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読書日記、ときどき食日記

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ハンティング / ベリンダ・バウアー 

『ブラックランズ』CWAゴールド・ダガーを受賞したベリンダ・バウアーの最新作。二度目となる2013年のGDは惜しくも逃したようだが、最終候補に挙るというだけでも充分すごい。


本作は『ブラックランズ』『ダークサイド』 に続く英国の寒村シップコット村三部作の完結編である。『ダークサイド』も昨年あたりレビューしていたつもりだったけどないので書いてなかったみたい。『ブラックランズ』に比べると二作目の『ダークサイド』はややトーンダウンした感がしたせいかなイマイチだったような…。『ダークサイド』で起こる事件は結着していないのだ。
本書はその『ダークサイド』に直結した物語でありこの二作品は二つで一つの作品だといってもいいと思う。

north devon village

さて、舞台は、英国、ノーズ・デヴォンの寒村シップコット村だ。村を襲った連続殺人事件から一年半たったが、未だ犯人の手がかりすらないなか、また事件が起こる。
狩りをしている父親を車のなかで待っていた13歳の少女が、忽然と姿を消してしまったのだ。父親の車には「おまえは彼女を愛していない」というメモが残されていた。金銭の要求がないことから、当初は家出だと思われていたが、数日後、また別の9歳の少年が連れ去られ事態は一変する。その後も犯行は収まることなく、第三、第四の連れ去りが立て続けに起こるのだった。
姿を消した子供たちはいずれも、一人で車内にいたところを狙われており、車には同様のメモが残されていた。

事件の指揮を任されたのは、マーヴェル警部の捜査チームにいたレノルズ警部補だった。前の事件では、捜査チームは最初から劣勢を強いられ、結局挽回することはできなかった。そのせいでレノルズの髪はごっそりと抜け、プライドは打ちのめされてしまった。大枚をはたき植毛をした彼は、今回こそは、絶対解決するのだと燃えていた。
一方、前回の事件で精神に深刻なダメージを負った警官ジョーナス・ホリーは休職を余儀なくされ、自宅に引きこもっていた。カウンセリングなど彼女にはどうでもいいことだったが、職務に耐えうると診断されなければ復職できない。彼にはもはや仕事しか残さていなかったのだ。カウンセラーは、そんなジョーナスに恐怖と気味の悪さを感じ、早く彼から逃れたい一心から復職許可の診断を下してしまう。
こうして、レノルズの懸念をよそに、ジョーナスも捜査に参加することになったのだ。そして、密かにジョーナスを恐れていたスティーヴン・ラム(『ブラックランズ』の主役だった少年)も、またこの事件に巻き込まれていくのだが…



ようやく『ダークサイド』の謎が明らかにされると思いきや…
.読者の解釈に委ねられる部分も大きいので、文句のある人は多いかも!

いかにも英国らしくウエットで残酷な暗い物語だが、、植毛の具合をやたら気にするレノルズの様子や、レノルズの部下エリザベス・ライスの嫉妬深く惚れっぽいキャラクターがそれを救っていると思う。
また『ブラックランズ』のスティーヴンは、本書でも重要な役割を果たすのだが、あの時いたいけな子供だった彼にはなんとGFができる!

原題は『Finders Keepers』で、これはFinders keepers, losers weepers.(拾ったものは拾った人のもの、無くした人は泣くしかない)ということわざなのだそうだ。
無くしたほうが悪いといわんばかりのタイトルは、厳しいと思うが「そういう考えもあるなと思う。だが、その無くしたものが「子供」ならどうだろう?
レノルズ警部補が37年の人生で学んだ教訓に、「人間はばかである」というくだりがある。「どれほど警告されようと、人は懲りずに飲酒運転をするし、ちょっと郵便局に寄るだけだから、ちょっと牛乳を買うだけだからといって子供を車内に置いていく。自分の身に悪いことが降り掛かるはずはないと高をくくっている」
欧米のみならず、日本でもつい先日少女の失踪事件が起きたばかり。幸い無事保護されたそうだが、親にとっては身に沁みる言葉だろう。

foxhunt2.jpg

ところで、『ハンティング』というタイトルの由来は、この事件そのものに「キツネ狩り」が大きく関わっているからである。
「キツネ狩り」はいわゆる貴族のスポーツであり、馬に乗った複数の人間が、猟犬にキツネを追いかけさせ、かみ殺させるというものだ。獲物を食べるためや害獣を駆除するとというためではない。キツネは単にスポーツとして、殺されるのだ。
ちなみに、この「キツネ狩り」はチャールズ皇太子も熱心なファンであったという。
過去形なのは、今では禁止されているからである。これは「あとがき」にも詳しいが「キツネ狩り禁止法」は紆余曲折の末、2004年のブレア政権下に成立となった。
それそのものの是非はともかく、「キツネ狩り」にかかる産業は長い歴史を持っており、シップコット村のような辺鄙な田舎では、それで生計をたてていた人も多かったらしい。
本書でもそれがテーマのひとつとして描かれているが、「キツネ狩り論争」はいわゆる階級闘争や、地方と都市部の対立をもはらむ根が深いものでもあるので、もう少し踏み込んでも面白かったかなとも思った。

ハンティング (小学館文庫)

ベリンダ バウアー (著), 松原 葉子 (翻訳)
小学館 (2013/9/6)

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ブラックランズ (小学館文庫)

ベリンダ バウアー (著), 杉本 葉子 (翻訳)
小学館 (2010/10/6)

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ダークサイド (小学館文庫)

ベリンダ バウアー (著), 杉本 葉子 (翻訳)
小学館 (2012/7/6)

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category: クライム・警察・探偵・リーガル

thread: 最近読んだ本 - janre: 本・雑誌

tag: 海外ミステリ  このミス  英国 
2014/01/15 Wed. 22:18 [edit]   TB: 0 | CM: 2

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この記事に対するコメント

Re: タイトルなし

naoさん、こんばんは。
連日、全豪オープンテニスを観ているのですが、なんと今日は45度!
40度超えとか、メルボルンに観戦には行けないわぁ...
そんな苛酷な中、今日はシャラポワは3時間半もよく頑張りました。
ナダルは全豪はあまり相性がよくない大会で、しかも今大会のドローも厳しくて茨のビクトリーロードなのですが、ここまでは順調そうで何より。
くぅ〜〜〜この大会でジョコビッチに勝ちたいよなぁ。


>なんでコナラーを仇(仮想敵)にするのか自分でも不明
なんででしょうねぇ?
面白いから?(笑)ってそんなこと言ってると、本気で狙われそう...

そうなんですよ。『ダークサイド』はレビューしていないみたいなんです。
今、ブログ内を見直してみたけどやっぱりない。ただ、naoさんと会話した記憶はあるんですよ。私にも。
コメント欄でのことかな?

> お互いヘンな幻を見るようになりましたなぁ・・ふう。
これ↑笑っちゃいましたよ!
なんかもう幻と現実の区別も怪しくなりつつまります(笑)
でも、もういいや。ねぇ?

『ハンティング』もまあまあですが、絶対断然誰が何と言おうと『シスターズ・ブラザーズ』ですよ!
これは面白いです。
『夜に生きる』も面白いんですけどねぇ。

ではでは〜

Spenth@ #- | URL | 2014/01/16 Thu. 22:38 * edit *

「夜に生きる」不評なのでしたか・・意外。
Spenth@組の末端組員(ロートルですが)として看過できませんなぁ。
(自分は総スカン喰らった「アイアンハウス」だっておもしろく読んだぞ)。
まあ、コナラー組がイチャモンつけてきても、ヒットマン送り込んできても、
Spenth@姐さんのこと、ビクともしますまい。
(・・なんでコナラーを仇(仮想敵)にするのか自分でも不明)。

ヘンな前置きはこれくらいにして、
おや!?・・『ダークサイド』の評、書かれておりませんでしたか?
自分はその書評(記事)に興味を持ち、本作を読んだように思ったのですが・・。
お互いヘンな幻を見るようになりましたなぁ・・ふう。
物忘れの頻度の上がることを、その昔、老人力がついた
という逆説的ポジティブ表現(?)がされましたが、
老人力だけはSpenth@さんには負けないと思うな。
『ハンティング』は『シスターズ、ブラザーズ』の次くらいに読みたいです。
ではまた。

nao #6gL8X1vM | URL | 2014/01/16 Thu. 20:38 * edit *

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