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読書日記、ときどき食日記

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サトリ / ドン・ウィンズロウ 

あ~~~~、またウィンズロウにやられた!
早川書房も自信たっぷり、帯にまで翻訳権独占と印刷しているが、そんなこと、わかってるから…

『シブミ』 ではヘルは既に50代。暗殺者の中の暗殺者として様々な仕事をこなし、バスク地方にある館で隠遁に近い生活を送っているという設定だった。本書、『サトリ』はその前日譚であり、若き日のヘルの活躍を描いたものだ。

亡命ロシア貴族のの私生児として誕生したヘルは、岸川将軍を父親代わりに幼少期を上海で過ごし、母親が亡くなった後は日本でシブミの精神を学ぶ。日本が戦争に負けると、岸川将軍はA級戦犯として裁かれることになったのだが、ヘルは恩師を屈辱から救うために裸殺の技を用いる。この最初の殺人によってヘルは独房に収監されるのだが、CIAから釈放と引き換えに、ある人物の暗殺という取引きを持ちかけられるのだった。
中国はソ連との連携を深めているものの、アメリカはこの二国間に楔を打ち込む必要があり、ある人物を暗殺して互いに反目させようと企んでいた。その人物とは、KGBの幹部ヴォロシェーニンで、彼はヘルの母親と因縁浅からぬ人物だったのだ。
CIAの取引を引き受けたヘルは、フランスの武器商人を装うために、完全なフランス人になる訓練を受け、暗殺の準備をするのだが…

可能ならば先に「シブミ」を読んでからのほうがいいと思うが、本書のみでも充分楽しめると思う。
ウィンズロウは後書きで、「二代目トレヴェニアンになるなどそれは無理。誰にもなれやしない。彼は独創的な作家で、真似しようとする者は一流コメディアンの芸風を下手くそになぞる三流芸人にみえるのがおちだろう」と語っている。
賢いウィンズロウは、敢えて二代目トレヴェニアンを目指したりはせず、あくまでウィンズロウの「サトリ」として描いていると思う。
だから、ウィンズロウが仕立てた「サトリ」という概念は、本書においてはスパイス的な役割にすぎないのだ。本書の醍醐味は、アクション活劇にある。ウィンズロウはこのニコライ・ヘルという希代のヒーローを、ロマンスあり、陰謀、策略ありの完璧なスパイアクション小説の主人公として蘇らせたのだ。

惜しむらくは、「シブミ」でも登場した情報屋ノームが本書にも登場しているのだが、その口癖は、ル・カゴのものなのだ。ただ、モーリス・ド・ラルドの弱強五歩格の無韻詩のような台詞回しはよくできていたと思う。


サトリ(上) (ハヤカワ・ノヴェルズ)サトリ(上) (ハヤカワ・ノヴェルズ)
(2011/04/21)
ドン・ウィンズロウ

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サトリ(下) (ハヤカワ・ノヴェルズ)サトリ(下) (ハヤカワ・ノヴェルズ)
(2011/04/21)
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category: スパイ・冒険・ハードボイルド

thread: 最近読んだ本 - janre: 本・雑誌

tag: 早川書房  海外ミステリ  このミス  ウィンズロウ 
2011/06/13 Mon. 17:10 [edit]   TB: 0 | CM: 2

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この記事に対するコメント

Re: 納涼ミス

naoさん、こんばんは。

納涼ミス!
いいですね~。

> こちらはこの後「黄昏に眠る秋」が控えているので、
> 読めるのは今月下旬になりましょうか・・。

私もあと何冊か読んだら、納涼ミスに戻りましょうぞ。
首都圏の夏は計画停電も予定されていることだし、涼をとらねば...。

「ワイルドソウル」を読まれているということは、「夜の真義を」が終わったのですね?
こってり系との評判ですが(文春書評)いかがでしたでしょうか?

「ワイルドソウル」の前半は、私は入植者とともに恥辱にまみれ泥地を這いずり回っているような気分でした。
後半は、”溶解”しますよ!
あわせて、ラティーノラティーノを読まれるとなお楽しめるかも。ラティーノはwebでタダで読めます。

どうしてでしょう? #- | URL | 2011/06/13 Mon. 20:17 * edit *

今年の夏は納涼ミス(北欧系ミス)で大丈夫?


おお・・「このミス」ランクイン決定!・・でありますか。
早く「シブミ」そして「サトリ」へと向かいたいところですが、
こちらはこの後「黄昏に眠る秋」が控えているので、
読めるのは今月下旬になりましょうか・・。

それよりも今読んでる本・・これもSpenth@さんが激賞されていたために、
興味もって(今日から)読んでいるのですが・・「ワイルド・ソウル」(!)。
部厚い上下巻ながら、明後日には読了の予感。
先のコメントの折、前半は読むのがシンドイというようなコト記されてありましたが、
いやいや、どこにそんなスピードの停滞を許すトコありましょう・・
気がついたら、上巻の半分ほど来てしまいました・・夢中でしたぜ。

ところで、実はまだ(自分は)北欧系ミスの探索途中にありますが、
(この夏はしかし、酷寒の地が舞台の北欧系ミスに浸ることで、
多少気分が低温設定に調整され、結果省エネになるんじゃ・・無理か?)
その合間、Spenth@さんおススメのオモシロ本など読んでいきたいと思いますので、
いろいろ教えてください。

nao #6gL8X1vM | URL | 2011/06/13 Mon. 19:47 * edit *

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