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読書日記、ときどき食日記

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GATACA / フランク・ティリエ 

ミステリー界のブームは、今や北欧からドイツものに移ったようだが、実はフランスにも異才を放つミステリ作家はいる。その代表がフランク・ティリエではないだろうか。

前作『シンドロームE』にも驚かされたが、その続編の本作はさらにそれを上回っていると思う。
続編とはいうものの、全然別の独立した事件が描かれているので、これ単独で充分に楽しめるのだ。そもそもこの双子の女の子を持つシングルマザーのリューシー警部補と、統合失調症の病歴のあるシャルコ警視のコンビが主人公の警察小説は、『シンドロームE』以前のストーリーがあるのだが、それらは日本語訳はされていないのだ。
しかし、いきなり『シンドロームE』を読んでも問題ないのだから、『GATACA』がだめなわけがない。



gataca.png『シンドロームE』は、なんちゅー終わり方!!!というところで終わった。
恐ろしい事件に片が付きほっとしたのもつかの間、リューシー(女性)は双子の娘、クララとジュリエットを失ってしまうのだ。リューシーが目を離した一瞬の隙をついて、何者かに連れ去られたのだった。
そして、そこから本作は始まる。

双子の行方を案じるリューシーだったが、そんなとき、郊外の県道脇で、識別ができないほど焼け焦げた少女の遺体が発見される。
どうか娘たちではありませんように!という彼女の願いもむなしく、遺体はクララのものだった。
その一年後、警察を辞めたリューシーの元に、クララを殺した犯人カルノが独房で自殺したという知らせが入る。
それは、指で喉の動脈を引きちぎるというおぞましい死に方だった。カルノは、何の前触れもなく突如凶暴になることがあり、それが悪化していたのだという。
彼の独房の壁には、上下様々の絵が残されていた。その絵は、蝙蝠よろしく天井から逆さに吊されて描かれたかのようで、生前彼は、ものが逆さまに見えると訴えていたのだった。
GuaTewet.jpg一方、シャルコ警視は、自ら望んで名前だけの警視として一介の刑事に甘んじていた。そんな彼の元に、霊長類研究センターで女学生がチンパンジーに襲われて殺されたという知らせが入る。被害者のエヴァは、博士論文執筆のために調査にきていた学生で、"犯人"とされたチンパンジーのシェリーは、センター長の娘のような存在だった。センター長にいわせれば、シェリーは、大人しくて賢く、決してそんなことするはずがないという。検死結果によってシェリーの無実が明らかにされるが、当のシェリーはひどく脅えており、手話で、「怪物、怖い、怪物、怖い」という言葉を繰り返すのだった。
エヴァ自身の身辺の捜査を始めたシャルコは、彼女が左右差、特に”左利き”に並々ならぬ興味を示し、刑務所を頻繁に訪れていたことを突き止める。面会していたのは、いずれも凶悪犯罪を犯した若い、"左利き"の囚人だった。そして、その中にはリューシーの娘を殺害したカルノが含まれてたのだ。
エヴァは何を調べていたのか…?
リューシーの娘の事件と、エヴァ殺害事件が次第にひとつに繋がり始める。その秘密を追って、リューシーとシャルコは、エヴァが訪れたアマゾンへと向かうのだが…


dna1.jpg
ティリエの何がいいって、フランス臭がないのがいいのだ。たとえるなら、ホラー風味のマイケル・クライトンなのである。一見ホラーを思わせるような奇怪な事件は、予想を裏切り、科学的根拠にがっちりと武装された理論でもって解決されるのだ。

左利きと暴力の関連性にはじまり、ネアンデールタール人の絶滅未知のレトロウィルスの存在など様々な情報が、見事に物語のピースとして嵌まっていて圧倒されてしまう。

今回のテーマになっている「左利きと暴力性の関連」に関しては、著者も懸念する通り、気分を害する方もいるかもしれない。しかし、一対一で対戦するテニスのようなスポーツにおいては、左利きが優位なのは間違いないだろう。圧倒的多数の右利きにとっては攻撃の予測がしにくいからだ。ナダルは、元は右利きだったのをレフティに矯正したのだという。

さて、タイトルの『GATACA』であるが、ご想像通り、DNAの基本塩基であるguanine(グアニン)、adenine(アデニン)、thymine(チミン)、cytosine(シトシン)の頭文字からなる造語である。この『GATACA』が"何”を意味するのかは読んでのお楽しみ。
イーサン・ホークとジュード・ロウの『ガタカ』とは似てはいるが、スペルがちょっと違う。

著者ティリエは、本書の「結び」で、前作『シンドロームE』と本書のテーマは、”暴力”であると述べている。本書ではその起源に関心を向けたといっているが、私は自然淘汰の持つ残酷性が強く印象に残った。
だが、作中犯人が口にした「平均寿命が延びることは、自然選択に反する。高齢化社会は病気がはびこり、地球を汚す。社会の高齢化、出産の高齢化、寿命を延ばす医学は皆、自然選択に対する侵犯なんだ」という言葉も、完全に否定することはできないのだ。

ティリエの本はハリウッド向きだよなぁと思ってたら、案の定、映画化権は既に売れているそうだ。『シンドロームE』の映画化計画は着々と進んでいるともいわれていて、脚本はブラック・スワン 』のマーク・ヘイマンだという話である。


GATACA(上) (ハヤカワ文庫NV)
フランク・ティリエ (著), 平岡 敦 (翻訳)
早川書房 (2013/5/24)


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GATACA(下) (ハヤカワ文庫NV)
フランク・ティリエ (著), 平岡 敦 (翻訳)
早川書房 (2013/5/24)



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category: サイエンス系ジャンルミックス

thread: 最近読んだ本 - janre: 本・雑誌

tag: 海外ミステリ  早川書房  フランス  DNA   
2013/07/16 Tue. 21:48 [edit]   TB: 0 | CM: 2

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この記事に対するコメント

Re: それにしても暑い

アラフォーおやじさん、こんにちは!
本当に今年は暑い! まだ7月なのに、何なんでしょうねぇ...。

あ、やっぱ『運命の日』は厳しかったですか?(笑)
あれは好みが分かれますよね。
しかし『夜に生きる』は、ルヘイン風ゴッドファーザーなので、エンタメ色も強くて万人受けしますよね。
まだ10月までドシドシ新刊がでるだろうけど、やっぱり今年のNo.1はこれだなと思います。

おやじさんイチオシのR.ゴダード、私は『騙し絵の囚人』に加えて、まずは『千尋の闇』を読みました。
歴史をうま〜くとりいれたミステリーにロマンがまぶされていて、S.キングや元英国首相が嵌まるのも納得ですねぇ。
ちょっと気になるのは、日本語版のタイトルで...。
『騙し絵の囚人』とか、ただ説明的というか、まんまじゃねーの、という残念感が惜しい。ゴダードのタイトルはどれも二重の意味があり、含蓄に富んでいて、とてもタイトルに気を遣っている作家だと思うんですよ。原題のほうが何倍も素敵で、作品をよくあらわしていると思うんだけどなぁ。
『千尋〜』にも文庫の訳者あとがきで、うんたらかんたら説明がありましたが、そもそもこの作品、"とてつもなく深い闇"ってほどダークな感じは私は受けなかったんですよねぇ。翻訳者との見解の相違なのでしょうが、ゴダードの既読の2作品については、ラストに希望を感じるんですよね。やっぱりこれも含蓄ある原題そのままのほうがよかったんじゃないかなぁとか思ったのでした。

『Defending Jacob』の邦題が、『ジェイコブを守るため』っていうのには、なんか失笑してしまいましたよ。いかにも早川らしくて。
その点、『ゴーン・ガール』は賢かったな、とかね。

Spenth@ #- | URL | 2013/07/18 Thu. 09:50 * edit *

それにしても暑い

おはようございます。

最近はこの灼熱地獄で本を読む環境ではないね
だから、朝 読んでます。

ようやく『夜に生きる』読みましたよ

これは、面白かった、今年一番かもね

その前に読んだ『運命の日』が100ページで挫折したから
どうなんだろう?と思ってたけど
デニス氏は当たりはずれが激しいのですかね?
それとも『夜に生きる』が特別に出来が良かったのかな

私はロバート・ゴダードにずっぽり嵌っておりまして
もうすぐ全作読んでしまいそうなんですが
この人は今のところ外れがない
楽しめますよ~

アラフォーおやじ #- | URL | 2013/07/18 Thu. 06:25 * edit *

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