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読書日記、ときどき食日記

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ペンギン*ハイウェイ / 森見登美彦 

ファンタジーノベルとやらが流行ってはいるが、私はそれをみくびっていた。
どう頑張ったってムーミンや羊男には勝てやしないだろう。そんなお腹にたまらないものを読んだって仕方ないじゃないかと思っていたのだ。(ミステリがお腹にたまるのかといえば、これが、そうでもないのだが...。)
しかし、これもなかなかのものだったわ。
入り口は万城目学だが、これで考えを改めた。

その万城目学と同じ京大出身で、ジャンルも作風も似ているのが森見登美彦。通称モリミー。昨今の作家は愛称で呼ばれる。前エントリでも書いたがこの『ペンギン・ハイウェイ』は本屋大賞にノミネートされている。
つまりは本屋が売りたい本の中のひとつだということだ。
まぁ事実本屋へ行けば平積みしてあるし売れているのだろうが、売れてるものにはやっぱりそれなりの理由があるもんだと読んで甚く納得した次第だ。(けれど、AKB48の良さはよくわからない)

万城目学の世界が好きな人は間違いなくこれは好きだろう。


ペンギン・ハイウェイペンギン・ハイウェイ
(2010/05/29)
森見 登美彦

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主人公は小学4年生の”ぼく”。
この”ぼく”の語りで物語は展開していくが、この”ぼく”がとにかくイカしている。
宮部みゆきも少年を主人公にした語りが巧いが、この”ぼく”ことアオヤマ君のキャラクターには及ばない。

”ぼく”はたいへん頭がよく、しかもおこたらずに勉強をするため、本人いわく、頭角をあらわしている。
"ぼく”は脳を非常によく使うため、甘いものの補給がかかせない。
お気に入りは「おっぱいケーキ」。カスタードの入った丸いケーキだ。
そして、脳を非常によく使うから、夜は死ぬほど眠くなる。
そのため歯磨きがおろそかになり、歯医者に通っているが、そこのお姉さんと”ぼく”は友達だ。
お姉さんは仕事が終わってもカフェで勉強をしている努力家なので、”ぼく”は一目置いているのだ。
そんな”ぼく”の住む街に突如としてペンギンたちが現れる。
この事件に歯科医院のお姉さんの不思議な力が関わっていることを知った"ぼく"は、その謎を研究することになる...。

このアオヤマ君こと”ぼく”のおよそ小学生らしくない独特の言い回しがよい。
小学生らしくはないが、子供のかわいらしさを失っていない。
「おとなげないことをしました」と謝り、お姉さんに「君はまだ子供でしょう」とたしなめられたりもする。
このような会話が実にユーモラスで、プッと笑ってしまう。

また、この”ぼく”ことアオヤマ君の「まっとうさ」が好きだ。
「ぼくは自分がされて嫌なことをほかの人にはしない主義だ」
まあ、なんていい子!
子供の世界でも大人の世界でも、当たり前すぎるくらい当たり前だったことが、段々と当たり前でなくなっているものなぁ。

昨今のキレやすい子供とは逆にアオヤマ君は怒らない。
そういうことがあると、お姉さんの「おっぱい」のことを考え、心を平和に保つ。これは是非見習うべきテクニックじゃないか。
お姉さんに対する恋愛のまだ一歩手前の少年の心情も純(?)で心地いい。物語自体はこの”ぼく”のペンギンとお姉さんの研究を軸に展開していくのだが、ところどころの会話がイカしている。このあたりが本書のキモの部分であると思う。

「ほかの人が死ぬのとぼくが死ぬのということはぜんぜんちがう。それはもうぜったいにちがうんだ。ほかの人が死ぬとき、ぼくはまだ生きていて、死ぬということを外から見ている。でもぼくが死ぬときはそうじゃない。
ぼくが死んだあとの世界はもう世界じゃない。世界はそこで終わっている」


これはアオヤマ君の友達ウチダ君の言葉なのだけど、どうしてなかなか深いではないか。死とはどういうものであるのか。
自分と残された世界に関する問題は、脳死の問題からパラレルワールドまで広く深く横たわるものだ。

お姉さんとペンギンの謎は解明されない。謎は謎であるままだ。
でもそれでよいではないか。これはファンタジーなのだから。本書の趣旨は謎の解明にはない。

そういうのは許せないと憤る人は、アオヤマ君に倣って「お姉さんのおっぱい」のことでも考えるとよいだろう。

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category: SF ファンタジー

thread: 売れてる本 - janre: 本・雑誌

tag: 森見登美彦  日本SF大賞  本屋大賞 
2011/01/28 Fri. 08:31 [edit]   TB: 0 | CM: 0

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