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読書日記、ときどき食日記

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ケンブリッジ・シックス / チャールズ・カミング 

Charles Cumming久々のスパイもの!
スパイ小説のファンにとって、チャールズ・カミング(以下CC)は期待のできる作家じゃないだろうか。ワシントン・ポストは、「ジョン・ル・カレとグレアム・グリーンに比肩する」とも言っているそうだ。でも、私はCCは今という時代らしく、もっとエンタメの人なんじゃないだろうかと思う。

ル・カレやグリーンは実際に冷戦時代スパイだったらしい。しかし、CCはSIS(英国情報局秘密情報部)にスカウトはされたが、それを断ってスパイ小説を書き始めたのだという。
スパイでなく作家の道を選んだのは大成功だったようで、本書はCWAイアン・フレミング・スティール・ダガーの候補にあげられ、次作の『A Foreign Country』で見事同賞を受賞している。

さて、本書の下敷きになっているのは、”ケンブリッジ5人組み”と呼ばれた旧ソ連のスパイ・グループなのである。
キム・フィルビー、アンソニー・ブラント、ガイ・バージェス、ドナルド・マクリーン、ジョン・ケアンクロスの5人は、いずれもケンブリッジ・トリニティ・スクール出身のエリートにもかからわず、KGBのスパイだったのだ。それぞれが英国諜報機関や外務省の中枢にいてソ連側に情報を流していたのだが、コトが明らかになると、英国は一大スキャンダルに揺れたという。この英国史上最のスパイ劇の顛末は、BBCでドラマ化『Cambridge Spaies(※日本未放送)』もされている。

このケンブリッジ・スパイに、正体を暴かれていない第6の男がいたとしたら?というのが、本書のテーマである。
そもそも"ケンブリッジ5人組み”なんて知らないし…という方も大丈夫。巻頭に「"ケンブリッジ5人組"に関する注釈」がついているし、物語の核は架空の"6番目のスパイ”なので、斜め読み程度でも物語に入っていける。

cambridge flickr物語の主人公はUCL(ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドン)の歴史学者サム・ギャディスだ。
ロシアを専門にする彼は、現ロシア大統領"プラトフ"に関する新刊を上梓したばかりだったが、金に困っていた。税金にローンの返済、離婚した妻と暮らしている娘の学費等々。手っ取り早く金をつくるためには、確実に売れる本を書かなければならない。
そんな時、ジャーナリストの友人シャーロットから共著の話を持ちかけられる。彼女はケンブリッジ5人組みと同時期に暗躍し、現在も正体が暴かれていない第6のスパイ、通称”アッティラ”の存在を掴んでいたのだ。彼女の話では、情報源は、トーマス・ニームなる90歳を超えた人物であり、"アッティラ”ことエドワード・クレインが全てを打ち明けた親友だというのだ。
ケンブリッジ・スパイの話なら、しかもそれが「第6のスパイ」の話ともなれば、確実に売れる。ギャディアスにとっっては渡りに船だった。だが、シャーロットは心臓発作で急逝してしまう。彼女の夫もギャディアスも長年にわたる大量の酒とタバコのせいだろうと思っていた。
彼女の仕事を続け、是非本にしてくれ、というシャーロットの夫の申し出を受け、ギャディスは調査を引き継ぐ決心をするが、彼女のPCには何も残されていなかった。
八方ふさがりの中、ギャディアスは、レシートの走り書きからシャーロットがある看護師に接触しようとしていたことを掴む。そして、その看護師から、92年にSISが"アッテラ”ことクレインの死を偽造したことを聞き出すのだった。ギャディスは"アッティラ”実在の片鱗を掴んだ気持ちだったが、そんな時、ニームという人物から接触があり、"アッティラ”の驚愕すべき真実を聞くのだった。
さらに、ギャディスは、ニームの話の裏付けをとるためにモスクワに住む"アッティラ”のKGB調教師の未亡人を訪ねるが、そこで意外な人物が"アッティラ”の隠蔽に干渉していることを知り、恐怖にすくんでしまう。未亡人に全て忘れるように言い残し、モスクワを後にしたギャディスだったが、看護師の不慮の死を知った今は、シャーロットの死も心臓発作によるものではないと確信していた。彼女のPCに何も残されていなかったのも、削除されたからに違いない。
そしてギャディス自身にも危険が迫っていた...


Soviet ダブル・ツイストのきいたプロットに、ニヤリとさせるラスト、それこそギャディスではないが"売れる本”の要件ではないだろうか。
冷戦時代のスパイの秘密といった素材の持つ魅力もさることながら、少し移り気なギャディスのキャラクターにも好感が持てたし、ニームの生き甲斐になっている”自己顕示欲”の描かれ方も面白いと思う。
舞台も、ロンドンからモスクワ、バルセロナ、ウィーン、ベルリン、ブタペストとヨーロッパの美しい都市を網羅しているし、主人公の逃亡劇にもスリルがあって楽しめた。
派手な作品でもあるので、映像映えしそうだと思ったら、やっぱりユニバーサルがお買い上げしているそうだ。
しかし、この小説がロシアで出版されることはなさそう…。
フィクションだとはいえ、元KGBの現ロシア大統領"プラトフ"はプーチンとしか思えないし



ケンブリッジ・シックス (ハヤカワ文庫NV)
チャールズ カミング (著), 熊谷 千寿 (翻訳)
早川書房 (2013/1/10)


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category: スパイ・冒険・ハードボイルド

thread: 最近読んだ本 - janre: 本・雑誌

tag: 海外ミステリ  早川書房  映画化  英国  スパイ 
2013/07/18 Thu. 18:39 [edit]   TB: 0 | CM: 0

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