Reading For Pleasure

読書日記、ときどき食日記

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当たった! 

カズオ・イシグロ『忘れられた巨人』刊行を記念して、6月にサイン会と講演会が開催される。後者は第19回ハヤカワ国際フォーラムのメインイベントで抽選だったんだけど、

なんと、なんと、当選したわ!

カズオ・イシグロさまの講演会が!!!!

IMG_1517.jpg


週末の紀伊国屋書店主催のサイン会にも当たったので、こっちは無理かなと諦めていたら、昨日ハガキが届いてた!ダブル当選!!!
私は全くといっていいほどくじ運のない人間なんだけど、珍しいこともあるもんだわ。
月曜の夜なので、比較的申し込んだ人も少なかったのかな?

全仏中なので、殆ど読書もできてないんだけど(笑)サイン会の週末までには『忘れられた巨人』も読まなくては。

後日、この講演のこともレポしますね。


さて、全仏オープンテニスは…心配をよそにナダル順調!!!
うわ〜〜〜んこっちも超ウレシイ!
前哨戦は散々だったけど、やっぱり全仏ナダルは違うわ。
徐々に調子もあがってきて、ナダルらしいショットも増えてきた。
あとはサーブがもうちょい良くなれば…

ところで、最近のナイキのデザイナーって…
nadal french2015
(※ナダルのウェアはナイキのナダル専用モデルです)

全身ブルーで、シューズの先だけ白いとことか…
”ドラえもん”かと思ったわ!!!

いっそポッケと鈴をつけてもいいのよ?
とにかく頑張れ!ナダえもん!!!!
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category: 旅行&行ってきた他

thread: 本に関すること - janre: 本・雑誌

2015/05/31 Sun. 02:22 [edit]   TB: 0 | CM: 0

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コカイン ゼロゼロゼロ 〜世界を支配する凶悪な欲望 / ロベルト サヴィアーノ 

今年の全仏は、優勝を予想できないほどランキングも調子も落しているナダル。
私も正直難しいだろうなぁと…

でも、でも、あのシャラポワがこんなことを言ってくれた。

「数試合に負けただけで疑問を投げかけるのは、(ラファに)失礼とも言えるんじゃないかしら。
彼は絶対的な王者で、再び達成するのは訳ないこと。
再び達成できるというモチベーションと、それを証明する力は目を見張るものがある。

うわ〜〜〜〜ん(泣)シャラポンありがとう!!!!感動した。
そうだそうだ。その通り!ネガティブにならず、応援するわ。
ナダルもシャラも連覇目指して頑張れ!


roberto_saviano.jpgと、全仏ネタはさておき、本書『コカイン ゼロゼロゼロ: 世界を支配する凶悪な欲望』本年度最もインパクトある本だった。

ノンフィクションではあるが、著者と対象物の間には距離がない。その視線は出来事を追いかける記者ではなく、自らの魂を追いかけているかのよう。
著者はノンフィクション・ノヴェルといって欲しいというが、なるほどノンフィクションというよりは、小説というほうがしっくりくるかもしれない。
ちょっと文学的ですらある。
だが、語られているのは全て実際に起こっていることなのである。

タイトルからも明らかなように、本書はコカインをめぐるマフィアのビジネス、暴力とその残酷性、マネーロンダリングを途轍もないスケールで描いたものだ。
コカインはわかった。
「じゃあ、ゼロゼロゼロって何なのさ」とお思いでしょう?
000とは最高品質の小麦のことである。イタリアでは、小麦粉の等級を0の数で表し、それが三つ連なる000は最高級品質を指すのだ。コカイン000は、ベビーパウダーのように細かく不純物のない最高品質のコカインを指している。
それだけではない。同時に、この「ゼロゼロゼロ」のゼロは、マネーの桁の直喩でもある。

ーーコカインほどの利益を生み出せる銘柄は、株式市場には存在しない。無謀な投資や先物取引、あるいは巨額の資本移動といったものですら、コカインにに匹敵するほどの価値の増加を生み出すことはできない。
コカインに投資すれば、巨大ホールディングスが数十年の投機と投資を経て達成する富を、数年で築くことができる。なんといってもゼロが1000になるのだから。コカイン以外のどんな経済の原動力であろうと、これほどの加速性はない。だからこそ、コカインの巨大市場では、残虐で暴力的な対立ばかりが顕在化する。ーー
cocain.jpg

そんなコカインをめぐる犯罪組織の暴力の凄まじさは、筆舌に尽くし難い。
冒頭語られるのは、メキシコのカルテルに潜入したDEA(アメリカ麻薬取締局)特別捜査官キキの物語だ。
コカインといえばコロンビアだが、当時コロンビアではライバル関係にあるカリ・カルテルとメデシン・カルテルが抗争を繰り広げており、そればかりか双方ともにFBIの買収に手こずったため、米国内への持ち込みにメキシコを経由させていた。メキシコのカルテルにとっては、国境越えのマリファナのルートをそのままコカインに流用すればよかった。
一斉摘発の後、キキの正体はカルテルにばれ誘拐されてしまう。この際の拷問の様子が凄まじい。鼻をへし折り、睾丸に導線を繋いで電気ショックを与える。頭にビスをねじ込み、焼けた鉄の棒を直腸に差し込む…etc。それらは全て幹部に報告するため録音され残されていた。後に裁判が行われたが、その際、この証拠テープを最後まで聞けた裁判官はいなかったという。
こうしたカルテルの残虐性は後にもたっぷりと語られているが、私にはこの部分だけでもう充分…。
だが、このキキの物語の要諦は暴力性ではないのだ。キキの誘拐はなんとメキシコ警察の関与によるものだった。そして、DEAとは協力関係にあるべきメキシコ政府すらも、何もせずただ事態を静観した。

コカインビジネスでは、他のどんなものを扱っても手に入らないほどの力を手中にできる。
麻薬捜査官は、よく金持ちには二つのタイプがいるという。金を数えるタイプと、金の目方を量るタイプ。コカインを牛耳る者たちにとって、金は数えるものではなく目方を量るものなのだ。

前述のような恐ろしいまでの暴力性とは無縁でいられても、我々とて知らずコカイン・ビジネスの影響を受け暮らしている。コカイン・マネーは世界の資本の奥深くにまで浸潤しているからだ。
今日、世界の金融権力の中枢、シティ・オブ・ロンドンやウォールストリートが沈没せずにいられるのは、ひとえにコカイン・マネーのおかげだとさえいう。
銀行が莫大な富を生み続けるためには、それに見合うだけの固形物、つまり現金が必要だ。誰かがその現金を供給しないかぎり、富を放出することはできない。現代の消費は、クレジットやリースによってその多くが貸し付けられているものだ。その分、システムはどこからか現金を調達してくる必要がある。
その巨万の富を現金で持っているのはいうまでもない、麻薬密売業者だ。もちろん、彼らだけではないが、金融システムが機能し続けるためには、彼らの金が重要であることは否定できない。
こうして、先進国に住まう我々はコカイン・マネーの上に築かれた楼閣に知らず暮らしているというわけだ。
他方、メキシコなどの途上国では、その途方もない金の力によって、政治家や官僚が買収され、買収された政治家や官僚の手によって、その金は銀行の保護下に置かれる。そして、銀行には汚れた金の流れを暴くための手立ても、関心すらも欠如している。

他にもカラブリアの犯罪組織「ンドンゲタ」やロシア・マフィア、ギニア人の運び屋、メキシコカルテルを仕切る女帝などなど、コカイン・ビジネスにかかる人々の物語が語られる。どの物語も、残虐性にあふれ悲劇的だ。
積み重ねられる幾つものストーリーは、読み手もそうであるが、著者自身をもがんじがらめにする。人間の欲望の深淵をあまりにも長く覗き込んだがために、自らも怪物と化してしまったと嘆くほどだ。
前著『死都ゴモラ---世界の裏側を支配する暗黒帝国 』で故郷ナポリの犯罪組織のことを書いたために、命を狙われるようになったという著者は、その痛みと憤りを吐露する。読み手は、あたかも私的な日記を覗き見しているかのような気分にさせられ、感情を揺さぶられる。

こうしたコカインをめぐる悲劇を終わらせるには、どうすべきなのか?
問題は、コカインの内在している破壊的なエネルギーだ。そして、それには代替がない。
逮捕しても逮捕しても所詮イタチごっこに過ぎない。唯一解決可能な方法は合法化することではないかとさえ、著者は考え思い悩む。しかし、文学に答えが明示されることがないのと同じく、その答えは見つからない。
だが一方で、こうした事実を多くの読者が知るという行為こそ、麻薬犯罪組織が最も恐れることだとも彼は考える。
読書はよく言われるように、「受け身」の行為などではない。読んで、感じ、学び、理解することは、「知る」ということは、現状を変える第一歩なのだと。自らが世の中でどうあるべきかを問うことは、決して受け身の行為などではないと。
本書を読みその内容を咀嚼して飲み込むのは、楽な作業ではないかもしれない。実際、読むに耐えないような場面もあるが、それでも、その価値は十二分にあると思う。

ま、本の力も、ナダルの力も信じようってことですわ(←無理くり)



コカイン ゼロゼロゼロ: 世界を支配する凶悪な欲望

ロベルト サヴィアーノ (著), 関口 英子 (翻訳), 中島 知子 (翻訳)
河出書房新社 (2015/1/24)









死都ゴモラ---世界の裏側を支配する暗黒帝国 (河出文庫)

ロベルト サヴィアーノ (著), 大久保 昭男 (翻訳)
河出書房新社 (2011/10/5)




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category: ノンフィクション・新書

thread: 最近読んだ本 - janre: 本・雑誌

tag: ノンフィクション  犯罪    麻薬 
2015/05/27 Wed. 19:03 [edit]   TB: 0 | CM: 0

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探偵は壊れた街で / サラ・グラン 

ちょっとバタバタしていたら、全仏オープンが始まってしまった〜!

しかし、さすがに今年はナダルの優勝はないな…。
らしくないミスも多いし、第一、フォアが武器になってないやんーーーーーーー!!!
全仏補正(ナダルは全仏だと異様に張り切る)を考慮しても、3回戦にいければラッキーといったとこかな。
試合をみるのが怖いわ…

 New Orleans
私の心もハリケーンだが、本書の舞台もそのハリケーンで壊滅的な被害を被った街ニューオリンズなのである。時は2007年の年の夏、まだ街は大洪水の傷痕も生々しい。
主人公は女探偵のクレア・デウィット。曰く、「この世で一番料金の高い探偵」だ。けれども、最も優れた探偵であることも自負している。
クレアは、"おじ”を探してほしいという男の依頼で、10年ぶりにニューオリンズの街に戻ってきた。この街は、クレアにとって探偵の師匠であるコンスタンス・ダーリングの思い出の場所だ。彼女はここで、探偵の何たるかをコンスタンスに仕込まれた。そのコンスタンス亡き後、クレアはニューオリンズを離れたのだった。
依頼人の"おじ”とは地方検事補のヴィク・ウィリングだった。彼は2年前の洪水の際に行方不明になったという。裕福な生まれで、親から相続した財産で検事補の給与以上の生活を送っていたが、彼を悪くいう者は見当たらない。「いいやつだった」と誰もが口を揃えていう。そして公平な法律家でもあった。
コンスタンス仕込みの独特な方法で、クレアはヴィク失踪の謎を追うのだが…。

sara gran翻訳ミステリ大賞コンベンションの出版社対抗ビブリオバトルで紹介されていた作品で、絶対読みたいと思っていた。
マカヴィティ賞最優秀長編賞にも輝いた、女探偵の物語である。
女探偵といえば、『女には向かない職業 』のコーデリアを思い浮かべるが、本書のクレアはコーデリアとは180℃違う。可愛げや健気さは皆無。コーデリアがお姫様ならば、クレアは魔女!なのだ。
本当は35歳なのにクライアントには42歳と逆にサバ読む。そして自分を曲げることはない。思い立てば、夜中の1時だろうと、クライアントに電話をかけて悪びれない。常識という言葉はクレアの辞書にはない。
師から受け継いだ捜査手法も独特で、「捜査」というよりは「占い」というほうがしっくりくる。お茶占いや易占い、そして時に幻覚剤をも用いて、自分の夢を占うことで謎を追いかける。
そんなクレアが片時も手放さないのは、ジャック・シレットというフランス人の書いた『探知』という本だ。そのシレットはコンスタンスのかつての師で、『探知』はクレアの探偵としての教科書であるとともに、人生の書でもある。
シャーロック・ホームズに始まる従来の探偵像とはあまりにかけ離れているので、好みは分かれるだろう。
もっと若い時分なら、私はクレアのような探偵は認めなかったかもしれない。だって全くもって科学的じゃないから。でも、ある程度トシを経た今ならば、夢占いであれ、易占いであれ、潜在意識でひっかかったことを健在化しようとしていることなのかもしれないなと思う事ができる。それはそれでひとつの手ではあるし、受け入れることもできる。多分にシャーマン的ではあるが…。
そんなクレアの姿は、なぜかこのニューオリンズの街にぴったりと嵌るのだ。全国で最高の殺人発生率と最低の有罪判決率を誇り、英国さながら人々は階級意識を快く受け入れる街。文字通りの「壊れた街」に。
ヴォク失踪の謎の真相は、割とありがちな結末。だが、クレア・デウィットという探偵登場のお披露目作品としては、まずまずなのではないか。
そのクレア自身に取り憑いている謎が尾を引く。
コンスタンスは誰になぜ殺害されたのか?そのコンスタンスのかつての師、シレットの娘はなぜ連れ去られたのか?クレアの親友はなぜ姿を消してしまったのか?etc,etc…
既に米国では第二弾が刊行されているという。それらは今後シリーズを通して物語の核となっていくのだろう。




探偵は壊れた街で (創元推理文庫)

サラ・グラン (著), 髙山 祥子 (翻訳)
東京創元社 (2015/4/13)



















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category: スパイ・冒険・ハードボイルド

thread: 最近読んだ本 - janre: 本・雑誌

tag: 海外ミステリ  ヒロイン  探偵 
2015/05/24 Sun. 19:25 [edit]   TB: 0 | CM: 4

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世界が終わってしまったあとの世界で / ニック・ハーカウェイ 

テレビをつければ橋下さんの政界引退の話題ばかり。
大阪都構想の住民投票は本当に僅差だった。二重行政の無駄をなくすという橋下さんの主張は、「大阪都なんてなんか違和感がある」などという反対派に比べれば、一考の余地があるものだと思うんだけどなぁ。
部外者が口を挟むことでもないが、結局のところ市民が負担し続けることになるのだろう。
ま、横浜市だって無駄は多そうではなるけれども…。

さて、ようやくのことでニック・ハーカウェイの『世界が終わってしまったあとの世界で』を読んだのである。
本当ならもっと早く読み終わるはずだったのだが、殊の外手間取ってしまった。
先のコンベンションで、杉江松恋さんが「アマゾンレビューは星一つ半と渋いけど、すばらしい作品!」とおっしゃっていたので、すごく期待していたのだ。が、私にとっては上巻が鬼門だった。
ハーカウェイさんは何やらキラキラしてるけども、疲れているときにはオススメしないわ。
Nick_harkaway.jpg

あらすじ自体は割とシンプル。
舞台は"逝ってよし戦争(go away war)”によって、破滅してしまった後の世界。
主人公の"ぼく”は、親友のゴンゾー・ルビッチらとともに、残された<可住ゾーン>で暮らしていた。その区域の外は、<非=現実>といわれる世界だ。<可住ゾーン>の周囲には、ジョーグマンド社によって<パイプ>がめぐらされ、それによって<可住ゾーン>は、人が住めるよう安全が保たれていた。
ところが、その<パイプ>が大火災に見舞われてしまう。事態は深刻だった。<パイプ>にFOXという謎の物質をの送り出す基地もが火事となっていたのだ。ジョーグマンド社からきた者の話では、FOXがガソリンのように燃えると、世界に焼けこげの穴が空いてしまうのだという。
この地域の運送を担い、危険物質に緊急に対応するための「エクスムア州運送&危険物質緊急民間自由会社」に勤める"ぼく”とゴンゾーは世界を救うべく出発するのだが…。

繰り返しになるが、筋自体はシンプルなのだ。問題は、語り手の"ぼく”にある。
"ぼく”が、無駄に思えるほどなんでもかんでも饒舌に語りまくるものだから収拾がつかないのだ。
訳者がいうように「いまの長〜い話、いらんやん!」と言いたくもなるのも無理はない(笑)

しかし、同士モウモウよ、
"ぼく”がこのように、いささか混乱をきたしており、何かにつけて無駄話をする饒舌キャラなのには、ちゃんとした理由があるのだ。それには、上巻でたっぷりと"ぼく”の無駄話を聞いた上で、下巻に入ってある"転機"を待たなければならない。

冒頭の、橋下さんがなんとかしようとした二重行政は全く無駄だと思うが、少なくとも、"ぼく”の無駄話は、割とそれなりには面白くはある。それにあながち無駄でもない重要なものもある。
あっちへ飛びこっちへ飛びのおばちゃんの無駄話のような"ぼく”の物語が放つ徒労感も、人間辛抱していれば、次第に慣れてくるものだ。
そんな頃にようやく物語上の大転機はやってきて、「おお〜〜!!!」となる。ここからグッと物語は面白くなるのだ。
なぜ、"ぼく”が語るのは、親友のゴンゾーのことばかりだったのか…etc,etc
それらの不思議の何もかもが、腑に落ちるはずなのである。
そして、ここからの展開は意外や意外、「人間らしさとは?」という哲学的な問いに発展していったりもする。

だから、上巻で挫折してしまった人と、通読した人とでは評価はガラっと割れるのではないかとも思うのだ。上巻冒頭で「ううぅ〜〜〜この馬鹿無駄話、もう駄目だ〜〜〜!」と思っても頑張って読むべし!ウー老子じゃないけど、何らかの秘技が得られたりするかも?
(ちなみにウー老子というのは"ぼく”の拳法のお師匠さんで、他にもこの小説にはニンジャやらパントマイミストやらわけのわからないものがジャンジャカ出てくる。)


また、著者のニック・ハーカウェイはいわずもがな、あのジョン・ル・カレの息子である。
だが、ジョー・ヒル作品からどことなくS.キングを連想するようには、ル・カレとハーカウェイは似ていない。というか、全然似てない。顔は似てるけど、ハーカウェイにル・カレの重厚さは全くない。いかにもお坊ちゃんらしく、ハッちゃけているし、もっと言えば爆発してもいる。
でも、文体こそ違うが、ワンセンテンスが持つ含みは二人とも殊の外多く、それがゆえに読者に頭を使わせる。
そしてあんなにサブカル的に軽いノリで描かれているのに、なぜかル・カレの世界同様にモノクロームだったりもするのだ。個人的な印象だけども「終わってしまった世界」だからなのか、私には鮮明な色のイメージはなかった。
6月刊行予定の『エンジェルメイカー』は、ミステリーだそうでこちらも楽しみ。
ただ、ポケミス史上もっとも厚いともいわれているから、あまり高くないといいなぁ…






世界が終わってしまったあとの世界で(上)
世界が終わってしまったあとの世界で(下)
ニック・ハーカウェイ (著), 黒原 敏行 (翻訳) 
早川書房 (2014/4/24)

Kindle版はこちらから
世界が終わってしまったあとの世界で(上)
世界が終わってしまったあとの世界で(下)














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category: SF ファンタジー

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tag: 早川書房  英国  SF 
2015/05/19 Tue. 18:36 [edit]   TB: 0 | CM: 2

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ザ・ドロップ / デニス・ルヘイン 

九州へ旅行に行っており、台風とともに戻ってきた(笑)
昨夜は横浜も大雨だったが、今日は気持ちのいい晴天!そして暑い…まだ5月なんだけど。
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旅行は母と妹との三人で行ったのだが、これが疲れたのなんのって…。ただ、奮発して良い宿にしたのは大正解!
というのも、非難されることを承知で白状すれば、私は自分の母親がとてもとてもとても苦手なのだ(とてもは三回言った!)愛情深い母で長所もたくさんあるのだが、冗談やウィットの類いを一切解さないので、会話は常に噛み合わない。絶望的にソリが合わないのだ。冗談抜きに一緒にいるのは半日が限度で、だから20代30代の頃は、余程のことがないかぎり、実家には寄り着かなかった。
他人ならば距離をおけば済むが、親子となるとそうもいかない。ましてや母もいい齢ともなれば、ね。
就中やっかいなのが、母はこんなにソリも趣味も合わない私のことが大好きだと公言して憚らないことである。そして、のべつ幕無し話しかけてくるのだが、前述の通り会話は噛み合わないため、こちらとしては苦行としか言いようがない。
妹はさすがは次女で、逃げることに長けている。(ちなみに父もうまい。)必然的に、今では時間に余裕のある私が生贄になるというわけで。
こういうことを口にすると眉を顰める方もいるだろうが、私だってできることなら眉を顰める側に回りたかったわ。
本書も、何度となく邪魔されたし、挙げ句イオン株の売り時まで逃してしまった!

どうでもいいことを長々と書いてしまった。愚痴ってしまってごめんなさい。
だが、私自身のことを鑑みても、最悪のことというものは案外ありふれているものだ。世はままならない。シチュエーションこそ違うが、本書のテーマもそれである。
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さて本書の主人公は、ボストンの裏町に生きるバーテンダーのボブ・サギノウスキ。彼は"カズン・マーヴの店"で働いているが、マーヴはその名の通りボブの本当のいとこだ。正確には、もはや"カズン・マーヴの店”のオーナーはマーヴではなく、チェチェン人の手に渡ってしまっている。
ボブの目印は孤独だった。望んでいるのは、ただ、ひとりでいたくないということだけだったが、それが叶えられないのはわかっている。彼は敬虔なカソリックで、毎週欠かさず教会に通っているものの、聖体を受けとったことはない。昔から。それを気にかけている神父は、「大罪を犯している場合に聖体を受けなければ、聖なるものを穢したことで被る禍いよりはるかに恐ろしい目にあうのだ」と説得するが、頑として受けようとしないのだった。
そんなボブはクリスマスの二日後の冷え冷えとした夜に、一匹の子犬を拾う。その犬は、仕事の帰り道に通りかかった歩道横のゴミ箱に捨てられていた。死にかけていた子犬を胸に抱いたそのとき、近くのアパートに住むナディアが声をかけてきたのだった。ナディアは、小柄で、あばたで美しさは損なわれ、喉元には赤黒いミミズ腫れがあった。彼女によると、犬は闘犬(ピットブル)で引き取り手は少ないだろうということだった。彼女の笑みは酔ったピエロを思わせ、犬は飼うにやっかいだとされるピットブルだったが、それでも彼女と子犬はボブにとってまぎれもなく天で配られる聖体だったのだ。彼は幸福だった。
そんな折り、マーヴの店に強盗が押し入り、売上金が奪われる。それはチェチェン人の金だ。チェチェン人は激怒し、ボブとマーヴに犯人を見つけ金を取り戻すよう脅す。
やがて、年間で最も多額の金が賭けられるスーパーボウル・サンデーが近づいてくるのだが…。
Communion.jpgルヘインという作家のこの湿り気を帯びた暗さはどこからくるのだろう?といつも思う。
作家としてはこの上ないスタートを切り、以降第一線で活躍しつづけている成功者であるのに。
だが、本書に描かれているように、誰にでも陰はあるものだし、悪いことや悪いものというのは、退屈なくらいこの世にありふれているものだ。
そんな暗さが、自分の心境にマッチした。実際、読んでいた時分の湯布院は、曇り空ばかりだったことも作用したのかもしれない。
それとも、私ももしかしたらボブ同様「黒い羊」であるからなのだろうか(笑)

子犬を拾って、ナディアと知り合ったことで、自分の孤独の殻が破れたような気分になるボブの気持にもとても共感を覚えてしまった。
物語が進行するに連れ、なぜにボブが頑に聖体を受け取らないのかが明らかにされる。それは大方の想像の通りなのであるが、あまりにもボブに同化してしまうあまりに、それがいけないことなのかさえ揺らいでくる。
こうした複雑な人物造型は、ルヘインならではで、相変わらず巧いんだな。これが…。その奥行きと深さが違う。
訳者も指摘するように、コンパクトながらルヘインらしさというものを存分に味わえる作品に仕上がっていると思う。ただ、ルヘイン作品は非常に文学的に過ぎるきらいがあり好みが割れるだろうが、だからこそルヘインという作家は別格なのである。
本書には、ボブに限らずドロップ(堕落)した人間が多数登場する。聖体を受け取らないボブを怪しむ刑事もその一人なのだが、彼にルヘインはこう言わせているのだ「罪を犯すことがポイントなのではない。生まれつき堕落していることを受け入れ、人生でそれを償おうとしているかどうかだ。」
感慨深い言葉である。

訳者によれば、本書は元々短編だったものが映画化(トム・ハーディ主演)されることになり、その脚本を長篇に仕上げた作品なのだという。犬がかわいい!スタフォードシャー・テリアかな?
映画のほうは、残念ながら日本公開は未定とのことだが、ルヘイン ファンには嬉しいニュースも飛び込んできた。
『運命の日』『夜に生きる』に続くコングリン三部作の掉尾を飾る『World Gone By』が近々発売になるというのだ。次もまたジョーの物語だというが、訳者をして「しばらくの間、この小説のことしか考えられなかった」というほど。今年のベストはこれが濃厚?

ザ・ドロップ (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

デニス・ルヘイン (著), 加賀山 卓朗 (翻訳)
早川書房 (2015/3/6)

Kindle版はこちら→ ザ・ドロップ









運命の日(上)〔ハヤカワ・ミステリ文庫〕
運命の日(下)〔ハヤカワ・ミステリ文庫〕


デニス・ルヘイン (著), 加賀山 卓朗 (翻訳)
早川書房 (2012/3/5)







夜に生きる 〔ハヤカワ・ミステリ1869〕 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

デニス・ルヘイン (著), 加賀山 卓朗 (翻訳)
早川書房 (2013/3/8)

Kindle版はこちら→ 夜に生きる


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category: ミステリ/エンタメ(海外)

thread: 最近読んだ本 - janre: 本・雑誌

tag: 海外ミステリ  早川書房  映画化 
2015/05/13 Wed. 19:32 [edit]   TB: 0 | CM: 4

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