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読書日記、ときどき食日記

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The 500 / マシュー・クワーク 

日本ではあまりなじみのないロビイストという職業だが、2007年民主党の力が強まった頃を境に、日本でもロビー活動を専門にする会社はチラホラ現れているらしい。しかし、日本における一番のロビイストは、やはり官僚OBなのだそうだ。一方、米国では大統領選はもちろん様々な法案の成立にも影響力を持つ。彼らは、ワシントンD.C.を牛耳り実質的に米国を動かしているとも言われる。本書はそんなロビイストを描いたスリラーである。

さて、マイク(マイケル・フォード)は、母親の医療費のためよからぬ筋からの借金を抱えている苦学生だ。その上父親は服役中。いかにハーヴァードで優秀な成績をおさめようが、犯罪者の息子に一流企業からのオファーはない。
だが、そんな彼は、全米屈指のロビイスト企業の社長、ディヴィスから直々にスカウトされる。マイクの現実に対処できる能力を高く買ってのことだった。
初年度の年俸は20万ドル。マイクは、これで借金からも逃れられると安心するが、破格の待遇には破格にタフな仕事が求められた。しかも教えてくれる人もいない。重要人物にYesと言わせるための有効な梃子を見つけ出し、成功させてはじめて競争に生き残ることができるのだ。毛並みのよいエリートたちが脱落していく中、マイクは犯罪者の息子としての本領を発揮しテストを生き残った。
異例の出世を遂げたマイクは、今や富ばかりか理想の恋人まで手に入れたのだが…

Matthew Quirk野心溢れるルーキーが華やかで危険な世界に飛び込むという設定は、そのままジョン・グリシャム『法律事務所』のミッチ・マクディアを連想させる。そのルーキーが陰謀に巻き込まれるのもまた同じで、本書が「2012年版The Firm」「ワシントンにきたThe Firm」と呼ばれるのは仕方ないかな。

グリシャムは『法律事務所』で、依頼人の如何なる欲望をも適える特殊な道具といった弁護士像を描いたが、ロビイストは道具ではなく、それを使う側なのである。彼らの仕事は、議員、官僚、企業のトップ、特殊団体や外国政府の要望をかなえるための梃子をみつけることにある。それは恐喝や強請とも言い換えることができる。ワシントンを動かす「The 500」と呼ばれる人々の弱みを握れっていれば、恐れるものはない。
イタリア人テーラーの超高級スーツに、高級レストラン、紳士クラブ…スタイリッシュな世界は著者自身がハーヴァードを出て、アトランティック誌の記者をしている時に体験したことが元になっているという。いわれてみれば、マシュー・クワーク自体ワシントン顔というか。

法に縛られる弁護士より直接的な分、本書はよりアクション色が強いかも。プロローグからして既にマイクは血まみれなのだ。加えて、"心臓を食べる"セルビア人というキワものもスリルを盛り上げている。
本書の魅力は、マイクの複雑さにもある。マイクは自分に流れる犯罪者の血を自覚しており、目的のためには法を破っても何ら痛痒を感じることはない。しかし同時に犯罪者には犯罪者なりのオネスティがあることも知ってもいる。ワシントンの皆に倣い黙して権力に従えば全ては保証される。が、彼はそれを良しとできないのだ。
割とありがちなキャラクターなのだが、こういうキャラは根強い人気があるので…

ラストは非常に上手くいったようで、その実、そうでもないような。
マイクの性格同様、清濁入り交じったものだと言えるだろう。ワシントンには綺麗ごとは似合わないのだ。


The 500 (ザ・ファイヴ・ハンドレッド) 〔ハヤカワ・ミステリ1861〕 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)The 500 (ザ・ファイヴ・ハンドレッド) 〔ハヤカワ・ミステリ1861〕 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

(2012/07/06)
マシュー・クワーク

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category: ミステリ/エンタメ(海外)

thread: 最近読んだ本 - janre: 本・雑誌

tag: 海外ミステリ  ロビイスト  映画化 
2012/11/07 Wed. 12:26 [edit]   TB: 0 | CM: 2

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この記事に対するコメント

セレブより..という判断?

セレブのロムニー氏よりは...という判断なんでしょうかねぇ。
だって99%は庶民なんだから。
しかしオバマもこの先は厳しそうですね。

それにしても、羨ましい限りの図書館環境!
翻訳本って高めだし、借りられるならそれに越したことはないですね。

なつかしの『法律事務所』。あの時、トムも若かった...
この『The 500』も映画権が売れてるらしいですが、権利だけ売れてほったらかしが多い中、
SF大作系より制作費がかからないので、意外とはやくスクリーンに登場するかも。

Spenth@ #- | URL | 2012/11/08 Thu. 08:32 * edit *

やっぱりね・・オバマの勝利


『The 500』これもいただきましょう!・・予約待ち0人!
しかし図書館環境良すぎて、Spenth@さん注目・おすすめの3作、
すべて上下巻本なので計6冊の予約注文図書、
見事同時に揃って今日まとめて受取りました・・ふう。

本作の記事を読んで、自分もグリシャム『法律事務所』(洗濯屋さんのハナシ)を思い浮かべました。
今はもう懐かしい名前になってしまった作家さん(失礼)。

本作は気合のいるような部厚さではないようだし、
近い内いただきます・・お体大切にね・・ではまた!

nao #6gL8X1vM | URL | 2012/11/07 Wed. 23:31 * edit *

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