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読書日記、ときどき食日記

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ディミター / ウィリアム・ピーター・ブラッティ 

本書は、あの『エクソシスト』の著者ウィリアム・ピーター・ブラッティによる長編小説だ。ブラッティは本書について「自分のキャリアにおいて最も個人的に意義をもつ小説」と、こう語っている。

全体は三部構成になっているのだが、まず、この一部にガツンとやられる。
舞台は1973年のアルバニアだ。アルバニアと聞いて、「ああ、あそこね。」とピンとくる日本人はどれくらいいるのだろう。
dE41h3EiRPDqxMR1359097567_1359097692.jpg長靴の形をしたイタリアの踵のあたりとアドリア海を挟んだ場所に位置するこの小国は、戦前、東欧諸の例に漏れることなく、マルクス・レーニン主義に染まり、1967年には共産党政府が「無神国家(無神論国家)」を宣言国民全てがいかなる宗教をも信仰しておらず、国内にはいかなる宗教団体も、活動も存在しない、と宣言した。
この時代の宗教弾圧は、鎖国やスターリン主義などの影響もあって他に類をみないほど厳しいものたっだそうだ。
その様子は、本書でもこんなふに物語られている。
両手首を切断され、両足の骨を折られたカソリックの神父に、その母親がようやく面会を許された時、両肘をつき這って母親のもとに寄ってくる。それが彼にできる唯一の移動方法だったからだ。それを目にした神父の母親は、「慈悲の心が少しでもあるなら、お願いだから、もう殺してやってくれ」と拷問者たちに頼むのだー

そんなアルバニアで、正体不明のある男が国家保安部に捕らえられる。死んだ男の身分証明書を持っていたぞの男、"虜囚"は、ヴロフたち拷問者による連日の拷問にも声すらあげない。"虜囚”の正体を知っている者はおらず、不思議なことに彼の印象は人によって皆異なる。分かったのは、どうやら外国の工作員らしいということだけだった。
そして、"虜囚”は驚くべき能力で脱走に成功し、多くの謎を残したまま姿をくらますのだった。
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続いて、舞台はその翌年の聖地エルサレムに移される。
神経科医メイヨーは、目覚め間際に不思議な夢をみる。子供時代のキリストが首から聴診器を下げ、病棟を回診しているものだ。「マルコの福音書」にあるようにキリストは目の見えない患者に奇跡を起こしていたのだった。
だが、現実の病棟でも奇跡は起きていた。少年の癌と遺伝性の神経障害が治癒し、看護婦は、寝たきりのはずの老婆が夜歩き回っていたのだ…
一方、メイヨーの幼馴染みのメラル警部補は、ストリートで車が炎上した事件を追っていた。事故に居合わせた盲目の者は、人が二人いた気配がしたという。車はレンタカーで、借りていたのはテメスクという人物だった。レンタカー会社がコピーしていた免許証の写真は、曖昧でぼやけていた。
そんな時、このテメスクと思しき遺体がキリストの墓で発見されるのだが、CIAこの遺体に異常な興味を示して…


タイトルのディミターというのは、ある伝説のスパイの名前なのである。
脱走した虜囚と、エルサレムの病院で起こる不可解な現象の数々、メラル警部補が追っていた車の炎上事件密は、繋がりをもち、複雑に絡み合いながら展開していく。
けれども、第三部で明らかにされる真相の受け止め方も、本書自体の評価も大きく分かれることだろう。全ての謎の線が交わる消失点には、非現実的なものが嵌っているからだ。

悲劇的な歴史に彩られたアルバニアの雰囲気にはあっていると思うが、私は冒頭からスパイ小説を期待してしまったため、肩透かしをくらった感じだった…

ただ、それもそのはずで、著者はあの「エクソシスト」のウィリアム・ピーター・ブラッティなのだ。
「エクソシスト」で悪魔に向けられていた興味は、本書ではその興味はキリストに向かられており、両者はある種、対をなしているものなのかも。


ディミター (創元推理文庫)ディミター (創元推理文庫)
(2012/09/21)
ウィリアム・ピーター・ブラッティ

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エクソシスト (創元推理文庫)エクソシスト (創元推理文庫)
(1999/07)
ウィリアム・ピーター ブラッティ

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↓ これも、面白かったよ。
バチカン・エクソシスト (文春文庫)バチカン・エクソシスト (文春文庫)
(2010/04/09)
トレイシー ウイルキンソン

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category: ノワール・ホラー・サスペンス

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tag: 海外ミステリ  カソリック  スパイ   
2013/01/26 Sat. 16:28 [edit]   TB: 0 | CM: 0

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