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読書日記、ときどき食日記

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アンダー・ザ・ドーム / S・キング 

キングの新刊、でったーーーーー!!!
ヤットメヨタヨ

ところで、「著者あとがき」でキングはこう言っているのだ。「アクセルをフロアまで踏みっぱなしにする長編を書くのが、わたしの目標だった」と。
もともとこの人は、自ら認める登場人物のやたらと多い長編が特徴だけど、本書も、上下巻併せて1396ページ。しかも二段組みなのである。キング作品中、三番目に長い小説なのだそうだ。(長い作品ベスト10はこちら参照
でも、このボリュームもなんのそので、本当に最後までアクセルベタ踏みの面白さ。ブレーキなどキングの辞書にはない。
二日で一気読みしてしまった〜。
お風呂には当然のごとく持ち込み、ジムへも持参。車で信号待ちのちょっとの間も本を開きたい衝動にかられた。



さて、さて、前置きが長くなったが、物語の筋に移ろう。
舞台は、アメリカ、メイン州の小さな田舎町チェスターズミルである。スポーツソックスの形をした人口わずか2000人のこの町はハロウィンを控えたある日、突如として現れたドームによって囲い込まれ、外界と完全に遮断される。
その瞬間、ドームの境界線を飛んでいた鳥たちや飛行機、地上を走行していた車はこの障壁に激突し大破し、境界線上にいたウッドチャックや灌木、不幸にして境界線上にあった自宅の庭で草むしりをしていた女性の手首は、ギロチンが降りてきたかのようにすっぱりと切断された。
ドームの上空は、およそ1万メートル、地下にいたっては見当すらつかない。無色透明のこの障壁は、ごくごくわずかな水や空気、電波は通すものの、弾丸もミサイルによってでさえ破壊不可能。電気、ガス、水道といったインフラも遮断されてしまった。ドームの正体は一体何なのか。なんのためにそれは出現したのか?

人々はパニックに陥るが、この機に乗じて町を完全に自分のものにしようと考えていた男がいた。中古車ディーラーにして、第二町政委員のジム・レニー 通称ビッグ・ジムだ。ドーム出現以前からこの町の有力者であった彼は、自らの立場を利用して警察を支配下におさめ、恐怖政治をはじめる。
一方、町を出て行き損なった元陸軍兵士のバービーは、古巣のコックス大佐に連絡し、異常事態に対処しようとする。大佐の計らいにより軍に復帰したバービーは、大統領からチェスターズミルの司令官に任命されるが、外界と遮断された街にいるビッグ・ジムにとっては、もはや大統領など怖くない。
もはやこの町は、ビッグ・ジムの手に落ち、アメリカの法律も秩序も良心すらも手出しできなくなっていたのだ。
その頃、町の天才少年、"スケアクロウ”・ジョーは、ドームを発生させていると思われる謎の箱を発見するのだが…


ドームによって閉鎖空間となったチェスターズミルは、ビッグ・ジム一派の悪意によって、日を追うごとに悲惨な状況となっていく。まさに「どこもかしこも血の海だ」なのだ。ビッグ・ジムに対抗するのは、バービーとその仲間たちである。
キング作品の例にもれず、本書も登場人物が多く、これらの群像劇は読み応えがある。が、彼らのそれぞれの物語は、次第に一つに収斂されていく。
物語の核となるのは、単純ともいえる善と悪の闘い。どちらが善でどちらが悪かはいうまでもないだろう。
独裁者とは、こうして閉ざされた混乱の世界に乗じて生まれるものかもしれないなぁ思う。チェスターズミルと北朝鮮やアフリカの独裁国のどれほどの違いがあるのだろう?そして、それはグローバル化によって小さくなった世界全体にも言えることなのではないか。「閉ざされている」という点では、地球だってそうである。
ドームの存在によって、チェスターズミルは短期間に秩序を失い、金星なみに生存が劣悪な環境に変わるが、ドームで起こった出来事は、地球がこれからたどるかもしれない出来事の縮刷版なのかもしれない。
そして、破滅にむかって突き進んでいく中であってさえ人間は歪み合うんでしまう。

ミルグラム実験でも明らかなように、人には確かに残酷の萌芽がある。(※ミルグラム実験については、こちらの記事もご参考までにどうぞ)
極端に閉鎖的な環境におかれたとき、人は意図せずして「残酷」になれる。悪いものはより一層悪く、そうでないものもそれなりに。
先ほどロンドンで起きた暴動に乗じ略奪行為に及んだ若者たちも、平常時には一応「普通」と表現してもよい若者たちだったかもしれない。げに恐ろしきは人間なりだ。

しかし、キングは、さらなる「恐怖」を用意しているのだ。それは、ドームの存在理由にある。
ドーム下で起こっているのは、人間同士による諍いで、確かに地獄絵図である。だが、それよりもゾクっとさせられるのは、観察を楽しんでいる者の存在だ。牧師のパイパーは、牧師でありながら密かに神を「そこにいないお方」として認識していたが、それは神と呼んでさしつかえないかもしれない。だが、その神は、人間のことを愛しいるわけでもないし、慈愛に満ちた目で見守っているわけでもない。「どうしてこんな酷いことをするの?!」という少女の叫びに、牧師は答えることができない。
他方で、あの希代の悪人ビッグ・ジムは、クリスチャンだったりするのだ。但し、教えは都合のよいようにカスタマイズされてはいるが。
このキングの宗教観は、なかなかシニカルで、面白い。

こんなにぶっ飛ばしてきて、ラストはどうするのだろう?と思っていたが、これがまた巧いのだ。


アンダー・ザ・ドーム 上アンダー・ザ・ドーム 上
(2011/04/28)
スティーヴン・キング

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上下巻併せてなんと約6,000円!!!( ̄ω ̄;)
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category: ノワール・ホラー・サスペンス

thread: 最近読んだ本 - janre: 本・雑誌

tag: スティーブン  キング    長編  閉鎖  恐怖 
2011/08/26 Fri. 14:30 [edit]   TB: 0 | CM: 5

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この記事に対するコメント

Re: タイトルなし

本当ですね。スミマセン。
訂正しておきます...。

このThe Dark Tower 7partsを除いても、King自身が一番長いのはThe StandだとTimeで語ってましたね。。。

The Stand: 1,153 pages
It: 1,138 pages
Under the Dome: 1,072 pages
Insomnia: 787 pages
Desperation: 690 pages
Needful Things: 690 pages
Dreamcatcher: 620 pages
Duma Key: 607 pages
The Tommyknockers: 558 pages
Bag of Bones: 529 pages

Spenth@ #- | URL | 2012/03/23 Fri. 08:42 * edit *

一番長いのはダークタワーでは?

か #- | URL | 2012/03/21 Wed. 21:57 * edit *

Re:キングはさすが!

naoさん、

私の読書の場は殆どがジムとお風呂なんですよ。
水死体にはまだなったことがないけれど、たまにかな~りのぼせます....(・ω・A;)アセアセ

ボリュームには確かに圧倒されるのですが、読ませるんですよ!これが。。。
帯のキャッチは「さあ、読者諸賢、徹夜の準備を」、ですからね。
その言葉に違わず、徹夜必至の面白さと読みやすさでしたよ。

やっぱり『ヒトはなぜ死~』は、サクッと一時間くらいだったでしょう?
私もこの本は「レジュメ一枚にできるな」と思いました(笑)


coraraさん、

coraraさんもかなりなキング通なのですね!
私はそれほどキング作品を読んだり観たりしているわけでもないのですが、やはり大御所の力というものを感じました。
今年読んだ中でも一番面白かったかもしれないです。是非、是非!

> 私の住んでいる宮城県は、震災直後の一時期
> 物流が少なく、他の地域への移動も難しかったので、
> 今回の設定は、ちょっとドキッとしました。

大変でしたね...。
まだまだ復興にはほど遠い状況のところもたくさんあり、痛ましい限りです。
あの状況にあっても、パニックや暴動を起こさなかった東北の方々の強さは、私たち日本人の誇りでもありますね。

Spenth@ #- | URL | 2011/08/26 Fri. 22:04 * edit *

こんにちは。
これ、気になっていた作品だったので、レビューがあって嬉しかったです!

キングの語りの巧さ、人間の本質へ迫る凄まじさは、
読んだことのない人にはもう何と表現して良いのやら、
とにかく読んで!としか言いようのないものですよね。

私の住んでいる宮城県は、震災直後の一時期
物流が少なく、他の地域への移動も難しかったので、
今回の設定は、ちょっとドキッとしました。

ここしばらくキングを読んでいなかったのですが、
久しぶりに読んでみようかなと思います。

corara #- | URL | 2011/08/26 Fri. 20:46 * edit *

大長編読破は知力・体力・集中力勝負(どれも欠けちゃダメ)


Spenth@さんのエネルギー・・スゴイですわぁ。
このボリュームをわずか二日で読了(!)でありますか。
風呂の中でも?・・自分なら確実に睡魔に襲われて没し、水死体のできあがり・・ですな。

キングのものは「グリーンマイル」あたりまでは読みましたが(最長「IT」は未読)・・
しかしもう自分は歳ですなぁ・・頂上の景色はすばらしいのでしょうけれど、
足腰弱った今では、キングの山脈の登頂(読破)は無理のようにも思われます
・・1396ページ(これは頑張ればなんとか可能か)、しかし二段組(!・・これはアウトであります)。文庫で4冊に分冊化刊行されるのを待つしかありませぬ(5冊かも)。

紹介記事からだけでも、この物語(輪郭)のおもしろさは伝わってきますなぁ。
閉塞したその中で混乱する人間模様(関係)、特に追い込まれたひとびとの狂気に支配された状況を描かせたら、このヒトに適う者なしでありましょう(臨場感抜群!)。
(記事を読んで、同著者原作映画「ミスト」の群集の狂疾・「悪魔の嵐」<TV映画?>などをチラっと連想しましたぜ)。

そうそう「ヒトはどうして死ぬのか」サクっと読了しました。
(この一冊・・まとめて書けば10頁で済んだんじゃ・・失礼)。

nao #6gL8X1vM | URL | 2011/08/26 Fri. 20:25 * edit *

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