Reading For Pleasure

読書日記、ときどき食日記

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推定無罪 / スコット・トゥロー 

読んだのは20年くらい前だっただろうか。今年これの続編ともいえる『無罪 INNOCENT』が上梓されたのをきっかけに、古い文春文庫を引っ張りだし『推定無罪』『無罪』を一気読み!

『推定無罪』を読んでいなくても『無罪 INNOCENT』は単独で楽しめるようにできている。物語にはこれまでのいきさつの説明が丁寧に差し挟まれているし、また別の事件を扱うものだからだ。
しかし、物語の根っこはここにあるのだ。やはり、おさらいはしておくべきでしょう。

さて主人公のラスティ・サビッチは、アメリカ中西部のキンドル郡の主席検事補だ。セルビア系の39歳で美しい妻バーバラとまだ幼い息子ナットがいる。
ラスティのボス、レイモンドは地方検事選挙の真っただ中だった。対立候補はかつてのラスティのライバル、ニコ・デラ・ガーディア。内心ラスティは、レイモンドが引退し自分を後継候補に挙げてくれなかったことに不満を抱いていた。12年もレイモンドにつくしてきたのだ。それに、レイモンドはもはや老兵で新鮮味はなかった。
そんな中、ラスティの同僚の検事補キャロリンが自宅で全裸の絞殺体で発見される。自宅の窓は全て施錠が解かれており、遺体には性交の痕跡が残されていた。変質者の仕業か、キャロリンが検挙した犯罪者による恨みか…
レイモンドに命じられたラスティは捜査に乗り出すが、実はラスティはキャロリンと一時期不倫関係にあったのだった。
そして、知らないうちに容疑はラスティ自身に向けられているのに気づいてしまう。ニコは確実にラスティを追いつめつつあったのだ。
現場に残されたグラスの指紋、殺害当夜の電話の履歴、キャロリンの遺体に残されていた精液の型、全ての証拠がラスティの犯行を指し示していたのだ…

かくしてラスティは逮捕され、その裁判は始まるのだが…
果たしてラスティは無実を勝ち得るのか?キャロリンを殺したのは、本当は誰なのか?


presumed innocent 『推定無罪』は、非常によくできた法廷スリラーでありフーダニットだ。ハリソン・フォード主演で映画にもなりヒットしているので、映画の印象のほうが強いかもしれない。(そのハリソンももう70歳!今また『無罪』の映画化をやるのは、厳しいかな?)
犯人の意外性といったミステリー本来の面白さと、文学的な心理描写の巧みさは両立させている名作だとしみじみ思う。トゥローが法曹界の人間とあって、法廷シーンはいわずもがな。
リーガルサスペンスはまた静かなブームの兆しにあり、多くの作家が参入してはいるが、トゥローといい、グリシャムといいやはり餅は餅屋だと思う。これを読むと、即席のリーガルサスペンスは一気に色褪せてしまう。


しかし、再読してみて思ったのだが、こんなエロかったっけ???
このキャロリンという殺された女性検事補は、80年代的ファムファタールの権化のようなのだ。これまで浮気と呼べる浮気の経験はなかったラスティは、このキャロリンの虜になってしまうのだが、一方でキャロリンが自分を微塵も愛していないことも知っている。
この"中年の恋"の狂い方、不倫の回想シーンの妙な生々しさは、当時のトゥローの実体験ではないだろうかと思わせるほどリアル。
本書には法廷シーンなどの見せ場も多くあるのだが、一番は、馬鹿げていると自分でも分かっているくせに恋に身をやつす男の姿なのではないだろうかとさえ思わせる。

全てが終わった後、ラスティの口から語られる真相は何とももの哀しい。
しかし、真実を話すことと、それを人に信じさせることは全く別ものだということを、改めて考えさせる。



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推定無罪 〈新装版〉 下 (文春文庫)
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category: クライム・警察・探偵・リーガル

thread: 最近読んだ本 - janre: 本・雑誌

tag: 海外ミステリ  映画化  リーガルサスペンス 
2012/12/18 Tue. 22:41 [edit]   TB: 0 | CM: 4

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この記事に対するコメント

Re: 来年はどんな作品に出合えるのだろう

naoさん、こんにちは。

あ、『冷たい川が〜』はやっぱりキングでした?
私は、違うと思たんだけどなぁ...

それはさておき、トゥローの『無罪』は、やっぱり人気ですね〜。
往年の(たかだか20数年前の作品を往年の、と呼んでよいものであれば)名作、『推定無罪』の続編とくれば、それは当然なのでしょうが... 。
トゥローの良さは、『推定無罪』の訳者の上田さんがあとがきでも書いているように、単なる法廷ミステリーというだけでなく、それが人間というものを描いた文学性にありますよね。
といいつつ、私は今回、不倫ばかりに着目しているのですが...。
中年といわれる年齢にさしかかり、落とし穴のような恋に堕ちる、このことが招く悲劇と混沌の描写は秀逸でした。
あれから20年あまり。トゥロー自身も還暦を迎え、ふとした瞬間に再びラスティの姿をみた、というのには何か、感慨深いものがありますよね。

ハリソンは...映画『推定無罪』の彼は完全にラスティを自分のものにしていたけれど、ちょっと60歳になったラスティを演じるには枯れすぎて無理があるかなぁ。

Spenth@ #- | URL | 2012/12/19 Wed. 12:49 * edit *

来年はどんな作品に出合えるのだろう


<『推定無罪』『無罪』を一気読みする>・・パワフル!
『無罪』・・こちらは年内に読めるかと期待などしてものの、
あと数名の予約待ちがあり、来年持ち越し決定となりました。
(確か『推定無罪』の主人公のライヴァルでもあった弁護士が、
主人公の別作品もあったような・・タイトル忘れましたが)。
Spenth@さんより先んじて読んだのは『64』だけ(?)かぁ・・。

ハリソンさんも枯れてしまいましたなぁ(失礼)。
けれど自分が『無罪』を読むとき、ハリソンさんの姿、
思い浮かべてしまいそう。

そう『冷たい川が呼ぶ』コリータ読みました。
『シャイニング』との比較はおいて、
キング作品を連想させる「作風」ではあるように思いました(佳品!)。
また別の作品も読んでみたい作家さんです。
『無罪』の記事愉しみにしております・・ではまた!

nao #KInBTHt2 | URL | 2012/12/19 Wed. 12:32 * edit *

Re: ペインレス

> いつ読んでも、下巻のクマガイ崩壊シーンは震えますね。

そうそう、ペインレス、
あんなミス、フツーしませんよね(笑)
しかもただ一人だけ将来が閉ざされてしまうという結構気の毒なキャラでもありました...。


Spenth@ #- | URL | 2012/12/18 Tue. 23:46 * edit *

自分も『無罪』を読みたくて、最近再読しました。いつ読んでも、下巻のクマガイ崩壊シーンは震えますね。

おてもと #- | URL | 2012/12/18 Tue. 23:09 * edit *

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