Reading For Pleasure

読書日記、ときどき食日記

03« 2017 / 04 »05
1.2.3.4.5.6.7.8.9.10.11.12.13.14.15.16.17.18.19.20.21.22.23.24.25.26.27.28.29.30.

白雪姫には死んでもらう / ネレ・ノウハウス 

引き続き、今回もドイツもの。
前エントリのシーラッハに端を発したドイツミステリブーム。私はこれって東京創元だけのキャンペーンだと思っていたのだが、米国でもちょっとしたブームになっているそうなのである。

横浜翻訳ミステリー読書会でも、流行が終わっちゃう前に、ドイツものをやっておかないと!ということで、今月の課題本は、ネレ・ノイハウス『白雪姫には死んでもらう』 に決まった。

欧州での大ヒットをうけて、米国でのデビュー作となった作品であるという。
この『白雪姫には死んでもらう 』は、昨年このミス入りをした『深い疵 』と同じピア&オリヴァーのシリーズものである。
しかし、シリーズといっても前作を読んでいないからといって別段不都合はないと思う。そもそも『深い疵』だってシリーズの三作目なのだ。
snow-white2.jpg

さて本書の舞台はドイツ、フランクフルト近郊の村アルテンハインだ。
この村近郊の空軍基地の跡地の燃料貯蔵槽から、少女の白骨遺体が発見される。それは、トビアスが殺害したとされる少女のうちの一人ラウラの遺体だった。
トビアスは11年間、同級生の少女二人を殺害したとして投獄されていた。
被害者は、当時高校生だったラウラとシュテファニー。二人は97年のケルプ祭りの夜行方不明になった。その二人が最後に目撃されたのが、トビアスの家だったのだ。彼の家と車からそれぞれ血痕とラウラのネックレスが見つかったことで、容疑が固まった。おまけに彼はその夜の記憶をなくしていた。警察は、トビアスがラウラを捨てシュテファニーに走ったものの、そのシュテファニーに振られた怒りで犯行に及んだのだと判断した。二人の遺体は発見されておらず、彼は無実を訴えたが、彼の友人たちの証言によって裁判は不利に傾いたのだった。

そして今、トビアスは刑期を終えた。出所の日、迎えにきてくれたのはナージャただ一人。かつては歯の矯正器具が目立ち、男勝りだった彼女は、今は人気女優として成功していた。皮肉にもあの時シュテファニーが演るはずだった「白雪姫」の代役が、彼女の才能を開花させたのだ。
トビアスの実家は廃れ、父母は離婚していた。彼の弁護費用の工面のため、家も農場も今では村の有力者テアリンデンのものだった。テアリンデンは親切面をして、トビアスの父の弱みにつけ込んだのだ。さらに未だ父は村人たちからは嫌がらせを受けていた。トビアスは11年前、本当は何があったのか突き止めてやると決心する。
一方、村の食堂でアルバイトするアメリーも、トビアスの事件の虜になっていた。素行の悪さから、ベルリンからこの村で暮らす父の元に追いやられた彼女は、身に覚えのない罪を背負わされるのがどんなことかをよく知っていた。そして、事件のことを独自に調べはじめるのだ。
そんな折り、トビアスは村人からリンチを受け、離婚して別に暮らしていたトビアスの母親までもが、何者かに歩道橋から突き落とされてしまうのだが…

このタイトルにぞくぞくしはしないか。なにしろ「白雪姫には死んでもらう」である。グリム初版本の白雪姫はわりと残酷な物語なので、それに準えたものなのかなと思っていたのだが、全然違っていてちょっと残念。もっと女の嫉妬、イジワル系を想像してしまったのだ…

また、サイドストーリーを盛り込みすぎで、枝葉がうるさくなってしまった気が…。
今回、オリヴァーの家庭は崩壊寸前で殆ど捜査に集中できず、ピアはピアで自慢の白樺牧場にトラブルを抱えており、さらに捜査本部にも内部分裂があり、トレビスの事件それ自体にも、ミスディレクションが多用されているため、気がそらされてりまうのだ。
しかし、逆に、こういったゴシップ性、通俗性が、ネレ・ノイハウスという人の持ち味なのだろうなぁとも思う。ほら、おばちゃんの話は、あちこちに飛ぶものでしょう?それで結局何の話だったんだっけ?ということになるのだ。喩えるならそういう感じ(笑)

だが、テーマはやはり閉塞的な田舎のムラ社会に渦巻く、嫉妬や憎悪、保身といったものなのだろう。
トビアスは、彼が無実なのか否かに関係なく、村人たちの悪意を一身に受ける役回りを強いられ、その悪意は家族にまで及ぶ。そして、彼らの結束は固いのだ。
解説者の福井氏は、これを「組織化された正義の閉鎖性と排他性」と表現したが、これは、我々も属する会社組織にもある程度、通底するものがあり、身につまされる。

しかし、読後、沈むようなことはないのだ。そこはやっぱりネレ・ノウハウスなんだなと思う。



白雪姫には死んでもらう (創元推理文庫)
ネレ・ノイハウス (著), 酒寄 進一 (翻訳)
東京創元社 (2013/5/30)


詳細をみる




関連記事

category: クライム・警察・探偵・リーガル

thread: 最近読んだ本 - janre: 本・雑誌

tag: 海外ミステリ  ドイツ  東京創元社  このミス  読書会 
2013/07/01 Mon. 22:20 [edit]   TB: 0 | CM: 1

go page top

この記事に対するコメント

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

# |  | 2013/07/03 Wed. 11:24 * edit *

go page top

コメントの投稿

Secret

go page top

トラックバック

トラックバックURL
→http://spenth.blog111.fc2.com/tb.php/286-b4218c7b
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

go page top