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読書日記、ときどき食日記

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にわかには信じられない遺伝子の不思議な話 / サム・キーン 

この年の瀬、元ジャニーズアイドルの俳優と女優の長男が、DNA鑑定で父子確立0%だったとかいうニュースが巷を賑わしている。しかも彼らは「デキ婚」だったとか…なんだかドラマのような凄い展開である。
なんでも体格だとか性格があまりに自分と違うので、不審に思ってたのだとかいうが、親子は一見して顔立ちは似てないようでも、体質やら肌のタイプ、爪の形などが「やっぱり親子!」ということが多いものだ。
それは、親の形質は遺伝子を通して子に継承されていくからである。


sam kean本書はそんな遺伝子のオハナシの本。

ところで、DNAと遺伝子というのは今日ではほ同意語として使われているが、厳密な意味では違うのだそうだ。どう違うのかというと、DNAはモノであり、指先や、服などに付着する化学物質である。一方、遺伝子も物質的性質を持っているが、モノというよりも概念だといったほうがわかりやすいのだという。
つまり、DNAがアフファベットのようなものなら、遺伝子はそのアルファベットでできた文章であり、物語のようなものだと言える。
そして、「わたしたちはどこから来たのか」「原始の泥のなかから、いかにして地球上最も優勢な種へと進化を遂げたのか」も全て、この遺伝子の物語に書かれているのだという。

遺伝子にまつわる話は、それが確立される歴史も含めてとても面白い。
Paganini.jpgバイオリンの才能と引き換えに”悪魔に魂を売った”とまで言われたパガニーニは、遺伝性疾患のせいで指が奇妙なくらいしなやかだったという。
ちなみに本書の原題は、「The Violinist's Thumb」である。彼はあり得ないほど手を広げることができ、親指をねじって手の甲の向こう側の小指に触れさせることさえできたのだ。しかし、このコラーゲンを生成できないEDSという疾患は、異常な柔軟性の代償として、筋肉疲労、虚弱な肺に過敏な腸、弱い視力と肌というダメージを伴わせた。そしてこの疾患が彼の命を縮める。偉大なバイオリニストにとってDNAは、味方であり敵でもあった。

ピアニストであり作曲家のセルゲイ・ラフマニノフは、非常に大きな手の持ち主として有名だったが、その大きな手は遺伝性疾患であるマルファン症候群のせいだったと推測されている。
また、JFKのテレビ映えする小麦色の肌は、アジソン病に特有の青銅色だった/strong>と言われているし、トマス・ジェファーソンは黒人の愛人との間の息子の存在を認めようとしなかったが、後の検査によって明らかにされてしまったなどなど...。
しかし、これらが面白いのは所詮他人事であるからだ。自分のこととなると、"面白い"は途端に恐怖にとって変わられる。なぜなら今では遺伝子検査によって、将来自分がどんな病気に罹患しやすいかがわかってしまうから。
アルツハイマーや乳癌などの病歴が家族にある場合、それを知るのは勇気が必要だろう。皆が皆、アンジェリーナ・ジョリーにはなれるわけではない。

著者のサム・キーンも、自分の遺伝子を軽い気持で検査会社に出すのだが、祖父が患っていたパーキンソン病についての情報だけは知りたくないと思っていたそうだ。
私だって乳癌になる確立が80%以上だとかいわれたら、心穏やかでいられない。精神疾患の類いや『ジェイコブを守るため 』にでてきたような”殺人遺伝子”があるなどと宣言されたりしたら、誰だって取り乱してしまうのではないか。(※殺人遺伝子→ http://blog-imgs-60-origin.fc2.com/s/p/e/spenth/20131012090931b87.png)
けれども、最後まで読んでいけば、遺伝子も恐れるべきものでもないということがわかる。というのも遺伝子だけが全てではないからだ。
実際、科学者は今日、遺伝子をもっと流動的なものだと考えている。その遺伝子よりも、その遺伝子を発現させること、そのスイッチのオンとオフも大切なのだ。それには、環境と、エピジェネティックという従来の遺伝学には含まれない、ソフト面での遺伝が関係してくる。
だからこそ、一卵性双生児も、クローンも全く同一ではあり得ないのだという。人間は遺伝子の設計図通りに作られるロボットではないのだ。
もしも、遺伝子検査によって将来何らかの病気の罹患率が高いとわかっても、特に脳の病気のような多くの遺伝子の影響を受ける複雑な病気の場合は、ひとつの遺伝子が与えるリスクは小さいし、そのスイッチはオフのままかもしれない。そしてそのことは今日の最も最先端の遺伝学に基づいている。

この本の最も良いところは、"知識を得ることで気が楽になることもある”という楽観的なエンディングかもしれない。


にわかには信じられない遺伝子の不思議な物語
サム・キーン (著), 大田直子 (翻訳)

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category: ポピュラーサイエンス

thread: 最近読んだ本 - janre: 本・雑誌

tag: 遺伝子  パガニーニ   
2013/12/26 Thu. 19:58 [edit]   TB: 0 | CM: 0

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