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読書日記、ときどき食日記

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忘れられた花園 / ケイト・モートン 

タイトルと美しい装丁から容易に連想されるように、本書はバーセットの『秘密の花園』を下敷きにしている。
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本書の読者も、賞賛するのも圧倒的に女性なのだろうな。
これからの季節、柔らかくなった日差しのもとで色づく木々を感じながら公園のベンチで読むにはぴったりだと思う。
おっしゃれ〜〜???


本書はネルという女性の出自の謎をめぐる、三人の女性の物語である。ネルとその孫娘のカサンドラ、ネルが”お話のおばさま”と読んでいたお伽噺作家イザベルの物語だ。彼女たちの三つの時間軸を行きつ戻りつ、時にイザベルのお伽噺を挟みながら物語は進んでいく。
時は1913年、4歳の女の子が一人、子供用のスーツケースを手にオーストラリアの港に一人取り残されていた。ロンドンから着いた船の乗客は皆去ってしまったが、誰も彼女を迎えには来なかった。港で働くヒューは少女を見かね自宅へ連れ帰る。少女は自分の名前もわからないという。捨てられたのかもしれなかった。少女はそのままヒュー夫婦の養女となり、ネルと名付けられた。
時は下り、ネルは孫娘のカサンドラに看取られ、あの世に旅立った。葬儀が終わり、ほっとしたいたカサンドラは、大叔母(ネルの妹たち)から、ネルが養女だったことを知る。ネルが結婚を控えた21歳の時、ヒューが真実を伝えたのだという。だが、その日を境にネルは変わってしまったと大叔母たちはいう。婚約者とは別れ、妹たちと疎遠になり、何より気難しくなった。カサンドラにはネルの孤独がよくわかった。きっとアイデンティティが粉々になってしまったのだ。カサンドラ自身も母親に捨てられたようなものだった。彼女は母親「ほんの少しの間よ」そう言われ、ネルの元に預けられて結局ずっとネルと暮らすことになったのだから。
後日、 カサンドラはネルの弁護士から、ネルが彼女にコーンウォールにあるコテージを遺したことを知らされる。ネルは過去に、自分のアイデンティティを求めてイギリスを訪れ、そのときコテージを購入していたのだった。
果たしてネルは何者だったのか、なぜオーストラリアの港に一人取り残されていたのか?
ぜそのコテージを買い、カサンドラに遺したのだろうか…


若く美しい作者によって紡がれる物語は、女子のための物語だ。実際、かなりガーリーだと思う。
本書は『リヴァトン館』に次ぐ著者の二作目だというが、これでガッチリとファンを囲い込んだのではないだろうか。
ビクトリア朝時代の貴族の大きなお屋敷、意地悪な叔母、閉じ込められている虚弱なお姫様、虐げられる少女、隠されたいた美しい庭、お伽噺的キャラクターに英国的エッセンスがまぶされ、語り口はソフトで温かみがある。
肝心のネルの謎は、割と終わりの方にまで引っ張られてはいるものの、女の勘は鋭いので、途中で気づく人も多いと思う。
私が印象に残ったのは、女の友情の脆さと強さだ。よく女同士の友情はハムより薄いというが、身につまされたことのある方は多いのではないだろうか。ホルモンや男女の脳の働きの違いのせいもあるのだろうが、一旦マイナスに傾けば、後は加速するのみという硬直性すら持つのだという。
そういった様々な事情を鑑みても、イライザの献身は私には少々理解しがたかったかな…?だって、いかに大切な親友のためとはいえ、あんなことまではしないと思うのだ。
また、コーンウォールのスパークリングブルーに輝く海と、緑の庭園に映えるイザベラの赤毛の美しいこと。さぞ映像映えするのではないだろうか。そういった色彩の美しさも本書の魅力だ。
男性の存在感が薄いのが多少気になったが、これは女たちの髪で織られたタペストリーのような物語なのだ。きっと、それでよいのだろう。


       

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category: 歴史・大河・ドラマ

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tag: 海外ミステリ 
2012/09/27 Thu. 15:13 [edit]   TB: 0 | CM: 0

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