Reading For Pleasure

読書日記、ときどき食日記

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アイアン・ハウス / ジョン・ハート 

ジョン・ハートは、米国で「ミステリーの帝王」という称号を与えられ、日本でもその名はもはやブランド化しているといっていい。
おそらく、本書も年末の「このミス海外編」上位に食い込むのだろう。

しかし、実はこの『アイアン・ハウス』は、横浜読書会のメンバー間では、かなり評判が悪かったそうなのだ。(「アイアン・ハウス」読書会に私は不参加だった)『ラスト・チャイルド 』のよいイメージがあったので、それを聞き意外に思ったものだが、ま、猿も木から落ちることもある。
ところが、読んでみたら、ジョンさん、通常運転なんですけど…
それなりに面白かったけどなぁ…
もし、読書会に参加していれば、私は少数派になっていたかも〜!!!

主人公のマイケルとその弟ジュリアンは、共にアイアンハウスで育った。
強いマイケルに対し、ジュリアンは虚弱で腺病質だった。マイケルは、施設で壮絶ないじめにあうジュリアンをいつもかばっていたが、十数年前、アイアンハウスで起きたある事件のせいで、生き別れの状態になってしまう。
その後、マイケルは施設を出てストリート生活をしているところをマフィアのボスに拾われ、組織の殺し屋となっていた。
だが、マイケルはある日恋に落ちてしまう。相手はエレナという美しいスペイン人女性だった。彼は素性を隠したまま彼女との付き合い、彼女が妊娠したことで組織を抜けようと決心する。潮時だと思ったのだった。
組織のボスであり、マイケルの父親のような存在でもあるオットー・ケイトリンは、そんなマイケルの気持ちを理解してくれたのだが、オットーは末期癌で死の床にあった。そして組織を抜ける見返りに、オットーは「自分を死なせてくれ」と懇願するのだった。
オットーの息子ステヴァンや、マイケルの兄貴分ジミーは、マイケルが抜けるのを許さない。もし、オットーが死んで彼の影響力が消えれば、彼らはマイケルを生かしてはおかないだろう。しかし、敢えてマイケルはオットーの最後の願いを聞き入れたのだった。
組織は報復に燃える。ステヴァンがエレナやマイケルの弟ジュリアンまでをもターゲットにしているのを知ったマイケルは、エレナを連れてジュリアンの元に急ぐのだった。
ジュリアンは事件直後、上院議員の妻に請われて養子に迎えられ、今では世界的な童話作家になっていたが、幼い頃のアイアンハウスで体験は、今でも彼の心に暗い影を落としていた。
マイケルはジュリアンの住む屋敷の厳重なセキュリティに安心する。ここならジュリアンは安全だ。立ち去ろうとするマイケルだったが、心を閉ざしているジュリアンのそばに居てほしいと、ジュリアンの母にひきとめられるのだった。
一方、エレナはマイケルの元を離れて一人スペインに戻ろうとしていたが、そこにジミーが現れて…
ジュリアンとエレナ、愛するものを守るためにマイケルは一人奮闘するのだが…


孤児院、組織の殺し屋、統合失調症を患う生き別れの弟。物語の設定はかなりベタ。しかし安い韓流ドラマのようにはならないのは、やはりジョン・ハートだからだろう。
『ラスト・チャイルド』で、家族の崩壊をなんとかしようと頑張るジョニーの気持ちに心が動かなかった人はいないだろうが、今回の主人公マイケルは、誰もが情を寄せるいたいけな子供ではない。大人の、しかも凄腕の殺し屋なのだ。そんなマイケルを読者に共感させるのは、ジョニーの何倍も大変だっただろう。しかし、かなりうまくやってのけたのではないだろうか。
なんか、もうそれだけでこの小説は、大半成功してると思うのだ。

おそらく、読書会のメンバーの多くが不満に感じたのは、物語の収め方にご都合主義的なところあることだろう。確かに都合がよすぎるところもあるかもしれない。詰め切れなかった部分もあるが、だいたいが、ジョン・ハートはそういうところがあったりするので(笑)
これまでジョン・ハートの作品を読んだことのある人にとっては、この物語がどう収束するかはご想像の通り(笑)しかし、表面的にそう見えても、今回は少し違うのかもしれない。

ジュリアンの描く童話には、いつも邪悪なキャラクターの陰惨な行為や裏切りがあるが、その結末には弱いながらも光があるんだ、とマイケルはそう評価する。『アイアン・ハウス』という物語は、まさにジュリアンの描く童話そのものなのだ。

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(2012/01/25)
ジョン ハート

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category: クライム・警察・探偵・リーガル

thread: 最近読んだ本 - janre: 本・雑誌

tag: 海外ミステリ  このミス  ジョン・ハート   
2012/08/10 Fri. 11:02 [edit]   TB: 0 | CM: 4

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この記事に対するコメント

Re: 負け犬の遠吠え・・なのかナ?

確か、途中経過の感想を聞いたと思ったのですが、
二度手間させちゃったかな?

そうですよね。
色々ツメも甘いし、瑕疵もある。でもそれがジョン・ハートだし(笑)
良しとするのは、やっぱり少数派なんでしょうかねぇ?

しかし、今年の「このミス」か「文春10」どちらかに入りそうな気もするんですよね...。
上位ではないでしょうけれど。

Spenth@ #- | URL | 2012/10/09 Tue. 16:52 * edit *

負け犬の遠吠え・・なのかナ?


おや!?・・この作品の感想、自分は書いておりませんでしたか。
Spenth@さんにこっそりお話しますが(?)・・この力作小説、自分は惹きこまれましたよ。
確かにバランスのやや悪い、疵もあるらしい作品のようには思いますが。
例えば、兄の抱える物語と弟のそれが、(整合性ははかられているものの)巧く噛み合っていないような印象。
しかし、自分はこの物語に入り込めて充分に愉しみ、満足しております(コレが大事!)。
小さくまとまった小説(日本の小説全般)読むより、よほど愉しめました。
比較するなら、昨年刊行された日本のミステリ(自分が読んだ作品)で、
この作以上のものはありませんでした(「ジェノサイド」未読)・・ホメたことにならならいかナ。

お行儀のいい(古典)ミステリばかり読んでちゃダメなのサ。
(毒を吐いてしまいました・・失礼)。
・・では。

nao #6gL8X1vM | URL | 2012/10/09 Tue. 13:12 * edit *

Re: タイトルなし

naoさん、こんにちは。

> ・・というのは「ウルフ・ホール」。上巻の半分くらいのところで挫折してしまいました。
> なんとなく作品全体の感じは掴めましたが・・暑さも災いして(?)ダウン。
冬向けの作品かもしれないですね(笑)
私は、宇田川晶子さんの美しい詩のような訳文がたまらなく好きでした。

> 『アイアン・ハウス』・・確かに、あまり良い評判は聞こえてこない・・かな?
米国Amazon レビューの星の数も少なくはないし、エドガー賞三度目の受賞の噂も聞こえるくらいなのですが(そこまでとは思えないけど)、人によって受け止め方が異なる作品なのでしょうね。

> しかし、Spenth@さんの記事を読むとなかなか力作である様子。
> (欠席した?の読書会・・その時、少数派意見のSpenth@さんは孤立しただろうか?
はい。完璧に見事なまでに少数派!!
先日の古典読書会でテーマ違いにもかかわらず話題に出したのですが(←迷惑)、テーマが薄っぺらい、無理がある、ご都合主義が過ぎる...等々、メンバーの「アイアン・ハウス」の評判は最低最悪でした (笑) 特に若いお嬢さん方はハートアレルギーすら持ってそうで(笑)
もちろん、「アイアン・ハウス」はハートの一番の作品というわけではないし、私も「ラスト・チャイルド」のほうが好きですが、どちらにしても瑕疵も無理もないわけではないという(笑)「ラスト・チャイルド」もかなり強引なところがありますし...。
でも、それも含めてのジョン・ハートだと思うんですよね。
ともあれ、小説も絵画と同じく、各々の趣味に左右されるものですし。
naoさんにも、もしがっかりさせてしまったら、ごめんなさい。(と先に謝っておこう)

Spenth@ #- | URL | 2012/08/13 Mon. 20:40 * edit *

「アイアン・ハウス」おもしろそう・・このミステリなら読破できそう。

・・というのは「ウルフ・ホール」。上巻の半分くらいのところで挫折してしまいました。
なんとなく作品全体の感じは掴めましたが・・暑さも災いして(?)ダウン。
映画「わが命つきるとも」は、トマス・モアが物語の主人公で、
その中で策士クロムウェルは嫌な奴でした・・しょうがない?
一連のヘンリー8世をめぐる人物相関図では、それが英国一般の認識でしょうから、
小説の切り口のユニークさには自分も納得・・また、よく時代背景も調べられておりました・・が挫折。
(忠臣蔵のような有名史実も、視点が変わると、また別の様相が・・ちょっと違うか)。
この部厚い書物を「読み返す」Spenth@さんの知力(読書力)には頭下がります・・凄い。

『アイアン・ハウス』・・確かに、あまり良い評判は聞こえてこない・・かな?
しかし、Spenth@さんの記事を読むとなかなか力作である様子。
(欠席した?の読書会・・その時、少数派意見のSpenth@さんは孤立しただろうか?
 むしろ周りに読み方(着眼点)を呈示して賛同者を増やしたのでは?)。
「アイアン・ハウス」、幸いそれ程待たずに図書館で借りられそう(もう文庫収納場所ナシ)。
またおもしろい本の紹介、いろいろ本のコト教えてください。
(そう、先のクッツェーの記事も興味深く読みましたよ)。

nao #6gL8X1vM | URL | 2012/08/13 Mon. 19:46 * edit *

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