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読書日記、ときどき食日記

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寿命1000年 長寿科学の最先端 / ジョナサン・ワイナー 

寿命1000年!この言葉のもつ響きをあなたはどう捉えるだろうか?
本書はピュッリツァー賞受賞作家ジョナサン・ワイナーによる老年学の可能性と発展、それが内包する死生観の問題についての本である。
DeGrayAubrey.jpg寿命1000年を唱えるのは、異端の老年学者オーブリー・デ・グレイその人だ。1000年どころか、彼は寿命に限界はないと本気で確信しているという。
花柄のシャツに、モーセのような長い顎ひげ。旅行にも歴史的建造物にも、食べるものにも興味がなく、ひたすらビールを愛する痩身の彼は、一見ヒッピーにしか見えない。その彼の専門はコンピューター工学だ。彼は老年学においても、生物学においてもアマチュアにすぎないが、しかしこのアマチュアはずば抜けて「できる」のだ。
たった一冊の著作によりケンブリッジから生物学の学位を与えられ、自分の仕事の合間に、老化にかかる国際会議の舞台で講演を行ったり、名のある生物学者と共著で多くの論文も発表したりと活躍を続けているという。

専門家を含めた多くの人々は、デ・グレイの主張にも、彼が「老化を最小限に食い止めるための工学的戦略ーSENS」にも眉をひそめている。実際、多くの学会から彼は追放されている。
彼の主張は、これまで我々がなじんできた死生観を覆してしまうのだ。我々の死生観とは、人間は必ず死に、人生は有限で短いからこそ美しく輝く…というものだ。
それに人が死ななくなったら、人口爆発の問題はどうするのだろう?食料や資源の問題だってある。著者のジョナサン・ワイナー自身だって、デ・グレイの主張には肯定的ではない。

人は老いてゆき、やがて死に至る。デ・グレイは、この「老化」を医療問題だと考えている「老化」は必ず死に至り、我々は皆この「病気」に罹患しているので、この問題にとことん取り組みべきだという信念を持っているのだ。
彼は言う。「ぼくたちには人の命を救う機会が与えられている。それならば、そうすべきだ。たとえ厳しい避妊対策が必要になるとしても。人が死ぬのに任せるのは、人を殺すのと同じくらい悪いことだ。
突き詰めていけば、子供のいない世界になるかもしれないが、とやかく言ってないで、どんどん前に進もうじゃないか、と言っている。
この考え方に嫌悪感を覚える人もいるだろう。
ワイナーも、最終的にお互いの主張は相容れないということでデ・グレイに同意している。
私も著者と同様の意見だ。少なくともデ・グレイのSENS戦略のうちの癌の予防法は、過激な禁じ手であり、多くの人は二の足を踏むだろうと思う。

本書の面白さは、デ・グレイの揺るぎない信念と、それに向かって「どんどん進んでいく」姿勢である。これが、読んでいて愉快なのだ。ワイナーも半ば呆れつつも、彼に引きつけられていくのだ。
「ぼくなら、500万年だって退屈せずに生きられる」と言い切る彼に私も魅せられる。そう言い切れることが素直に羨ましいのだ。彼が有限の命を存分に生きていることは間違いないだろう。
ワイナーはその造詣の深さから、古今東西の文学や芸術を引き死の問題を取り上げているが、とりわけ興味深かったのはヤナーチェクのオペラ「マクロプロス事件(秘事)」である。エレナ・マクロプロスは、不老不死の秘薬を飲んだため、42歳(37歳のヴァージョンもあり)で300年生き、長すぎる人生の退屈を嘆くのだ。エレナの退屈と倦怠は想像するだにウンザリさせられるのだ。
はからずも『ヒトはどうして死ぬのか―死の遺伝子の謎』 の著者が指摘したように、人間は自分のそもそもの寿命を超える長い時間、自己を保つことができないようになっているのかもしれない。
でも、きっとデ・グレイならばこう言うだろう。「じゃあ、保てるようにすればいいんだよ!」と。
退屈も倦怠も永遠に起こらない人間、もはやそれは人間といえないのかもしれないが、デ・グレイのようにスーパーポジティブでなければ、不老不死になど挑めないのかもしれない。


寿命一〇〇〇年: 長命科学の最先端
寿命一〇〇〇年: 長命科学の最先端
(2012/07/20)
ジョナサン ワイナー

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category: ポピュラーサイエンス

thread: 最近読んだ本 - janre: 本・雑誌

tag: 早川書房 
2012/10/11 Thu. 17:16 [edit]   TB: 0 | CM: 4

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この記事に対するコメント

Re: Wow!

コメントありがとうございます。

ちょっと意味がくみ取りにくい部分があるのですが、おっしゃている”不老不死と宇宙開発がセットであるべき”、というご説の前提は、「全宇宙を支配する」ことにあるのですね?
まず、私は、それが可能であるかどうかの前に、人類がそれを望むのか否かに疑問を持ってしまいます。

まぁ、でも、仮にそう我々が願ったとしましょう。しかし、sio_shさん、そんなに焦らなくても大丈夫ではないですか?
寿命を延ばす、ということにおいて最もラディカルなデ・グレイでさえ、今のところ寿命を延ばすに現実的に有効な手段は、適度な運動と腹八分目のバランスのよい食事だと言っているのです。
ガンダムの世界のように(笑)人間が宇宙で生活するためには、放射線からの確実な防護と、骨密度の問題、その他多くのことをクリアしなければなりませんが、我々はまだクリアするに至っていない。
宇宙という観点からは、私たちは、まだ小さな葉っぱの上の芋虫に過ぎないのですから。

Spenth@ #- | URL | 2013/03/09 Sat. 18:43 * edit *

というか、なんでこういう記事を見るたびに地球に引きこもることが前提なのか全く理解できない。有限の地球では資源や領土が限界であるわけだし、結局不老不死は宇宙開発と必ずセットで進めていかなければならない。宇宙はバカ広いので、寿命が数兆年でも足りないぐらいだし、資源やエネルギーは地球規模からすれば太陽系内のものだけでもほぼ無尽蔵だ。不老不死のネット上の議論を見ても必ず地球に引きこもる前提で書いてある事に対し誰も突っ込まない。アホかと。しかも宇宙開発が金持ちの道楽と位置づけられている・・・。タイプ1文明を達成し太陽系帝国レベルまで文明が進歩し、恒星間飛行に手が届くレベルになれば必ず不老不死を実現しなければ、全宇宙を支配することができないのだ。エネルギー問題が解決したとしても人口密度の関係から地球の陸地面積レベッカでは数百億人が限度だろう。宇宙規模の文明が常識と化せばこの程度の生命観や文明観も当たり前になるのだろうが、あとはいかにしてそれを実現するかである。食料はエネルギーがあればいくらでも作れるし、最終的にナノマシンがないと大規模宇宙進出に必要な生産力が達成できないと思う。

なお寿命がたかが1000年では銀河間飛行や数万光年規模の建造物を使った実験などもできない。これが、タイプ3文明である。物理学ではつかえるエネルギーが際限なく増え続けないとこの宇宙で実現できることが実験できないから、エネルギー使用量を無限大に増大させねばならない。石油やウランといった埋蔵資源用いているタイプ0文明は資源枯渇環境破壊や戦争などで絶滅するリスクあるからドレイク方程式の文明の寿命の項の話に繋がる。もはやポイントオブノーリターンを超えでもってみんながどこかの誰かが解決してくれるだろうと信仰し時間を無駄にした。核融合や恒星間飛行が達成され無限大の指数関数的成長を永久に続けるためにも宇宙の膨大な資源やエネルギーを利用できるように、今世紀前半中に実現せねばならない。

sio_sh #- | URL | 2013/03/09 Sat. 16:42 * edit *

Re: 話題性では圧倒的なんだけど...

デ・グレイが目指しているのは、まさに「マクロプロス事件」のエレナのようにヨボヨボでもシワシワでもないまま、永遠に生き続けるということです。彼のSENS戦略は、六つの老化の原因を取り除き、癌の予防策のために遺伝子の一部を取り除くという理論なんです。テロメア自体を取り除いてしまうので、細胞は再生できなくなり、そのため人工的にある一定の頻度ですべての細胞を入れ替えなければならない。
まぁ、究極の禁じ手であり、本当にSFの世界ですよね。そこまでするかというか、なんかもう機械の身体でも別によくね?みたいな(笑)
「転写」というのは、『オルタード・カーボン』というSFを思い出しました。
私はたとえ、デ・グレイのSENSみたいな問題がないとしても、40歳のまま1000年はおろか、100年でさえ真っ平ですが、naoさんは超長寿を享受したいですか?(笑)

私は、春樹ワールド結構好きなんですが、彼のノーベル文学賞は、候補に上り続けて早ウン年。もうなさそうな気も...。

『リンカーン弁護士』読書会は、さすが人気作家だけあって参加者もこれまでで一番多いです。熱心なコナラーもいるので、コナラーによるコナリー指南を楽しんできます。



Spenth@ #- | URL | 2012/10/11 Thu. 23:48 * edit *

あと20年くらい?・・がんばって30年・・かナ?


寿命1000年でありますか・・しかしどういう状態で生きられるかが問題ですなぁ。
100年元気でいられても、残りの900年寝たきりじゃ・・キツイですぜ。
結局、人間は細胞の集まり(固まり)でありますから、
その一個の細胞の仕様を人為的に強固なモノに変えない限り、
どうにもならないような・・。
つまりは現在の地球仕様の我々の肉体を離れない限り、それは無理かも。
それを可能にするならば、生命の倫理についてのすべてをクリアした後、
まず生命装置としての体(スーツ)の開発が必要。
そうして自身は知的な流動体にでも変態させる・・最もその流動体に生命遺伝子の完全な転写(クローン)の技術が可能であることが必須条件。
・・なんてコトを、昔、少年であった自分は夢想しておりましたよ。

記事にあるヤナーチェク『マクロプロス事件』・・おもしろそう。
チャペックの原作のオペラでしたっけ?・・観たい読みたい。

ところで村上春樹、受賞惜しかったですね。
受賞は莫言かぁ・・申し訳ないけれど、自分は受賞者の作品の方が好み。
昔読んだ『花束を抱く女』はすばらしかった・・。
村やんには来年の受賞者になっていただきまししょう。
(2年連続のアジア作家受賞が無理なら、再来年にでも)。
明日の読書会はしっかりね(何が?)・・では。

nao #6gL8X1vM | URL | 2012/10/11 Thu. 21:49 * edit *

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