Reading For Pleasure

読書日記、ときどき食日記

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ソロモンの偽証Ⅰ〜Ⅲ / 宮部みゆき 

久しぶりの現代ものの宮部作品である。
しかも、Ⅰ〜Ⅲ巻あわせると2000ページを超える大作である。三部構成であることは予め知っていたので、Ⅲの『法廷』が出るのを待って全巻購入した。これが高いんだ!!!
著者本人は、本書をフルマラソンにたとえ、書き上げたときは完走したという喜びに包まれたと言う。
私は、もともと短編よりも長い小説が好きなのだが、割とあっという間に読めてしまった。
ただ、ハードカバーはヤメテホシインデスケド…
お高いし、重いんだもん…

SolomonPerjury.gif      SolomonPerjury.gif      SolomonPerjury.gif
さて、物語は1990年のクリスマスに始まる。
その朝、城東第三中学の裏庭で、半ば雪に埋もれた状態の生徒の遺体が発見される。死んでいたのは柏木卓也だ。彼はこの中学校の2年A組の生徒で、ひと月ほど前から不登校の状態だったのだ。死因は屋上からの転落死とみられた。精神状態が不安定だったということもあり、警察も親も自殺ということで納得していた。
しかし、匿名の告発状によって状況は一変してしまう。定規を使った直線で書かれたその”告発状”には、大出俊次という男子生徒ら札付きの不良三人組が、屋上から卓也を突き落とすのを目撃したと書かれてたのだった。そもそも卓也の不登校の原因は、その三人の不良との間に起こった喧嘩沙汰にあるとみられていた。いじめによる殺人という可能性は、なきにしもあらずだったのだ。
その告発状は、校長、亡くなった柏木卓也と同じクラスの藤野涼子、担任の森内の三人に送られていた。藤野涼子に送られたのは、彼女が2年A組のクラス委員であり、何より彼女の父親が警視庁の刑事であるからと思われた。
校長は事態を穏便に納めるため告発状の件を内密にしていたが、ある人物の悪意によってマスコミにリークされてしまうのだ。
学校は無責任なジャーナリズムにさらされてしまう。保護者たちは過敏になり、何も知らされない生徒たちは混乱に陥っていたた。学校側は急いで事件の幕引きしようとしていたが、そんなおり、また新たな犠牲者が出てしまうのだった。
自分たちの学校が汚されていくことに怒りを覚えた藤野涼子は、自分たちの手で真相を明らかにしようとする。
彼女が選んだ解決の方法とは、”学校内裁判”だった。
被告は、柏木卓也殺しを疑われている三人組のリーダーで札付きのワル、大出俊次だ。
大出は本当に卓也を殺したのだろうか…


school image あらすじだけみると、なんて中二的!!と思うだろうが、そこは宮部みゆき。読んでいるうちに、自分も中学生に戻るのだ。
主人公の藤野涼子は、完璧な優等生すぎて感情移入しにくい。だからか、語り手は途中で、野田健一という生徒にバトンタッチされるのだが、これは大正解だったと思う。この野田健一の自己克服の物語は、読者を共感させるからである。
野田以外の生徒のそれぞれの物語も並行したサイドストーリーとなっており、読ませる。

この”学校裁判”は、本当の裁判ではないので、その形式も、満たすべき用件も大きく異なる。ともすれば、「ごっこ」になりかねないが、逆に言えば、子供たちがやるからこそ、理想を追求できるとも言える。裁判の本質は、こういうものであってほしいとさえ思ってしまうのだ。

それにしても、なぜ著者は、『ソロモンの偽証』というタイトルをつけたのだろうか。この法廷において誰も偽証はしていないのだ。法廷で述べたことは、誰にとっても、告発状の主であってさえも、本人にとっては真実だったのだ。
また、本書にはソロモンに象徴されるほどに賢い生徒も登場するが、作者が”ソロモン”に喩えたのは、生徒ではないのではないだろうかと思う。

ソロモンの偽証 第I部 事件
ソロモンの偽証 第I部 事件


(2012/08/23)宮部 みゆき
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ソロモンの偽証 第II部 決意
ソロモンの偽証 第II部 決意

(2012/09/20)宮部 みゆき
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ソロモンの偽証 第III部 法廷
ソロモンの偽証 第III部 法廷

(2012/10/11)宮部 みゆき
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category: ミステリ/エンタメ(国内)

thread: 最近読んだ本 - janre: 本・雑誌

tag: 国内ミステリ  学校  法廷   
2012/10/20 Sat. 20:46 [edit]   TB: 0 | CM: 2

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この記事に対するコメント

Re: はかなさと時間の積み上げ

泰嗣さん、はじめまして。
コメントありがとうございます。

宮部ファンでいらっしゃるのですね。

> 設定としてはミステリなんでしょうけど、はたして、ミステリなのか、
> それとも、もっと濃い別のメッセージを伝える作品なのか・・・。

いわゆる狭義で単純なミステリではないですよね(笑)

宮部作品は(私は『英雄の書』くらいまでしか読んでないのですが)、一貫して"人間のダークな部分や影の部分”を描いていますよね。
しかし、彼女は(他の多くの作家のように)、ただその闇を遠くから眺めているだけではない。
例えば、作品の中では、主人公の中学生たちに真っ向、正義に向き合わせようとしている。

そういう所が宮部作品の魅力のひとつなのだろうと思います。


> しかし、宮部さんは読みたくなる作品がたくさんあって、読者としても 悩ましくうれしい悲鳴。

本当に(笑)
特に『ソロモン〜』はお値段も悩ましかったです。

Spenth@ #- | URL | 2013/01/10 Thu. 14:41 * edit *

はかなさと時間の積み上げ

宮部さんの作品、長編が多いので結構気合いいりますが、
ソロモンの偽証はすごかったですね。偽証は私もよく分かりませんが・・・。
設定としてはミステリなんでしょうけど、はたして、ミステリなのか、
それとも、もっと濃い別のメッセージを伝える作品なのか・・・。

いろいろなサイトを探したり訪問したりしていて、宮部さんについて
濃い~解説をしているサイトが
http://www.birthday-energy.co.jp
なんですが、「時間をかけて新しい世界を構築」したり、
「意外に細工や冒険がふんだん」なんだそうです。
長編だからこそ生きる才能と申しましょうか・・・。
思わず、まさにその通りと思ってしまいました。

しかし、宮部さんは読みたくなる作品がたくさんあって、読者としても
悩ましくうれしい悲鳴。
『ここはボツコニアン』も2巻目が出ましたし、悩みは増えるばかり(笑)。

泰嗣 #DvI991tw | URL | 2013/01/10 Thu. 10:58 * edit *

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