Reading For Pleasure

読書日記、ときどき食日記

05« 2017 / 06 »07
1.2.3.4.5.6.7.8.9.10.11.12.13.14.15.16.17.18.19.20.21.22.23.24.25.26.27.28.29.30.

犯罪 / フェルディナント・フォン・シーラッハ 

「翻訳ミステリー大賞シンジケート」で、書評家7人(北上次郎、吉野仁、千街晶之、川出正樹、杉江松恋、霜月蒼、酒井貞道)のうち北上氏をのぞく6人が大絶賛している。北上さん…
これは、読まなくちゃ!

処女作でありながら、ドイツ屈指の文学賞であるクライスト賞を受賞し、ドイツの小説ながら(というのは失礼か)世界32カ国で翻訳されているのだという。

本書は11篇からなる短編集である。
いずれもかつて実際に起きた事件に材を得て、異様な罪を犯した人間たちの哀しさと愛しさ、人間というものの不可思議さを描いている。どの物語にもでてくる「私」は弁護士で、ちなみに、著者のシーラッハ自身も、ドイツの高名な刑事弁護士なのだという。
「私」は著者であるシーラッハ自身と重なり、語られる物語は妙なリアリティと何とも言えない気味悪い後味を残す。
この「私」は語り手ではあるのだが、一歩引いた視点で見つめており、文体もそっけないともいえるほどである。
ドイツでは弁護人が陳述する相手は、陪審員ではなく裁判官と参審員で、感情の吐露、まわりくどい言い回しなどはマイナスに働くのだそうだ。鉈で断ち切ったようなそっけない文体は、まさに弁護士の陳述を思わせるが、。本書の中の「エチオピアからきた男」にもあるように、「ドイツ人はもはや情念(パトス)を好まない」ということなのだろう。

収録されているのは、
フェーナー氏/ タナタ氏の茶碗(碗は旧字)/ チェロ/ ハリネズミ/ 幸運/ サマータイム/ 正当防衛/ 緑/ 棘
/ 愛情/ エチオピアの男 の11篇で、どれも一筋縄ではいかない。
現実に起こった事件を骨子にしているというから、やはり事実は小説よりも奇なりということなのだろうか。
どれも素晴らしいが、私が気になったのは「正当防衛」と「緑」かな。

最後の「エチオピアの男」は唯一、ハートウォーミングな感動の物語であり、暖かい気持ちで本を閉じることができると思いきや、最後のページにぽつりとある「Ceci n' est pas une pomme.」という一文に虚を衝かれる。フランス語で「これはリンゴではない。」と書いてあるのだ。人が悪いというかなんというか…

      Ceci n’est pas une pomme


ドイツでは既に第二作「Schuldー罪」も刊行されているのだとか。
こちらも楽しみだが、シーラッハが今取りかかっているという三作目の長編のほうが気になった。
ナチの時代の法曹界のスキャンダルがモチーフらしく、実はシーラッハの祖父はナチの大物だったのだそうだ。興味をそそられるでしょ?

犯罪犯罪
(2011/06/11)
フェルディナント・フォン・シーラッハ

商品詳細を見る

関連記事

category: クライム・警察・探偵・リーガル

thread: 最近読んだ本 - janre: 本・雑誌

tag: 海外ミステリ    東京創元社  シーラッハ  ドイツ文学  クライスト賞 
2011/07/11 Mon. 07:16 [edit]   TB: 0 | CM: 0

go page top

この記事に対するコメント

go page top

コメントの投稿

Secret

go page top

トラックバック

トラックバックURL
→http://spenth.blog111.fc2.com/tb.php/111-554be1d9
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

go page top