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読書日記、ときどき食日記

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アマゾン・ドット・コムの光と影~躍進するIT企業 階層化する労働現場 

アマゾンに関する本は何冊かでているが、これが元祖というべき「潜入レポ」だと思う。
実際に、著者横田増生氏自身がアマゾンの物流センターで半年アルバイトとして働いて書いているので、生の現場のにおいがリアルに伝わってくるのだ。

アマゾンでポチする裏側には、今現在問題となっている格差社会の現実がある。本書はそれを描いている。

かつてほど新本ばかり購入しなくなったが、現在私が購入する新本の殆どはアマゾンで購入する。午前中ポチっとすれば、その日に横浜の自宅の玄関先まで届けてくれ、しかも送料無料。恐ろしいほどスピーディ。
これまで一度も間違って届いたことも遅れたこともない。

どんなシステムになっているのだろうか。
膨大な在庫の中から、あれほどスピーディーに顧客の注文の品をピッキングし、配送に乗せるにはどんな工夫がなされているのか。

どんな立派なオートメ化かと思いきや、実は、あの素晴らしいアマゾンの利便性は、ひとえに人的労力の賜物なのだという。ワンクリックの影にはその商品を探して広い物流倉庫内を走り回るアルバイトが存在するのだ。ピッキングしているのは、時給900円のアルバイト。交通費なし。契約期間は二ヶ月で、働きぶりが悪いと更新されない。健康保険も雇用保険も、昇給もなし。昇給どころか、著者が潜入している半年の間、賃下げさえされているという。しかも、アルバイトだというのに、一分間に3冊のピッキングという”ノルマ"まで課せられている。
今や、ロボットにやらせるより人間にやらせるほうが「安い」のだ。
定着率は極めて悪いとうが、この不況で人手には困らないという。

ところで、マックジョブについて、作家の橘玲氏はこう言っている。
(彼が取り上げているのは牛丼の「すき家」のマックジョブだが、この元記事はなかなか面白いでご興味あればこちらでどうぞ。)

<以下引用>
マックジョブでは、規則やルールに従っているかぎり、社員やクルーはいっさいの責任から解放されている。規定の時間内に決められた動作ができさえすれば人格は評価に関係ないのだから、人間関係で悩むこともない。マックジョブは、外国人労働者だけでなく、障害者や性的なマイノリティなど、差別の対象とされるひとたちも平等に扱うことができるのだ。
マックジョブには「自己実現」はないけれど、仕事で悩んでうつ病になったり、自殺したりすることもない。


一部だけを抜粋しており、なかなか大胆な発言であるので、誤解される方も多いかもしれないが、橘氏はこのマックジョブを肯定しているわけでもなければ、否定している訳でもない。
橘氏のファンとして一応弁護しておくと、これはやりがいのある仕事に就けない人に対する橘氏なりのエールなのかもしれないと思う。
そして、こういう考え方はまた現実的でもある。仕事=アイデンティティが確立が不可能ならば、割り切って趣味など他のことでアイデンティティを探すほうが懸命かもしれない。

この種のアルバイトについているのは、学生や家事の合間の短いパートの主婦ばかりではない。なんと、これで生計を立てている人もいるという。
「これではまともな生活設計を立てることはできない」と著者は主張する。
このような職場に長く身を置いたところで、能力向上の機会も得難く、それゆえ賃金の上昇も見込めないからだ。そのうえ、誰にでもできる単純作業なので、雇用側にしてみれば誰が辞めたところでかまわない。何年働こうが能力を身につけることができないから、そこを辞めてもまた同様な単純作業労働にしか就くことができない。まさに負のスパイラルだ。
現代日本が直面している格差問題がここにはある。
このような希望の持てない人々の絶望感が、秋葉原無差別殺傷事件などみみられる凶悪犯罪や児童虐待、自殺の増加の一因にもなっているという。
我々は熾烈な国際競争を勝ち抜くアマゾンのようなニューエコノミーの恩恵を受けてもいるが、一歩立ち止まってその裏側で進行している階層化社会に思いを巡らす必要があるのではないかと締めくくられていた。

格差社会のことを考えるとき、「自分があちら側じゃなくてよかった」といつも思ってしまう。正直、もうそれしか言いようがない。
今は学歴も職歴もごく一部の人を除けばトーダイだろうがなんだろうが関係ない。それどころか、逆に学歴があることによってかえって転落したときの衝撃は計り知れないものがあるだろう。今のポジションからの転落は多くの人にとって、明日は我が身の問題。それが現在の閉塞感を生んでいるのかもしれない。

なんて、そんなことを言いながらも、やっぱり私はアマゾンで本を購入すると思う。リアル書店は言うに及ばず、他のどのWeb書店よりもアマゾンは圧倒的に便利なのだ。それがアマゾンが資本主義社会で競争に打ち勝ってきた結果である。
資本主義というものは残酷だが、一方で、そろそろ限界を迎えようとしているのかなぁとも思う。
このような階層化は日本だけで起こっているのではないだろうし、競争を繰り返していけば、勝ち組よりも負け組のほうが圧倒的に多くなる。
不満を抱え失うもののない莫大な数の人の負のパワーは、いずれ無視できないものになるのかもしれない。


アマゾン・ドット・コムの光と影アマゾン・ドット・コムの光と影
(2005/04/19)
横田増生

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私が図書館で借りたのはこちら。


潜入ルポ アマゾン・ドット・コム (朝日文庫)潜入ルポ アマゾン・ドット・コム (朝日文庫)
(2010/12/07)
横田 増生

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文庫もでてます。

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category: ノンフィクション・新書

thread: ノンフィクション - janre: 本・雑誌

tag: 横田増生  アマゾン  潜入ルポ 
2011/02/01 Tue. 08:32 [edit]   TB: 0 | CM: 0

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