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読書日記、ときどき食日記

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時のみぞ知る / ジェフリー・アーチャー 

Jeffrey Howard Archerアーチャーつながりでリュウ・アーチャーの次はジェフリー・アーチャーで(笑)

日本発売前から話題になっており、あの『ケインとアベル』を超えるサーガとの触れ込みだ。
ついでなので、『ケインとアベル』もあわせて再読してみた。

本書は「クリフトン一代記」と題されたサーガの第一部にあたるが、この第一部ではハリー・クリフトンという貧しい育ちの少年の幼少期からオックスフォード入学に至るまでが描かれている。
舞台は1919年の英国ブリストル。少年ハリーには、母親しか知らない出生の秘密があった。ハリー少年は、思いもよらぬ才能と、周囲の人々の助けによって名門セント・ビーズの奨学生となった。美しい歌声が聖歌隊奨学生としての幸運をハリーにもたらしたのだ。特にハリーの力を認め手を貸してくれたのは、うち捨てられた鉄道客車で暮らしているオールド・ジャックという老人だった。
bristol.jpg貧しい育ちの彼は、食器の使い方、バナナの食べ方に至るまで何も知らなかった。意地悪な上級生にいじめられ、一度は学校から逃げだそうとするが、母親のことを考えろとオールド・ジャックに窘められる。母のメイジーはウェイトレスとして働き、息子によりよい人生のスタートをさせてやろうしていたのだ。学校に戻ったハリーはそこで生涯の親友を得ることになる。一般奨学生で秀才のディーキンズと、船舶会社の息子のジャイルズ・バリントンだった。
物語はハリー、ハリーの母親のメイジー、ジャイルズの父親ヒューゴ・バリントン等々のモノローグによって語られていくのだが、後半に向けてハリーの出生の秘密が重要な役割を果たすようになるのだ。
ハリーの母親メイジーの精神的苦悩や経済的負担をその細い肩に背負う苦労もさることながら、それを助長させるヒューゴ・バリントンの賤しさと醜悪さは対照的に描かれている。
そんなハリーは、ジャイルズの妹エマと恋に落ちるのだが…


Romeo and Juliet 一言いわせてもらうと、「えっ?ここで終わるんかい!」
そういうところで、終わるのだ。

この「クリフトン・クロニエルズ」は1920〜2020年の壮大なサーガだと聞いているし、この分だと少なくとも5部作くらいになると言われているが、せめて2部くらいまでは同時刊行してほしかった。
UKではこの3月に三部の『Best Kept Secret』が上梓されたという。

ところで、新潮社の特設HPにあるハリーの登場人物紹介では、サッカー選手に憧れる少年とあるのだが、実は、作中にそれほどサッカーがでてくるというわけでもない。
サッカーに憧れると聞いて思い浮かべたのは、階級差だ。ベッカムみたいに有名サッカー選手になって下克上していくのかなとばかり思っていたら、舞台は戦前で、幸福の切符は歌声の素晴らしさで掴んだものだったのだ。だが、この物語の中核を成しているのは、階級差をそれをどう超えていくかなのだ。

余談だが、今やジェームズ・ボンドの代名詞として定着したショーン・コネリーも労働者階級出身で、俳優になる前はサッカー選手を夢みていたのだという。
イアン・フレミングは伯爵夫人の妻を持つのほどの家柄だったので、当時コネリーの起用にはいい顔をしなかったのだという。確かに、改めてみれば、まだ「スタイリスト」の存在もなかったのか、コネリーはスーツは似合うけどその着方は全くなってない。抜擢された時、彼はスーツを持っていなかったので、なんと監督がつくっている店で作らせたのだというが、初期の頃の作品では、あちこちでネクタイが短すぎたりする。

それはさておき、『ケインとアベル』 と比べるのなら、アベルが実の父に愛された子供であったのに対して、ハリーは疎まれた子供であるだろう。この血脈をめぐる因果はアーチャーが好きなテーマでもあるのだ。
二部以降にも『ケインとアベル』のような、ロマンスや復讐といった趣を持つことも容易に予想される。しかし、わかっちゃいるけど、やっぱり面白いのがジェフリー・アーチャーなのである。

アーチャーは常々、「君はどう頑張ったってフィッツジェラルドにはなれっこない。ストーリーテラーに過ぎないんだ」と自戒しているというが、これだけのストーリーテラーなら充分なのではないか。



時のみぞ知る(上): クリフトン年代記 第1部 (新潮文庫)
ジェフリー アーチャー (著), 戸田 裕之 (翻訳)
新潮社 (2013/4/27)


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時のみぞ知る(下): クリフトン年代記 第1部 (新潮文庫)
ジェフリー アーチャー (著), 戸田 裕之 (翻訳)
新潮社 (2013/4/27)


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ケインとアベル (上) (新潮文庫)
ジェフリー アーチャー (著), 永井 淳 (翻訳)
新潮社; 改版 (1981/5/27)


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ケインとアベル 下 (新潮文庫 ア 5-4)
ジェフリー アーチャー (著), 永井 淳 (翻訳)
新潮社; 改版 (1981/5/27)

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どのくらい売れてるのか、帯の文句は本当なのかとAmazon.UKの売り上げをみてみたら、現時点での1位はダン・ブラウンの新作『Inferno』だった。これも楽しみ。早めに翻訳されるといいですねぇ。

Inferno: A Novel (Robert Langdon)




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category: 歴史・大河・ドラマ

thread: 最近読んだ本 - janre: 本・雑誌

tag: 英国  アーチャー  サーガ  大作 
2013/06/15 Sat. 19:45 [edit]   TB: 0 | CM: 2

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この記事に対するコメント

Re: タイトルなし

ありがとうございます。

Spenth@ #- | URL | 2013/07/22 Mon. 18:29 * edit *

とても魅力的な記事でした。
また遊びに来ます!!

履歴書を送る #- | URL | 2013/07/21 Sun. 22:10 * edit *

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