Reading For Pleasure

読書日記、ときどき食日記

05« 2017 / 06 »07
1.2.3.4.5.6.7.8.9.10.11.12.13.14.15.16.17.18.19.20.21.22.23.24.25.26.27.28.29.30.

Xの悲劇 /エラリー・クイーン 

『Xの悲劇』ならぬ「N(ナダル)の悲劇」の後、

気がつけば既に2月……
気がつけば読書会は明日…(汗)




今回の横浜読書会スピンオフの課題本は、角川版の『Xの悲劇 』 越前 敏弥氏による新訳バージョンなのである。
それもそのはず、今回はゲストに翻訳家の越前氏をお招きする予定なのだ。
会自体もいつものテキトーにおしゃべりするというものでなく、メンバーのTさんにキュレーター役をお願いするという趣向なのだ。
昔、読んだことがあるとはいえ、ちゃんと角川版を読んでおかなくてはマズい…!!!

ということで、あわてて読んだのだった。




さて、本シリーズの主人公レーンは、引退した元俳優であり、同時に名探偵でもある。
物語は、ニューヨーク市警のサム警視と(角川では警部)、ブルーノ検事がレーンの自宅ハムレット荘を訪れるところから始まる。彼らは、レーンがさる未解決殺人事件の謎を解明した推理力を頼り、目下、捜査が行き詰まっているロングストリート殺人事件解決に力を借りにやってきたのだった。

被害者は、株式仲買人のロングストリート氏。彼は満員電車の中で毒殺されたのだった。
その日、彼はホテルの部屋で女優との婚約を祝うカクテルパーティを開き、そこに集った仲間たちとともに晩餐のため郊外の自宅に向かう途中だった。集まっていたのは、ビジネスパートナーであるドウィット氏とその妻、その娘と彼女の恋人、ドウィット氏の隣人で友人のアハーン、ドウィット氏、客のスイス人、税務官のコリンズだった。
雨でタクシーがつかまらず、一同はやむを得ず市電に乗車乗り込むことになった。そこでこの事件は起こったのだ。ロングストリートは、夕刊を読むためポケットから眼鏡をだそうとした矢先、突然よろけて通路に倒れてしまったのだった。彼の手は無数の刺し傷があり、出血していたという。

現場に駆けつけたサム警視は、コルク球に50以上もの針が刺さった手製の針球を発見する。針先には濃縮されたニコチン毒が塗られており、これが凶器に違いなかった。
殺害されたロングストリート氏は評判の悪い傲慢な人物で、ドウィット氏を筆頭に居合わせた皆に動機と機会があった。
サム警視の話を聞いたレーンは、「犯人はわかった」というのだが、その後第二の殺人が起こって…



elleryqueen.jpg
ご存知の通りエラリー・クイーンはF.ダネイとM.B.リーの二人からなる作家である。
『Xの悲劇』『Yの悲劇』『Zの悲劇』『レーン最後の事件』は、ドロリー・レーンという引退した全聾の元シェイクスピア俳優を探偵役にしたシリーズもので、"レーン4部作”と呼ばれているが、これらは当初エラリー・クイーン名義ではなく、バーナビー・ロスという名で書かれている。このいきさつは巻頭の「読者への公開状」に詳しい。

確か東西ミステリー ベスト100 の海外篇の第1位は『Yの悲劇』だったと思うが、私はXのほうが断然いいと思う。
緻密で論理的だし、本格ものにはよくありがちな小さな推理の齟齬もない。本当に驚くほど瑣細なことまできっちりと考えられている。ダネイとリー二人のうちどちらかが細かい性格だったんだろうなぁ!

クリスティ的なフーダニットでもなく、カーのような不完全犯罪でもない。派手さはないのだが、「本格」の中の「本格」といっていいのはクイーンだろう。
そもそも犯人を「X」と記号で呼ぶところがいいじゃないか。そして推理の課程もまるで数学のように数式を列ね、解たる「X」に近づいていく。
クリスティのフーダニットは比較的わかりやすい。カーの密室モノはマニアならば解けるかもしれない。
しかし、クイーンのものは、シャーロック並に神かがった天才でない解けないとも思うのだ。かといって、手がかりに抜かりがあったり、フェアでなかったりすることもない。ダネイはかつて「解けるはずだ」といい、それに対してリーは「読者が天才ならばね」と言ったというが、まさにその通り。

エラリー・クイーン・ファン倶楽部会長の飯野氏は、クイーンが読者に挑戦しているのは、「犯人を当てよ」でも「密室トリックを当てよ」でもなく「手がかりを当てよ」だと言っている。一段レベルが高いのだ。読者は、もっと前段階の謎に挑まなくてはならない。
読者は最後まで振り回されるのだが、謎が解けなくても、探偵役とともに道程を振り返ることで楽めるのだ。数学に例えれば、解そのものよりそれを導く数式に重きが置かれていると言える。
それがクイーンの最大の特徴で面白さだと思う。


クイーンの作品は、初読よりも再読のほうが面白く読めるし、二度目より三度目のほうがより楽しめる。また、私の蔵書は故大久保康夫氏訳の昭和50年発行の新潮版(高校図書用 どんだけ古いんじゃ?)なので、読み比べするのも面白かった。

当然だが、訳自体もより現代的で読みやすくなっているが、顕著な違いは角川の新訳版では「読者への公開状」が加えられていることだ。(新潮の現在のヴァージョンにはあるが、私の蔵書にはこれはない。)

また、今回読み比べるとことで、新潮版の旧訳には驚かされてしまった!!!
殺害されたロングストリート氏の秘書が、サム警視(角川版では警部)に「ただの秘書じゃないんでしょう?」と関係を問いただされたシーンで「二年ばかりあれするにはしてましたけど」新潮版P71だし、取引所の黒人のボーイは「制服のニグロ」新潮版P185なのだ w
これは今日の翻訳家は使えない表現かも…

殆ど完璧な理論武装をしているといっていい本書だが、ひとつ疑問なのは、ニコチンの殺傷能力についてである。
針先につけたニコチンという凶器は、金田一少年の事件簿でも使われているらしい。だが、こんな手頃な毒物がなぜそれほど凶器としてメジャーではないのかなと思っていた。
そんなとき、今回こんなサイトを見つけたのだ→刺激的なWikiニコチンを塗った針では死なない
ええっ?!
死なないの?

関連記事

category: 古典・本格

thread: 最近読んだ本 - janre: 本・雑誌

tag: 海外ミステリ  読書会 
2014/02/06 Thu. 17:05 [edit]   TB: 0 | CM: 0

go page top

この記事に対するコメント

go page top

コメントの投稿

Secret

go page top

トラックバック

トラックバックURL
→http://spenth.blog111.fc2.com/tb.php/347-49ae8dc7
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

go page top