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読書日記、ときどき食日記

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三秒間の死角 / アンデシュ・ルースルンド&ベリエ・ヘルストレム 

すでにマンネリ感漂っていた北欧ものだが、ここにきて大作がキター!!!

アンデシュ・ルースルンド&ベリエ・ヘルストレムは、ジャーナリストと元受刑者で刑務所及び更生評論家(←そんな職業あるのか)という異色のコンビで、あの名作『死刑囚 』の著者でもある。

O6TYjKOCwlu3OZc1385102905_1385103082.jpg説明しなくてもなんとなくわかるだろうけど、左の金髪インテリ風がジャーナリストのルースルンド氏で、右のスキンヘッドの強面さんが、刑務所評論家のヘルストレム氏。

ところで、このお二人は結構どの写真もキメキメだったりするが、特にヘルストレムのおっちゃんのキメ感がすごい。
この写真も"必殺キメポーズ"だが、実際は

こんな風に片寄せ合って執筆したりはしないでしょうに…


それはさておき、本書はスウェーデン警察の潜入捜査官と刑務所、警察のあり方をめぐる物語である。
潜入といえば、何度もリメイクされた『インファナル・アフェア 』を思い出す。
かの映画の潜入捜査官はれっきとした警察官だが、本書の潜入捜査官は"犯罪者"なのである。なぜなら、犯罪者を演じられるのは犯罪者だけだからだ。


 prisonピート・ホフマンは、10年前服役を終えた直後にスウェーデン警察エリック・ウィルソンにスカウトされ、潜入捜査官"パウラ"となった。
パウラことホフマンは、今だかつてないほどに麻薬犯罪組織"ヴォイテク”の中枢に入り込んでいた。ヴォイテクは表向きは警備会社を装っているが、主な仕事はアンフェタミンを捌くことだ。パウラは、ポーランド製アンフェタミンの、ストックホルムでの売買を任されている。だが、その売買の現場で、組織のポーランド人が買手を殺害してしまう。買手の様子はどこかおかしく、問いつめたところ、彼は自分は警察だと白状してしまったのだ。やむを得なかった。もしその殺害を止めていればパウラ自身が疑われ殺害されていただろう。役を演じ切るか、死ぬかのどちらかなのだ。
その殺人の捜査を担当することになったのは、エーヴェルト・グレーンス警部だった。"簡単には諦めない男"として知られている彼は、粘り強く、頑固で、上層部に逆らう反骨心を持つベテランの刑事だ。顔の判別のできない被害者は、歯の詰め物からデンマーク人捜査官であることが判明するものの、その後の捜査は行き詰まっていた。
一方で、パウラことホフマンは組織内でまた一段階段を上ろうとしていた。スウェーデンの刑務所内での麻薬売買を任されようとしていたのだ。囚人の多くは麻薬中毒だ。刑務所内でも麻薬は供給され続けるため、彼らが中毒状態を脱することはない。刑務所は外の世界の何倍もの儲けが期待できる美味しい市場なのだ。金があるものからは金を、ないものは出所後その身をもって組織に支払いをさせる。刑務所を牛耳ることができれば、ヴォイテクはスウェーデンを牛耳れるだろう。それは同時にホフマンと彼のハンドラーのエリック・ウィルソンの終着点でもあった。そこを一網打尽にすれば、ヴォイテクを潰せる。
だが、例のデンマーク人殺害事件にパウラが関与していることが発覚すれば、この千載一遇のチャンスは潰れ、これまでの潜入捜査の全てが台無しになってしまう。
エリックは、ホフマンを伴って内閣府での極秘の会合にでかける。ホフマンが罪に問われないとの言質をとり、彼が刑務所から速やかに脱出できる協力を約束してもらうために…

tulip.jpgここに紹介したのは、ほんの最初の部分だけだが、物語はここからが劇的に面白くなるのだ。

頼れるものがなく、家族にすら嘘をつきその嘘に押しつぶされそうなホフマンと、長らく介護施設にいた妻を亡くした悲しみが居座ったままのエーヴェルト・グーレンス警部。追うものと追われるもの、二人に共通するのは堪え難い孤独だ。

警察にとって、犯罪者を使って潜入捜査をしていることは絶対に露見してはならない。だから、潜入者がトラブルに見舞われても、見て見ぬふりをし簡単に切り捨てようともする。
エーヴェルトは「簡単に諦めない男」だ。上司に逆らっても執拗に捜査を続け、その執念の捜査の手が伸びようとしているのを恐れた警察幹部は、あっさりとホフマンを見捨てる。ホフマンは絶対絶命の危機に陥るのだ。

『死刑囚』を読んだなら、著者二人があの作品でみせた”非情さ”を覚えていることだろう。どうしてそこまでと、どうにもやるせない気にさせるのだが、実は今回は驚かされることになる。
解説者は、タイトルの意味がわかった時、思わず膝を打ったという。それほど、巧妙なタイトルなのだ。

ところで、いかに重犯罪者用の刑務所が舞台とはいえ、スウェーデンの刑務所が薬物漬けになっていることに驚いた。
薬物は刑務所においては「必要悪」でもあるのだという。不安を和らげるのに効果的で、それがあるからこそ、凶暴な囚人たちは大人しく独房でマスターベーションにふけっているのだという。
もし薬物が完全に撤去されれば、刑務所は恐怖と混乱に支配され、職員に要求される仕事のレベルが全く違うものになってしまうのだともいう。これらは「著者より」と題された巻末の文章に詳しいが、刑務所評論家だという著者ならではの現実なのだろう。

この「必要悪」というのはホフマンのような元犯罪者の潜入捜査官にそのまま当てはまる。社会は、犯罪者を不当に利用し、重大犯罪の解決のために軽微な犯罪に目をつぶることを良しとする。
しかし、「必要悪」は果たして本当に「必要」なのだろうか。
『死刑囚』の時のように、その問いはまたも重くのしかかる。

実は本書は『制裁』『ボックス21』の続編であるというが、これはこれで単独でも充分堪能できると思う。かくいう私も両方とも未読である。

刊行が10月25日とちょ〜っと遅めだったので、「このミス」入りは微妙かな?
しかし、面白さではダントツだと思う。というか、この本をして「ぜんぜん面白くなかった」とか言われたら、

「あなたとは別の道を歩むしかないわねとかいう感じ(笑)


三秒間の死角 上 (角川文庫)
三秒間の死角 下 (角川文庫)

アンデシュ・ルースルンド &ベリエ・ヘルストレム (著),
ヘレンハルメ 美穂 (翻訳)

角川マガジンズ (2013/10/25)



死刑囚 (RHブックス・プラス)
アンデシュ ルースルンド &ベリエ ヘルストレム (著),
ヘレンハルメ 美穂 (翻訳)

武田ランダムハウスジャパン (2011/1/8)




制裁 (ランダムハウス講談社文庫)
アンデシュ・ルースルンド&ベリエ・ヘルストレム (著),
ヘレンハルメ美穂 (翻訳)

武田ランダムハウスジャパン (2007/6/1)





ボックス21 (ランダムハウス講談社文庫 ル 1-2)
アンデシュ・ルースルンド&ベリエ・ヘルストレム (著),
ヘレンハルメ美穂 (翻訳)

武田ランダムハウスジャパン (2009/4/10)








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category: クライム・警察・探偵・リーガル

thread: 最近読んだ本 - janre: 本・雑誌

tag: 海外ミステリ  北欧  映画化 
2013/11/22 Fri. 21:59 [edit]   TB: 0 | CM: 2

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この記事に対するコメント

Re: タイトルなし

アラフォーおやじさん、こんにちは。

>下手したらくどいぎりぎりの描写

あははは、これ、笑っちゃいました。
下手しなくても、結構くどめですよね。ワンセンテンスが長いよ。
ブロック御大は、年代的にもファンなんでしょうかね?

同じC.カミングの作品でも『ケンブリッジ・シックス』と『甦ったスパイ』では
訳者を変えてますね。
訳の不出来は、なんといってもそこはハヤカワクオリティというか。
ハヤカワさんから出るという時点で、ある程度は諦めなくちゃ(笑)
スピードと鮮度が命、読み捨て上等な本の作り方ですよね。
そういう私も、海ミスものはほぼ読み捨てていっており、時々寂しいなと思います。
ただ、読み捨てにしてはお値段が高めですよねぇ(笑)

あ、もしも『三秒間の死角』が駄目なら、アラフォーおやじさんにだけはアマギフしましょう!
保証しましょうとも。
世の中色んな感性を持った人がいるので、とても全員にはできませんが。
でも、おやじさんががっかりすることはないと思いますよ!

では、では〜

Spenth@ #- | URL | 2013/11/23 Sat. 11:54 * edit *

こんばんは、

『KGBから来た男』ようやく読んだよ
なかなかいいね、誰かに似ていると思えば

あの、こだわりと言うか、下手したらくどいぎりぎりの描写は
ローレンスブロック御大そのものやね

しかも作中、ローレンスブロックらしき作家と『八百万の死に様』
から引用してるとなると、著者がコアなファンでしょうね
次回作も楽しみですね

『エージェント・シックス』はすれっからしのスパイ読みからすると
ちょっと残念、ひょっとすると訳者がだめなのか?
会話と描写に違和感なんだか読みずらい、
『甦ったスパイ』はかなりいいとレビューしてたけど訳者が別物なのかな

『三秒間の死角』 amazonでポチったよ
アマギフじゃなく別の道ね、・・・了解しました




アラフォーおやじ #- | URL | 2013/11/22 Fri. 23:32 * edit *

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