Reading For Pleasure

読書日記、ときどき食日記

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野蛮なやつら / ドン・ウィンズロウ 

ウィンズロウの新刊キターーー!!!
今読んでいる本が面白くないなら、いますぐ放り出してこの本を読むべきだと思う。
だってウィンズロウの小説なのだ、面白くないわけがない。
但し、これは野蛮人による野蛮な物語なのである。騒々しく、度を超して危険でしかも破廉恥だ。3Pに眉をひそめるような方向きではないと一応断っておきマス。

舞台はカリフォルニア、OC(オレンジ郡)のラグーナビーチ。
Oことオフィーリアはゴシップガールのセリーナを過激にした感じの女の子だ。
biOとベン、チョンの3人は幼なじみだ。女1人に男が2人。だが、3人は”友好的三角関係”を楽しんでいる。O曰く、「愛は少なすぎるより、多すぎるほうがいい。」のだ。
ベンとチョンはベン&チョニーという会社を経営している。扱うのは極上のマリファだ。チョンが海軍特殊部隊の任務を終えたとき、スタンがつく国から持ち帰った種子に、ベンの植物学と経営学の知識を注ぎこんだ結晶である。そして、彼らは成功している。眺望の素敵な400万ドルの家はその証だろう。
そんな彼らはメキシコのバハ・カルテルから目をつけられてしまう。なにせ、ベン&チョニーのブツの品質は他では手にはいらないほどの最高品質なのだ。安定的な上客がついている。
カルテルは、倉庫の床一列に並べられた7つの頭部を画像ファイルで送りつけ、今後は自分たちだけ品物を卸せと脅迫してきたのだった。それによってカルテルは大きな利鞘を稼ごうという魂胆らしい。
「まるでウォルマートね。」と、Oは言う。ベンは内心、カルテルとの和睦を望んでいたが、チョンにとっては、それはありえない選択肢だということも知っていた。あんなことをするのは野蛮人なのだ。
カルテルとの会合の結果は、果たして予想通りとなる。「ざけんな。」の一言で、会合は物別れに終わってしまう。
そして、この言葉はバハ・カルテルの女ボス、エレナをいたく怒らせてしまった。そして、エレナは部下にOの誘拐を命じるのだが…


カリフォルニアへのオマージュも、お決まりの「主な登場人物」も飛ばしたら、最初の文字が目に飛び込んでくる。「ざけんな。」baditude
これには、思わず笑ってしまう。原書ではFuck You!だから、さらにインパクトがあるだろう。ともあれ、この「ざけんな。」は本書の全てを物語っている。

本書のスタイルはこれまでのウィンズロウのどの小説とも違う。いくつかの詩的表現と、シナリオの手法を用いた回想シーンが用いられているが、最も詩的なのは暴力的なシーンなのだ。そして、とりわけOのセリフにはユーモアと冴えがある。
しかし、テーマとしているのは、「犬の力」と同じものなのかもしれない。ウィンズロウは「犬の力」で35年に及ぶカルテルとマフィア、米国政府の壮絶な戦争を描いたが、その続きの物語なのだから。
ウィンズロウのつくるキャラクターは、皆魅力的だが、本書も例外ではない。
ちょっと生意気でぶっ飛んでいるOはもちろん、ベンとチョンも超がつくほど個性的だ。だが、両者は親友でありながら対照的だ。裕福だけど金満でない家庭に育ったベンは、ジョン・レノン的平和主義と社会的良心を持っているが、チョンの親は麻薬の売人で、スタンの国から帰ってきてもPTSDとは無縁でいられる。
ベンは、世界を「野蛮な世界」と「野蛮に近い世界」に分かれると考えているが、チョンは世界は「野蛮な世界」と「野蛮に近い世界」から成ると考えているのだ。そしてチョンが正しい。

ウィンズロウはこれを書いた当時「多くのことに腹をたてていた。狂っていた」とで語っている。我々の社会にはびこる政治的、社会的強者による驕慢、暴虐と専横...弱者が被る悲劇、虚無感と絶望に、である。そして、一番怒っているのは、自分自身もその世界の一員であるということなのだという。
この物語には数多くのFuck you!があるが、それはとりもなおさず、ウィンズロウのそれなのだろう。
麻薬にも戦争にも無縁な私たちもまた、自覚なき野蛮人なのかもしれない。「平和の輪を広げよう」というおめでたい言葉は、野蛮人の前にはあまりにも無力だ。

野蛮人たちの戦いは、熾烈さを増しスピードを増し展開していく。彼らの両手は血まみれだ。悪対善の戦いではなく、あるのは野蛮人たちによる野蛮な戦いのみ。
「犯罪小説の既存の枠とやらをブチ壊してやる」というウィンズロウの意気込みは、衰えることなくラストまで続いている。
しかし、最後の最後、愛すべき3人の野蛮人たちは「美しい野蛮人」になるのだ。


野蛮なやつら (角川文庫)野蛮なやつら (角川文庫)
(2012/02/25)
ドン・ウィンズロウ

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本作SAVAGESはオリヴァーストーン監督で映画化、今年夏に米国公開の予定だ。
キャストなどの情報はこちらでどうぞ。




犬の力 上 (角川文庫)犬の力 上 (角川文庫)
(2009/08/25)
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category: スパイ・冒険・ハードボイルド

thread: 最近読んだ本 - janre: 本・雑誌

tag: 海外ミステリ  このミス  ウィンズロウ  映画化  SAVEGES 
2012/03/07 Wed. 13:15 [edit]   TB: 0 | CM: 2

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この記事に対するコメント

Re: 作品の質感はやはりウィンズロウ兄貴!?

naoさん、やっぱりウィンズロウいいですよね!
あのスタイリッシュな感じは彼ならでは。
ラストは私は結構好きなんですが、これは賛否あるだろうなぁと...。
やっぱり、あっけないですか...。

前日譚の 『The King of Cool』は予定通り上梓されており、本作よりも評判がいいみたいです。
映画作成にも関わっていたので、これは難しいかもと思っていたのですが、さすが!
こちらは角川待ちかな(笑)

『シャンタラム』は厳密には広義の意味でもミステリではないのですが、本当にイチオシです。
世界であれほど愛されているのに、日本でのこの扱いが不思議でなりません。

Spenth@ #- | URL | 2012/07/19 Thu. 21:13 * edit *

作品の質感はやはりウィンズロウ兄貴!?


作品のスタイルが特徴的・効果的!・・映画的な編集をして小説を構成したような(?)
テンポというかよいリズムが本作にはあって、スピード感もある場面(物語)展開は、
読んでいて心地よいものでした。
読む前に、オリヴァー・ストーン監督作の予告編を先に観た(観てしまった)こともあり、
そのことでより「映像的に読む」(映像を動かす)ことができたのかも。
(別掲記事にもありますが、トラボルタのデニス役だけはイメージしにくい・・)。
最後(最期)はちょっとあっけない感じ・・。
続編(前日譚)ですが、Spenth@さん同様自分も期待しています。

そう、以前取り上げられていた「バチカン・エクソシスト」も読みました。
なぜかエクソシスト関連の本を読みたくなり、
島村菜津の労作「エクソシストとの対話」「エクソシスト急募」なども。

「シャンタラム」・・強力プッシュの大作でありますなぁ(今年のベスト?)。
総ページ数約2000・・か(読むにしても涼しくなってから・・自分の集中力のメーターを思うと、
上巻で尽きてしまう可能性大・・根性ナシ)。

・・明日ですな。ではまた。

nao #6gL8X1vM | URL | 2012/07/19 Thu. 19:56 * edit *

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