Reading For Pleasure

読書日記、ときどき食日記

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黒警 / 月村 了衛 

久しぶりの国内モノ。国内ものから遠ざかって早ウン年。いつの間にか読むのは年に2〜3冊にまで減ってしまっている。触手が動くのは、宮部みゆきに島田荘司、横山秀夫くらいのもので、あとはどうにも馴染めないのだ。特に若手作家のものは駄目で、若い子と話していて感じる"異邦感"を感じてしまう。どうも話が通じてないとでも言えばいいのだろうか...。

だが、月村了衛の名前はなんとか知っていた。ジャンルミックスがトレンドとはいえ、日本SF大賞と吉川英治新人文学賞の受賞とはなかなか面白い組み合わせだなと思っていたのだ。

そこにきて、読者のかたからすすめられたのが、本書だった。
「面白くなかったら、
Amazonギフト券で料金を返してあげるよ!」

とまで言われて勧められたのだ。
これは読んでみなくちゃ!

kako-ow67SGWfSMaOma1O.jpg『黒警』というタイトルから察することができるように、主人公は警察官である。マル暴(暴力団対策担当)の刑事沢渡は、離婚した妻への慰謝料の支払いに日々汲々とし、無気力に生きている。
彼には、駆け出しだった頃に「女を見殺しにした」というトラウマがあった。不法滞在者と思しき女の命を救ってやることができなかったのだ。チャンスが保身のためだった。
その出来事を共有しているのがヤクザの波多野だ。彼もまた当時駆け出しのヤクザで、事の一部始終の目撃者だったのだ。ヤクザとはいえ波多野には「男気」があり、蛇頭に追われる女を時々助けてやっている。沢渡はそんな波多野が羨ましい。今となっては「自分は変わってない」ことこそがトラウマの根となっている。

沢渡が「らくがきペンちゃん」のコピー商品の元締めの中国人組織「義水盟」を追う一方、波多野は『ペンママ』なるものに感心を持っていた。波多野の組と敵対する「天老会」が血眼になって探しているというのだ。掴めば、彼の組での地位を固めるものなる。だが、『ペンママ』が何なのかはわからない。鍵となるのは「義水盟」の沈という人物らしい。
そんな二人の前にその沈が姿を現す。沈は、波多野が助けた女の伝言「灰になっても感謝している」という言葉を伝えにきたのだった。そして、そんな波多野を見込み、あるカンボジア人女を助けるため手を貸してほしいと言うのだが…


ストーリーは昔からある「義賊もの」と言っていいと思うが、時代にとてもマッチしているし、カタルシスがある。
沢渡の属す警察組織は、縦割り社会の権化のようなものだ。その硬直度はまさに「義賊もの」が持て囃された士農工商の時代に近いといっていい。日本も全体的に生まれた環境によって一生が決まってしまう硬直性と閉塞感を帯びつつあり、ゆえに「義賊もの」が嵌るのだろう。

硬直的な組織のなかで自分自身の「良心」を飼い殺しにしながら、"ほどほど"にやっているという沢渡に共感する人は多いと思う。その沢渡が「変わっていく」過程がいい。内心では誰しも、自分の良心に誇れることをしたいと願っており、そんな心の要求に直球で訴えるのだ。

黒社会の沈と手を携える決心をした沢渡は、沈から「あんたは警察の中の黒色分子だ」と言われる。帯のキャッチにもなっているセリフだ。『黒警』というタイトルは明らかに沢渡をあわらしているのだろう。が、その黒は本当に黒いのか?負の象徴の色なのだろうか。それほどまでに読後感がいい。「本当の黒色分子」に仕掛ける復讐も気が利いていて胸がすく。ダークヒーローものなのだろうが、小気味よいダークさだ。

長編とはいいながらも薄手で、簡潔な文章も読みやすい。初めて手にする月村了衛にはもってこいだった。
著者経歴をみると現国の予備校講師をしてたとあるが、エンタメの世界でも活躍していたようだ。だからか、文章に妙な"ひっかかり"がないし、構成もさすがだと思う。アラフォーおやじさんが嵌る理由もよくわかる。
あ、返金は不要ですから(笑)!


黒警
月村了衛 (著)
朝日新聞出版 (2013/9/6)


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category: ミステリ/エンタメ(国内)

thread: 最近読んだ本 - janre: 本・雑誌

tag: 国内ミステリ  警察小説   
2013/11/02 Sat. 10:47 [edit]   TB: 1 | CM: 2

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この記事に対するコメント

Re: 月村ワールドへようこそ

> 一応、Amazon ギフト用意してたんですけど、よかった(笑)
ええ?そうなの?(笑)

確かに『黒警』は薄味でしたが、こういう薄くてシンプルなものこそ、
作家の筆力がものをいうところもありますよ。
これがヘタレだと「んで?」という感じになってしまう。
特に文章は大事で、歌野 晶午なんかだときっと目も当てられないにちがいない(笑)

『機龍警察自爆条項』は、
比較にT.R.スミスの名がでるのなら、それは読まなくちゃいけないですね。
がんばろう〜っと

では、では〜

Spenth@ #- | URL | 2013/11/03 Sun. 09:10 * edit *

月村ワールドへようこそ

一応、Amazon ギフト用意してたんですけど、よかった(笑)

新宿鮫の大沢氏と比較するのは月村氏がかわいそうだな

『黒警』は実験的な作品じゃないかな
サラッと軽い感じで流してる
まだまだ本領は発揮してない感じです。

完成度でいうと『機龍警察自爆条項』が一番です。
SF,近未来という設定を差し引いても抜群なんだよ

ロバートゴダートの技巧にトム・ロブ・スミスの
どうしようもない救いようのなさを足した、そんな感じかな
映像化したとしたら、全編 鈍色だな
人間を描くのが実にうまい

『機龍警察自爆条項』更におもしろいよ

アラフォーおやじ #- | URL | 2013/11/02 Sat. 18:19 * edit *

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