリティがない夢の世界の人々というかなんというか。現実味がいまひとつ。
妻が、弟の負債を夫が背負うことに了解したのも不思議だし、お金を得た夫から、やり直さないかといわれて断るというのも、なんだか立派すぎる気がした。「問題はお金じゃないから」という人はそうはいないと思うんだけど。DVとかじゃないかぎり。
いっそラノベかゲームストーリーだと思って読んだほうがいいのかも。

ただ、所々差し挟まれる著名人のお金に関する金言はとても興味深かった。トルストイ、ビル・ゲイツ、チャップリン,etc,etc こうした金言や、一万円冊のリアルな大きさや重さなどをちゃんと調べてあるのも感心した。
お金のことを知らずにお金に好かれたいと思うな、という九十九のセリフに、「おおう、その通り」と納得してしまった。

九十九にお金を持ち逃げされた一男は、その行方を追ってかつての九十九の同僚を訪ね歩く。その3人はかつて九十九とともに会社を立ち上げたメンバーであり、その会社の成功と買収で今では九十九同様億万長者なのだ。
彼らのそれぞれのお金に対するスタンスは面白い。お金から自由になったと思っているが、逆に絡めとられている十和子。百瀬は常にアドレナリンを求め、賭けを続けている。お金を持ってるということの恐怖とたたかうためだろう。また、千住はお金というものの実体のなさに取り憑かれている。
彼らに共通しているのは、形こそ違えど、皆、お金を恐れているということだろうか。
「お金と幸せの答え」について最後に一男がたどり着いたのは、あなたの予想通り。常識的ではあるが、使い古されているものだった。ありきたりでさえある。
だが、これよりも良い答えは見つからないのかもしれないなとも思った。

さて、さて、あなたにとってのお金と幸せの答えとは?
私? 私はね、何を隠そう、6億の使い道を常に妄想している人間なので…。

億男

単行本 – 2014/10/15
川村 元気 (著)

Kindle版はこちら→ 億男






******************************************
『ミステリクッキング』は、引き続き募集してますので、是非是非!


※4月27日をもちまして、締め切らせていただきました!



関連記事

category: ミステリ/エンタメ(国内)

thread: 最近読んだ本 - janre: 本・雑誌

tag: 本屋大賞     
2015/04/20 Mon. 17:23 [edit]   TB: 0 | CM: 2

go page top

*告知* ミステリクッキングしませんか? 

DSC2015041701.jpg

※画像はイメージです。


********横浜読書会スピンオフGW特別企画のご案内********

横浜読書会ではGW特別企画として、お料理会を企画しています。
私たちと一緒に、翻訳ミステリにちなんだお料理を作りませんか?
お料理なんてできないし・・・という方も大丈夫。皆そうですから!(笑)
失敗したらしたで、それもまた良し。
男性の方も大歓迎ですよ〜!

定員は16名ですが、現時点での残席は2です。
早いもの勝ち!


【開催日】 
5月2日(土曜日) 10時30分~16時00くらい

【テーマ】
ミステリ作品に登場するお料理を実際に作って、食べて、お話しよう!

【メニュー】
4名4グループで、以下のランチコースを作る予定。割とガッツリです。

①ピリ辛レモンの詰め物 〜『シャーロック・ホームズとお食事を―ベイカー街クックブック』より
②ロッシのサラダ 〜『料理長が多すぎる』より
③スウェーデン風ミートボール 〜映画『ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女 』より
④チーズケーキ
※ これにパン、ソフトドリンク、紅茶がつきます。


①と②は、http://mystery.co.jp/gourmet/#coady_prof のミス・コーディのレシピ
③は、こんなかんじ → http://spenth.blog111.fc2.com/blog-entry-455.html
④のチーズケーキは、誰でもできるクックパッドの人気レシピを使います。


※ 4月27日をもちまして、締め切らせていただきました!




IMG_1201.jpg※上の綺麗なケーキはイメージです。

上記のレシピでもなければ、私がつくったものでもない(笑)
私がつくるとですね・・・、
こんなふうな出来なもんで、絵にならないのよ。
ちなみに、焼きムラは私同様老朽化している我が家のオーブンさんのせいです。きっとそう…。







シャーロック・ホームズとお食事を―ベイカー街クックブック

ジュリア・カールスン ローゼンブラット 、フレドリック・H. ソネンシュミット 他 (著)








料理長が多すぎる (ハヤカワ・ミステリ文庫 35-1)

レックス・スタウト (著), 平井 イサク (翻訳)
早川書房 (1976/10/17)










ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女 (上) )
ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女 (下)

スティーグ・ラーソン (著),
ヘレンハルメ 美穂 (翻訳), 岩澤 雅利 (翻訳)

Kindle版はこちら→
ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女(上・下合本版)
関連記事

category: 料理

tag: 海外ミステリ 
2015/04/17 Fri. 16:14 [edit]   TB: 0 | CM: 4

go page top