Reading For Pleasure

読書日記、ときどき食日記

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アイ・コレクター/ セバスチャン・フィツェック 

サイコスリラーの名手、鬼才といわれるセバスチャン・フィツェック。初めて読んだが、その枕詞がつく所以は本書一冊でもよくわかる。
読み終えてから改めて最初のページに戻り、息を漏らしてしまう。フ〜〜〜〜〜〜
好みは分かれる作品だろう。
しかし、これは久々に来た!!!のじゃないだろうか。

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最初のページのノンブルは405。エピローグで始まりプロローグの1ページで終わる。もちろん意図された構成だ。それを汲み取ることのできない人のために、扉にはわざわざこういう逆立ての構成なのだと編集部注がつけられている。
ついつい巻末を確認したくなるだろうが、それは断じてやってはいけない。
本書はスリラーであると同時に、Whodunitとしても優れた小説であるからだ。

主人公は「わたし」こと、アレクサンダー・ツォルバッハ。元警察官で、今は新聞社で血なまぐさい事件を扱う記者をしている。
7年前、"橋の上"で起きた事件によって、警察を辞めざるを得なかったばかりか、家庭も崩壊してしまった。おまけにトラウマによる知覚障害のため、今も定期的に精神科を受診している。
彼が今追っているのは、ベルリン中を震撼させている「目の収集人」だ。手口は毎回同じで、母親を殺害し、子供を誘拐する。殺害された母親の手にはストップウォッチが握らされており、セットされた制限時間以内に、父親が子供を見つけ出せなければ子供は殺害されるのだ。これまで仕掛けられた”隠れん坊ゲーム”は3回で、死者は6人。つまりは誰も子供を助け出すことはできなかったということだ。この犯人が「目の収集人」と呼ばれるのは、殺された子供たちの左目が抉りとられていたことにある。
警察無線の傍受で4番目の犯行を知ったツォルバッハは、現場に急行する。また一人、母親が殺害され、男の子と女の子の双子が誘拐された。しかし、警察はそんなツォルバッハを怪しむ。なぜなら今回、無線は使用されてはおらず、現場からは彼の財布が見つかったからだ。
誰かに嵌められたのか、それとも…駆け込んだ主治医から彼は統合失調症の可能性を告げられる。
今やツォルバッハは有力な容疑者となってしまった。混乱した彼は落ち着いて考えるため秘密の隠れ家に向かうが、そこには見知らぬ女性が待っていた。この盲目の女性アリーナは、ツォルバッハに電話でここに呼び出されやってきたのだいうのだ。そして彼女には、接触によってその人の”過去がみえる能力”があり、先日の予約客にマッサージを施した際、「目の収集人」が犯罪を犯しているシーン”を見たというのだった。その客は「目の収集人」に間違いないと彼女はいう。信じがたい話だが、彼女は警察がマスコミにも伏せていた正確なカウントダウンの時間を知っていた。
この間にも双子の命のリミットは迫っている。ツォルバッハと双子の命を救えるのは、もはやアリーナの謎めいた能力だけだった。彼はアリーナのヴィジョンを手がかりに「目の収集人」の足跡を辿るのだが…


ツォルバッハは「信頼できる語り手」なのか?犯人は誰なのか?なぜ、アリーナには子供が一人しか見えなかったのか?等々、いくつものWhyが層になって重なってゆく。
サイコスリラーとして優れているのはいうまでもない。が、ミステリとしても本書が期待を裏切ることはないだろう。

また、読み飛ばしてもよいところは本書には存在しない。
アリーナのように目の見えない人たちが、どんなふうに夢をみるものなのかを想像できるだろうか?
「あとがき」によると、著者は実際に目の見えない人たちからの意見を取り入れ、健常者の思い込みによる嘘にならぬようリアリティを持たせたと言っている。その甲斐あって、アリーナの描写には瞠目すべきものがあった。

「この物語はまさに悪夢なんだよ」とフィツェックは言う。読者はアリーナがヴィジョンを見るがごとく、ツォルバッハの目となってこの悪夢をみるのだ。だが、「わたし」のこの悪夢は目が覚めた後も終わることはない。
読み終え全てが明かされたその瞬間、フィツェックの企みに息をのむことだろう。


アイ・コレクター (ハヤカワ・ミステリ 1858)アイ・コレクター (ハヤカワ・ミステリ 1858)
(2012/04/06)
セバスチャン・フィツェック

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category: クライム・警察・探偵・リーガル

thread: 最近読んだ本 - janre: 本・雑誌

tag: 海外ミステリ  サイコスリラー  ドイツ  セバスチャン・フィツェック   
2012/08/21 Tue. 18:35 [edit]   TB: 0 | CM: 2

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この記事に対するコメント

Re: あの「治療島」の作家が・・・

ドイツではベストセラーとなった『治療島』ですが、日本の読者受けは悪かったようですよね。
だから、私も当時手を出しませんでした。
でも、『アイ・コレクター』を読んだ後、Amaで『ラジオ・キラー』と『サイコブレイカー』も追加ポチしちゃいましたよ。しかし、フィツェク、好みは分かれるんだろうなぁ。
「目の収集人」というのは、素直に「アイ・コレクター」でよくね?とも思いました。
ドイツでは同じ主人公で続編もでてるそうで、次は「The Eye Hunter」だとか。

> 手元にある「アイアン・ハウス」(予約図書到着)の次、読みたいと思います。
ええ?早い!
いい図書館ですね。横浜だったら1年くらい待ちます(笑)

Spenth@ #- | URL | 2012/08/22 Wed. 09:05 * edit *

あの「治療島」の作家が・・・


セバスチャン・フィツェック・・という作家、相当に腕を上げた様子・・凄い!
最初に紹介の作(未読)を読んでいたなら、
自分のこの作家に対する印象(評価)も違っていたのかも。
昔、デヴュー作の「治療島」を読んだのですが・・・・・(中略)・・・・・であったので、
もうこのヒトの著作を読むことはないと思っておりました。
実のところ、なんでこの作家がポケミスに?・・フシギに思ったくらい(失礼)。

けれど、この「アイ・コレクター」の良い評判はあちこちで聞いておりました。
近く読もうかなと思ってもいるうちに・・数ヶ月も月日が流れ・・
オリンピックも終わって・・。
Spenth@さんをうならせるとは、ホンモノでありますな。
手元にある「アイアン・ハウス」(予約図書到着)の次、読みたいと思います。
いつもおもしろい本の紹介ありがとうございます。
また、教えてください・・では。

nao #6gL8X1vM | URL | 2012/08/21 Tue. 22:29 * edit *

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