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読書日記、ときどき食日記

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経済成長って、本当に必要なの? / ジョン・デ・グラーフ&デイヴィッド・K・バトカー 

原題は「What's the Economy For,Anyway?そもそも経済って何のためにあるの?、である。本書の内容は邦題よりも、こちらのほうが近い感じ。
ジャーナリストと経済学者の二人の著者は、この問いに「そもそも経済は、人々を幸福にするためにあるべきなんじゃないか」と答えている。
世界最大の経済力を誇るアメリカ人は、どれだけ幸福なのだろうか?格差はやたらと大きくなる一方で、日々時間に追われ、先進国中最も不健康で、精神疾患も多いと言われている。
彼らは、もしかしてアメリカ人って超不幸なんじゃないの?と畳み掛けるのだ。
ただ、如何せん彼らはアメリカ人であるので、本書もアメリカ国内への啓蒙書的な色合いが強いのだが、なんだかこれ、日本にもそのまま当てはまったりするのだ。

ikea.jpg日本人の私にとっても衝撃だったのは、「まえがき」で紹介されているヴァージニア州が誘致したイケアの工場のエピソードだった。

イケアは言わずと知れたスウェーデンの家具会社だ。
ヴァージニア州ダンヴィルがそのイケアの工場を誘致した時、ダンヴィルの町の人々は、本国スウェーデンと同じ福利厚生と賃金を期待した。スゥエーデンでは最低時給19ドルに、年間5週間の有給休暇が認められていたのだ。ところが、フタをあけてみたら、時給は8ドルで、休暇は少なく強制残業も多い。ダンヴィルの人々は地元政府に不満を訴えたが、雇用が約束されているだけマシなのだから我慢しろといわれただけだった。

この問題はアメリカよりもスウェーデン国内で波紋を呼ぶことになったという。スウェーデン人は、この搾取を「良き企業たるイケア」のイメージを裏切るものだと考えたのだ。イケアの広報は、アメリカ人労働者への待遇の差別を認めはしたが、それは「それぞれの国の生活レベルや条件の違いを反映したからだ」と付け加えた。世界第1位の経済力を誇るアメリカは、スウェーデンにとっての、安価なアウトソーシング先とみなされているのだ。
反応に困ってしまうような話だが、日本も明日は我が身なのである。

上記のエピソードには、経済力=国民の幸福という図式になっていないという問題が横たわる。
経済力の指標たるGDP(国民総生産)は、良いことばかりでなく、犯罪によっても、環境汚染によっても、健康被害や借金、破産よっても増えるのだ。
ところが、このGDPの前年比がマイナスになると、株価は暴落し、もうこの世の終わりの様な報道がなされる。GDPがずっと増え続けなければならないとしたら、地球はいつかモノと人で溢れ、そのキャパを超えてしまうだろうと彼らは言う。もしかして、実はもう超えつつあるのかもしれないが…

economy.jpg著者のグラーフとバトカーの二人は、経済の目標を「最大幸福を、最大多数の人々に、できるかぎり長期にわたって提供すること」に置いている。
その目標の実現には、一言でいえば、北欧モデルを参考にすることだという。北欧は凶悪犯罪に蝕まれているとヴァランダーは嘆くが、本書によれば、かつてのバイキングの末裔の人々は、他人に寛容で、実に幸福そうに暮らしているというのだ
高度な累進課税のおかげで格差は小さく、大学まで無料で教育が受けられて、労働条件が整っているおかげで余暇を楽しむ余裕もある、医療も老後の心配もいらない。
それにフィンランドなどでは、財布を落としても中身がそのままの状態で戻ってくると人々は信じて疑わないし、実際その通りに戻ってくるという。社会が善良さを持っているのだ。
ただ、その実現にはコストがかかるため、北欧並みの高い累進課税を覚悟しなければならない。これには特に富裕層から猛反対が予想されるだろうし、政治にしろ何にしろルールをつくっているのは、この富裕層だったりするという障壁が立ちはだかるだろう。
「努力した者が報われるのは当然」とか「平等悪」を掲げ、反発する人もいるだろうが、逆に税金が高く、規制も多い北欧の人々は、アメリカ人よりも「自由である」と感じている割合が多いともという。
税金が高くなるのは確かに痛いが、「他人に寛容になれるゆとりのある幸福な社会」というのは羨ましいなと思う。
あなたは、どうだろうか?



経済成長って、本当に必要なの?
ジョン・デ・グラーフ (著), デイヴィッド・K・バトカー (著), 高橋 由紀子 (翻訳)
早川書房 (2013/5/10)


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category: ノンフィクション・新書

thread: 最近読んだ本 - janre: 本・雑誌

tag: 早川書房  アメリカ  経済  幸福   
2013/07/30 Tue. 21:40 [edit]   TB: 0 | CM: 0

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