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読書日記、ときどき食日記

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『夜に生きる』読書会@ルノアール 

新年一発目の横浜読書会は、毎年恒例(になる予定)のエドガー賞祭りで課題本はデニス・ルヘインの『夜に生きる 』場所も昨年同様ルノワールの会議室
今年はさらに人数も多かったので、手狭だったかな?

まずはダニー班とジョー班の二手に分かれて、お馴染みの"読書地図"を作成した。
下記はダニー班のものだ。
『夜に生きる』から派生する作品を繋げていくのだけど、古典に詳しい人、冒険小説に詳しい人、色々と得意分野が顕著になる。
それにしても今更ながら、我が記憶力の衰えと、漢字が書けないことには驚いてしまう。
本当にどうしたものでしょう...(笑)
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ところで、この読書会に際し、お正月ボケの頭で超特急で『運命の日』と『夜に生きる』を通読した。
やっぱりルヘインはいいわぁ〜〜〜!!!

もしも『三秒間の視覚』を入れたとしても、やはり昨年の私のベストオブベストミステリはこれ。
この本がつまらないなんてありえるの?と思っていたら、それがそうでもなかったりした…
これが読書会の面白さなのだ。本当に、色んな読み方がある。

私のいたダニーグループでは、話題は主に「ストーリー自体についての賛否」と、「エマについて」の話で盛り上がった。本妻でしかも死んじゃったグラシエラをさしおいて、エマってすごい…
(※今回は珍しく一応メモをとったのだけど、これが例によって役にたたないシロモノ。私の脳内で変な具合に変換されていたらゴメンナサイ‥‥)


◆ストーリーについて

1.面白さ
・刑務所を出るまでは面白かったが、その後は駄目だった。
・刑務所を出るまでは、ジョー自身の生き残るための闘いにフォーカスが当たり面白く読めたが、タンパ以降は・不必要なバイオレンスが目につき、単なる立身出世の物語になってしまい退屈だった。
・ビジネスマン的ジョーには魅力がない。

トマスやダニーと父子の関係性など『運命の日』から読まないと分かりにくいところも...

・ジョーは所詮お坊ちゃん。
・必要最低限しか殺人も犯していない。
・良い子すぎてつまらない。

ルヘインはそもそも主人公にあまり悪いことをさせない傾向にあるが、自身もアイルランド系であることから、ジョーに自分を重ねてしまったのでは?


2.父と息子の物語
・トマスのジョーに対する"父親としての情"がすごく良い。
・その情の象徴となるのが、"パティック・フィリップの金の懐中時計"で、トマスの死後それがジョーの運命を暗示するようになってもいる(スイスから戻ってきた時計がまた遅れるようになる→グラシエラの死)
・ペスカトーレとその馬鹿息子や、フィギスと娘ロレッタの関係性なども読ませるものがある。

3.結末
・冒頭のシチュエーションから、ジョーは死ぬ運命かと思ったので意外だった。
・死んだのはジョー自身ではなく最も大切な人で、「夜に生きる」ことに"仕返し"をされるなら、ジョー自身であるべきだったのではないか?
・タンパまでは面白かったが、そこからはダメだった。

自分が死ぬのよりも、グラシエラという最も大切な人を亡くすほうが悲しみは深い。ゴッド・ファーザー的結末は展開的にベタであるが、妥当だと思う。
それから、私はタンパ以降の方が面白かったのだが、少数派?

4.歴史背景について
実在の人物や歴史的出来事をうまく使っているのでリアリティがある。
・歴史小説としても楽しめる。

当時の禁酒法下のギャング台頭の様子や、イタリア人系ギャングとアイルランド系ギャングの民族的なことに由来する抗争(マソVSアルバート・ホワイト)なども描かれている。

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物語の一番の山場はグラシエラの為に殺意を持って殺人をおかしてしまったシーンだと思う。
それを境に彼は無法者からギャングになったが、実はギャングになって以降(タンパの王子になって以降)、精神的には逆にギャング的なものから乖離していった気もした。


パトリック&アンジーシリーズの翻訳者でもあるKameさんによると、ルヘインは『ミスティック・リバー』を境に作風が大きく変化したのだという。
昔は一つの事件の中での主人公の成長を描いていたが、今は視点が俯瞰になりより大局的変化を描こうとしているように思えるとのことだ。

『運命の日』などはその最たるもので、これはルヘイン自身に子供ができたなどの変化があったためかもしれないという。
↑クリックで拡大
守りに入っていると思うかはたまた攻めていると感じるか?
どちらのルヘインが好みかは人それぞれ。私は『運命の日』以降に、何か一段大きく前進したような感じ受けたし、作家のこういう変化は読者としては非常に嬉しいことだと思う。



◆エマ・グルード

1.エマの魅力
・「何が欲しい?」と聞かれて「これまでに起きていないようなこと」などとなかなか答えられるものではない。自分も惹かれてしまうかも
とにかく生き抜いたのはすごい。(ファムファタール的)生き方も好き。
・ジョーの父トマスが見抜いた通り、それほど大した女ではなかったのではないか
トマスが認める類いの女性ではないからこそ、惹かれたのだと思う


2.エマの役割
生き返ったのは物語上不必要だった←エマ不要論
・父トマスへの反発の象徴として描かれていると思う

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私もエマは実際のところ、それほどの女性ではないのかなという気がした。
出会った当時のジョーには心に空洞を抱えており、だからこそ同じ匂いのする彼女に惹かれたのだろう。
また彼女は役割的にはジョーの心の空洞の象徴でもあったと思う。それは後にグラシエラにより満たされたが、過去との決別という意味においては決着をつけるのは不可欠だったのではないだろうか?全てはエマとの出逢いで始まったのだ。

また『運命の日』でも、ダニーはイタリア人テロリストの女と関係を持つのだが、それを連想させた。兄弟に似たようなことをさせているのも興味深い。
ところでルヘインは、女性の描き方がフェチ的。耳たぶや、背中の痣を描くことで顔かたちた印象を事細かに描写するよりも効果的に、生々しく匂い立つような魅力を出してもいると思う。

全体的に非常に映像的だという声もあった。
確かに視覚的で読みやすい。ここぞというシーンではコマ送りのような時の流れを感じさせたりもする。ルヘインはどちらかといえば、シチュエーション的説明よりも、むしろ"情”という形のないものを描くのに力を注ぐタイプの作家だと思うのだが、ストレートにそれが伝わってくるというのは文章に力があるせいだとも思う。実際、一文一文が重くて密だと思った。
この映像化を意識した書き方というのは、昨今の小説家にとってビジネス上欠くべからざる戦略になっているようだ。そういえば本作もベン・アフレック監督・脚本・プロデュースが決まっているというけれど、さてどうなることだろう?


二次会は今回は居酒屋ではなくカラオケ屋さんで。完全個室だし、意外にも(!)お料理もイケてた。これはスピンオフにももってこいかも。
今回一緒に盛り上がった皆さんも、今回は残念ながら出席できなかった方々も、また読書会でお会いしましょう!
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category: 読書会

thread: 推理小説・ミステリー - janre: 本・雑誌

tag: 早川書房  読書会  映画化 
2014/01/13 Mon. 19:39 [edit]   TB: 0 | CM: 1

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この記事に対するコメント

Re: タイトルなし

naoさん、こんばんは。

> というのも、この読書ブログで取り上げられた作品が、
> みな巧く繋がっていている風に見えるのでした。

あ、それはあるかもしれません(笑)
というか、直近のものしか覚えていないというか...直近のものすら怪しいというか...

『ビリーバスケイト』はダスティン・ホフマンのやつかな?


『インフェルノ』のあの善悪がひっくり返るトコ、naoさんは駄目でしたか〜?
私は、毛むくじゃらの腹をよじ上っていたら、ぐるっと世界が回転してしまうという「神曲」とリンクがとても良いと思ったのですが...
というか、ダン・ブラウンやらディーヴァーやらのあの手の本の魅力ってそういうとこにしかなくない?(笑)

横浜読書会(私のいた班)では、『夜に生きる』も人気がなくて、自分が変なのだろうか?とちょっと思ったりしましたよ(笑)
でもやっぱりルヘインはいい作家だと思うんだけどなぁ...

ところで、『黒い福音』のドラマって現代を舞台にするのでしょうかね?
番組表をチェックしとかなきゃ


では、では〜

Spenth@ #- | URL | 2014/01/14 Tue. 22:02 * edit *

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