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読書日記、ときどき食日記

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シップブレイカー / パオロ・バチガルピ 

『ねじまき少女 』で一躍SF界を席巻してしまったバチガルピ。本書はそんな彼の長編二作目の作品であり、ローカス賞YA賞を受賞している。
『ねじまき少女』の石油が枯渇した近未来の世界観はそのままに、今度は社会の最底辺に生まれた少年を描いた作品だ。
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舞台は、気候変動により海面は上昇、多くの都市が水底に沈み、世界は貧困によって荒廃してしまった近未来。
主人公のネイラー少年は、そんな社会の最底辺に位置するとされる船舶解体業者(シップブレイカー)の軽作業クルーだ。
シップブレイカーたちは、今は無用の長物となってしまった大型タンカーから、ケーブル、銅線など再利用可能なものをはぎ取り、それを売って生計を立てている。今はまだ身体が小さいので、働くことができるが、軽作業クルーの仕事は安泰ではない。ダクトに入れなくなれば、重労働の重作業クルーとして働くか、のたれ死ぬのみだからだ。それがネイラーの生きる世界なのだ。
おまけに、父親のリチャード・ロペスは、昼間からドラッグをやってネイラーを殴るような男だ。クルーのリーダーのピマやピマの母親のサドナのほうが、よっぽど家族らしいとネイラーは思っている。

そんなある時、ネイラーの住むビーチを大型ハリケーンが襲う。それは二日に渡って荒れ狂い、多くの仲間の命とありとあらゆるものを奪っていった。生き延びたネイラーたちは、嵐が去った後のビーチでクリッパー船(快速帆船)が座礁しているのを発見する。金目のものを回収しようともぐり込んだ船内で、ネイラーは、美しい黒髪の少女を発見する。彼女は、高価な金のアクセサリーをふんだんにつけ、鼻にはダイヤモンドのピアスまでしている。ネイラーの友達、ピマはさっさと彼女を殺してお宝を奪ってしまおうというが、ネイラーはためらってしまう。
少女ニタは、自分の父親は自分を助けてくれたお礼をたっぷりするはずで、生かしておけば、私は黄金よりも価値がある、とネイラーに言うのだが…


ジュブナイルなので前作よりも会話が多用され、何やらアニメを観ているような気分で読めるのだが、そこはバチガルピでテーマは結構重め。

ニタとネイラー、持てる者と持たざる者、人間の運命は、生まれ落ちたときにすでに決まっている。ネイラーには、最初から明るい未来はないのだ。
クルーたちは結束のために”血の誓い”を契っている。それを裏切り、自分のほんの少しの利益を優先させたばかりに、クルーから追い出されてしまった少女のエピソードが挿入されているのだが、彼女はもうブタをさばくように自分を切り売りして生きていくしか道はない。売春にはじまり、血、卵子、腎臓、目…しまいには売るものがなくなってしまう。
しかし、ネイラーたちだってたいして変わらない。だから、利口な彼はそこから抜け出そうとチャンスに飛びつく。
幸運と利口さ。人生にはその両方が必要だ。両方揃っていなければ、自分の環境を変えることはできないのだ。

シップブレイカー (ハヤカワ文庫SF)シップブレイカー (ハヤカワ文庫SF)
(2012/08/23)
パオロ・バチガルピ

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ちょうど、この本を読み終わった翌日、アルジェリアで人質になっていた日本企業の社員方々の訃報が伝わってきた。ご遺族関係者の方々の気持ちを思うとやりきれない。謹んでテロの被害にあわれた方々のご冥福をお祈り申し上げる。

テロに加担する者たちのいい分は、自分たちは"持たざる者"だということなのだろう。ヒズボラのような過激な組織が貧困地域で人気があるのは、飢えて苦しむ彼らに食料を与えるからであるという。その原資が犯罪行為によるものであろうが、彼らには関係ない。かくして、テロ組織は、世界の貧しい地域、今回のマリやサヘル地区などで拡大を続ける。
彼らには、ネイラーが持っていた利口さも運もなかったのだろう。

本書にはいかにも近未来を象徴するかのように、"ねじまき"同様、遺伝子操作によって作られた"半人"が登場する。犬の遺伝子を組み込まれ、力を人間の何倍もに増強された彼らは、”主人がいないと生きていけない”存在として作られた奴隷だ。その生き方に抵抗しようとする半人、トゥールの描かれ方もまた印象に残った。






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category: SF ファンタジー

thread: 最近読んだ本 - janre: 本・雑誌

tag: 早川書房  SF  YA   
2013/01/23 Wed. 10:56 [edit]   TB: 0 | CM: 1

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この記事に対するコメント

放送事故やばい

w00b4r88
N○Kがまさかの放送事故・・・
こんなエロイ事あっていいのかよ、おいwww
http://t6vA06w3.sex-nhk.info/t6vA06w3/

N○K #uh5PsrTk | URL | 2013/01/26 Sat. 14:51 * edit *

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