Reading For Pleasure

読書日記、ときどき食日記

06« 2017 / 07 »08
1.2.3.4.5.6.7.8.9.10.11.12.13.14.15.16.17.18.19.20.21.22.23.24.25.26.27.28.29.30.31.

追跡者たち / デオン・メイヤー 

"南アフリカのコナリー"と称されるデオン・マイヤーの日本初上陸は昨年のことだったが、日本ではさほど話題にならなくて、もったいないなぁと思っていた。
版元は倒産してしまったし、Amazonにレビューを寄せている人の評価もひっじょう〜〜に渋い。渋過ぎる!!!
好みの問題だろうが、『流血のサファリ』がたった星二つだなんて、さすがにそれはないと思う。
確かにとんでもない誤植はあったが、それは作品の瑕疵ではないし…

この"南アのコナリー”、私は本家よりもいいと思っている。
だって、この作品と『スケアクロウ』とじゃ、正直、オハナシにならない。
Johannesburg.jpg


ランダムハウス倒産後、これほどの大物を放っておくわけはないと思っていたら、案の定、早川書房が獲得したらしい。
ただ、表記はデオン・メイヤーに変ってしまった。拘りがあったのだろうがスペルはMeyerなので、「マイヤー」のままで良かったのじゃないか
それにこの『追跡者たち』は、『流血のサファリ』と全く無関係というわけではないのだから。

さて、本題。この小説の魅力は、第一にこれひとつで三つの物語が味わえることにある。
その三つの物語の主人公が、主婦のミラプロのボディガードのレマー民間調査会社の調査員のマットである。タイトルの『追跡者たち』というのは彼らを表してもいる。文字通り、彼らは皆、何かを追い求めているからだ。

一つ目の物語は、主婦のミラと南アの大統領府情報局(PIA)にかかる物語だ。
PIAは他機関との合併の噂に揺れている。ヤニーナは前大統領に任命された長官で、就任して日が浅いため、彼女には地位が保てるだけの実績がない。彼女とPIAに今必要なのは、"大いなる脅威"なのだ。そして今、天の采配によりそれはやってこようとしていた。南ア国内の犯罪組織同士の対立にイスラム過激派が絡んでいるらしい策謀だ。
同じ頃、ミラは、家庭を顧みない夫と横暴な息子に耐えられなくなり家を出る。アパートを借り、憧れていたジャーナリズムの仕事を探し始めるが、大昔の最優等の学位は、経験のなさと不況の前には無力だ。そんな折、求人欄の小さな広告から、運良く職を得ることに成功する。が、それはPIA直轄の調査報告の仕事だった。そして、彼女は偶然知りあった男性ルーカスと恋に落ちる。

Diceros bicornis
二つ目の物語の主人公は、『流血のサファリ』に登場した腕利きのプロのボディガードの、あのレマーである。
彼はその後、エマ・ル・ルーと愛し合うようになり夢のような時間を過ごしていた。が、反面で、関係の終焉を恐れるあまり、彼女に過去を打ち明けることができず苦悩してもいた。そんな時、地元の農場主ディードリックからクロサイの輸送の護衛の仕事を依頼される。ジンバブエ最後クロサイの保護のために、国境から1500キロの道のりを運ぶというのだ。だが、クロサイの角は高値で取引されるため危険を伴う。エマと会社に後押しされるように、この仕事を引き受けたレマーだったが、ディードリックに疑念を抱く。そして彼の予感は的中するのだった。輸送車は尾行られていたのだ...

三つ目は、警察を退職し、民間の調査会社で働きはじめたばかりのマット・ジュベールの物語だ。
彼の民間での初仕事はバス会社の管理職員フリントの失踪事件だった。依頼人は妻ターニャ。フリントはジムの駐車場に車を荷物を残したまま、突如姿を消してしまったという。誰もが彼は失踪などするようなタイプではないとい、手がかりは乏しい。ターニャの懐具合を気にしながらも、マットは地道な調査によって、フリントの秘密を発見するのだが…

この三つの物語のなかで、あなたはどれを一番面白く読むだろうか?「ボニーとクライド」のようなミラの物語だろうか?深い人間洞察が読み応えがあるレマーの物語か、それとも単なる私立探偵の物語に終始することなく、"警察にできることの贅沢"をも描いたマットの物語だろうか?
デオン・マイヤーのキャラクターの造形や洞察力には目を見張るものがある。
彼らはそれぞれが皆何かを追い求めている。それはこれまでとは違う新しい世界の自分であるかもしれない。
誰しもが自分のセールスポイントを目立たせたいという願望を持っているし、不利な条件に縛られている場合は細心のの注意を払って自分を取り繕おうともする。けれども、絶対に過去の己の足跡を消すことはできない。

この三つのバラバラのピースがどう交わっていくのかを「追跡」するのだ。これが本書の第二の楽しみである。
またこれが憎らしいことに、下巻の半分を過ぎてもどう収斂していくのか見えてこない。そして残りのページはどんどん少なくなっていく。
「大風呂敷の割にラストはあっさり」訳者の方はこう言っているが、そうだろうか?
賛否あるだろうが、とても巧い締め方だと私は思う。



追跡者たち(上) 〔ハヤカワ・ミステリ文庫〕
追跡者たち(下) 〔ハヤカワ・ミステリ文庫〕

デオン・メイヤー (著),
真崎 義博 (翻訳), 友廣 純 (翻訳)
出版社: 早川書房 (2013/6/21)




関連記事

category: クライム・警察・探偵・リーガル

thread: 最近読んだ本 - janre: 本・雑誌

tag: 海外ミステリ  早川書房    南アフリカ  流血のサファリ 
2013/10/27 Sun. 22:00 [edit]   TB: 0 | CM: 2

go page top

この記事に対するコメント

Re: がんばれショーン・ビーン!

naoさん、こんにちは。

え、私、武闘派?戦闘能力ものすごく低そうなんですが... (笑)
でも、なんといわれようが、夜道で狙われようが、今は絶対に「南アのコナリー」ですね。

『追跡者たち』は、群像劇というのもまたちょっと違うんですよ。もう言ってしまいたいけど我慢します...。
表記はねぇ、マイヤーでもメイヤーでもいいんですけど、もうデオン・マイヤーでWikiもできちゃってるのに、著者の五十音で陳列する大型書店や図書館では、ばらばらになっちゃうのに。Meyer ってつづって「マイヤー」という"鍋の会社"もあるのに〜(笑)
またマイナーネタで恐縮なのですが、アンディ・マレーを頑に「マリー」と言いはるのと同じ拘りがあるんでしょうね。ちなみにテニス選手には、ベルディヒ、ベルディハ、ベルディフとメディアによって三パターンの呼び方をされる選手もいて、どれも違うらしい(笑)どうでもいいですね、ハイ。
そんなことよりも訳に拘って欲しかったよ。
本当にハヤカワはこれだから...ぶつぶつぶつ


>「時の娘」よかったですわい(今回この有名作、初めて読みました)。
>あの「ウルフホール」の時代より少し前ですが、部分被っておりますな。

そうなんですよ。『時の娘』のリチャード三世のあと、チューダーズの時代になる。
そのうちレビューするつもりなのですが、『罪人を召し出せ』も良かった〜。
ただヒラリー・マンテルは好みが別れますよね(笑)

ついでに、と思って『時の娘』のオマージュ作品だという『リチャード三世「殺人」事件』も手元にあるのですが、果たして読書会までに読めるか?ちなみにこれ、MWAを穫ってるみたいです。

私も10月中にキングを読みたいと思ってたのですが、もう絶対どうやっても無理。
日本のものも読みたいと思ってアラフォーおやじさんオススメの『黒警』も買っちゃったし、島田荘司もなにやらまた出してるし。ま、大先生のほうは、いつものごとく「やらかしちゃってる」とは思うのですが、そのやらかし感も味わいたい。

やばいですね。私。 これでハヤカワ関係者にも島田荘司御大の関係者にも狙われてしまう?(笑)
ま、いいわ。
では、では〜

Spenth@ #- | URL | 2013/10/28 Mon. 21:32 * edit *

がんばれショーン・ビーン!


あらら・・またコナラー(ファン)に対して挑発的な・・さすが武闘派だ。
ねらわれますぜ(夜道には注意)。
本作は群像劇という感じの展開でありましょうか。
(本作、こちらの図書館にも所蔵しておりました)。
この著者のシリーズ(3部作)、映画化もされるようですな(WiKi調べ)。
主演はショーン・ビーンだとか・・渋いというか地味というか(失礼)。
著者の表記・・Meyerだとしたら、やはりメイヤーかメーヤー(平板・・)
発音の表記は難しいですなぁ・・ようわかりまへん。

「時の娘」よかったですわい(今回この有名作、初めて読みました)。
あの「ウルフホール」の時代より少し前ですが、部分被っておりますな。
また作品のそのアプローチの仕方も、作風は違っても根は同じかも。

キングの例の本・・こんなに分厚とは(やや戦意喪失気味)。

あと来年最初の読書会は「夜に生きる」(!)だとか。
Spenth@さんの独擅場となるか!?・・では。

nao #6gL8X1vM | URL | 2013/10/28 Mon. 20:23 * edit *

go page top

コメントの投稿

Secret

go page top

トラックバック

トラックバックURL
→http://spenth.blog111.fc2.com/tb.php/315-95970435
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

go page top

RSSリンクの表示

リンク