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読書日記、ときどき食日記

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高慢と偏見 / ジェーン・オースティン 

たまにはアカデミックな体験もしてみようと、横浜市大のエクステンション講座に申し込んでみた。
この市民講座は1コマ単位で申し込むことができるのだ。
今回私が受講したのは英米文学で、テーマは"ジェイン・オースティンの『自負と偏見』を読む"なのである。

『Pride and Prejudice』は多くの出版社から色んな訳がでているが、『高慢と偏見』というタイトルのほうが馴染みがある。私の本棚にあるのも岩波版の『高慢と偏見』
講義で扱うのは原文だろうが今から辞書片手に読むのも難儀だし、岩波版を再読してみた。
jane austien place


さて、ベネット家には、主人公エリザベスを含め年頃の娘が5人もいる。しかし父親の土地財産は、限嗣相続のため父親亡き後は男性の親戚に譲られることになっており、母親と娘たちにはのこらない。だからベネット夫人にとって娘たちの結婚は一大事関心事なのだ。
長女ジェーンは、姉妹の中で一番の美人で優しく気立てがよい。本書の主人公である次女のエリザベスからみても、ちょっとお人好し過ぎるくらいなのだ。エリザベスは、ジェーンほどの美貌ではないが、姉妹の中でも最も頭がよく、姉よりずっと正しく人を見る目があると思っている。三女のメアリは本の虫という不器量な娘で、下のキッティとリディアはお行儀が悪く、軽薄で節操がない。
そんなベネット家の近所に、独身のビングリー氏が越してくる。ビングリーは、ハンサムで人当たりがよいだけでなく大金持ちだ。ベネット夫人は娘たちのうちの誰でもいいから、よい話に発展しないかと大いに張り切るのだった。
夫人の思惑通り、ベネット家の娘たちは、ビングリーと親交を深め、彼の二人の姉妹と友人ダーシー氏と知り合いになる。朗らかで気さくなビングリーと長女ジェーンはお互いに好意を抱きあうのだった。
一方、ダーシーは、ビングリー以上にハンサムで金持ちだが、プライドが高く人を寄せ付けない。ビングリーがエリザベスと一緒に踊ってはどうかとすすめても、「踊りたいと思わせるほど美人ってわけじゃないな」と答える始末だ。それを偶然耳にしたエリザベスは、その高慢ぶりを周囲に吹聴してわまり冗談にして笑い飛ばすが、内心プライドを傷つけられる。
ダーシーは、次第にエリザベスの印象的な瞳と聡明さに惹かれ始めるのだが、彼女の家柄の低さや低俗な妹たちの存在がネックとなり、素直になれない。当のエリザベスも好意を寄せられているのに気づくが、非礼な発言を思い出し無視するのだった。
そこに、ダーシー氏の亡き父親の執事の息子のウィッカムが登場する。彼は、ダーシーが自分に対して行った不当な仕打ちをエリザベスに打ち明け、エリザベスはダーシーに対し反感を強めるのだが…


Prideはダーシーを、Prejudiceはエリザベスを象徴するといわれているが、PrideとPrejudiceはダーシーとエリザベス両方にある。二人は、お互いそれらに拘泥し、おまけに周囲の人間が様々な思惑から邪魔を入れることから、すったもんだするが、紆余曲折の挙げ句、ダーシーに対する誤解も解けて最後には結ばれる。

時にくすくすと笑わせるシーンが登場するが、そのお笑いクイーンは誰を隠そうベネット夫人だ。あまりよい育ちとはいえず、「一生の仕事は娘たちを結婚させること」だというベネット夫人は、お高くとまったダーシーをおおっぴらに嫌っていたが、エリザベスとの結婚が決まるや否や、驚くべき変わり身のはやさをみせる。
他にもエリザベスに求婚し、断られると即座にその友人に鞍替えするコリンズ牧師、自分の娘をダーシーに嫁がせようと目論み、逆にエリザベスの気持ちをダーシーに伝える役割を果たしてしまうキャサリン・ダ・バーグ令夫人など、喜劇役者にはこと欠かない。
ダーシーの素晴らしい荘園を目にしたエリザベスが心が動かされるというのにも、笑ってしまう。
オースティンが好きじゃないという人は、たいてい彼女のこのちょっと高い所から見下ろしているような感じが嫌いというが、逆に私はそこがオースティンの良さだと思う。
ちょっと意地悪で、アイロニカルで、嫌みたっぷりな笑いこそが、オースティンの面白さだ。

アイロニーといえば、冒頭の「相当の財産を持っている独身の男なら、きっと奥さんを欲しがっているにちがいないということは、世に普く知られている真理である」という言葉を忘れてはいけない。
その真意は、「是非ともそうあって欲しい」という願望であり、裏を返せば「だって、ベネット家の娘みたいなこれといった財産を持たない独身の女性は、結婚しなければ悲惨な将来が待っている」ということなのだ。
Jane Austen

19世紀初頭、オースティンの時代、彼女の階級の女性には、”結婚か、老嬢としての惨めな人生か”しか選択肢がなかった。縁談にあたっては人格や人柄は検討される価値がなかったというから、エリザベスやジェーンのように愛情を伴う幸福な結婚は(しかも玉の輿!)は、実際には宝くじに当たるような夢物語なのだろう。
いつの時代にも、女の子は恋をしてそれが結婚という形で成就することを願っている。お泊まりしてそれが週刊誌にバレて、頭を丸めたアイドルが話題になっているが、若い女の子に恋愛をするなというほうが無茶な話だ。誰がやらせたのかは知らないけど、女の子が頭を丸めて謝罪なんていうダサくて悪趣味なことをしてしまったら、もう彼女はアイドルでいることなんてできないのじゃない?
話はそれたけど、オースティン自身が生涯独身だったというのは、また少々悲しい皮肉でもある。幸いにして彼女は、良家の養子となった兄の援助によって惨めな老嬢としての人生を歩むことはなかったとはいうけれど…

「村に二つ三つの家族があれば、小説は書けるわ」と言ったオースティンは、自分がよくわかっているごく狭い領域のことしか小説にしなかったという。本書は、自らが属す狭い世間の人々の世界についての、自分にとっての一番の関心事である結婚観についての、完璧な小説だと思う。
彼女の作品は結婚をもって終了なのであり、そこで終わっているからこそ"完璧"なのだ。


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category: 文芸

thread: お気に入りの本 - janre: 本・雑誌

tag: 古典  英国  オースティン  リアリズム 
2013/02/04 Mon. 20:49 [edit]   TB: 0 | CM: 3

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この記事に対するコメント

それはお手頃な講座ですね!
翻訳でももちろん楽しいですが、やはり原文のよさというのは読んでみないとわからないですよね。

ここ数年でまたブームが来たのかはわかりませんが、イギリスでは95年のBBC ドラマ以降、根強くブームが続いている感がありますね。
最近のドラマ化にもいいものがたくさんあります。

わたしはオースティンの良さをわかるつもりですが、イギリスに興味のない日本人には、あの感じは分かりにくいかもしれないですね。
八雲の時代だと、なおさらでしょうか。

ちょこ #- | URL | 2013/02/06 Wed. 19:34 * edit *

Re: タイトルなし

ちょこさん、コメントありがとうございます。

しかもこの講座、1コマ1,500円なんですよ。
今回初めて参加してみたのですが、英文ならではの発見と楽しみがありました。
やっぱりよいものですよね。

ロンドン在住の友人によると、英国では今またひそかにオースティンブームなのだそうです。
BBCドラマのせいでしょうか?
小泉八雲は「日本人にはオースティンの良さはわからない」と言ってますが、そうでもないですよね?

Spenth@ #- | URL | 2013/02/05 Tue. 09:01 * edit *

はじめまして。
ブログ村からタイトルに惹かれてやってきました。ちょこともうします。

こんな面白そうな講座があるとは、横浜がうらやましい限りです。
Spenth@さまが書いているように、オースティンはあのさりげない皮肉のこもった文章が魅力ですよね。
BBCドラマなど優れた映像化もあるので、もっと日本でも人気が出るとよいのですが。

ちょこ #- | URL | 2013/02/05 Tue. 00:02 * edit *

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