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読書日記、ときどき食日記

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夜の真義を/ マイケル・コックス 

英国出版史上最高額43万ポンドで出版権が落札されたという本。もうこれだけで食指は動いたのだが、購入してから随分積読本になっていた。まず図書館で借りたモンから読まないといけないんで。

その後「週間文春」のミステリーレビューにも取り上げられたらしいが、こってり系なんだとか、なんとか。
こってりって、一体???
私はすっごく好みでしたが…


物語の舞台は1850年代。エドワード・グライヴァーという男の手記の形をとって物語は進行していく。
名門イートン校の入学して、前途洋々な未来が待っていたはずのエドワードは、未来の仇敵となるフィーバス・ドーントと出会う。
校内でも一目置かれていたエドワードは、イートン卒業後ケンブリッジに進むための奨学金を手にしようとしていた。だがその矢先、高価な稀覯本を盗んだ罪を着せられ、放校されてしまう。全てはフィーバス・ドーントの企みによるものだったのだ。
学位のないものに未来はなかった。未来が奪われたその日から、エドワードはフィーバスに復讐を誓う。
エドワードは失意のうちに欧州を放浪した後、母の遺産を整理しているときに偶然自分の出生の秘密を知る。もしかしたら、自分は小説家の母の実の子供ではなく、母の親友であったデュポート男爵夫人の子供なのではないか。もしそうなら、自分は、英国きっての名門貴族の全てを継承すべき人間だ。そして、自分はあのどうしようもない父親だったグラーヴァー大尉の息子ではなく、エドワード・デュポートだと信じ込むのだった。
エドワードはその親子関係の立証するための証拠を探し求めるが、またしても、そこにあのフィーバス・ドーントが立ちふさがる。彼は奨学金を得てケンブリッジへ進み、今や新進気鋭の詩人として高い評価を得ていた。
息子(エドワードの弟にあたる)を亡くし、後妻との間にも子供に恵まれなかった男爵は、男爵自身の遠縁にあたるフィーバスの義母の計らいで、今や詩人としての名声も高いフィーバスを後継者と認めるようになっていたのだ…
そして、今、エドワードは、エドワード・グラプソンという偽りの名を名乗り、暗闇でナイフを握りしめていた…。


著者のマイケル・コックスが一番影響を受けたのは、ディケンズの「デイヴィッド・コパフィールド」なのだという。さもありなんで、演劇的な雰囲気も少し似ている。
出生の秘密、企み、裏切り、復讐といったドラマティックな要素のみならず、複雑な人物像もまた魅力。
訳者が解説でも取り上げていたように、エドワードとフィーバスは一見すると陰と陽なのだ。フィーバスが光り輝く場所にいるのに対して、エドワードは自らの運命にもがきもがくことで暗闇にのみこまれていく。エドワードの良心が、次第にフィーバスに対する復讐に対する強迫観念といってよい感情に蝕まれていく様は、圧巻だ。
確かにフィーバスは狡猾で悪事に長けており、エドワードから全てを奪ってしまった。
しかし、エドワードはフィーバスには決して奪うことのできない文学的才能と豊かな知識を持っており、イートン校以来の親友や親身になってエドワードのことを考えてくれる人間にも恵まれており、充分に幸福な人生を送ることができたはずなのだ。
だが、よくよく考えてみたら、本書で語られていることは、エドワードの視点のみで描かれた手記なのだ。
彼は果たして真実を語っていたのだろうか?

     degas_interieur

日本語版の装丁は、ドガの「室内(強姦)」
室内に男と女を一人づつ描いたこの絵は、観るものに様々な憶測をもたらす。
まさに、観るものがその者だけのストーリーを作成する絵だ。

夜の真義を夜の真義を
(2011/03/08)
マイケル・コックス

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category: 歴史・大河・ドラマ

thread: 最近読んだ本 - janre: 本・雑誌

tag: 海外ミステリ    文春  ヴィクトリア朝  貴族  ドガ 
2011/07/06 Wed. 13:02 [edit]   TB: 0 | CM: 0

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