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読書日記、ときどき食日記

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アイスマン~史上最大のサイバー犯罪はいかに行われたか ~/ ケピン・ポールセン 

アイスマンというのは、今話題の?アイスクリーム批評家ではなく、あるスーパーハッカーのハンドルネームである。

本書はサブタイにある通り、マックス・バトラーという一人の青年がいかにして”アイスマン”になったのかと、その終焉までの顛末劇を描いたものだ。
彼の犯した犯罪の被害額は、わかっているだけで約100億ドル。まさに史上最大のサイバー犯罪と言えるだろう。

マックスの行った”サイバー犯罪”とは、主にクレジットカード決済システムの脆弱性を突いたものだ。
彼は、セキュリティの比較的甘い大手量販店や飲食店のPOSシステムに侵入するという手口で、大量の「ダンプ」と呼ばれるカードの磁気情報を盗み、それを自身が管理するウエブサイトで犯罪者たちに売っていた。
「ダンプ」の相場は、スタンダードカードで1枚20ドル、ゴールドカードは80ドル、最も価値あるコーポレートカードは100ドル。
小売店のPOSシステムは、顧客のクレジットカードの磁気情報全てが保存されている。カード会社はこの情報を保存することを禁じているが、当時この作業を怠る店は多かった。
従来のゴミ箱からカード利用明細を盗んだり、スキマーを使って読み取りを行うというアナログ的な手法とは違い、情報が盗まれていても、店側も、利用者も気づかない。客が大手ピザ屋に行き家族のためのピザを注文すると、その客のカード情報は、まだピザが暖かいうちにマックスのハードディスクに収められた。
また、彼は自分のウェブサイトと競合するライバルの犯罪掲示板を攻撃し、あたかもM&Aのように吸収合併し巨大な帝国を築こうとする。

著者ケビン・ポールセン自身も90年代に名を馳せた有名ハッカーであり、ハッキングの手法についての時代を追った記述は専門的でありながら素人にもわかりやすい。コンピューターセキュリティに明るい人はわくわくすることだろう。
だが、本書の魅力はマックスとその仲間のハッカーたち、詐欺師たち、彼らを捕まえようとするFBI捜査官の織りなす人間模様だ。
FBIは10代で罪を犯した彼を都合よく使い捨て、同様に仲間の犯罪者をスパイに仕立てる。犯罪者たちは誰もが欺きあい、騙し合う。マックスは犯罪者であることには変わりないが、その描かれ方はどこか同情的だ。
マックスの立場に視点を移せば、捜査機関の常なれどFBIはなかなかエグいことをやっている。その信義から仲間のハッカーを「売る」ことができなかったマックスは悪だと言い切ることができるだろうか。
擁護するつもりはないが、彼はハッカーの腕前とは裏腹にあまりにも精神的に幼く、それがハッキングであれ、ガールフレンドであれ、執着しすぎる傾向にあった。何より彼は無邪気で世間知らずだった。
公判で彼は「(アイスマンという)透明人間になっている間は、友人たちのアドバイスや社会の一員であることを忘れていた」と語った。しかし、透明人間になることなど誰もできはしない。
彼はアイスマンとしての罪により、結局13年の実刑と2750万ドル賠償を言い渡されることになるが、それでもまだ「ハッキングをしたいという衝動」が残っていることを告白している。そしてこの衝動は「無視するしかない」とも。
著者は、マックスは自分で自分を矯正しなければならない、自分の中の有益な性質を生産的なことに生かす方法を身につけて欲しいと本書を締めくくる。
ハッカー(ブラックハット)とセキュリティの専門家(ホワイトハット)はコインの裏表だ。
マックスが刑を終えたそのとき、今度こそホワイトハットとして必要とされる人生を歩めることを願うばかりだ。


アイスマンアイスマン
(2012/02/02)
ケビン・ポールセン

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category: ノンフィクション・新書

thread: 最近読んだ本 - janre: 本・雑誌

tag: サイバー犯罪  ケビン・ポールセン  ハッカー   
2012/07/04 Wed. 23:08 [edit]   TB: 0 | CM: 2

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この記事に対するコメント

Re: タイトルなし

アラフォーおやじさん、こんにちは。

いつもありがとうございます。

> 『ひょっとするとこの人がミステリーを書いたら面白いかも』

いえ、ご想像の通りそんな才能はございません。
自分が書けるわけでもないのに、毎度毎度よくいいますよね(笑)


Spenth@ #- | URL | 2012/07/07 Sat. 17:05 * edit *

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# |  | 2012/07/05 Thu. 18:53 * edit *

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