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読書日記、ときどき食日記

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インフォメーショニスト/ テイラー・スティーブンス 

キャッチは、「22カ国語を操る美貌の情報屋」
今時、こんな三流漫画みたいなキャラ設定はないんじゃないの?と思ったのだが、著者のバックグラウンドに興味を持ったことと、米国でベストセラーになっていることから買ってみた。
あまり期待していなかったが、これがなかなかなのだ。

本書のヒロイン、ヴァネッサ・”マイケル”・マンローは情報収集のプロである。
その世界では超一流であるため、報酬も高い。スレンダーで長身のスタイルを活かし、あどけない人形のような女はもちろんのこと、必要とあらば男にもなれる。シナリオと国さえ指定すれば、彼女は情報を得る方法をみつけることができるのだ。言語も性も、それが戦争地域だろうが彼女には障壁ではない。
トルコでの任務が終えようとしているその時、彼女は代理人のケイトから新しい"仕事”を打診される。報酬は250万ドル、仕事を引き受けるか否かにかかわらず、ヒューストンでクライアントに直接会うだけで10万ドルを支払ってくれるという。クライアントは石油王のバーバンクで、彼は4年前アフリカ旅行の最中に行方不明になった継娘エミリーを探してほしいという。
捜索となると、マンローの専門外だ。しかし、アフリカはマンローの産まれ育った場所であり、因縁の場所だった。
報酬を2倍に引き上げ、マンローは引き受けることにするが、バーバンクサイドは、彼の保安コンサルタントのブラッドフォードを同行させることを条件につけた。
エミリーの手がかりを追って、マンローはまずはヨーロッパへ、そしてブラッドフォードとともにカメルーンを経由して問題の偏執症の国、赤道ギニアへ入るのが…
物語はエミリー失踪の真相とマンローの過去がオーバークロスしながら、スリリングに展開してゆく。

著者のテイラー・スティーブンスは、セックスカルトとして知られる「神の子供たち」(現在はファミリー・インターナショナルに名称変更)で、普通の教育を受けることなく、世界各地を点々とし育ったのだという。
このカルトは、大人と子供が交わるフリーセックスを奨励し、セックスをすることで信者を獲得する“flirty fishing”(浮気釣り)と呼ばれる勧誘で有名だという。その傷跡は、我々普通の人間からは計り知れないものがあるのだろう。

マンローのアフリカでの過去の回想シーンは、あたかも当時の著者の体験を語られているかのようで生々しい。どうしてもヒロインをかつてのスティーブンスと重ねて読んでしまう。マンローはアメリカ人でありながら、アメリカ人としてのアイデンティティが持てず、”母国”とは何かがわからない。(ちなみにスティーブンスは現在はダラスに腰を落ち着けで家族と幸せに暮らしている)男を誘惑して"支配”するゲームを楽しみ、危険を顧みず240キロのスピードで漆黒のドゥカティを駆るのは、過去から目をそらすためだ。
22ケ国語もの言語能力は仕事には役立つが、戦闘能力同様、彼女を”普通”でなくしてしまってもいる。

著者の経歴は確かに宣伝力を持つが、本書を全米ベストセラートップ10にしたのはこのヒロインの魅力だろう。
マンローというキャラクターはスティーグ・ラーソンの「ミレニアム三部作」のリスベットを連想させるのだ。
舞台となる国もテーマも大きく異なれど、遠い国(赤道ギニア)が抱えている社会的問題や、ヒロインのスペック、スリリングで派手な展開は、「ミレニアム三部作」が好きな方には、それなりに楽しめるのではないか。
ただ、「ミレニアム」には到底かなわないが。


インフォメーショニスト<上・潜入篇> (講談社文庫)インフォメーショニスト<上・潜入篇> (講談社文庫)
(2012/04/13)
テイラー・スティーヴンス

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インフォメーショニスト<下・死闘篇> (講談社文庫)インフォメーショニスト<下・死闘篇> (講談社文庫)
(2012/04/13)
テイラー・スティーヴンス

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category: スパイ・冒険・ハードボイルド

thread: 最近読んだ本 - janre: 本・雑誌

tag: 海外ミステリ  赤道ギニア   
2012/07/09 Mon. 23:10 [edit]   TB: 0 | CM: 4

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この記事に対するコメント

Re: タイトルはなんとかならんかなぁ・・

タイトル問題ですか?(笑)確かに言いづらいかも。

そっか、小振りか...。
私は結構、アフリカの赤道ギニアが舞台という設定と、いかにもリスベットを意識した主人公は割と気に入りました。著者が最初に描いたものから、おそらくかなり編集者などの手が加わっているんだろうなと思いますが...。
著者の経歴からして、次作のカルトものには大いに期待したいところですが、果たして翻訳されるのかしら?

『ラジオ・キラー』は読みましたが、う〜ん、悪くはないのですが、『アイ・コレクター』の印象のほうが強かったかな。ただ、掴みが巧いですよね。フィツェックは。あと、意外性というのも執筆の上で意識しているのかもしれないです。ディーヴァほどではないにしても、結構”どんでん好き”なのかな?
この作品も、『インフォメーショニスト』同様、もっと大きなスケールを期待しがちかも(笑)
それから、訳者があとがきで述べていたような”女性交渉人の主人公の色っぽさ”は私は感じなかったなぁ。

Spenth@ #- | URL | 2012/08/26 Sun. 21:14 * edit *

タイトルはなんとかならんかなぁ・・


Spenth@さんと同じ、自分も主人公マンローに対し、まずリスベットを連想しました。
また、正確な状況分析とその対応力、(狂気を隠した)動物的な敏捷性など、
あるいは女性版ジェイソン・ボーンであるのかも・・ん?違うかな?。

潜入篇の物語は、ややロマンス小説の匂いが・・おや?
主人公の男性登場人物に相対する場面など、相手に向かうまなざしに、
ぐっと性的な目力の強まる風な感じがました・・女性フェロモン濃厚。
死闘篇ではしかし、キナ臭い展開になっても筆力は冴えて緊張感があり、
特に後半部、復讐心に憑かれ(もう一つの眼が見開いた!)主人公の焔がよく描けておりました。
少し残念に思ったのは、物語展開(スケール)が世界の広範囲なわりに、ことの真相がやや小振りな印象。
器(尺)が巨きい分・・というか、中央アフリカ諸国という辺境(失礼)を主に舞台に設定したものの、
その特異さがすべて主人公の特徴付けに働いている感じで・・?

次は「アイアン・ハウス」の予定でしたが、フィツェックの著作のアツイの記事に惹かれ、
所蔵(長年積読)の「ラジオ・キラー」(Spenth@さんポチ本の一冊ですな)を先に読むことに。
では。

nao #6gL8X1vM | URL | 2012/08/26 Sun. 07:03 * edit *

トリロジー流行中?

ここ最近多いですよね。トリロジー。まぁ、しかし単独でも楽しめるようにはなっていますが。
このマンローものに関しては、日本語版が出るかかなり微妙かも。
こんなご時世なので、おそらくこの本の売れ行き次第でしょうね。

『湿地』のエーレンデュル刑事ものは欧米ではじゃんじゃか出てますが、ヴァランダーみたいに全部は出ないのじゃないでしょうか?ただ近日刊行が決まっている『湿地』の直後の 『Silence of the Grave 緑衣の女』は、CWA ゴールドダガー賞とガラスの鍵賞のダブルクラウンなので、内容には期待したいところですよね。

> 『夜の真義を』の続編にも期待されていたのでは?(あとアトウッドなんかも?)。

『夜の真義を』の著者は亡くなっていますから版権がモメてそうですよね。海外では評価が高いので読んでみたいですが、なにせビリュームがあるので英語で読むには苦労しそうかな。越前さんの名訳で読みたいところです。アトウッドは気長に待っております。
ウィンズロウの『野蛮なやつら』の前日譚が米国で刊行されたので、これは間違いなく日本語版がでるだろうと待ちかまえております。

ちなみにクーンツのフランケンシュタインは、一応ラストまで読んだは読んだのですが、ちょっとがっかりしてしまって...

Spenth@ #- | URL | 2012/07/10 Tue. 20:41 * edit *

ほう・・これも面白そう・・よい情報(記事)ありがとうございます。
というワケで、幸い図書館にあったので、注文入れておきました・・愉しみ。
これもシリーズものなのかぁ・・別にいいけれど・・。
最近自分の読む海外ミステリ系はほとんどシリーズ本です・・北欧ミステリがそうだから。
特捜部Qの第三弾も最近刊行されて、手元にあるデンマーク作家の『死せる獣』もそう・・。
読む予定の『湿地』のシリーズも何作出ているのやら・・。
(そう言えば同じアイスランドの作家イルサ・シグ*◎※#●の『魔女遊戯』というミステリ、
 Spenth@さんに教えていただき、昨年読んだのでした・・もう一年以上前になるのかぁ)。
シリーズと言えば、Spenth@さんはクーンツのフランケンシュタインのシリーズや、
『夜の真義を』の続編にも期待されていたのでは?(あとアトウッドなんかも?)。
それらのシリーズ熱はまだ消えておりませぬか?

・・例の本(文庫)あと10日で書店に並びますなぁ。

nao #6gL8X1vM | URL | 2012/07/10 Tue. 20:12 * edit *

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