Reading For Pleasure

読書日記、ときどき食日記

05« 2017 / 06 »07
1.2.3.4.5.6.7.8.9.10.11.12.13.14.15.16.17.18.19.20.21.22.23.24.25.26.27.28.29.30.

スケアクロウ / マイクル・コナリー 

マイクル・コナリーに嵌まっている人を、私は勝手に"コナラー"と読んでいる。
『リンカーン弁護士』『真鍮の評決 』 がほぼ同じネタ・同じテーマの使い回しだったことに、「オイ、オイ、それってどうなのよ?!」と私は憤ったけれども、熱心なコナラーにとってそんなことは些細なことにすぎない。信仰心が吹き飛ばしてしまうのだ。
「ミッキーとボッシュの二人が揃っただけでOK!」なのだ(笑)
ファン心理とはそういうものかもしれない。

同じどんでん系で量産系のミステリ作家にはJ・ディーヴァーもいるが、ディーヴァニアンは意外とシビアなのである。ちょっとした瑕疵にも容赦ない。ただ、私は、ディーヴァーはもっと褒めてあげるべきだと思うんだけどなぁ…
そんな"痘痕もえくぼ"なまでににコナラー化するためには、まず、"ボッシュシリーズ"に嵌まらなければならないのだろう。
ちなみにコナリーの著作というのは大抵がシリーズものの多作なのである。一番メジャーなのがハリー・ボッシュを主役にした"ボッシュシリーズ"だろう。
他にマシュー・マコノヒー主演で映画にもなった『リンカーン弁護士』の"ミッキー・ハラーシリーズ、そして『ザ・ポエット』で主役をつとめた新聞記者の"ジャック・マカヴォイシリーズ"がある。"ボッシュシリーズ”は警察小説、"ミッキーシリーズ”はリーガルもの、そして"マカヴォイ”はジャーナリストと住み分けがされているというわけだ。
これらの登場人物は相互に絡み合っており、全く異なる作品であっても段階的、派生的に繋がっているとされている。例えば、ボッシュとミッキーは異母兄弟だったりするし、本書に出てくるレイチェルも、かつてどっかでボッシュと関係があったりしたらしい。ゆえに、コナリーを堪能するためには、とにかく全部読みなさいと言われるのだ。
が、コナリーは多作なので、結構な時間をとられるだろうし、そうなれば、他の新作を読む楽しみを犠牲にしなければならない。
それに同じ系統のものばかり読み続けるというのは、私にとってはある種、苦行に近い。
というわけで、コナラーにはなれませんのです。



さて、さて本書は『ザ・ポエット』の続編ともいうべき作品で、新聞記者ジャック・マカヴォイものである。

losangelestimes.jpgデンヴァーの新聞記者だったジャックは、詩人(ザ・ポエット)の事件の本を書いたことで、一躍脚光を浴び、L.A.タイムズ紙に引き抜かれた。
しかし、『ザ・ポエット』から12年、ジャックも40歳を過ぎた。新聞業界は倒産とM&Aの嵐が吹き荒れており、あれ以来これといた活躍もないジャックは解雇を通知されてしまう。経費削減のための人員整理だ。
今や時代は、インターネットだ。紙とインクのジャックの時代は終わっていた。L.A.タイムズは、給料の高いジャックのような記者の首を切り、給料が無料同然でも文句を言わず、モバイルを使いこなす新人に置き換えようとしていたのだ。社を去るまでのジャックの猶予は二週間。その間に挨拶回りを済ませ、新人のアンジェラに引き継ぎを行わなければならない。
そんな時、ジャックに一本の電話がかかってくる。それは記事に対する苦情の電話だった。「あんな嘘を書いて!あの子は人殺しなんかしてない!」声から察するに、黒人の年配の女性らしい。彼女はつい二週間前に起こった”女性のトランク詰め殺人”の犯人とされる少年の祖母だった。
ジャックは自分のキャリアの墓石となるような記事を求めており、彼の勘は、少年は無罪だと言っていた。
"トランク詰め遺体"のみつかった団地は、黒人が98%をしめる貧困とドラックの巣窟で、犯人とされる少年も黒人だ。そしてトランクに詰めの遺体は白人女性だった。
ジャックのネタは、今や人種問題を孕んだ特ダネにつながろうとしていた。しかし、そのネタに新人のアンジェラが割り込んでくる。
そして、アンジェラが”トランク詰め殺人”のキーワードを検索したことで、事件は大きく動き出すのだが…


scarecrow.png物語は、殺人犯である"スケアクロウ"ことカーヴァーと、ジャックの視点から交互に語られていく。つまり最初から犯人は誰かということは分かりきっているのだ。『ザ・ポエット』のようなフーダニット的楽しみは本書にはない。
オズの魔法使いのカカシには脳がなかったが、このスケアクロウは頭が良い。サイバースキルを駆使して、ジャックをあの手この手で苦しめ、妨害をはかる。

テーマとなるのは、ジャック・マカヴォイが直面しているジャーナリズムの危機と、スケアクロウのような人物が潜む、ネットのダークサイドといったものだろうか。
Amazonレビューは平均して5つ星にも迫る勢いだし、帯には「コナリーならではの犯罪小説、ここに極まる」なーんて書いてもある。
おまけに解説は講談社繋がりで、『ハゲタカ』真山仁氏。その真山さんは「小説ファンなら、絶対はまると断言できる」とまで言いきっている。

しかし、実際のところ、コナラー以外の読者にとってはどうなのだろう?

面白くないとは言わないし、展開がスピーディーなのでさくさく読めるかもしれない。エンタメとして、ある水準は満たしていると思う。
でも、ルヘインの『夜に生きる』の後だったせいか、テニスの合間に読んだせいか、期待したほどではなかったかな。こういうのは、割とありがちだと思うのだ。インスタント食品みたいなイージーな感じ。

また本書の米国上梓は2009年である。多作ゆえに、翻訳も追いつかないのが実情だろうが、すでにこの種のネタは見飽きてしまった。
スケアクロウという”コナリー史上最も不気味な犯人”だという触れ込みの人物造形も、ディーヴァーのそれと比べると落ちるし、ネットの闇というテーマにも目新しさはなかった。


スケアクロウ(上) (講談社文庫)
スケアクロウ(下) (講談社文庫)

マイクル・コナリー (著), 古沢 嘉通 (翻訳)
講談社 (2013/2/15)





ザ・ポエット〈上〉 (扶桑社ミステリー)
ザ・ポエット〈下〉 (扶桑社ミステリー)


マイクル コナリー (著), 古沢 嘉通 (翻訳)
扶桑社 (1997/10)


関連記事

category: クライム・警察・探偵・リーガル

thread: 最近読んだ本 - janre: 本・雑誌

tag: 海外ミステリ  コナリー   
2013/05/21 Tue. 17:31 [edit]   TB: 0 | CM: 2

go page top

この記事に対するコメント

Re: Amazon レビューはステマです。

おはようございます。

> 手抜きした時のコナリーは
> プロット使いまわしてんじゃないの?と思うほど
> 酷いからね、だからル・カレの本は買うけど
> コナリーは図書館です。

あれだけのペースで量産するには、どうしても同じプロットで印象をいかに変えるかという、「着せ替えリカちゃん的作業」に頼らざるを得ないんでしょうねぇ。

図書館で借りられるというのは、うらやま〜!
横浜だと少なくとも1年待ちは覚悟ですよ!

そうか。あのレビューは工作員か(笑)
私はコナリー信者によるものだとばかり思ってました。
ほら、コナリーってディーヴァーと違って、褒めなきゃいけないみたいな雰囲気があるじゃないですか?
コナリー教において教義は絶対みたいな(笑)
でも、部外者や冷静な目を持ってる人からすれば、逆効果じゃないのかな?


アラフォーおやじさん感動のゴダードは、絶対に読まなくては!
全仏が一段落したら、ゴダール2連続でいってみようかな。

月村了衛の『機龍シリーズ』は確か国内ものの「このミス」入りしてましたよね。
評判いいですよね。

エヴァになじめないガンダム世代としては、ちょっとそそられますね〜。


Spenth@ #- | URL | 2013/05/22 Wed. 09:38 * edit *

Amazon レビューはステマです。

こんばんは~

『スケアクロウ』何だか、いま一つみたいだね
目利きのspenth@さんがいうから間違いないは

手抜きした時のコナリーは
プロット使いまわしてんじゃないの?と思うほど
酷いからね、だからル・カレの本は買うけど
コナリーは図書館です。

amazonレビューでは絶賛してるけど・・・
最近どうもこのレビューがあてにならないと思わない?
まあこの出版不況だから工作員なるものが居ても
不思議ではないけどね

ところで、先日読んだ『隠し絵の囚人』に感動し
ロバート・ゴダードに嵌ってみようかと思い傑作と名高い
『千尋の闇』を手配したんですが

その前に何気に購入した、『機龍警察・自爆条項』月村了衛著
私にしては久しぶりの日本人作家で、あまり期待してなかったのですが
タイトルも何か『ガンダム』を連想させるようで変だけど
これが、実にいいんですよ
久々に読ませる作家ですは、途中、いろんな意味で
この人イギリス人じゃないの?と錯覚してしまうほどです
ロバート・ゴダードの後に読んでも、見劣りすることはないね
是非読んでみてください
明日から『運命の日』読ませていただきます。

アラフォーおやじ #- | URL | 2013/05/21 Tue. 20:11 * edit *

go page top

コメントの投稿

Secret

go page top

トラックバック

トラックバックURL
→http://spenth.blog111.fc2.com/tb.php/276-31ff01e1
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

go page top