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読書日記、ときどき食日記

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首斬り人の娘 / オリヴァー・ペチュ 

昨年あたりからミステリー界では、ドイツものが大流行だ。
この間の"翻訳ミステリー大賞"にも、ドイツものはなんと3作品もエントリーされていた。ドイツには元々ミステリーというのはなく、ごく最近になって発展したというのだが日本でのこの流行はいつまで続く?
そういう本書もドイツものなのである。
ドイツものといえば、ナチものが定番だが、これは少し毛色が異なる歴史ものなのである。

Magpie on the Gallow 1
『首斬り人の娘』というタイトルが示す通り、舞台は中世の雰囲気が色濃く残る17世紀半ば。ミュンヘンにほど近い田舎町ショーガウだ。
魔女狩りはヨーロッパ全域に長期にわたってみられた現象だが、ドイツでは、本書の舞台となる17世紀半ばに大規模な魔女狩りが発生していたとのだという。ほとんどが密告による濡れ衣で、疑いをかけられるのは、財産をもたない貧しい人々だったらしい。本書もそんな魔女を処刑するシーンで幕を開ける。 

魔女や罪人への刑を執行するのが、首斬り人、処刑吏の仕事だ。
日本でも江戸時代までは山田浅右衛門のように死刑執行人の家系があったそうが、ドイツでもこの職業は世襲制だったようだ。しかも、卑しい職業として嫌われていたという。
プロローグから35年が経ち、ドイツ全土を荒廃させた30年戦争はようやく終わり、街は平穏を取り戻しつつあった。家業を嫌って、子供の頃、自分は決して「首斬り人」なんかになるもんか、と誓ったヤーコプ・クィズルも、今やショーンガウの立派な首斬り人となっている。
娘のマグレナーダも美しく成長した。医者の息子ジーモンと両思いのようだが、首斬り人の娘は首斬り人の家系の者としか結婚することはできない。
あるとき、川の筏寄せで血まみれになった子供が見つかる。その子はグリマーという男の息子だった。心臓付近に致命傷を負っており、医者の息子ジーモンが駆けつけた時は既に息絶えていた。ジーモンがその子の衣服を脱がせてみると肩胛骨の下には手のひら大の何かの印のようなものがあった。
「魔女だ!」「シュテヒリンだ!産婆のシュテヒリンは魔女だったんだ。よくも俺の倅を!」グリマーは叫ぶ。彼はお産で妻を亡くしており、以前から産婆のシュテヒリンに恨みを抱いていたのだった。かくして、集団ヒステリーは拡がっていった。
首斬り人クィズルは、場を納めるために仕方なくシュテヒリンを投獄する。しかし、クィズルも、ジーモンも、シュテヒリンが子供を殺したなどとは全く信じていなかった。
シュヒテリンの命の猶予は、ミュンヘンから選帝侯の執事がやってくるまでの約一週間。魔女の自白を得るための拷問もまたクィズルの役割だ。
クィズルとジーモン、そしてマグレダーナは、シュテヒリンの命を救うことができるのか?

oliver polzschプロローグで思い浮かんだのはブリューゲルの"絞首台の上のかささぎ"。
この絵が描かれたのは16世紀のネザーランドなので、本書とは時代も国も違うのだが、欧州で息長く席巻していた魔女狩りをテーマにしているという。絞首台のそばで人々は用を足したり、楽しげに踊ったりしている絵なのだが、どこか不気味な雰囲気に包まれている。そして、ねじれた絞首台の上にはカササギとまっている。NHKの「額縁をくぐって物語の中へ」でもやっていたが、このカササギ、実は密告者の象徴なのだそうだ。

とか、なんだか、不気味に始まるこの物語、実は著者の祖先がショーンガウの首斬り人であったことに端を発しているそうなのある。自分が処刑人の家系だというのは、なかなか受け入れ難しいところであろうが、同時に大きな共同体の一員であることへの安堵のようなものも語ってもいるという。

die henkerstochterだからというわけでもないだろうが、実はこの小説、それほど暗くもないし、怖くもない。ぢちょらかといえば、牧歌的なのだ。
中世的的背景にミステリーを描いて、身分の卑しい美しい娘と医者の息子の障壁あるロマンスをプラスオンという感じだ。もっといえば、"お伽噺"的だということもできる。女性はこういうの、好きなのじゃないだろうか。
スリルもないわけでもないが、魔女裁判時代の首斬り人に、血のりや邪悪さを求めるのであれば、ご期待には添わないかも。ドイツ本国のもののように、もっとハーレクイン的装丁にしても良かった気さえする。

それに、「首斬り人の娘」といいながらも、実は物語的には首斬り人その人クィズルが主役なのだ。まぁ、どうしてもマグレダーナを中心に持ってきたかったその気持ちはわからんでもないが。
ちなみに、この「首斬り人の娘シリーズ」は、現在までに第四作までが上梓されているのだとか。


首斬り人の娘 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)
オリヴァー・ペチュ
早川書房 (2012/10/5)

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category: 歴史・大河・ドラマ

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tag: 海外ミステリ  ドイツ  歴史  異端審問  ロマンス 
2013/04/22 Mon. 21:09 [edit]   TB: 0 | CM: 0

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