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読書日記、ときどき食日記

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ザ・ニューリッッチ 〜アメリカ新富裕層の知られざる実態 / ロバート・フランク 

milliondollarshumbnail.jpg日本で2007年刊行なので、ちょっと古い本。
これを読もうと思ったのは、先日NHKスペシャル「新富裕層VS国家」を観たからだ。

日本でも富裕層に対する増税論が持ち上がってきているが、それに反発する富裕層たちは、より税負担が少なく、ビジネスに有利な国へ移住しようとしているという。ちなみに日本人富裕層に人気の移住先は、シンガポールだそうである。
フランスでも、年収100万ユーロ以上の高額所得者に75%の税を課すことになったが、LVMH(ルイヴィトン・モエヘネシー)会長のアルノー氏は、それを嫌って税率の安い隣国ベルギーの国籍を取得したのだそうだ。

robert frank新富裕層、ニュー・リッチは、グローバル化の潮流に乗り急激に台頭してきた新しい富裕層のことをさすのだという。
彼らは、旧来の富裕層とは異なり、彼らは既存の国家に依存しない傾向があるという。おしなべて若く勤勉な彼らは、母国に拘らない。同じくらいの資産を持つもの同士でつるむ傾向があり、それはあたかも富裕層のみの一つの国を形作っているかのようだと、本書の著者は指摘する。
元ウォールストリート・ジャーナル記者で、富裕層を専門に取材してきたジャーナリストのフランクは、このニュー・リッチたちが形成するバーチャル国家を、”リッチスタン”と命名した。本書の原題も、「Richstan」である。

では、その新富裕層たちの実態はどんなものなのか?彼らはどんな生活をしているのか?興味が湧いたのだ。俗に最も視聴率が取れるのは、ハイ&ローだという。だから、そのハイの方、例えば皇室ネタなどは安定した視聴率がとれる。自分には手が届かない世界を垣間みるのは、やはり心引かれるものだ。
彼らはいかにして生まれたか、その原動力は何で、どういう暮らしをしているのか?政治、経済、ひいては社会にどんな影響を及ぼしているのか。
本書は、いわばリッチスタン=お金持ちの国への旅行ガイドブックのようなものといっていい。

rich.jpgリッチスタン人たちの生活を垣間みて、興味深かったのは、その顕示的な消費と、それによってますます複雑になる生活だ。
彼らは自らの財力を示すために、競って広大な邸宅をたて、「ファントム」や「メイバッハ」といった超高級車を何台も所有し、加えて250フィートを超えるクルーザーや、特別誂えの鰐皮の便座を備えた自家用ジェットを持ちたがる。
将来、莫大な富を相続する子供たちは、配偶者に波風たてることなく「婚前契約書」にサインさせる手管を習わなければならない。
馬鹿みたいに広大な邸宅を維持管理していくには、大勢の使用人を指揮管理する執事が不可欠だ。一時期、執事という職業は絶滅寸前だったが、ニュー・リッチの台頭に伴い、今では引っ張りだこだという。
だがリッチスタン人が求める執事像は、ウッドハウスのジーヴスや、カズオ・イシグロの『日の名残り』の語り手たちとは、全く異なる。
ハウス・ホールド・マネージャーと呼ばれる彼らは、エクセルを使いこなし日々の報告をスプレッドシートで行う、いわば株式界社◯◯家の最高執行責任者なのだ。初年度から年収8万ドルくらいだというこの職業、結構日本人向きかもなどとちょっと思う。

莫大な富は、確かに自由をもたらしてくれる。母国の税金に不満なら、ルイ・ヴィトンのアルノー会長のように、よりよい条件の地域に移住すればいいし、お金があればたいていのことは叶えられる。だが、その反面、逆に複雑さは増すことは否めない。もはや家は家でなく屋敷だし、住んでいるのも家族だけではない。何もかもが大掛かりになっていくのだ。
執事に家のことを委ねているあるニュー・リッチのねずみ退治の逸話は印象に残った。屋敷にねずみが出ようものなら、執事が手配した駆除会社によって駆除され、さらに死骸は別の人の手によって処理される。
かつては、自分が帚一本で、ワンアクションで対処していたのに。

拡大を続けるリッチスタン人たちの生活コストは、上がり続ける一方だ。ゆえに、庶民からしたら考えられないほどの資産を持っているリッチスタン人にも、必然的にお金の悩みはある。リッチスタン人の殆どは、今の資産額で満足はしていないという。結局、人の欲望というものは、どこまでいっても終わりはないのだろう。

本書が書かれたのは、リーマンショック前である。リッチスタンも大きな損害をこうむっただそうし、その数を減らしたのじゃないの?と思いたいところだが、この本が書かれた時点で900万世帯といわれていたリッチスタンの住人は、今や1100万人以上とも言われる。その資産額もリッチスタン人自体の人口も増えている。
だが、興味深いのは、そのリッチスタン内部も、資産レベルによって分断されていることだ。リッチスタンでは、資産が1000万ドルまでならロウアーなのだ。そして、ロウアー・リッチスタンとアッパー層との資産格差は拡がっているという。
結局、お金持ちの国の外も中も構造は同じで、「持てる者」と「持たざる者」が存在するということか。




ザ・ニューリッチ―アメリカ新富裕層の知られざる実態
ロバート・フランク (著), 飯岡 美紀 (翻訳)
ダイヤモンド社 (2007/9/14)


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category: ノンフィクション・新書

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tag: NHK    富裕層 
2013/08/29 Thu. 20:58 [edit]   TB: 0 | CM: 0

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