Reading For Pleasure

読書日記、ときどき食日記

04« 2017 / 05 »06
1.2.3.4.5.6.7.8.9.10.11.12.13.14.15.16.17.18.19.20.21.22.23.24.25.26.27.28.29.30.31.

『時の娘』読書"大会" 

rg6.jpg横浜読書会は、もはや"大会”に近づいてきた気がする。

リチャード三世の遺骨発見のニュースもあって、『時の娘 』の注目度が高いのか、はたまた横浜読書会がアツいのか。
今回は募集をかけた途端、瞬殺で満席になっちゃったそうである。
楽天対巨人が盛り上がっている裏で、今回の参加者数はまたまた記録更新の25名だ。

今回のメイン資料とグループ分けのくじは常連のタケダちゃん作。このくじはなんと封筒から手作りで、封蝋で封がしてあるという凝りよう...。
また『時の娘』はその性質上、歴史的背景や家系図などの参考資料はキリがない。作成するのはひと仕事だろうなと思ってたら、案の定作るだけで「燃え尽きちゃった」のだとか(笑)

テイ女史は「リチャード三世の歴史背景と事情くらい当然ご存知ざんしょ」的スタンスで書いているので、「読む前にこの資料が欲しかった!」との声があったほど。タケダちゃんもおてもと氏も本当にご苦労様でございました。

さて、進行は例によってグループワークの後、メンバーシャッフルという流れ。何しろ大人数なのでひとグループ5~6名で4グループもある。私は前半「K」グループで、後半は封蝋がゴールドだったため「金満チーム」だった。

まず、初読の人も再読の人も「読みにくさ」をあげていたのはご想像の通り。この作品、途中で挫折する人も少なくないと思う。そもそもが、歴史的背景やシェイクスピア、モアを「知ってて当然」で書かれているし、おまけにエドワードもリチャードもヘンリーもエリザベスも何人も出てきやがる。なぜに、あいつらはああも名前を使い回すのか?
私自身、読むのにいつもよりも時間がかかったし、特に巻頭ページの家系図を参照しにくいキンドル版は明らかに不向きである。
今回の読書会に際してリチャード三世の肖像画の新装ヴァージョンも買ってみたが、実家にあった古〜〜〜〜い昭和50年刊行のポケミスと内容は全く同じだった。古風な訳は私は味があって好きなのだが、それでも古さが感じられないというのは意外な驚きである。このポケミス版はもしかして『ビブリア古書堂』とかで高く買ってくれたりするのだろうか?ま、大型犬の歯形がついてる時点で駄目だろうな...。うちのお犬様はどれだけ私の財産を食い散らかしてあの世にいってしまったのか。
「K」グループには東京創元社で編集者をされている方がいらして、実は東京創元での新訳化も検討されていたが、例の遺骨発見で再度ブームになり難しくなったという裏話も聞けた。編集者としてはもう少し補足的な注釈を入れたいそうである。そうなのだ、余程のオタクでもない限り、誰も英国史なんかに詳しいわけがない。その点、扶桑社の『リチャード三世「殺人」事件』はもうちょっと読者の頼りない教養のことを考えてくれている。ハヤカワさん、この『時の娘』ももう少し親切だったら遺骨発見とあわせてもっとブレークしてたかもよ。

 rg61.jpg
『ベルばら』を読んでフランス革命の何たるかを知った気になる
ように、文学や演劇が大衆にもたらすイメージというものは思いのほか大きいものだ。"リチャード三世は極悪人か善人か"といったテーマを、なじみある『忠臣蔵』の吉良上野介と浅野内匠頭に置き換える人もいた。歌舞伎の演目の『忠臣蔵』は吉良は悪者だというイメージを定着させたが、実は彼の地元では汚名を着せられたことに同情されてもいるという。リチャード三世にしろ吉良にしろ、その人物像はいずれも今となっては藪の中。それが歴史というものだ。そういう意味では『リチャード三世』と『忠臣蔵』はとても似ている。

実は、私は今回てっきりテイ女史のリチャード三世擁護論支持派が大勢を占め、「孤立するのじゃないか」と思っていた。なぜなら、既存のイメージのどんでん返しというものは読み手にとって魅力的なものだから。これまで極悪人とされてきた人が実はいい人だったというのを信じることは、何となく善い行いをしたという気分にさせる。
けれども、意外なことに杞憂だったようである。リチャード三世が全く無実であったかとなと、「そうでもないのじゃないのか」という声も多かった。「リチャードが"せむし"なんかのわけがない。それはチューダーの陰謀よ!」とかいう熱の入ったリカーディアンの主張を、遺骨の発見がひっくり返ってしまったのだから無理もないかな。ただ、一つ誤りがあるからといって、他の全てがそうではないとは言えないが...。

もちろんミステリーとしての美点も多く挙げられた。警察の捜査手法としても見事であるという意見には、私はちょっと賛同できないところもあるのだが、ベッド探偵たるグラント警部が面会者や看護婦と会話をすることだけで、物語を構成し展開していく巧みさの指摘には、なるほどなぁ、と思った。その手法もさることながら、脇役のキャラたちも個性が光っている。
今後、新たに明らかにされる事実が出てくる可能性もあるだろう。それがたとえ、リカーディアンの主張を覆すものであったとしても、本書が歴史ミステリーの傑作として惨然と輝くものであることには変わりない。

というわけで、今回一緒に盛り上がった皆さんも、お席が遠くて全然お話できなかった皆さんも、また次の機会にお会いしましょう!
次は、新年早々『夜に生きる』ですよ!やっぱり今年の「このミス1位」はこの作品しかないと思うのですが、さてどうなるででょう?


時の娘 (ハヤカワ・ミステリ文庫 51-1)
ジョセフィン・テイ (著), 小泉 喜美子 (翻訳)
早川書房 (1977/6/30)


詳細をみる




ミステリーではないのですが、『ベルばら』が話にでてきたので。
こちらも面白かったので、ご興味があれば是非。

王妃に別れをつげて (白水Uブックス 180)
シャンタル・トマ(著), 飛幡 祐規 (翻訳)
白水社 (2012/11/13)


詳細をみる





関連記事

category: 読書会

thread: 推理小説・ミステリー - janre: 本・雑誌

tag: 海外ミステリ  早川書房  読書会  英国  歴史 
2013/11/04 Mon. 18:47 [edit]   TB: 0 | CM: 2

go page top

この記事に対するコメント

Re: 荒れた読書会に!・・ならなかったか

naoさん、こんばんは。

> あれだけ著者はキレイに歴史の事象(事例)を巧く料理(調理)して、
> 呑みこみ易くしたのに、味覚の確かなヒトばかりであった様子。

さては、私が孤立するのを期待してたな。
ところがやはりあの骨のインパクトは大きかった。 あれで「あら?」と思った人は多かったみたいです。
後は、「別に極悪人でも、いい人でもどっちでもいいし」といったクールさもありました。
一人くらい「きぃー!私のリチャードが...!!!」みたいなリカーディアンがいても面白かったと思ったのですが、
再読の方も多かったし、あの肖像画をみてテイ女史ほどは惚れ込めない、といった感じでしょうか。

警察の手法というのは、枕詞には「当時の」がつくのかな?
今の物証主義では使えるものはなさそうですし、結論もあいまいなままなので、この表現には私はちょっと賛成しかねるのですが...推理が見事だということでしょうか?
naoさんもおっしゃっていた「歪んだ(歪められた)ものがもののかたちが復元されていく」素晴らしさというべきか。

写真にもあるポケミスは奥付をみると昭和50年なので、多分誰かからの頂き物だと思うのですが、全然覚えていないんですよ。よりによってプレミアムな本を齧るなんて、我が家のお犬様は、舌が超えていた?

> もふもふ仔牛、とかなんとかいうヘンなキャラがいい味だしておりましたなぁ。

仔羊ちゃんじゃなかったっけ(笑)
しかし、あの羊ちゃんはむやみに人を信用しすぎですよね。人を疑うことを知らない。
典型的な騙されやすいお坊ちゃんだわ。
悪い女に騙されて、パパの財産を全部すっちゃうタイプにちがいない。

> 自分はずっと本作読むまで、ティ(茶)と思っておりました・・恥。
> これナイショですよ。

ジョセフィン・貞か、ジョセフィン・茶か (笑)
どっちでもいけそう

では、では〜

Spenth@ #- | URL | 2013/11/05 Tue. 21:05 * edit *

荒れた読書会に!・・ならなかったか

本書の主張するところの正当(正統)性を武器(?)に、
リカーディアンVS懐疑派という図を想定・・読書会はヒートアップ!
つかみ合いのケンカになるかと期待・・でなく心配しておりましたが
そうはならなかったようで残念・・でなく安心しました。

あれだけ著者はキレイに歴史の事象(事例)を巧く料理(調理)して、
呑みこみ易くしたのに、味覚の確かなヒトばかりであった様子。

記事に「警察の捜査手法としても見事である」という意見もあったとか、
意味がよくわかりませんが、そういう読み方もできるのですなぁ(ナルホド)。
「脇役のキャラたちも個性が光っている」・・?
もふもふ仔牛、とかなんとかいうヘンなキャラがいい味だしておりましたなぁ。

しかし今回の自分の大きな驚きは、発見された遺骨の歪みより別のところに。
Spenth@さんがお読みになった本、ポケミス版(!)なんですな。
味ありすぎですぜ・・嗅覚のすぐれた犬が噛みつき、
歯型を残すのは当然でありましょう(自分は文庫で読了)。

愉しい読書会レポートありがとうございます!
次回も期待しております・・では。

追記
著者の名前(表音・表記)は、テイ(貞)であったのですな
自分は本作読むまでずっと、ティ(tea=茶)と思っておりました・・恥。
これナイショですよ。

nao #6gL8X1vM | URL | 2013/11/04 Mon. 21:51 * edit *

go page top

コメントの投稿

Secret

go page top

トラックバック

トラックバックURL
→http://spenth.blog111.fc2.com/tb.php/320-c3878fed
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

go page top