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読書日記、ときどき食日記

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特捜部Q Pからのメッセージ / ユッシ・エーズラ・オールスン 

本書は、デンマークで初めて、ノルディックミステリの最高峰、ガラスの鍵を受賞していた作品である。
「キジ殺し」には、ちょっとがっかりだったが、本書では「ユーモア」も復活。
このシリーズはやはりこうでなくちゃ!

プロローグの物語はシリアスにはじまる。
少年と弟はどこだか分からない場所に拘束されていた。少年はエホバの慈悲を求めて祈るが、それが聞き入れられることはないと悟っている。彼は、もうすぐ何もかもが終わる気がしていた。が、その時、少年は青い小瓶をみつける。その瓶を割って、破片で手首の紐を切ることができたら助かるかもしれない!
だが、無情にも瓶は割れなかった。弟は衰弱し、もう口を開かなくなっていた。少年は自分にできることを必死に考えた。そして自らの血で助けを求める手紙をしたため、最後に自分の名前を記すと、それを青い小瓶に入れて壁の割れ目に向かって放り投げたのだった…
少年の手紙の入った青い小瓶は、遠く海を超えたスコットランドを経由し、我らが『特捜部Q』の元にたどり着く。
さて、『特捜部Q』は、コペンハーゲン警察内のコールド・ケースを専門に取り扱うセクションである。ひきいているのは、本シリーズの主人公、カール・マークだ。
警察小説の特に北欧ミステリの主人公は、たいてい家庭は崩壊本人の精神状態もボロボロで、疲れ切ってヨレヨレと相場が決まっている。が、カールに言わせれば、ヴァランダーは恵まれている。なにしろ、Qのオフィスは地下にあり、部下は自称シリア人のアサドと、他の部署から厄介払いされたローセのみなのだ。二人とも奇人変人で、しかもアサドは正規の捜査員ではなく雑用係なのである。

小瓶に入っていた手紙は、かつては白かっただろうが茶色くなり、ふちはボロボロ、冒頭の「助けて」という文字以外は滲んでいて読めない。書かれてから何年経ったのかさえわからないほどだったが、ローセはなんとかその手紙を読み解こうと苦心する。どうやらPで始まる名前の人物が必死に助けを求める手紙のようだった。
カールにしてみれば、特捜部Qの出番を待っている事件は他にいくつもあり、ローセにやってもらいたいこともたくさんあった。しかし、ローセは手紙に執着し、ならば、私の代わりに双子の姉をよこすと言ってカールを脅す始末だ。そして、本当に双子の姉ユアサがやってきて、この手紙が今回の特捜部Qの扱う事件となるのだが…

犯人と思しき人物とその周辺の物語と、特捜部Qの捜査状況が交互にテンポよく描かれているため、リーダビリティがある。今回もまた陰湿で残酷な事件なのだが、途中途中で視点を変え、笑いを交えることで息抜きをさせてくれるのだ。これまでになく筆も軽やかなのではないだろうか。

前作に引き続きアサドも活躍したが、今回の一番の功労者はローセだろう。本書ではローセの意外で新たな一面を垣間見ることができる。他方、アサドの謎は、怪しさを増したまま据え置かれている。
そして我らがカールには、未だ離婚が成立しない妻の問題はあるものの、ついに春が訪れたようなのである。
アマー島の事件で首から下が麻痺してしまったハーディはカールの自宅に引き取られることに…。
こうしたサイドストーリーも本シリーズの楽しみのひとつだ。


特捜部Q ―Pからのメッセージ― (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)特捜部Q ―Pからのメッセージ― (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)
(2012/06/08)
ユッシ・エーズラ・オールスン

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category: クライム・警察・探偵・リーガル

thread: 最近読んだ本 - janre: 本・雑誌

tag: 海外ミステリ  早川書房 
2012/08/28 Tue. 18:20 [edit]   TB: 0 | CM: 0

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