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読書日記、ときどき食日記

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スーツケースの中の少年 / レナ・コバブール&アニタ・フリース 

lene and anita本書は、あの『ミレニアム』「ガラスの鍵賞」を争い、ニューヨークタイムズベストセラーにもなった作品だという。

著者のレナとアニタは、いずれもファンタジーと児童文学の作家だそうで、いわれてみれば、クライムサスペンスの小説家とは異なる視線や表現が随所に感じられる。アメリカ人はこういうのを好きなんだろうなと思う。

本国デンマークでは2008年に刊行なので「ガラスの鍵賞」を争ったのは、眠れる女と狂卓の騎士』だと思うのだが、いずれにしても相手が悪い。
『ミレニアム』は最強なのだ。

満を持しての日本語刊行だのが、北欧ミステリブームはそろそろ下火になりつつあり、しかも今年は派手な話題作が相次いで翻訳されたため、勢い注目度が低くなってしまったのはもったいないかな?

brown suitcase舞台は主にデンマーク。
主人公のニーナは、コペンハーゲンの赤十字センターで働く看護師だ。彼女は、日々DVDの被害女性や虐待された子供たちと接している。大半は不法入国者で、その弱みにつけ込まれ暴力に耐えているが、施設に出来ることには限られている。この日の午前中も、散々傷つけられた挙げ句この施設に逃げてきたウクライナ娘が、当の加害者である婚約者だという男に引き取られていったばかりだった。
そんな時、ニーナは、旧友のカーリンから自分の代わりにコインロッカーに荷物を引き取りにいってほしいと頼まれる。カーリンはなぜかパニックに陥っていた。そして「絶対にコインロッカーのエリアでは開けないで、開けるときは誰にも見られないようにして」というのだった。
彼女は何かよからぬことに首を突っ込んでしまったのだろうか?
ともかくも、カーリンにかわりコインロッカーにいったニーナだったが、そのスーツケースはとにかく重かった。引きずるように車のそばまで持っていき、開けてみると、なんとそこには裸の男児が入っていたのだ。
まだ幼くて3歳くらいだろう。何かの薬で眠らされているみたいだった。
警察に届けようとしたニーナだったが、コインロッカーで激しい怒りを爆発させている男を目撃する。その男が蹴っていたのは、あのスーツケースが入っていたロッカーだったのだ。そして男の目をみるや、ニーナは自分があの男のものを横取りしてしまったのだということを悟ったのだった。ともかく、男の子を連れて逃げなくてはならなかった。
同じ頃、リトアニアの病院で目覚めたシギータは、息子がいないことにパニックになっており…


Copenhagen.jpg高福祉で知られる北欧の国々は旧ソビエトの国々に比べると、比較にならないほど豊かだ。地続きということもあり、不法入国者はあとをたたない。自ら望んで国境にたどり着く者もいるが、一方で、東欧から実の親に"売られて”くる子供たちも多いという。
東欧の子供たちを売春街の通りに立たせるには、荒っぽい手口で事足りるということを、ニーナは職業柄知っている。またそのことに一般市民が無関心なのも知っている。お願いして、デンマークにきてもらったわけではないからだ。
ニーナにはそれが堪え難い。 彼女はあるトラウマを抱えており、そのことが夫と子供を残してまで、過去に戦闘地域でのボランティアに向かわせるほどの「人助け」に燃えさせている。
この小説の魅力は、すなわちニーナの魅力だろう。
ニーナの抱えるトラウマと物語の展開が巧く絡み合い、調和していることにあると思う。失踪感あるサスペンスであると同時に、それを通してニーナ自身が成長する物語になっているのもいいと思う。


スーツケースの中の少年 (講談社文庫)
レナ・コバブール (著), アニタ・フリース (著), 土屋 京子 (翻訳)
講談社 (2013/7/12)



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category: クライム・警察・探偵・リーガル

thread: 最近読んだ本 - janre: 本・雑誌

tag: 海外ミステリ  北欧  デンマーク  人身売買 
2013/10/09 Wed. 09:21 [edit]   TB: 0 | CM: 2

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この記事に対するコメント

Re: ディーヴァー作品=年末の愉しみ

naoさん、こんばんは。

> タイトルにあらわされるその中身が3歳児であるとしたら、
>そこは普通「子供」とするところだろうけど、それだとキツ過るから
>「少年」になったのであろうか‥臓器売買絡みでないことを願う)。

この本は、デンマーク版が最初に出版され、それから英語版を経由し日本語版となったのだと思われるのですが、
英語のタイトルは『The boy in the suitcase』なんですよ。
英語を直訳しちゃったというのが本当のところでしょうし、デンマーク語から日本語に訳したら、また中身も微妙にニュアンスが違うものなのかもしれません。

そうそう、それにしても、naoさん、鋭いですね!

ディーヴァーの名を聞けば、もう年末ですねぇ。しみじみ...。
キャサリン・ダンスシリーズの『シャドウ・ストーカー』の原題は『XO』ですよね。ただ、これはあまり評判がよろしくないような...。でも買っちゃいますけどね(笑)

国内は...今年はさっぱりですね。御大も息を潜めてるようですし、全く読んでなくて。
それでなくても、ノンフィクションも山積みになっていて、海外ミステリもなんとか10月末までに読みたいものもあるし、ポール・オースターのN.Y.三部作なんかも読みなおしたいと思っていて正直手が回らない。『64』級のが出れば是非読みたいんですけど、今年は聞きませんね。

『ゴッサムの神々』!なんか装丁が腐女子系の漫画チックな感じですけど、中身はホンモノ?

では、では〜


Spenth@ #- | URL | 2013/10/09 Wed. 21:33 * edit *

ディーヴァー作品=年末の愉しみ


北欧ミステリにあっても女性二人組作品はめずらしいような‥
しかしタイトルが重く、紹介記事を読んでさらに加重され‥。
(タイトルにあらわされるその中身が3歳児であるとしたら、
 そこは普通「子供」とするところだろうけど、それだとキツ過るから
 「少年」になったのであろうか‥臓器売買絡みでないことを願う)。
記事を読んだだけで、お腹いっぱいになってしまいました。

ディーヴァーの新刊『シャドウ・ストーカー』来週刊行されますなぁ‥
なぜかもう年の暮れがそこまで迫ってきているような錯覚が。
自分は次に『ゴッサムの神々』を予定にしているのでした。

ところで今年海外の豊作はいいとして、
自国のミステリで何か引っかかってくるものありましたか?
周りのヒトに訊いても「・・・」首を傾げるだけ。
では!

nao #6gL8X1vM | URL | 2013/10/09 Wed. 20:53 * edit *

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