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読書日記、ときどき食日記

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東京国際文芸フェスティバル!〜詩人の朗読、生クッツェー、そして文学は... 

3月1日〜3日に都内各所で”東京国際文芸フェスティバル”が開催された。私が参加したのは、1日の夜に六本木の森ビル49Fのアカデミーヒルズで行われたイベント。折しもこの日は芥川の生誕120周年だった。
私は開場の18:30ぴったりに行ったのだが、既にその時点でもんのすごい行列ができていた。収容人数は500名らしいけど、立ち見もあったので一体どれくらいの人がきていたんだろう?
この日の海外ゲストはノーベル賞作家 J .M.クッツェー『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』ジョナサン・サフラン・フォア『占領都市 TOKYO YEAR ZERO II』デイヴィッド・ピースという豪華な顔ぶれ。

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今回のこの一連のイベントは、日本財団が主催しているそうで、さすがにお金がかかってる。パンフ類もほらこの通り。エコバッグにフォーチュンクッキーのおまけつき。ちなみに参加費は無料!
まず、主催者の日本財団の偉いさんのスピーチで幕を開ける。出版不況だとかいわれているけど、そりゃ時本は人口が減ってるんだから仕方ない。これからは日本の小説もじゃんじゃん海外に輸出していかないといかんよね、というようなことをお話になる。これから翻訳家を目指す人は、英語→日本語ではなく、その逆の方が将来性はあるかも。日本語の繊細なニュアンスやその濃淡を英語で表現するのは難しいだろうけど。

次に、詩人の谷川俊太郎氏による詩の朗読、クッツェーによる新作The Childhood of Jesus(邦題『イエスの幼子時代』)の朗読に続いて、翻訳家の柴田元幸氏をモデレーターに、川上未映子、デイヴィッド・ピース、ジョナサン・サフラン・フォアによる「都市」「 物語」「 再生」をテーマにしたトークライブという流れだ。



◆詩人 谷川俊太郎による朗読
私は詩集とかを読んだりするタイプじゃないのだけど、ちょっと緩んで何やらあたたかな気持ちになる。谷川さんの木訥とした声がまたいいのだ。
どれも良かったのだけど、「さようなら」という詩が特によかった。

「さようなら」
私の肝臓さんよ さようならだ
腎臓さん膵臓さんともお別れだ
私はこれから死ぬところだが
かたわらに誰もいないから
君らに挨拶する

長きにわたって私のために働いてくれたが
これでもう君らは自由だ
どこへなりと立ち去るがいい
君らと別れて私もすっかり身軽になる
魂だけのすっぴんだ

心臓さんよ どきどきはらはら迷惑かけたな
脳髄さんよ よしないことを考えさせた
目耳口にもちんちんさんにも苦労をかけた
みんなみんな悪く思うな
君らあっての私だったのだから

とは言うものの君ら抜きの未来は明るい
もう私は私に未練がないから
迷わずに私を忘れて
泥に溶けよう空に消えよう
言葉なきものたちの仲間になろう


この詩をお寺の住職の前で朗読した際に、お坊さんから
ちんちんさんに、どんな苦労をかけたんです?」と聞かれ、とっさに答えることができなかったというエピソードも披露してくださった(笑)
偶然にも翌日の「王様のブランチ」で自選 谷川俊太郎詩集 を紹介していた。Amazonで買おうと思ったら、「一時的に品切れです」。人気があるのも納得。
朗読の感動はあの声あってのものなので、オーディオブックとしても発売してくれればいいのに、と思う。



◆クッツェーの新作『イエスの幼子時代』
さて、この日の私の目当ては、生クッツェーだったのだが、撮影も録音も禁止。せっかくデジカメ持って行ったのに...。生クッツェーは、写真でみる通りスラリとしていてスーツ姿が素敵でしたよ。まんま『恥辱』のディヴィッドを連想してしまう。
そのクッツェーはオーストラリアに移住してから、その作風がソフトに、どこかユーモラスに変わった気がする。新作もその路線なのじゃないかな。
勿論英語での朗読なので、観客には翻訳機が貸し出されていた。しかし、どうやら同時通訳の人と機械と双方の調子がよくなかったらしい。あまり役に立たない代物。せっかくなので、クッツェーの生の声に耳をすます。
少年を連れたある男性が、どこか他の国から海を越えてやってきて、しばらく避難所に滞在した後、このシェルターの管理センターにやってきたという物語。その避難所で、彼らはスペイン語を習得し、男の子にはダビドという名が与えられる。ダビドは男性の子供でもなく孫でもない。全く無関係なのだが、彼らは行動を共にしている。シェルターに宿を求めようとするが、割り当てられた部屋の鍵を持っている人物はすでに帰ってしまっていた...。
大まかにはこのような内容だったと思う。3日の早稲田で行われたイベントでは、これを俳優の谷原章介が日本語で朗読したそうだ。きっともうじき鴻巣さんの翻訳で刊行される予定なんだろう。


◆都市、物語、再生
後半の「都市」「 物語」「 再生」というのは、先の311の震災を意識したものだ。川上未映子、デイヴィッド・ピースの両氏は、『それでも三月は、また』という作家、詩人によるアンソロジーに参加している。
時間も押せ押せで、また生イベントであるので、トークも柴田さんが当初意図した通りにはまとまらなかっのだが、最後の会場からの質問の一つにとても面白いものがあった。
質問者は、22歳の学生さん(♂)で自らを第三世代だという。彼は、そんな自分たちや自分たちの未来の子供に対し、ずばり震災や戦争などにおける文学の役割を問うたのだ。どんなに悲惨な出来事も、いずれ風化していく。記憶が継承されていくことの文学の役割について、どう思いますか?と聞いたのだ。
若いのに、もんの凄い生真面目なことを考えてんのね、と思っていたら、ジョナサン・サフラン・フォアは、「それは責任じゃないくてチャンスなんだと思う」と答え、それ自体に疑問を呈す。自分は、「利用目的のための小説は自分は書きたくない」というのだ。
ピースはやはりピースで「その答えを求めるために僕は小説を書く」と言う。川上さんもどちらかといえば、ピースの答えに近かったのかな。
今回の震災についていうならば、我々の中にも、忘れてはいけないという気持ちと、それでも前を向いて歩き生きていかなければならない、という相反するものが同時に存在している。

話はどこかの時点で、文学が担うべき責任から、各々の小説のスタンスへと流れていってしまった。目的について最初からバチっと決め、設計図のようなものを描いて書く人もいるし、ジョナサンのように、自由に書く人もいる。
ところで無意識といえば、かつて三島由紀夫は「僕に無意識はない!」と言っていた。しかし無意識がない人はいない。それだけ自分は自分をコントロールしているんだと言いたいのだろうが、どんなにカッチリと決めて書いていても、その時間、作家も生の時間を過ごしており、その生の鬩ぎ合いからしか生まれないものもある。
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category: 雑談その他

thread: 本に関すること - janre: 本・雑誌

tag: クッツェー    谷川俊太郎  文学  イベント 
2013/03/06 Wed. 14:04 [edit]   TB: 0 | CM: 2

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この記事に対するコメント

Re: ち○ち○さんは別人格です

> んを○に変えないと投稿できなかったよ
思い切り書いちゃってる私は・・・!!!(笑)

そんなお茶目な谷川さんの詩は、文字でみる言葉そのものも素敵なのですが、耳から入ってくる言葉はもっと素敵でした。

『2666』、おっしゃるように詩的で、自由で(笑)
しかし、ボラーニョという放浪人の生の人生に触れるものでもありますよね。
本当に「たまにグワシと心を掴む」

あまりに『2666』をどう読んでよいのか分からなかったので、こないだ越川芳明氏×小野正嗣氏のトークセッションに行ってきたのですが(有料!)http://www.tokyodoshoten.co.jp/blog/?p=4594
結局、プロの彼らも一度読んだくらいじゃよくわからないんだな、と。
ところで、この越川氏、アンチ春樹で『1Q84』をこき下ろしているんです。どうしてなのか、ボラーニョを絶賛して、なぜ春樹は駄目なのかが知りたかったのですが、それには一切触れられず、ちとがっかり。

Spenth@ #- | URL | 2013/03/06 Wed. 21:03 * edit *

ち○ち○さんは別人格です

ち○ち○さんには笑わしていただきました。

私めもどういう訳か2年ほど前から詩集を読むように
なり、たぶん若いときには感じる事が出来なかった事が
感じるようになるんでしょうかね?
柄ではないけど
読んでて何となくいいんですよね
中也、リルケなんですけどね
谷川俊太郎もいいねえ、早速amazonでポチだな

そう言えば『2666』なんかすごく詩的だったように感じたけどな

『千里眼のフロリーダアルマーダの黄色い表紙の本
大地から姿を消し、いつも一緒だった愛する者と別れると言う事が
そしてこうも書いてあります。
限りない大気は果てしなく、澄み渡る深い空は
何のためにあるのだろう?
この計り知れぬ孤独にどんな意味があるのだろう?
そして僕は何なんだろう?』
愛犬との別れをこの文章で思い出しましたは
ボラーニョは訳が解からん部分が多いけど
たまに心をグワシと掴むからすごいと思ったよ

んを○に変えないと投稿できなかったよ

アラフォーおやじ #- | URL | 2013/03/06 Wed. 20:13 * edit *

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