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読書日記、ときどき食日記

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高慢と偏見とゾンビ / J・オースティン、セス・グレアム=スミス 

さて、「高慢と偏見」つながりで、今日は「高慢と偏見とゾンビ」なのである。

これは広く認められた真理であるが、人の脳を食したゾンビは、さらに多くの脳を求めずにはいられないものである。
本書はこの一文で始まるのだ。ふざけているでしょう?(笑)
これが面白いのだ。シャンパンにはいちご、ワインにはチーズ、そして『高慢と偏見』にはゾンビというほどに、嵌まってる!

ところで、J・オースティンをこよなく愛する人たちのことを、Janeite(ジェナイト)と呼ぶらしい。『Pride and Prejudice and Zombies』という破壊力あるタイトルに、由緒正しい英国のジェナイトたちは、ざぞ面食らったことだろう。
Pride__prejudice_and_zombies_by_CarrieBlue.jpg
さて、本書のエリザベスは、たくましく、物騒で、血なまぐさい。
なにせ原因不明の奇病によって、英国にはゾンビが大量発生しているのだ。この世界では、才芸に優れた女性とは、立ち居振る舞いが上品で、楽器ができるといったことではなく、東洋の武術訓練を受けており、ヨーロッパの最新の武器と戦術もたしなんでいなければならないのだ。
ベネット家の5人の娘たちも、中国で少林寺拳法の修行をし日夜武術の腕を磨くべく精進している。なかでも一番の無術の使い手は、次女のエリザベスだ。
ベネット家の隣のネザーフィールド館も先頃ゾンビの大群に襲撃され、住民は皆餌食になってしまったばかりだ。そんなネザーフィールド館に新しい住人が越してくる。独身で財産家のビングリーだ。
催された舞踏会で、ベネット家の長女ジェインとビングリー、エリザベスとビングリーの友人ダーシーの二組のカップルは初めて出会う。ハンサムで親しみやすいビングリーに比べ、ダーシーは一千万の化け物を退治してきたという強さにもかかわらず高慢で、その傍若無人な態度は人々の不評を買うのだった。
ジェインとビングリーがよい雰囲気になる一方、エリザベスはダーシーの「あの程度じゃ、ぼくはその気にはならないね。」という非礼な発言を耳にし、全身の血を凍らせる。穢された名誉のためダーシーの首をかっさばかなくては!、そう心に決めたまさにその時、そこにゾンビが雪崩れ込んでくるのだった。悲鳴を響き渡らせ、客たちが逃げ惑う中、エリザベスたち姉妹は足首の短剣を手にフォーメーションを組み、次々とゾンビの首をはねていく。
ダーシーはエリザベスの巧みな短剣捌きを感嘆を持って見守っていたが、やがて彼女の印象的な瞳と、武術の腕前と身のこなし、腕の筋肉などに惹かれていくのだった…

pride and prejudice and zombies

本書は、形式上、J・オースティンとセス・グレアム=スミス他という共著という形をとっている。とはいえ、18世紀に生まれたオースティンと、1970年代生まれのセス・グレアム=スミスが共同で筆を執るはずもなく、著作権が切れていることをいいことに、セス・グレアム=スミスらが勝手にゾンビを加えているのだ。
解説によれば、こういうジャンルはMushupと呼ぶらしい。元は音楽用語で、二つ以上の曲から一方はボーカルを、もう一方は伴奏を取り出し、元からあった曲のようにミックスする音楽の手法のことなのだそうだ。
マッシュアップの定義は、あくまで元の曲をそのまま使うことなのだそうだが、本書もそれに忠実である。大筋は原作にそっており、文章も8割くらいはオースティンのものだが、オースティン特有の皮肉な笑いを高め、彼女の文章を解釈面で補うことまでしているのだ。
ちょっとやりすぎかな、と思うところもあるが、ゾンビを組み合わせることで、新しく今の時代い沿うものになっていると思う。例えば原作では、ジェイン(ジェーン)の身分や家族の低俗さのために、ダーシーはビングリーに彼女をあきらめさせようと画策するのだが、本書でダーシーが心配しているのは、ジェインが奇病にかかっているのではないかということなのだ。
エリザベスをニンジャの心臓を手づかみで食してしまうほどに野蛮に描いたのも、現代の強すぎる女性像への皮肉だろうか。確かに今時の女性は怖いもんなぁ…(自分も含めて)
もしかして、冒頭の一文は、「これは広く認められた真理であるが、ゾンビを次々となぎ倒すほど強い女性でも、夫を必要としているものである」のほうがテーマ的にふさわしいのかも。

巻末には「読書の手引き」と称して10項目にわたる読書のポイントが掲載されている。
豊かにして重層的な、愛と戦いと超自然を描いたゾンビ古典文学作品に並びなきこの傑作をより深く味わうためのものなのだそうだ。


高慢と偏見とゾンビ(二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション)高慢と偏見とゾンビ
(2010/01/20)
ジェイン・オースティン、セス・グレアム=スミス

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category: 文芸

thread: 最近読んだ本 - janre: 本・雑誌

tag: 英国  コメディ  ブラック 
2013/02/07 Thu. 15:40 [edit]   TB: 0 | CM: 0

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