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読書日記、ときどき食日記

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夜に生きる / デニス・ルヘイン 

本書は、『運命の日』の続編である。
「運命の日」は、重厚な歴史大作だったが、本書はクライム・ノヴェル、もっと言ってしまえばギャング小説である。

2013年度エドガー賞長編賞を受賞。ノミネートされたときから、まぁ間違いないだろとは思ったけど、『Gone Girl』みたいな超〜人気作もあったりして、今年はレベルが高かった気がするな。
 Ben Affleck"ルヘインものは当たる"というのは、もはやハリウッドの定石。映画化権は既にワーナーブラザーズが入手済みだという。ところで、『運命の日』もサム・ライミ監督でどうのこうのと言っていたが、公開はこちらのほうが早くなりそう。
というのも、ベン・アフレックが脚本・監督で、もうこの夏くらいから撮影にはいる予定だと聞くからだ。後半から舞台はタンパに移ることもあり映像映えもしそうだ。
ギャングものということで、「ゴッド・ファーザー」と比較されるのは避けられないだろうが、それを逆にバネにして、是非「アルゴ」で取り損なった監督賞のリベンジをしてほしいものである。
ちなみに彼は、ルヘインの「Gone, Baby, Gone ー原作邦題:愛しき者はすべて去りゆく 」で、一度脚本・監督をしたことがあり、ルヘイン作品にはなじみがある。(※日本未公開)


さて、「運命の日」は、コングリン家の長兄ダニーを主役の一人に据えていたが、本書ではそのバトンは末弟ジョー(ジョセフ)に渡される。あの時、ジョーはまだ13歳の子供だったのに、大きくなったもんだ!

「運命の日」を知らない方のために、ちょっとコングリン家の説明をしておくと、このアイルランド系の一家の父親のトマス・コングリンは、移民の一世でありながらボストン市警の警部にまで出世したやり手だ。
長男ダニーが率いるボストン市警の組合の前身BSCが、市警のストを決行したため立場を悪くしたが、なおもしぶとく市警に生き残っている。トマスには三人の息子がおり、長男が「運命の日」で物語りをリードしていくダニーで、彼の下に10ヶ月違いの弟コンがおり、少し離れて末弟のジョーがいるのだ。

live by nightこのジョーこそが、本書の主人公なのである。
禁酒法末期のボストンで、ジョーはギャングのティム・ヒッキーの手下となっていた。ただし、ジョーに言わせれば、ジョーはギャングではなく、"無法者”なのだ。ある時点までは…

あるとき、ジョーは仲間のバルトロ兄弟とともに、もぐりの酒場のカジノに強盗に入り、そこでエマ・グルードという女と出会う。後で思えば、その出会いが、ジョーの人生の分岐点だった。
エマは、ジョーのボスと敵対するアルバートの情婦だった。歳はジョーとかわらず、白い肌に真鍮色の髪、そして三つの拳銃が向けられていても、今にもあくびしそうに落ち着き払っていた。その時から、彼女はジョーの忘れられない女になったのだ。ジョーはそれを愛だと思い、自分の中にあいている空洞をエマが埋めてくれると思いたかったのだ。
だが、運命はジョーに幸福を与えてはくれなかった。ギャング同士の抗争は激しさを増し、ジョーのボス、ヒッキーも殺されてしまう。ジョー自身も、田舎町の銀行を襲った警官をおそった際、故意ではないにしろ警官を死なせてしまった。ジョーの父トマスが手を尽くしてくれたものの、" 無法者”は塀の中に送られてしまう。しかし、トマスの助けや、自分自身の機知と運によって、刑務所内の抗争と裏切りの地獄を生き延びたのだった。
そして、出所の時をむかえると、ギャングの大ボス、マソ・ペスカトーレの配下として、フロリダのタンパへと向かうのだが…


"夜に生きる"という言葉は、確か映画「ミスティック・リバー」のなかで、ショーン・ペンが言っていた気がする。
どこかでルヘインは、ルヘイン自身自分が作家になった理由と、ジョーが"無法者”になった理由には、それほど違いはないと語ってもいる。昔から温めていたテーマなのだろう。

ジョーの父トマスは成功者で、コングリン家はアイルランド移民のなかでもかなり裕福な暮らしをしていたのだ。そのジョーがなぜ、"無法者”になってしまったのか、"夜に生きる”ことを選らんだのか。そして、それがジョーに何をもたらしたのだろうか。
TampaFranklinStreetNorth.jpgジョーが”夜に生きる”ことに惹かれるようになったのは、ある時期から、心に穴が空いてしまったからだが、その空虚さの象徴として、エマとエマへの想いは描かれている。
同時に、本書は父親と息子の物語でもあるのだ。「運命の日」の時には思いもよらなかったほどトマスの父としての愛情は深く、心に沁みる。ベン・アフレックの脚本でも、これがしっかりと描かれてるといいのだが…

トマスは、"夜のルールで生きる”と決めたジョーに、こう言うのだ。「暴力は暴力を生み、そうして生まれた暴力の子供は、野蛮に、無慈悲に育ち、お前の元に帰ってくる。おまえには自分の子供だとはわからないが、彼らにはわかっていて、お前を罰しなければならないと考え、付け狙う。」
ジョーは、自分はその一般的な論理の例外であると過信していた。自分がルールを作る側の人間で、それを全員に従わせることができれば、その一般論は当てはまらないと。だから、一般のルールに縛られない無法者になったのだ。確かに、ジョーは自分の帝国を築くことができるほどには賢かった。しかし、最後の最後、この父の言葉を噛みしめることになるのだ。
ルヘインの小説には、いつも”絶対的な理”というべきものがあり、読後それについて三思することになる。

スピード感がありページターナーでありながらも重厚、使い古された設定でありながらも新鮮、壮大でありながらエンタメ色も失わない。
私の今年のナンバーワンはこの本だと思う。まだ5月だが、今年これよりよい本に出会える気がしないのだ。
「運命の日」はちょっと暗くて重すぎて...という方も、大丈夫。
こちらは明るいハッピーエンドというわけではないが、エンタメ色も強いので楽しめると思う。


夜に生きる 〔ハヤカワ・ミステリ1869〕 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

デニス・ルヘイン(著) 加賀山卓朗 (翻訳)
早川書房 (2013/3/8)







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運命の日(上)〔ハヤカワ・ミステリ文庫〕
運命の日(下)〔ハヤカワ・ミステリ文庫〕

デニス・ルヘイン(著) 加賀山卓朗 (翻訳)
早川書房 (2012/3/5)


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category: クライム・警察・探偵・リーガル

thread: 最近読んだ本 - janre: 本・雑誌

tag: 早川書房  映画化  ベン・アフレック  三部作 
2013/05/10 Fri. 22:35 [edit]   TB: 0 | CM: 0

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