Reading For Pleasure

読書日記、ときどき食日記

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死もまた我等なり/ ジェフリー・アーチャー 

結構な頻度で本を読んでいると次第に自分が「スレて」くるのがわかるのだ。読んでる本の種類にもよるのだろうが、特にエンタメ系だと、「ああ、またそれ?」とか、「そんなことはあり得ないだろ?」とか、気がつけば"アラ探しありき"の読書になってたりする。
愉しみのための読書のはずなのに、無益なことこのうえもない。(グレイマンみたいなことをやっておいて、どうもこうもないが...)確かに中には、箸にも棒にも…全くねぇ、という小説もあるにはあるが、私に限っていえば、「面白くない」のは、自分の側に問題があることが多かったりする。大抵、自分の置かれた現実を受け入れたくない時が多い裏をかえせば、そういう時にも面白いのがいい本なのだろうが…
しかし、子供の頃は、物語を読むことは常にワクワクするトクベツな体験だった。アーチャーは、童心にかえり本を読む喜びを与えてくれる数少ない作家の一人である。

the sins of the father本作は、クリフトン年代記と名付けられたサーガの第2部である。当初は3部作を予定したいたというが、どうやら5部作になりそうだという情報もある。現在アーチャーは73歳、どこまで長くなるかは、「神のみぞ知る」のだろうが、少なくとも第3部の『Best Kept Secret』時点では、終わりはまだらしい。

さて、この物語の主人公は、ハリー・クリフトンという青年である。時は第二次世界大戦下。舞台は英国のブリストルという港町とアメリカはニューヨークだ。
前作時のみぞ知る』のあとがきにもあるように、今作はアーチャーの自伝的色合いの濃い小説である。アーチャーもハリー同様、英国西部の生まれであり、父を早くに亡くしている。

貧しい家に育ったハリーは、その才能と周囲の協力によって進学校に進むことができた。そこで、名家の御曹司ジャイルズと親友になり、彼の妹エマと恋に落ちる。だが、ハリーには出生の秘密があった。ハリーの母メイジーは、今は亡きハリーの父親クリフトンと結婚する前に、一度だけジャイルズの父親でバリントン海運の社長であるヒューゴ・バリントンと関係を持ったことがあったのだ。ヒューゴがハリーの父親であれば、エマとの恋は許されない。ただ、メイジーにもどちらがハリーの父親なのかはわからないのだった。

この出生がサーガを通じて、ハリーの運命の大きく揺り動かすことになる。
ハリーは前作『時のみぞ知る』のラストで、アメリカへ上陸する。が、なんとその直後に逮捕されてしまうのだ。そして、無実にもかかわらず6年の刑を受け、刑務所での生活をスタートさせることになる。
一方、英国では、ハリーの母メイジーを含め皆がハリーは死んだと思い込んでいた。だが、その中でエマ一人がハリーは生きていると信じ続ける。生まれたばかりのハリーの子、セバスティアンをブリスストルに残し、彼女は単身、ハリーの消息を求めアメリカへと渡る。そこでエマが掴んだ手がかりは、ハリーと思しき男性を主人公にした小説だったのだ…

The Statue of Liberty ところで、本書の原題は『The Sins of the Father』で、邦題は『死もまた我等なり』。一見、全然違うようだが、とてもいいタイトルだと思う。
この「死」は、ハリーにとってもこの物語にとっても重要な意味を持っているのだから。

ハリーとエマは再び出会うことができるのか?ハリーの父親はヒューゴなのか、クリフトンなのか?
今回もドラマは盛りだくさんだ。ジャイルズの人生も、メイジーの人生も大きな転機をむかえる。
とりわけハリーの刑務所生活は、そのまんまアーチャーの経験重ね合わせることができるだろう。アーチャー自身も、偽証罪で4年の実刑を受けた経験がある。

ハリーが困難に陥った時は、常に誰かが助けてくれる。これを「ご都合主義」と非難する人もいるかもしれないが、でも、誰だって一人きりで生きているわけではない。私はハリーやアーチャーほど振れ幅の大きい人生を送って「いるわけではないが、今四十路を過ぎて振り返ってみると、常に誰か力になってくれた人がいた気がするのだ。そのときは気がつかなくても。

アーチャー自身の為人については賛否あるが、彼の描く物語には、根底にこの種の暖かさがある。だから安心して、童心に戻ってハラハラし、ワクワクできる。


死もまた我等なり(上): クリフトン年代記 第2部 (新潮文庫)
死もまた我等なり(下): クリフトン年代記 第2部 (新潮文庫)
ジェフリー アーチャー (著), 戸田 裕之 (翻訳)
新潮社 (2013/9/28)





時のみぞ知る(上): クリフトン年代記 第1部 (新潮文庫)
時のみぞ知る(下): クリフトン年代記 第1部 (新潮文庫)

ジェフリー アーチャー (著), 戸田 裕之 (翻訳)
新潮社 (2013/4/27)





関連記事

category: 歴史・大河・ドラマ

thread: 最近読んだ本 - janre: 本・雑誌

tag: アーチャー    英国  ドラマ 
2013/12/02 Mon. 22:30 [edit]   TB: 0 | CM: 4

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この記事に対するコメント

Re: タイトルなし

naoさん、おはようございます。

「ケインとアベル」情報ありがとうございます。

ご本人の人生が反映されているせいでしょうか。アーチャー文学は、文学的高尚さは狙っていないのに、上滑りじゃない本物感があると思うんです。
アーチャー作品はドラマ化に向いてますから、もしかしたら『クリフトン年代記」も映像化されるのかな?

>Spenth@さんのブログの愛読者ですが、
有り難うございます。
こんな、ド素人の、超マイナー本ばっかり取り上げるブログを気にかけてくださっていて、とても嬉しく思っています。
私もnaoさんのコメントの愛読者ですよ!(笑)

>昔読んで感動したものが、
>後に再読したところ、それは無味なものでしかなかった・・

あはは、ありますよねぇ。
それは自分が「成長」したのだと思いたいですねぇ。

では、では〜

Spenth@ #- | URL | 2013/12/04 Wed. 09:36 * edit *

『ケインとアベル』は1986年放映されたらしいです。
以下、当ドラマの紹介記事を発見しました。
http://www.hananoe.jp/culture/bouken/bouken058.html

Spenth@さんのブログの愛読者ですが、
粗探しというより、Spenth@さんの目配りのよさが、
対象の作品の粗さを探すつもりはないのに「見えてしまう」(!)
というのが本当のところでしょう。

しかしその一方で、昔読んで感動したものが、
後に再読したところ、それは無味なものでしかなかった・・
という悲しい事態、自分の場合ままあります・・時は残酷。
では、おやすみなさい・・。

nao #6gL8X1vM | URL | 2013/12/04 Wed. 00:12 * edit *

Re: もう12月か・・

naoさん、こんばんは。

一年がはやいですよね。
ジングルベルに追われる〜

と、それはさておき、「粗捜し」ありきの読書はやはり無益だな、と。
別に「地獄のグレイマン」で誰かに何か言われたわけじゃないので、安心してください(笑)
これでも私、一応「グレイマン」のファンの端くれでもありますし。

ただ、そういえば、子供の頃はもっと純粋に愉しむことができていたよなぁ、とふと思ったんです。
J.アーチャーは大好きな作家の一人です。高尚を気取らず、これぞ「オハナシ」的なところがいい。
アーチャーの描く「激動の運命」的ジェットコースタードラマは、賛否あるだろうし、実際ネガティブな意見も聞きますが、なんかそういうのって「もったいないなぁ」と思ちゃうんですよね。
そして、自分には、まだそれを愉しめる「柔軟性」が残っているんだと思うと、ほっとする。

「ケインとアベル」がドラマにもなっているのは初耳。もしかして韓国のヤツ?
「アンダー・ザ・ドーム」は録画をとり溜めているだけなのですが、随分原作と違う感じですね。
「ホームランド」は観てました〜!あれ、面白いですよね!

Spenth@ #- | URL | 2013/12/03 Tue. 21:30 * edit *

もう12月か・・

おや?・・今回は内省的な文章の筆致。
前回のはじけっぷりからすると、
対照的なその様子が気になるところ・・。
最初の自身の読書姿勢について、最後の方には人生を回顧する風な印象的なつぶやき。
何か嫌なことありましたか?

Spenth@さんのブログでは年に一、二度、
必ず著作が取り上げられますね・・お気に入りの作家さん?
まだ第一線で活躍されているとは立派(失礼)。
それに比べりゃ古成なんぞまだひよっこですな。
おすすめアーチャー作品などあれば教えてください。

アーチャー作品の想い出・・昔むかし「ケインとアベル」のドラマ化されたものを観たのですが、
運命の波乱というかドラマティックな物語展開・・印象的でありました。
「百万ドルをとり返せ!」(傑作!)の明快・軽快なドラマ作品(コンゲーム)もよかったなぁ・・また観たい。

ドラマと言えば「アンダー・ザ・ドーム」観ておられますか?
自分はやや「ホームランド」の方に興味が移っております。
では!

nao #6gL8X1vM | URL | 2013/12/03 Tue. 20:51 * edit *

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