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読書日記、ときどき食日記

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11/22/63 スティーヴィン・キング 

一週間以上かかって、ジムでエアロバイクを漕ぎながらコツコツと読んだ。
このところずっと同じ本を読んでいたので、ジム友(70代男性)から「一生かかるんじゃないの?」とか揶揄もされたが、ようやく読み終えたわ。ふぅーーーーーーーー

それもそのハズで、上下巻上下二段組みフォント小さめ、総ページ数は1,052ページ!
S.キングのファンにとってはおなじみのボリュームではあるが、やはりクジラ並とうかなんというか…。
ほとんど足は動かしてなくて、マシンに「運動を続けてください!」と度々叱られる始末。
これで得た教訓は、エアロバイクでながら読みするのはせいぜい文庫にしといたほうがいいということである。


11:22:63movieアンダー・ザ・ドームもよかったけど、これはもう別格だと思う。
巨匠と呼ばれるからには、これくらいのものを書いてくれなくては。

正直、ここ最近の「JFK暗殺もの」のなかではさほど期待していなかったのだけど、「このミス」No.1に相応しい作品と思う。(いや、『夜に生きる』も捨て難いのだが…。)



さて、主人公のジェイク・エピングはメイン州リスボンフォールズのハイスクールの英語教師だ。30代の半ば。アルコール依存症の妻とは離婚している。
元妻はジェイクのことを"感情欠損傾向”にあると評したほど泣くことのない男だったが、その日、ジェイクは涙が止まらなくなる経験をする。
彼を泣かせたのはハイスクール同等課程修了書を手にいれようとしていた、自分の父親ほどの年齢のびっこの校務員、ハリー・ダニングの作文だった。彼はその歩き方から”ぴょこたん蛙”と呼ばれていたが、それには彼が”ぴょこたん蛙”になってしまった人生の転換期の出来事が書かれていたのだった。思えば、その作文との出会いがジェイクの分水嶺的瞬間だった。
そんな折、ジェイクは行きつけのダイナーの主人アル・テンプルトンから電話で大事な話があるからすぐ来てほしいと呼び出される。アルの姿を見たジェイクは驚きを隠せなかった。この前顔を会わせてわずか22時間の間に、アルは13キロは痩せていた。それだけではない。いつもつややかに赤らんでいた頬は、土気色にしぼみ、青い目は褪せ、黒かった髪は白髪になっている。一晩で目に見えて年老いていたのだ。
 Butterfly Effect「肺癌なんだ」とアルはいい、そこから信じられない話を始める。
アルのトレーラーハウスのダイナーの食品庫の扉の向こうの階段を下っていくと、過去の世界に通じているというのだ。「兎の穴」、アルはそう呼んでいた。実際に体験したジェイクは言葉を失う。アルが言うには、向こうでどれだけ長く過ごそうと、戻ってきたら毎回二分きっかりしか経っておらず、階段の先はいつも決まって"1958年9月9日の午前11時58分"なのだと。しかもその旅毎に過去の世界は全てがリセットされる。何度も会っている人も、アルの方は覚えているが、過去の世界の住人にとっては毎回が初対面になる。アルが一夜にして著しく老けたのは、実際に過去の世界でそれだけの年月を過ごしていたからだった。
アルはジェイクを見込んで懇願する。自分は癌でもう先は長くない。どうか、JFKを救って欲しいと。JFKがもしも暗殺されることがなければ、アメリカは、世界はもっと良くなっていたはずだ。世界を救いたいと思たことが一度でもあるのなら、ケネディを助けてほしい。
一晩考えたジェイクの脳裏に浮かんできたのは、あのびっこの校務員ハリーのことだった。彼が"ぴょこたん蛙”になったのは奇しくも1958年の10月。ジェイクはハリーの人生を取り戻してやることができるのだ。
ジェイクは過去の世界に向かうのだったが…



タイトルの『11/22/63 』というのは、勿論、例のあの日、ケネディがリー・ハーヴェイ・オズワルドに暗殺された日のことである。
最近読んだJFK暗殺関連本、『ケネディ暗殺 ウォーレン委員会50年目の証言』 も、S.ハンターの『第三の銃弾 』も、根底にある疑問は、オジー・ザ・ラビットと呼ばれるほどの取るに足らない"小物"でしかなかったオズワルドは、本当に彼一人でケネディ暗殺を成し遂げたのか?ということにあった。だがキングの興味はそこにはない。「もしもケネディが暗殺されることがなかったら?」というところにあるのだ。

JFKがオズワルドに暗殺されたあの日は、まぎれもなく米国史における"分水嶺的出来事”である。そこを境にし大きく流れが変わってしまった出来事だ。本書のテーマは、過去を変えること、過去と格闘すること、であるが、この"分水嶺的出来事”というのも重要な役割を果たしている。ハリー・ダニングの"分水嶺的出来事”、ジェイク自身の"分水嶺的出来事”、その他の様々な登場人物の"分水嶺的出来事”を読みながら、自分自身のそれについても思いを巡らせてしまう。えーと、なんだっけ…???

上巻は、ほぼジェイクが校務員ハリーの過去を変えようと奮闘する話に費やされる。"過去"は確かに変えることができる。ただし、過去は強情で、変えられたくないと考えてもいる。アルはそれを「ナイロンストッキングから懸命に出ようとしているみたいだ」と表現し、多少伸びてくれても、たちまち強い力で引っ張られて元に戻ってしまうという。

Stephen Edwin King確かに、「今度のキングはひと味違う」が、"過去”が人格を持ち、ジェイクに襲いかかろうとするシーンなどでは、ホラー味たっぷりでホラーの帝王キングもちゃんと堪能できる。
読者としては、「はやくオズワルドがでてこないかな」と期待するところだろうが、校務員ハリーの父親の話にページを割いたのは、"過去の共鳴現象”を強調する狙いだったのだろうし、実際よい効果があがっているとも思った。キングの小説は冗長だと言われることもあるが、無駄は少ないと思う。階段を一段づつ丁寧に積み上げていくようなやり方、私は好きなのである。

もうひとつ興味深かったのは本書に何人も登場する「気の狂った下衆男」たちである。校務員ハリーの父親しかり、妻を殴るオズワルド然り…。
特にオズワルドは、ジェイク自身が近くで観察しているという設定なので、他の「JFKもの」に比べ、肉付けされている。おそらくキングは膨大な資料にあたったのであろうし、かなり正確に描写されているのではないだろうか。
「JFK暗殺」には数えきれないほどの陰謀説があるが、確かにアメリカ人が「こんなに下らない下衆男」にケネディを暗殺されたとは”考えたくない”のも無理ない。
ちょうど"柏市の連続通り魔事件"の犯人が逮捕された時分に読んでいたので、余計にこの手の男への嫌悪感はいや増した。正気ではない言動に安直で暴力的な性格、どうでもいい下らない政治信条…。彼らは本当に似ている。裁判の争点はいうまでもなく"責任能力"になるのだろう。

キングは本書で優れた作家としての様々な面をみせてくれている。十八番であるホラー的要素も健在だし、最近進出しはじめているSF的要素もそうだ。
だが、これだけ多くの人々が高い評価を与えたのは、エンディングが素晴らしかったからではないだろうか。
またジェイクが高校教師ということもあり、よりキングその人を反映していることもあるだろう。

彼は「あとがき」で、息子であるジョー・ヒルのアドバイスでラストを変更したと打ち明けていたが、これは大正解だったのだろう。当初のものはなんとなく予想がつくから(笑)
変更後に示されているのは、「究極のラブストーリー」ともいえるもので、キングらしくはない。しかしだからこそ良いのだ。



11/22/63 上
11/22/63 下

スティーヴン キング (著),
白石 朗 (翻訳)
文藝春秋 (2013/9/13)

当然といえば当然なのだろうけど、
案の定、映画化されるみたいですね。
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category: SF ファンタジー

thread: 最近読んだ本 - janre: 本・雑誌

tag: 海外ミステリ  このミス  映画化 
2014/03/11 Tue. 21:39 [edit]   TB: 0 | CM: 0

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