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読書日記、ときどき食日記

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湿地 / アーナルデュル・インドリダソン 

久しぶりの北欧ミステリなのだが、さすがアイスランド、さすがの日照時間の少なさ!!!
つまり、暗〜〜〜〜い。

アイスランドミステリ日本初上陸は、確かイルサ・シグルザルドッティルの『魔女遊戯』 だったと思う。あの本は、陰惨なテーマながら、主人公と相棒のかけあい漫才のようなやりとりがあったが、こちらは真っ向勝負で、暗いのなんの。
『湿地』というタイトルそのまま、湿気て陰惨な空気漂う仕上がりである。ホント、カビハエソウ…
レイキャビクって、こんなに雨ばかり降るのかと思ったら、舞台となっている2001年の秋は、実際かなり雨が多かったらしい。翻訳が荒めなのかと思うほどに散文的で、どこか感傷を感じるのも降りしきる雨の効果なのだろうか。

それはさておき、主人公は50がらみのエーレンデュル刑事である。こういう刑事の例に漏れず、家庭はとうの昔になくしており、麻薬中毒の娘との関係は最悪だ。彼自身も胸の痛みがあるにもかかわらず、煙草がやめられないでいる。
疲れ気味だけど、仕事熱心なベテラン刑事像はかのヴァランダーや『特捜部Qシリーズ』のカールなどと同じ。好きな方は好きであろう、王道的陰気暗いカビハエル系の北欧ミステリだと思う。

物語は、自宅で殺害された老人ホルベルクの捜査にエーレンデュルが駆けつけるところから始まる。被害者の後頭部には裂傷があり、すぐそばには血糊のついたガラス製の灰皿がおかれていた。アパートのドアはあけっぱなしで、金目のものを盗まれた形跡もない。
エーレンデュルの同僚は、汚くて無意味、証拠を隠そうともしないということから、"不器用で単純なよくあるアイスランド"の殺人だと決めつけるが、よく見ると、その老人の死体の上にはメッセージが置かれていた。
そのメッセージは、意味をなさない三つの単語だった。
捜査の過程でエーレンデュルは、被害者の家の引き出しの中から一枚の古いモノクロ写真を発見する。それはウイドルという名の、4歳で亡くなってしまった女の子の墓の写真だった。
この写真から、ほどなく被害者ホルベルクの過去が明らかになる。ホルベルグが40年以上も前に犯した罪が、今浮かび上がってきたのだった…
そして、エーレンデュルは、ホルベルク事件の次第に真相に迫っていくのだが…

エーレンデュルと娘との親子関係の修復を挟みつつ、ホルベルク老人の事件を解決するというのがメインストーリーなのだが、もうひとつサイドストーリーとして花嫁失踪の物語も描かれている。

実はこの小説、イスランドで映画化「Jar City(英題)」されており、ハリウッドがリメイク権を獲得している。なんでも、ルイジアナを舞台に企画されているというのだが、この物語の舞台はアイスランド以外では無理ではないかと思う。
なぜかというと、アイスランドは人口わずか30万人の単一民族国家で、外からの影響が少なく、中世まで遡って家族の系譜を辿ることができる国だからだ。遠く遡れば、誰もがどこかで血の繋がりがあるという特異な環境にあるのだ。
そして、この特異性こそがこの小説の大前提となっている。
はからずもシグルデュル=オーリの言った「アイスランド的殺人」というのは、別の意味で正しいのだ。

作中、エーレンデュルは、事件の顛末をさし「この話は広大な北の湿地のようなものだ」と言っているが、「北の湿地ーノルデュルミリ」というのは地名であるだけでなく、悪事の、悲惨さの暗喩でもあるという。
実際、「湿地」というのはこれ以上ないタイトルだと思う。
湿地に立てられた建物は、何十年も経ってから土台に問題がでてくるという。ホルベルクが何十年も前に犯した犯罪が、時を経て、ある家族を壊してしまうのを象徴している。


湿地湿地
(2012/06/09)
アーナルデュル・インドリダソン

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文庫で出してほしかったですよ...。東京創元社さん。エーレルデュル刑事シリーズの『Silence of the Grave』は邦題『緑衣の女』として近く刊行されるそう。

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category: クライム・警察・探偵・リーガル

thread: 最近読んだ本 - janre: 本・雑誌

tag: 海外ミステリ  アイスランド  アーナルデュル・インドリダソン 
2012/06/30 Sat. 22:23 [edit]   TB: 0 | CM: 2

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この記事に対するコメント

Re: ありがとうございます。

履歴書のテンプレート さん、こんばんは。
ありがとうございます。これは、このミス必至でしょうねぇ...
ただ、ちょっと東京創元社による注釈なんかがあれば、もっと良かった気もします。

Spenth@ #- | URL | 2012/10/28 Sun. 19:25 * edit *

とても魅力的な記事でした!!
また遊びに来ます!!
ありがとうございます。。

履歴書のテンプレート #- | URL | 2012/10/28 Sun. 18:54 * edit *

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