Reading For Pleasure

読書日記、ときどき食日記

05« 2017 / 06 »07
1.2.3.4.5.6.7.8.9.10.11.12.13.14.15.16.17.18.19.20.21.22.23.24.25.26.27.28.29.30.

無罪  INNOCENT/ スコット・トゥロー 

本書は、『推定無罪』の20数年後を描いた物語である。
あの裁判の後、ラスティ・サビッチは新しい人生を歩みだすのだ、と私は思っていた。
ところが、またもや殺人事件で訴追されたというではないか!!!
ラスティ!どんだけ〜〜〜!!!


 2012120evidence
ラスティは郡の主席判事にまで昇りつめ、さらに最高裁判事の選挙に打ってでようとしていた。
しかし、キャリアの順調さとは裏腹に、ラスティの家庭生活は幸福なものではなかった。あの事件後、二人は別居し離婚にむかって進んでいたが、バーバラが躁鬱病を患ったため復縁したのだ。だが、バーバラの躁鬱病は好転することはなかったのだ。
そんなラスティの心の隙間に入り込んだのが、部下アンナだった。彼女のラスティへの尊敬は次第に恋愛へと乗じ、そんな彼女からの誘いをラスティは拒むことができなかった。

ibuprofen.jpgそして、今、ラスティはバーバラの遺体のそばに腰掛けている。
彼はバーバラが死んでいることを認めてから、実に23時間もの間バーバラの亡骸と向き合っていたのだった。

他方、ラスティのかつての仇敵トミー・モルトも、地方検事代理として再びキャリアの階段を這い上がろうとしていた。
トミー率いる検察局は、遺体発見したラスティの不自然な空白の一日に疑いを抱く。とりわけ熱心だったのは、トミーの部下ジム・ブランドで、ラスティが判事をつとめた裁判の毒殺の方法と、バーバラの死因が類似していることと、さらに彼に愛人がいたことを突き止める。
ラスティは、再びサンディ・スターンに助けを求め、かくして因縁の法廷は幕を開けることとなるのだが…
ラスティは今度も無実を勝ち取れるのか?バーバラの死の真相とは…?



前作にも増して、重厚で、内省的、文学的に仕上がっていると思う。続編としてばかりでなく、単独の小説としても大成功なのではないだろうか。
何がいいって、今現在の60歳になった哀愁ただようラスティがいいのだ。

turow1.jpg
彼は確かに過ちを犯したが、その過ちはこれほどまでの罰を受けるものなのだろうか。
大体、あの事件の後、バーバラと再び結婚生活をやり直そうとしたこと自体、無謀なのだ。
ラスティの最大の罪は、きっぱりバーバラと別れなかったことなのかもしれない。

事件の真相は『推定無罪』同様に、全てが終わってから再びラスティの口から語られる。
だが、真実とは一体なんなのだろう?と思うばかりだ。真実は何にも増して価値があると人は言う。けれども、実際に起こった通りの事実としての真実は、ただそれだけでは何の役に立たはしない。それは聞き手が信じて初めて、価値を持つものだからだ。
真実が、誰かの意図によって覆い隠されていたならば、そして故意であれ偶然であれその覆いが完璧だったとしたならば、「無罪」は果たして「無罪」たり得るのだろうか?



無罪 INNOCENT
無罪 INNOCENT
(2012/09/28)
スコット トゥロー

商品詳細を見る
関連記事

category: クライム・警察・探偵・リーガル

thread: 最近読んだ本 - janre: 本・雑誌

tag: 海外ミステリ  このミス  リーガルサスペンス 
2012/12/20 Thu. 18:55 [edit]   TB: 0 | CM: 4

go page top

この記事に対するコメント

Re: お、順番がきたのですね!

naoさん、おはようございます!

> 最初がコレでよかった・・いやぁ読ませてくれました。
> 無駄に長い(物語の緩急を配慮しない?)海外北国地方のミステリに対し、
> その長さに値する読み応えがありました。

本当に!
トゥロー、やっぱりいいですよね!
私もトミー・モルトのキャラ、巧いなぁと思いました。
単にあて馬、ライバルにすることなく、最後、正義を貫こうとする所もトゥローらしい。
去年は、久しぶりの大物作家の復活が目立った年でした。

ランダム倒産は、アインシュタイン本の失敗が引き金と言われていますが、時代なのでしょうかねぇ...。
http://www.amazon.co.jp/アインシュタイン-その生涯と宇宙-下-ウォルター-アイザックソン/dp/4270006501/ref=sr_1_2?s=books&ie=UTF8&qid=1357600407&sr=1-2
の翻訳家からのレビュー投稿にい家事情があらわれているのですが、もうこの頃から無理な事業計画と焦ががあったような・・・

負債は9億ということですから、ほんと数子の指輪どれかひとつで救済された・・・。
それをいえば、昨年円高やら不況にやられた日本の中小零細企業の多くは、そうだったでしょうね。
今年は是非、安倍さんに頑張ってもらわなきゃ。

Spenth@ #- | URL | 2013/01/08 Tue. 08:21 * edit *

満足感に浸る・・


今年最初に読んだミステリでした(ミステリ以外では『杏っ子』室生犀星)。
最初がコレでよかった・・いやぁ読ませてくれました。
無駄に長い(物語の緩急を配慮しない?)海外北国地方のミステリに対し、
その長さに値する読み応えがありました。

感想は・・もうSpenth@さんのこの記事に全部書かれてありますわい。
登場する人物の描写が秀逸で、彼らの社会的背景が丁寧に描きこまれている。
それは端役に至るまで目の行き届いるもので・・いい仕事してはります。
かれらのする思索もよく、その人物の存在感(リアリティ)を確かにするもの。
自分は主人公よりも、仇役(?)のトミー・モルト(!)
この人物像がとてもユニークであるように思いました(巧いなぁ・・と感心)。

ところでランダム倒産ですか・・Spenth@さんの最新記事を読み、
遅くその事実を確認しました・・マツコめ!(意味不明)。
『2666』・・大冊を落として足の小指を骨折、なんてことになりませぬように。
はやく『喪失』読みたい・・ではまた!

nao #6gL8X1vM | URL | 2013/01/08 Tue. 01:45 * edit *

Re: 事実と真実の狭間(亀裂)からミステリは生み出される・・とか

トゥローは、「思慮するグリシャム」とも呼ばれてたそうなのですが、この「思慮する」の部分が私は好きなんです。今の時代は、量産可能なお手軽で、スピーディーな展開のものが好まれますが、こういう小説はやっぱりいいですよね。

> (「無罪」とイノセントは同意?ビミョーなニュアンスが含まれているのかも)。

そうそう、not guilyは無罪だけですが、innocent となると純真なとか、そういうニュアンスもありますよね。
法律用語としてのinnocent としてタイトルに持って来たのだと思うけど、これがまたアイロニックというか...。
結局、誰しもが皆、何らかの意味において罪人でしょ、みたいな、そんな感じでもあります。

> そう、サンディ・スターンという人物でした。「推定」に登場し、「立証責任」では主人公。
私は『立証責任』は読んでないのですが、ラスティがトシをとってるのと同様に、サンディも年老い、しかも病を押して弁護するんですよ〜。

Spenth@ #- | URL | 2012/12/21 Fri. 00:27 * edit *

事実と真実の狭間(亀裂)からミステリは生み出される・・とか


<前作にも増して、重厚で、内省的、文学的な小説に仕上がっていると思う。大成功なのではないだろうか。>
Spenth@さんの推奨印(!)が力強く捺された様子。
(「無罪」とイノセントは同意?ビミョーなニュアンスが含まれているのかも)。
内容記事を読んで、白ジャケ横山(失礼)の「半落ち」など、一瞬間連想しました。
そう、サンディ・スターンという人物でした。「推定」に登場し、「立証責任」では主人公。

またおもしろい本の紹介など・・教えてください。
(関西方面で「無罪」の図書借りているヒト、はやい返却お願いします)。
ではまた。

nao #6gL8X1vM | URL | 2012/12/20 Thu. 22:53 * edit *

go page top

コメントの投稿

Secret

go page top

トラックバック

トラックバックURL
→http://spenth.blog111.fc2.com/tb.php/232-db5c578e
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

go page top